Archive for category アナログディスク再生

Date: 7月 5th, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーの設置・調整(その24)

同じことはオーディオでもよくあることのひとつだ。
たとえばピンケーブル。RCAプラグの接触がうまくいってなくてということ、
カートリッジのシェルリード線のカシメがゆるゆるだということ、
トーンアームのプラグインナットの締めがゆるいこと、
それからアンプ、CDプレーヤーの着脱式のACコードがきちんと挿さってない、などである。

そんなことがそんなにあるわけないと思うだろう。
それが意外に多く見受けられることである。

ケーブルを変えれば音は変るわけだが、
それ以前にコネクターにおける接触がきちんとなされていなければ、
ケーブルを交換しての音の差は、接触がゆるいコネクターときちんとしているコネクターの違いなのかもしれない。

最初はきちんと接触していても、一部のケーブルのように極端に重量があるものだと、
いつのまにか接触不良を起しているかもしれない。

ACコードにしても、そんなことはないだろうと思われるだろうが、これも実際にあったことである。
アンプやCDプレーヤーの電源が時々落ちて困る、という話をきいた。
これも着脱式のACコードがきっちりと挿し込まれていなかったためのトラブルである。

大切な、高価なオーディオ機器をこわしたくない、傷めたくないからとおっかなびっくりでやっていると、
ACコードを挿して最初に手応えがあったところでやめてしまったためである。
メモリーのトラブルとまったく同じことが、オーディオでも起っている。

あと少しの力を加えていれば起きなかったトラブルである。

この問題がやっかいなのは、本人はしっかり接続しているつもりでいることだ。

Date: 7月 5th, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーの設置・調整(その23)

オーディオクラフトの花村圭晟氏、マッキントッシュのゴードン・ガウの指摘にあるようなことに、
こういうこともある。

日本ではオルトフォン・SME規格のプラグインコネクターが一般的になっていて、
カートリッジを手軽に交換できるようになっている。
けれど、この結合部のプラグインナットの締めがしっかりなされていないことが割とある。

カートリッジを取りつけたヘッドシェルをトーンアームに取りつける。
このときトーンアームの軸受けを傷めないようにしっかりとアームパイプを右手で固定していなければならない。

プラグインナットの締めつけには右手の親指と人差し指で、のこりの指と手のひらでパイプを固定しておくわけだ。
これが基本なのだが、中にはプラグインナットだけしか触っていない人もいる。

そういう人に多いのだが、力を十分に加えることを怖れているようなところがある。
だからプラグインナットの締めが十分でなかったりする。

オーディオのことではないが、以前マッキントッシュ(パソコンのMac)が具合が悪くなったから……、
ということがよくあった。
最初の友人のMacだけをみていたけれど、友人の知り合いのMacもみることも増えてきた。
まだMacOSが現在のMacOS XではなくMacOS9のころの話だ。

大半はシステムがおかしくなって、だったけれど、中にはメモリー関係のトラブルもあった。
そのトラブルのほとんどは自分でメモリーを増設した、というもので、
すべてメモリーがスロットの奥まで取りつけられていなかったために起っていた。

どこまで力を入れていいのかがわからず、最初の手応えがあったところでやめてしまって、ということだった。
だからメモリーをきちんと取りつければそれで解決していた。

Date: 6月 28th, 2014
Cate: アナログディスク再生

電子制御という夢(その17)

けれどカートリッジスタビライザー、および同様のアクセサリーの存在を否定するつもりはまったくない。
使うことはなかったけれど、試してみたい、とは思っていた。
使用ではなく試用という意味で使いたいのはあった。

見た目は確実に悪くなる。
けれどカートリッジスタビライザーとして確かなものであれば、
それを装着することで改善されるところがあるわけで、
改善されるということはそのところが、いままではあまり良くなかった、ということを確認できる。

そこに気づけば、なぜそうなのか、と原因を追及することになる。
そのためには原理を理解することになる。

常用するものばかりが優れたアクセサリーとは思っていない。
何かを気づかさせてくれるアクセサリーもまた、常用しなくとも優れたアクセサリーである。

アクセサリーはいくつかに分けられる。

ひとつは必要なアクセサリーである。
ケーブルは、これにあたる。ケーブルがなければ音は出せない。

それからクリーナーという、オーディオ機器、ディスクの調子を整えるためのものがある。
接点クリーナーもそうだし、ヘッドイレーサーもここにはいる。
これらがなくても音は出る。けれど接点が汚れてきたら、
レコードの盤面にほこりがたまり、油汚れがついていたら、カートリッジの針先が……、
こういったことを取り除いて、オーディオ機器の調子を維持する。

そして必要としないけれど、音に働きかけるアクセサリーがある。
カートリッジスタビライザーもそうだし、ディスクスタビライザーもそうだ。
グラフィックイコライザーも、ここにいれられる。

Date: 6月 27th, 2014
Cate: アナログディスク再生

電子制御という夢(その16)

カートリッジスタビライザーは後付けタイプとはいえ、まったく制約がないわけではない。
ディスクウォッシャーのDiscTrakerは、
写真をみればわかるようにカートリッジの取りつけビスが貫通するつくりのヘッドシェルでなければならない。

スタックスはそうでないヘッドシェルにも取りつけ可能だが、

それでもフィデリティ・リサーチのFR-S、オルトフォンのG型ヘッドシェルなどには取りつけられない。
それにどちらもヘッドシェル一体型のカートリッジには無理。

ヘッドシェルを取りつけ可能にモノに変更すればいいわけだが、
それでもこの手のカートリッジスタビライザーに興味はあったものの、
どうしても見た目が美しくなくなる。

SMEの、それもロングタイプの3012にオルトフォンのSPU-Gを取りつける。
個人的には3012-R Specialがいい。

この組合せがレコードのという黒盤の上をゆっくりと中心に向い流れていく姿は、それだけで惚れ惚れとする。
これほと様になるカートリッジとトーンアームの組合せは他にない。

これで悪い音が出てくるはずがない、と私は信じ込める。
少なくともクラシックを聴くかぎりにおいては、そう言い切れる。

この組合せの姿の美しさに惚れ込める人なら、
どれだけ効果的であってもカートリッジスタビライザーを装着したいとは思わない。

Date: 6月 26th, 2014
Cate: アナログディスク再生

電子制御という夢(その15)

いまではこの手のアクセサリーはなくなってしまったようだが、
1970年代後半から80年代にかけて、カートリッジスタビライザーと呼ばれるアクセサリーがいくつかあった。

アメリカ製ではディスクウォッシャーのDiscTrakerがあった。
ヘッドシェルに取りつけ、トーンアーム、カートリッジの低域共振を低減するものである。

スタックスからはCS2という製品が出ていた。
これもヘッドシェルにとりつけるタイプで、ブラシがついていてエアーダンプ機構で低域共振を低減する。
ブラシは導電性で静電気の除去も兼ねている。

エアーダンプは写真をみるとDiscTrakerも同じと思われる。
スタックスはCS1という同社のコンデンサー型カートリッジCP-Y専用モデルも用意していた。

針交換が可能なMC型カートリッジで知られていたサテンからはIC16が出ていた。
これもヘッドシェルに取りつけるタイプで、トーンアームのイナーシャをコントロールする、とある。

ファイナルからはKKC48という、これはヘッドシェルではなくトーンアームの先端部に取りつけるモデルが出ていた。
カートリッジのカンチレバーの不要な横方向の振動を低減するもの。

メーカー名も型番も忘れてしまったが、オイルダンプ型のヘッドシェルもあった。

どれも使ってみたことはないのでどの程度の効果が得られるのかは不明だが、
効果が得られないということはなかったのではないか。

Date: 6月 26th, 2014
Cate: アナログディスク再生

電子制御という夢(その14)

トーンアームにオイルダンプを採用したモノが昔からある。
SMEの3009、3012もフルイドダンパーFD200を後から取りつけることでオイルダンプ機構を搭載できる。
日本のトーンアームではオーディオクラフトの一連のモデルがワンポイント支持のオイルダンプである。

他にもグレイの206といった重量級のトーンアームもあるし、
常にどの時代にもオイルダンプのトーンアームはあった。

これらのトーンアームは軸受け、もしくは軸受け周辺でのオイルダンプである。
だが制動ということで考えればトーンアームの軸受けもしくは周辺でよりも、
カートリッジの針先に近いところで制動をかけたほうが、より効果的であるし、
その両方で制動をかけるという手もある。

ステレオサウンド 68号に、ロックというイギリスのアナログプレーヤーが紹介されている。
特集記事でも新製品紹介のページでもなく、
巻末にあるBestBetsというイベントや新開発の技術などを紹介するページに載っている。

ロックに搭載されているトーンアームはオイルダンプ。
軸受けでのオイルダンプの他に、ヘッドシェルの先端部もオイルダンプしている。

SMEのFD200をもっと長くしたオイルバスがキャビネット前面にあり、
ディスクをターンテーブルプラッターの上にのせてから、このオイルバスを動かし、
ヘッドシェルの先端をこのオイルバスにつけるというものだ。

オイルも軸受けとフッドシェル先端では粘性の違うものを採用している、とある。

このプレーヤーは、イギリスのベドフォードシャーにあるクランフィールド工科大学が開発し、
エリートタウンズヘッド社が製品化。

このプレーヤーの情報は輸入商社からではなく、別のところから届いたものだった。
イギリスの最新アナログプレーヤー事情ということで誌面に載せたけれど、
掲載時には輸入元は決っていなかった。
その後、このロックについての情報を聞くことはなかった。

Date: 6月 25th, 2014
Cate: アナログディスク再生

電子制御という夢(その13)

シュアーのV15 TypeIVの広告の図をみていると、
カートリッジが上下動することでカートリッジの移動距離という間隔も、
ダイナミック・スタビライザー有無によって変化する、とある。

この図をみているとレコードの反りの影響で、正確なトレーシングが阻害されている、となる。
この図をみなくともレコードの反りが悪影響を与えているのはあきらかである。

シュアーの広告によると、レコードの反りは、0.5〜8Hzとなっている。
この周波数はカートリッジとトーンアームの共振周波数と重なる。

シュアーが以前出していたテストレコードには、この共振をテストするために、
4、5、6、8、12Hzという低い信号を音楽信号に重ねてカッティングしてあるトラックがあった。

シュアーの広告には、共振周波数は5〜15Hzとなっている。
つまり反りの周波数とカートリッジとトーンアームの共振周波数が一致すれば、どうなるか。
一致しないまでも近い周波数であればどうなるか。

レコードに反りがあれば、なんらかの対策は必要といえる。
シュアーの解決策がダイナミック・スタビライザーである。

シュアーの広告だけをみていると、いいことだけを書いてある。
広告だからそういうものといえるわけだが、ダイナミック・スタビライザーといえど完璧な対策とはいえない。

おそらくシュアーのことだから、当時発売されていたトーンアームを研究して、
できるだけ広範囲なトーンアームとの組合せを考慮しての、
ダイナミック・スタビライザーの制動を決定しているはずである。

とはいえトーンアームが変り、ヘッドシェルも変れば実効質量もかわり、
ピックアップ全体の慣性質量も変化するわけで、おそらく極端に重いトーンアームとヘッドシェルでは、
V15 TypeIVのダイナミック・スタビライザーの制動範囲をこえてしまう可能性がある。

そうなるとダイナミック・スタビライザーの効果は薄れ、場合によっては役に立たなくなる。

Date: 6月 25th, 2014
Cate: アナログディスク再生

電子制御という夢(その12)

シュアーのV15 TypeIV以前にもカートリッジの先端にブラシを装備したモデルはいくつかあった。
シュアーと同じアメリカのメーカーで、ピカリング、スタントンのカートリッジにはブラシがついていた。

これらのブラシは非常に簡単なつくりで、指で触るとフラフラしている。
これらのブラシは静電気とレコード盤上のホコリの除去のためであり、
これらのブラシといっしょにされたくないというシュアーの広告は理解できる。

V15 TypeIVのブラシ(ダイナミック・スタビライザー)には粘弾性ダンピング剤が使われていて、
実際に指で触ってみれば、制動がかかっていることがすぐにわかる。

V15 TypeIVの広告をみた人ならは記憶されているだろうが、
反ったレコードをトレースするカートリッジの図が載っていた。
ひとつはシュアーのV15 TypeIV、もうひとつはダイナミック・スタビライザーをもたないカートリッジである。

図には点線でカートリッジの上下動の軌跡を示してある。
通常のカートリッジでは反りにさしかかったところでカートリッジ盤面との間隔が縮まり、そして広がり、
この広がりは反りの反対側の傾斜の途中で最大になる。
そして反りを通りすぎて平らなところにカートリッジがあっても、
反りによって生じた上下動はすぐには収束せずに、ここでも上下動により間隔の変動が生じている。

V15 TypeIVはというと、反りのところでも間隔は常に一定である。
反りのところでは反りに追従しているし、不要な上下動をダイナミック・スタビライザーで制動しているためか、
平らなところにうつってもそのまま間隔は一定である。

この間隔とは、レコード盤面とカートリッジとの距離であるわけだが、
図をみれば、この間隔の変動にともない、別の間隔も変動していることがわかる。

Date: 6月 24th, 2014
Cate: アナログディスク再生

電子制御という夢(その11)

各メーカーのレコードの反り対策で、
多くの人が知るのといえば、シュアーのV15 TypeIVから搭載されたブラシがある。

1978年ごろのシュアーの広告には、ヤマハのレシーバーCR1000の写真が使われていた。
キャッチコピーはこうだった。
《これをブラシと呼ぶのは、これをラジオと呼ぶようなものだ。》

最初の「これ」とはV15 TypeIVの先端についているブラシのことであり、
二番目の「これ」はCR1000のことを指す。

CR1000は当時180000円していた。
プリメインアンプのCA1000をベースに、CT800を上回る性能のチューナーとを組み合わせたもの。
たしかに、CR1000をラジオと呼ぶ人はいない、と思う。

V15 TypeIVの先端についているブラシは、
何も知らない人は、レコード盤上のホコリ除去、もしくは静電気除去のためのものと思うだろう。
シュアーは、このブラシのことをダイナミック・スタビライザーと呼んでいた。

このブラシは導電性のある素材が使われているから、静電気の除去もできるが、
シュアーが広告で大きく謳っていたのは、レコードに反りに対してのことであり、
広告には《カートリッジの上下運動の安定化を計り、レコードの反りに起因する難問題を克服》とあった。

Date: 6月 24th, 2014
Cate: アナログディスク再生

電子制御という夢(その10)

ビクターの吸着力が、ラックス、マイクロよりも低く設定されているのは、
ビクターの考え方として、あくまでもレコード盤の制動のためであり、
これ以上吸着力を高めても制動という点ではあまり変りがないため、らしい。

つまりはビクターは吸着によってレコードの反りを矯正しようという考えはなかった、とみるべきかもしれない。
その点、ラックス、マイクロ、それからオーディオテクニカは反りの矯正ということも考えている、とみえる。

ステレオサウンドの試聴室でマイクロのSX8000IIを数年間使ってきて、
吸着機構に不満を感じたことはなかった。
ボタン操作ひとつで吸着とその解除が確実に行える。

ステレオサウンドの試聴で、特に指定がないかぎり、つねに吸着しての使用だった。

SX8000IIがあれば、レコードの反りに神経質になることはない。
だがSX8000IIはそうそう誰にでも買える価格ではなかった。

SX8000IIはターンテーブルユニットの型番で、モーターユニットはRX5500II。
このふたつにアームベースAX10Gと空気バネ式のベースBA600を組み合わせると1518000円、
2000年には1970000円になっていた。

これだけのシステムが買える人でも、吸着に抵抗感をもっている人もいたはず。

吸着に頼らずにレコードの反りに対応するための工夫は、1970年の終りからいくつか登場しはじめていた。

Date: 6月 23rd, 2014
Cate: アナログディスク再生

電子制御という夢(その9)

マイクロからSX8000IIが発表された。
前作SX8000がエアーフロートによるベアリングを採用、
II型になりレコードの吸着機構も搭載されるようになった。
外観もずいぶん変った。

SX8000はステレオサウンド試聴室のリファレンスプレーヤーとなることはなかったが、
SX8000IIはすぐさまリファレンスプレーヤーとして常備されることになった。

SX8000IIが、私にとって初めて実際に触るレコード吸着のプレーヤーシステムだった。

SX8000IIは外部に専用ポンプもつ。
けっこうな大きさで、このポンプ一台でターンテーブルプラッターを浮かし、レコードの吸着も行う。
もちろん電動ポンプである。

電動ポンプという点ではビクターのTT801+TS1と共通するが、
ビクターが常時レコードを吸着しつづけているのに対し、
マイクロは吸着が完了したら、そのためにポンプは動作しない。
ターンテーブルプラッター浮上のためのみに働く。

ビクターでは吸着力はレコード盤は重量換算で4kgぐらい(レコード盤全体で4kgくらいの荷重)、という。
それほど強い吸着力ではないため、吸着を解除しなくともレコードを難なく取り外せるらしい。
ラックスは50kgぐらい、で、吸着を解除しないとレコードは取り外せない。

マイクロはどのくらいの吸着力なのかはわからないが、かなりのものである。
一度吸着してしまえば、レコードを取り外すためには吸着を解除しなければならない。
これだけの吸着力のおかげで、多少の反りがあってもぴたりとターンテーブルプラッターと一体化する。

Date: 6月 22nd, 2014
Cate: アナログディスク再生

電子制御という夢(その8)

レコードの吸着システムは、個人的には使ったことがなかった。
ラックスのPD300が登場した時も、吸着そのものには興味を持ったけれど、
PD300というプレーヤーそのものに興味を持てなかった。

なにもPD300はダメなプレーヤーだということではなくて、
PD300がラックスでなく他のメーカーの製品であったなら、興味の持ち方も変っていたかもしれない。

ラックスだったから、興味をもつことはなかった、のは、
どうしてもラックスのプレーヤーといえばPD121の印象が私にとっては強すぎるからだけで、
PD121のラックスが、こんな格好のプレーヤーをつくるのか、
という、こちら側の勝手な思い込みのようなものが裏切られた感じがしただけのことである。

プレーヤーキャビネットの前面右側に吸着機構のレバーがついているのも、気にくわなかった。

PD300はステレオサウンド 58号の第二特集The Matchの中で取り上げられている。
PD300の比較対象として選ばれていたのは、やはり吸着機構をもつビクターのTT801+TS1。

PD300が手動ポンプ、TT801+TS1は電動ポンプ、
それからベルトドライブとダイレクトドライブという違いがある。

それ以外にも吸着そのものに対する考え方、その機構・動作にも違いがあるが、
ここでは関係ないので省略する。

オーディオテクニカのAT666はPD300よりも関心をもっていた。
ターンテーブルシートだから、手持ちのプレーヤーに使えることも、
ターンテーブルシートの価格としては高価に感じても、吸着機構付きだからと思えば、そうでもなかったからである。

でもこれも結局は試すこともなかった。
前述したようにチューブの装着・脱着が、
アナログディスクを聴く時には、ターンテーブルを停止させることがない私には、
ことさら面倒に感じからである。

ステレオサウンドの記事を読んでも、まだまだ吸着技術そのものが未熟なようにも思えていた。

Date: 6月 22nd, 2014
Cate: アナログディスク再生

電子制御という夢(その7)

カートリッジの針先がトレースするのは、
塩化ビニールを主材料とした円盤に刻まれた溝である。
ラッカー盤とは異り、平面性においては理想的にはほど遠い。

保管の仕方が悪ければ反ってくるし、
新品のレコードであっても反っているモノもあったし、
見た感じでは反っていないようであっても、
カートリッジの針先から見れば反りが完全にないディスクはないのではなかろうか。

反りがあれば、その部分ではトレースが阻害される。
まったく反りがない、どんな保管の仕方をしても反りが生じないレコードばかりであれば、
トーンアームは、いまの形態とはまたく異っていたかもしれない。

トーンアームはレコードには反りが多少なりともあるものとしての設計である。

反ったレコードはターンテーブルプラッターに吸着してしまえばいい、という考え方は以前からある。
現実の製品もいくつか存在していた。
ラックスは1980年にPD300というアームレスターンテーブルを発表した。
手動ポンプによるレコード吸着だった。

1982年ごろにはオーディオテクニカから、手動ポンプによる吸着機構をもつターンテーブルシートAT666が出た。
上級機のAT666EXは乾電池を使った電動ポンプ。
AT666はどんなプレーヤーでも吸着機構が使える反面、
吸着時にはポンプとシートをチュープでつないでレコードの吸着後チュープをはずして、という、
やや使い勝手の悪さがあるのは止むを得ないといえよう。

Date: 6月 21st, 2014
Cate: アナログディスク再生

電子制御という夢(その6)

アナログプレーヤーはメカニズム主体のオーディオ機器であり、
メカニズム主体であることがアナログプレーヤーの魅力ともなっている。

手抜きの感じられない精緻でしっかりしたメカニズムは、それだけで頼りになる印象を使い手に与える。
このプレーヤーなら信じられる──、
そういうおもいを抱かせてくれるプレーヤーを欲してきたし、使ってもきた。

そんな私だから、トーンアームに関しても電子制御という方式に対しては、
これまではそっけない態度をとってきた。
触ったこと・聴いたことがない、ということも関係しているが、それだけではない。
やはりメカニズムだけで、そこに電子制御ということを介入させないでほしい──、
そういう気持が強かった。

だがアナログプレーヤーを構成するターンテーブルとトーンアームを、
まったく同じに考え捉えるわけにはいかない。

ターンテーブルは静止しているが如く静かにブレずに回転してくれればいい。
いかなる変動に対しても影響を受けることなく、毎分33 1/3回転、45回転を維持してくれればいい。
ターンテーブルは、いわば回転する土台である。

それに対してトーンアームはどうか。
トーンアームはカートリッジの支持体であり、
カートリッジレコードの外周から内周への移動を支える。

Date: 6月 20th, 2014
Cate: アナログディスク再生

電子制御という夢(その5)

ソニーのPS-B80のステレオサウンドでの評価はどうだったかというと、あまり芳しいとはいえなかった。
51号のベストバイには選ばれているものの、柳沢功力氏のコメントを読んでもそうだし、
55号のベストバイには選ばれていなかった。
59号では岡先生と菅野先生が一点ずつ入れられていたものの、写真だけの掲載だった。

PS-B80より一年ほど前に登場していたPS-X9の方が、59号においても評価は高かった。

そういうわけでステレオサウンドだけを読んでいても、PS-B80の音については知ることが出来なかった。

PS-B80のプレーヤーシステムとしての評価はあまりいいものではないことはわかるのだが、
それを電子制御トーンアームのもつ可能性に重ねてみてはいけない。

電子制御トーンアームの可能性はどうだったのか。
読者としてもいちばん知りたかったのは、このことである。

1980年の11月ごろに、ステレオサウンド別冊としてAUDIO FAIR EXPRESSが出た。
当時晴海で行われていたオーディオフェアを取材した一冊である。

このムックの中に、「海外からのゲスト12氏 オーディオフェアについてこう語る」という記事がある。
ここに登場しているのは、オルトフォンの技術担当副社長イブ・ピーターセン、
SME社長A・ロバートソン・アイクマン、ロジャース社長ブライアン・P・プーク、
QUAD社長ロス・ウォーカー、コス取締役副社長グレゴリー・コーネルス、
スレッショルド社長ネルソン・パス、タンノイ社長ノーマン・クロッカー、
タンノイ広報担当取締役T・B・リビングストン、アルテック プロ機器担当副社長ロバート・T・デイビス、
JBL開発担当副社長ジョン・M・アーグル、KEF社長レイモンド・E・クック、
リン セールスマネージャ チャールス・J・ブレナン。

SMEのアイクマンはこう語っている。
     *
会場ではどうしてもアームやプレーヤーが気になるんですが、中でもリニアモーターを使ったパイオニアのアームですね。技術的な説明もひじょうによくされていたし、製品としてもたいへんに興味を感じました。技術的なチャレンジとしても意味のあるものですね。それから、ソニーの電子制御アーム、これも私にとって興味をいだかずにはいられないもののひとつでした。
     *
アイクマンが、電子制御トーンアームの、どういうところに興味をもったのかは、
この記事からはこれ以上のことはわからないが、
トーンアーム専門メーカーをひきいてきたアイクマンが興味をもつということは、
実際の製品の出来はともかくとして、可能性としては注目してもいい、
(私は実物も見ていないけれど)注目すべきものだった、ともいえよう。