Archive for category アナログディスク再生

Date: 8月 4th, 2013
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(RS-A1のこと・その1)

つい先ほどラジオ技術のウェヴサイトを見ていた。
いつもは次号の表紙を確認するくらいなのだが、たまには下までスクロールしてみた。

毎月12日似発売になる号の紹介の下には、
書籍の紹介があり、真空管アンプのキットの紹介が続く。
そして、また書籍の紹介があり、いちばん下までスクロールすると、
1996年ごろから発売しているトーンアームのRS-A1の写真がある。

今日現在、RS-A1の写真と簡単な紹介文は残っているものの、
「生産終了しました」と赤字である。

製造中止になったのか、
いつなったのだろうか、
ときどきラジオ技術のサイトにはアクセスするものの、いちばん下までスクロールしたのは、
前回はいつだったのか思い出せない。

つまりRS-A1がつい最近製造中止になったのか、それとも一年前だったのか、
もっと前だったのか、は、だからわからない。
たぶん、けっこう前なのではないのだろうか。

ただ、このトーンアーム、あまり注目されずに消えてしまったのか、と残念におもっている。

RS-A1は写真を見てもらえればわかるように、アマチュアの手づくりのような雰囲気をもっている。
価格は当時65000円だった。
1990年後半には、高価なトーンアームもいくつか登場したいたのだから、
65000円という価格は、それだけで注目を集めることが難しかったのかもしれない。

RS-A1が10倍の値付けで、海外のメーカー製ということだったら、
注目度も大きく違っていたことだろう。
でも、RS-A1はラジオ技術のブランド、RSラボの製品ということが、
このトーンアームの存在をマイナーにしていたようにも思う。

Date: 7月 22nd, 2013
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その6について、さらに余談)

私がトーレンスのTD224のカラー写真を見たのは、ステレオサウンド 39号が最初だった。
「オーディオの名器にみるクラフツマンシップの粋」にはカラーが4ページある。
扉にはガラード・301とトーレンスのTD124/IIを真正面撮った写真、
つづく見開きのページには斜め上からの301とTD124/II、
カラーページの最後にTD224だった。

この39号のカラー写真が最初だったこともあり、
TD224のデッキ部分の色は、こんな感じなんだ、とずっと思っていた。
同じトーレンスのTD124とはずいぶん色合いが違うけれど、
これもターンテーブル単体のTD124とプレーヤーシステム、それもオートチェンジャーのTD224、
それぞれの性格の違いから、あえてデッキ部分の色を変えているのだと、そう受けとってしまった。

TD124、301は実物を見る機会も、触る機会も、音も聴くことができたけれど、
TD224に関しては、岩崎先生のTD224を対面するまで、それらの機会はなかった。

そんなこともあって、いま私のところにあるTD224、
確かに汚れはあるけれど、デッキ部分の色はステレオサウンド 39号のままだ、と思った。

昨日、Exclusive F3のクリーニングのために「激落ちくん」を買ってきた。
「激落ちくん」に関しては、特に説明は要らないだろう。
ドイツ生れの新素材のスポンジで、水に濡らして、あとは軽くこすっていくだけである。

特殊な薬品を使わずに汚れを簡単に落していける。
Exclusive F3はずいぶんキレイになった。
まだ細部のクリーニングは残っているけれど、
この「激落ちくん」でTD224もクリーニングしてみよう、と思い、
こっちを優先してしまった。

塗装面ということもあってか、Exclusive F3のときよりも劇的に汚れが落ちるわけではないけれど、
少しずつ汚れは落ちていく。
すると、ステレオサウンド 39号のTD224のカラー写真は、
実は煙草のヤニによって変色していたことがわかる。

ステレオサウンド 39号は1976年出版、
岩崎先生が中野でやられていたジャズ・オーディオは1974年春に閉店している。
いまとは違い、当時は禁煙席などないし、煙草の煙はきっと店内に充満していたことだろう。
なにせ1970年代のジャズ喫茶なのだから、それが当然の風景であったはず。

そういう場所・時代で使われてきたTD224だから、その汚れも「勲章」なのかもしれない。
いわば時代の証しとして、TD224の表面を覆っている、この汚れ、
すでに一部落し始めてしまった。落した汚れはもう元には戻せないから、
これから先ゆっくりとキレイにしていくしかない。

Date: 7月 19th, 2013
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その6についての余談)

ステレオサウンド 39号掲載の「オーディオの名器にみるクラフツマンシップの粋」、
ここではトーレンスのTD124とガラードの301がメインで取り上げられていて、
TD224についてもふれられている。

367ページには、岩崎先生、長島先生、山中先生が、
301とTD224をはさんですわられている写真が載っている。

301はキャビネットなしの単体、
TD224はかなり大きめのキャビネットに取り付けられた状態。
このTD224は、私の部屋にいまあるTD224そのものである。
つまり岩崎先生のTD224であり、
中野のジャズ・オーディオで使われていたTD224である。

Date: 6月 3rd, 2013
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(些細なことについて)

シェル一体型のカートリッジでなければ、なんらかのヘッドシェルに取り付けることになる。
単体のヘッドシェルの場合もあるし、
SMEの3009S/IIIやSeries Vのようにシェル部分がアームパイプと一体化されている場合もある。

どちらにしてもネジを使ってカートリッジをシェル部分に取り付けることになるわけだが、
シェル側に設けられているネジ穴にタップを切ってある場合は下からネジをいれる。
アームパイプとシェル部分が一体化されたものに多いのが、シェル側の穴にタップを切ってないものの場合、
つまりナットを用意して固定する場合には、
ネジを上からなのか、下からなのか、どちらでもいける。

私は、この場合、上からネジをさしてナットを下側にもってくる。
ずっとこれで固定してきたし、こういうシェルの時、下からネジをいれたことはなかった。

特に意識していたわけでもなかったけれど、ずっとそうやってきたし、
他の人もそうやるものだと勝手に思い込んでいたところもある。

インターネットが普及して、オーディオマニアの中には自分のシステムの写真を公開している人も少なくない。
それらの写真を見て気づいたのが、このネジに関することだった。

下からネジをいれてナットを上にしている人がいる──、
そのことに少し驚いた。

でも考えてみればヘッドシェルにタップが切ってある場合は下からネジなのだから、
ナットを使う場合も、それと同じで下から、そう考えれば納得できるといえばそうなる。

シェル側にタップを切ってない場合(ナットを使う場合)、ネジはどちらからなのか。
どちらでもいいといえばそれまでなのはわかっていても、
私の感覚としてはやはり上から、である。

それもマイナスネジの場合、ふたつのネジのスリットが延長線上にくるようにそろえる。
こんなところをきちんと揃えたからといって音に変化はない。

だからといってネジのスリットがあちこちを向いているのはいやだし、
併行になっているのも、しっくりこない。
やはり一直線になるようにしたいし、そうする。

もちろんネジの締付けは同じにしなければならないから、その分手間がかかるといえばかかる。
でも一度やっておけば、その後、そうそういじるところでもない。

いまの時代、アナログディスク再生をやるのであれば、
音に直接関係のない、こういう些細なところにこだわっていくのもいいのではないだろうか。

Date: 5月 18th, 2013
Cate: アナログディスク再生

アナログディスクの回転数

LPの回転数は1分間33 1/3で、これは3分間でちょうど100回転になるから、
そんなふうな説明がずっと前からあった。
私もこの説をかなり以前から聞いていたし読んでもいた。

けれどなぜ3分間なのか、その理由がわからなかった。
シングル盤の45回転は3分間の回転数にしても5分間の回転数にしても、
LPのように3分間で100回転というふうに、ぴったりとくる数字があるわけではない。

SPの78回転にしてもそうだ。
となると、実は3分間で100回転が理由ではなく、他に技術的な理由があるはず。
そう思っていても、実際に資料にあたって調べていくということはしなかった。

それでもいろんなものを読んでいくと、偶然にそのヒントに遭遇することがある。

それはSPの回転数に関することだった。
シンクロナスモーターの1分間の回転数は3600。これを46で割った値が78回転ということである。
だから正確には78.26回転ということになる、とあった。

そこにはここまでしか書いてなかった。
でも、すくなくともSPの回転数がシンクロなロモーターの回転数から決っていることはわかった。
ならば3600回転をLP、シングル盤の回転数、33 1/3回転、45回転で割ってみれば、
それぞれ108と80という、ぴったり割り切れる数字が出てくる。

それにしてもシンクロナスモーターの回転数(3600)を煩悩の数(108)で割った値が、
LPの回転数であるということに、
オーディオの苦悩が、すでにLPの規格が決った時点で顕れていた、と、
そんなふうに受けとめることもできよう。

Date: 5月 17th, 2013
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その17)

使いこなしのこと(その17 続×十一 補足)」の最後のところで、
EMTの930st、927Dst、トーレンスのインナーターンテーブルのシルエットはコマであると書いた。

コマは、その加工精度が高いほど回転が安定し回転している時間も長くなる。
つまりターンテーブルをコマと見立てるのであれば、
ブレることのないシャフトをもつ、ターンテーブルプラッターのどこにも偏りが存在せず、
というのがターンテーブルの在り方となる。

コマは高速回転しているほど、
そして加工精度が高ければ高いほど、止っているようにも見える。
それは回転しているから静止しているようにも見えるわけである。

回転が遅くなってくると、コマはブレはじめる。不安定状態になる。
やがて倒れてしまう。

ターンテーブルとコマと完全に同一視してしまうのはどうかとも思いながらも、
安定した回転、静止したようにも見える回転状態を考えると、
アナログディスク再生の難しさのひとつは、
ターンテーブルプラッターが低速で回転していることにある、といえるのではないだろうか。

1分間で33 1/3回転(つまり3分間で100回転)は、コマの回転速度としては遅い。
コマとターンテーブルプラッターとの直径の違い、重量の違い、
シャフトが軸受けに収まっているかどうかという違いがあるのはわかっている。

それでも回転体としての安定ということについては、
加工精度と回転速度が大きく関係しいてることには変りはない。

LPの回転数は33 1/3回転と決っているのだから、
ここで回転数(回転速度)が遅いのがアナログディスク再生の問題ではないか、
といったところでどうにかなるわけではない。

それでも高速回転しているコマは、コマ同士をぶつけ合った際にも回転の弱いコマ、
精度の落ちるコマをはじき飛ばすことができる。
ということは高速回転することで、外乱要素に対しても強いのではないのか。

回転数が遅いほど、外乱要素を受けやすくなる──、
そんな気もしてくる。

Date: 4月 27th, 2013
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その32)

海老沢徹氏による連載「針先から見たスーパーアナログの世界」、
ステレオサウンド 75号に掲載されているこの記事のなかで、
ウェストレックスのカッターヘッド3D RECORDERが写真とともに紹介されている。

この3D RECORDER海老沢氏所有のもので、撮影のためにお借りしてけっこうな期間私が預っていた。
机の引出しの中にしまっていて、見たくなればいつでも好きな時に好きなだけ見れて、そして触れた。

3D RECORDERは実測で2060g。金属のかたまりであるから、ずしっと重い。
感覚的には実測値よりも重く感じる。
誌面の都合で写真が小さくなってしまったのが、いまでも悔やんでしまうのだが、
3D RECORDERはカートリッジとは、まったく別物であることを、実際に手にして実感していた。

カッターヘッドはラッカー盤に溝を刻んでいくもの、
カートリッジはプレスされた塩化ビニール盤の溝をトレースしていくもの、
だからこのふたつがまったくの別物であることは知識として理解はしていても、
実際にカッターヘッドの実物を見て手にすれば、感覚的に理解できるほどの違いが歴然としてある。

これで、私の中でカッティングマシンがアナログディスクのプレーヤーとして理想とはいえないことに確信を得た。
アナログディスクのプレーヤーが、プレスされた塩化ビニール盤を再生するものではなく、
ラッカー盤を再生するものだとしても、
カッターヘッドとカートリッジの違いについて考えれば考えるほど、
プレーヤーとしての理想は、別のところにあると考えるようになる。

これだけが理由ではないのだけれど、
リニアトラッキング方式がけっしてアナログディスク再生のトーンアームとして、
カートリッジを移動させるための機構として理想とはいえないと、
私は結論づけている。

Date: 4月 26th, 2013
Cate: アナログディスク再生

ローインピーダンス型カートリッジのメリット(その2)

コントロールアンプもしくはプリメインアンプの入力セレクターをPHONOにしてボリュウムをあげていく。
当然ノイズが聴こえてきて徐々に大きくなってくる。
このときのノイズの量は、カートリッジが何も取り付けられていない状態、
インピーダンスの高いMM型カートリッジが取り付けられている状態、
MC型カートリッジが取り付けられている状態、
さらにオルトフォンSPUのようにMC型の中でもインピーダンスの低いものが取り付けられている状態で変化する。

つまりフォノイコライザーのノイズ量はアンプのPHONO入力端子にショートピンを差した状態がいちばん少なく、
PHONO端子につながれているカートリッジのインピーダンスが低い、
カートリッジ実装状態のノイズ量は、ショートに近い状態のモノほど少ない。

とはいえローインピーダンスのカートリッジはMM型にしろMC型にしろ、
インピーダンスが高めのものよりも出力が低いことが多いわけだから、
S/N比という観点ではsignalのレベルが下げることで、必ずしもS/N比が高くなるともいえない。

けれどフォノイコライザーのノイズがカートリッジのインピーダンスによって変化していくのを耳にすれば、
アナログディスク再生においては、
必ずしもカートリッジの出力が大きい(そのためにハイインピーダンス仕様)だけでは
実質的なS/N比が有利になるとはいえなくなる。

ローインピーダンスのカートリッジのもつ技術的メリットを活かすのは、
だから難しい面があることは事実としても、
インピーダンスの値と出力レベルとの相関関係において、特に聴感上のS/N比に関しては、
いいポイントがあるのかもしれない。

Date: 4月 25th, 2013
Cate: アナログディスク再生

ローインピーダンス型カートリッジのメリット(その1)

いま別項「D130とアンプのこと」で、ローインピーダンスのカートリッジについて書いていて、
ひとつ、技術的なメリットを思い出した。

それはカートリッジ実装状態のフォノイコライザーのノイズが減る、ということ。
このことはステレオサウンドでも活字になっているので、記憶されている方、ご存知の方もおられるだろう。

ステレオサウンド 76号での「読者参加による人気実力派スピーカーの使いこなしテスト」の基礎篇にある。
このときの試聴で使っていたコントロールアンプはQUADの44。
44にはCDプレーヤー(パイオニアD9010X)と
アナログプレーヤー(トーレンスTD126MKIII)が接続されていて、主に試聴はCDで行われていた。

ある程度セッティングを詰めていったところで、
それまでTD126MKIIIにつけていたカートリッジをMM型からMC型へと交換して、CDの音を聴いている。
このときのMM型はスタントン、ピカリングのローインピーダンス型ではなく、一般的なハイインピーダンス型。

カートリッジを交換して聴くのはアナログディスクではなく、CDである。
にも関わらず、音ははっきりとよい方向へと変化する。

そのときの音の変化を、
読者代表として参加されていた舘一男さん(早瀬文雄氏)と井上先生はこう語られている。
     *
舘 これは好き嫌いの問題というよりも、MC型に変えた方が、SN比がよくなり、CD再生のクォリティが上りますね。
井上 CDを聴いている時の大きな問題のひとつとして、フォノイコライザーからのノイズの飛びつきがあります。この問題を解決するには、CDを聴いている時はイコライザー部の電源が落ちるか、イコライザーの出力にミュートをかけてほしいんだけど、現在ではそれを望むのは無理。だから、CDを本気で聴きたいときは、アナログ入力を外してショートピンを差すか、もしくはローインピーダンスのMC型カートリッジをつけてやるといいでしょう。インピーダンスの低いカートリッジだと、等価的に入力がショートされた状態になりますから。
     *
このメリットは、なにもCD(ライン)入力のみ作用するわけではない。

Date: 4月 24th, 2013
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その31)

一般的な弧を描くタイプのトーンアームの先端に取り付けられたカートリッジの針が、
レコードの溝をトレースしながら内周へと移動していくのは、
オーディオに興味を持ち始めたばかりの少年の頭でも容易に想像できた。

けれどカッターヘッドと同じ軌跡を針先が移動するリニアトラッキング方式となると、
B&O、ヤマハ、マカラなどから製品が出ていても、考えれば考えるほど、その動作は理解し難かった。

それでもカッターヘッドと同じだから、それが理想的なものであると思い込もうとしていた。
実際にリニアトラッキング方式を採用したプレーヤーが動作しているのをみることができたのは、
もう少しあとのことで、そのときは気がつかなかったことが、
ステレオサウンドで働くようになり、自分の手で触れ調整し操作し、その音を聴けるようになって、
リニアトラッキング方式への思い込みを、やっと消し去ることができた。

リニアトラッキング方式といっても、各社各様である。
それでもひとついえることは、カンチレバーの動きを注視してほしい、ということだ。

こういうふうに動いてくんだ、と納得できる、そんな動きをカンチレバーがしている。
もちろん、それだけでリニアトラッキング方式のトーンアームの音はこうだ、と決めつけられるわけではない。
それでもカンチレバーの動きをみていると、リニアトラッキングといっても、
カッティングマシンにおけるそれと、再生側のアナログプレーヤーにおけるそれとでは、
決定的に異るものであることがわかるというものだ。

それに実際のカッターヘッドの実物を手にしてみると、
カートリッジとカッターヘッドはまったくの別物であり、
そのまったくの別物を移動させていく手段の理想が同じである、と考えるのが根本的におかしいことにも気づく。

Date: 3月 20th, 2013
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その16)

ステレオサウンド 48号、146ページのに掲載されている、
ふたつのグラフを見ても、ケーブルやアンプやターンテーブルでは音は変らない、と発言している人は、
それでも「音は変らない」とこれからも言い続けるのか、
それともケーブルやアンプで音は変らないけれど、
カートリッジが同じでもターンテーブルが違えば「音は変る」となるのか。

「音は変らない」という人の言い分は、いつも決っている。
サインウェーヴでの測定結果に違いない。だから「音は変らない」。
わずかな違いが測定結果に見られても、今度は、その程度の違いは人の耳では聴き分けられない、という。

実に都合のいい言い分ばかりだから、
ステレオサウンド 48号、146ページのグラフを見ても、
「この違いは人の耳では聴き分けられない」というだろう。

「音は変らない」といい続ける人は、もういいだろう。
その人の耳にとって音が変らないのだから。

先に進もう。

Date: 3月 10th, 2013
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その15)

ステレオサウンド 48号、146ページのグラフは、
フォルテシモからピアニシモに変化していく様を描いている。

フォルテシモからピアニシモへの移る途中で、いくつかの小さな山が発生しているのだが、
この部分がEMT・930stとローコストのダイレクトドライヴ型プレーヤーとでは顕著に違っている。

山の数がまず違う。930stの方が多い。
ローコストのダイレクトドライヴ型プレーヤーが何なのかはわからない。
そのプレーヤーの音を聴いたことがあるのかどうかもわからないから、
音の比較ではなにもいいようがないけれど、
これだけ山の数がローコストのダイレクトドライヴ型プレーヤーで減っている(消失している)のをみると、
音楽のディテールの再現においては、930stの方が優れている、といってよいだろう。

それに山の形も同じとはいえない。
930stでは小さな山となっているのに、
ローコストのダイレクトドライヴ型では山になりきれずに平坦に近かったりする。

どちらのプレーヤーで聴いても、同じ「熱情」であることには違いない。
けれど、これほど異る形を描くグラフを見比べていると、
実際の音は、視覚の差以上に大きいものとしてあらわれるように思えてくる。

長島先生も指摘されているように、
これらのグラフはペンレコーダーによるもので、
ペンの自重の影響その他に若干の問題が残っている。
そのためあくまでも参考データとして掲載されていて、
48号で測定した全機種についての発表は控えられている。

けれど「レコードの音楽波形レベル記録」として5分ちょっとグラフを圧縮した形で掲載されている。
146ページのグラフのように拡大されていないから、
ぱっと見た感じではどれも同じレベル記録のように見えなくもないが、
細かく見ていけば、それぞれのプレーヤーによって違いが出ていることがわかる。

Date: 3月 8th, 2013
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その14)

ターンテーブルのワウ・フラッターが充分に小さければ、
カートリッジが同じであれば、プレーヤーシステムの違いによって音が変ることはない、
こんなことを強弁する人は、決って測定しても違いが現れない、ともいう。

測定の多くの場合につかわれる信号は、ほとんどがサインウェーヴである。
われわれがケーブル(アンプ)によって音が変る、
さらにはターンテーブルによって音が変る、という場合に聴いているのは音楽である。

カートリッジがおなじであれば、ほんとうにターンテーブル(プレーヤーシステム)による音の違いは、
測定結果として現れないのだろうか。
そんなことはないことは、いまから35年も前のステレオサウンドに載っている。

ステレオサウンド 48号、プレーヤーの特集の中、146ページに載っている。

囲み記事として掲載された「プレーヤーシステムによって再生能力はこんなに違う」では、
ふたつのグラフがある。
ベートーヴェンのピアノソナタ「熱情」のレベル記録を、一部拡大したグラフである。

グラフのひとつはEMT・930stによる再生波形、
もうひとつは1973年ごろに発売されたローコストのダイレクトドライヴ型プレーヤーによる再生波形。
カートリッジはどちらもオルトフォンのSPU-G/Eを、針圧3gで使った、と記事にはある。

いくつかの山・谷が描かれている、ふたつのグラフは、
「熱情」の同じ箇所を再生しているのであるから、相似形ではある。
けれど細部までまったく同じというわけではない。

Date: 3月 8th, 2013
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その13)

世の中には、いまだケーブルによって音が変るなんてことは絶対にない、
さらにはアンプで音が変ることもない、
こんなとんでもないことを平気で強弁している人がいる。

ケーブルを交換すれば、音が変るのは事実であるし、
アンプを替えれば音は変る。
ただ、その時の音の違いは、人によって、それに価値観の相違によって、
それほど重要ではない、という言い方ならば納得できる。

それにある人にとって容易に聴き分けられる音の違いが、
別の人にとっては違いがわからない(わかりにくい)ということはある。
その逆もまたある。

自分が聴き分けられないから、
ケーブルを交換しても(アンプを替えても)音は変らないということにはならない。

ケーブルによる音の違いはわからないから、
いまのところケーブルによる音の違いは、私には存在しないといえる、
ケーブルによる音の違いよりももっと重要なことがあり、そちらから音を追求していきたい、
そういう考えから「ケーブルによって音は変らない」といわれているのであれば、
その方のオーディオの取組みを尊重したい。

だがインターネットで、匿名なのをいいことに、
自分の考え(というよりも耳)が正しい、とばかりに、
ケーブルによって(アンプによって)音は変るという人に噛みつくばかりの人は、
ターンテーブル(アナログプレーヤー)によって音が変ることはない、というだろう。

Date: 3月 7th, 2013
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・余談)

マイクロのSX8000IIが登場したとき、
音はともかくとして、ひとつ疑問に感じていたのが、
トーンアームベース、モーターユニットをふくめたベースの塗装の色だった。

あれはなんという色と表現したらいいのだろうか。
糸ドライヴの最初のモデルRX5000 + RY500のベースは黒、
次のモデルSX8000では青に変っていた。
それがSX8000IIでは、基本としての緑と表現できる色なのだろうが、
ひどい色とまではいわないものの、決していい色とは思えなかった。

最初見た時も、それからあとステレオサウンドの試聴室に常備されるようになっても、
実際に使われているユーザーのリスニングルームで見たときも、
一度もいい色と感じたことはなかった。

そうなると疑問がわく。
なぜ、この色(こんな色)にしたのだろうか。
デザイナーの指定した色だとしたら、いったい誰なのだろうか。

ヒントはあった。
具体的なことは書かないけれど、そのことから、
たぶん、SX8000IIの色を決めたのは、この人なんだろうな、と思っていた。

いまステレオサウンド 186号が書店に並んでいる。
特集は「欲しくなる理由、使いたくなる理由」。
この特集記事を読んでいて、やっぱりSX8000IIの色を決めたのは、
この人だったんだ、と確信に変った。
おそらくSX8000IIのデザインもそうであろう。

この確信が間違っていなければ、
あえてぼかして書くけれど、あれもそうなのか、ということになる。