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Date: 11月 28th, 2020
Cate: アクセサリー

D/Dコンバーターという存在(その13)

Matrix AudioのX-SPDIF2は、Mac miniに接続して、
ここ数日TIDALを中心に使っていた。

昨日、iPhoneでも試してみたところ、音が鳴らない。
X-SPDIF2はバスパワーで動作するのだが、iPhoneにとっては消費電力が大きすぎるので、
ACアダプターを付けている。

けれど音が鳴らない。
ロックはしているのだが、肝心の音がまったく聴こえてこない。

最初に買ったDouk AudioのU2とまったく同じである。
U2は、iOSに対応しているとは、どこにも書いてなかったので仕方ないのだが、
X-SPDIF2は、Matrix Audioのサイトに
“The iOS devices can be used via Lightning to USB Camera Kit.”
とある。
これを信じて購入したわけなのだが、いまのところ音を出せないでいる。

これまで使ってきたFX-AUDIOのFX-D03J+にしてみる。
問題なく動作する。

Mac miniに接続した音は満足している。
買って良かった、と思っているけれど、
肝心のiOSでの音が出ないことには、12月のaudio wednesdayには持っていけない。

いまのところ、解消方法が分からないでいる。

Date: 11月 28th, 2020
Cate: オーディオ評論

二つの記事にみるオーディオ評論家の変遷(その3)

1990年に、BBCモニターのLS5/1を、
オーディオ雑誌の売買欄で見つけて購入した。

いまならばヤフオク!があり、カラー写真で状態をチェックできるが、
あの時代は、オーディオ雑誌の巻末にある文章のみが情報だった。

だいたい程度良好とか新品同様とあった。
私が買ったLS5/1も程度良好と書いてあった。

それを信じるしかない。
近場の人なら訪ねていって確認することもできるが、確か関西の人だった。

届いたLS5/1はかなりくたびれたモノだった。
これを程度良好というのか、と文句の一つでもいいたくなるほどだった。

しかも売買欄にはKEFのLS5/1Aとあったが、実際はLS5/1だった。
それでも音を聴いてみると、定位のよさはまず驚いた。

LS5/1Aの定位のよさについては、
ステレオサウンド 38号で井上先生が書かれていた。
     *
このシステムは比較的近い距離で聴くと、驚くほどのステレオフォニックな空間とシャープな定位感が得られる特徴があり、このシステムを選択したこと自体が、瀬川氏のオーディオのありかたを示すものと考えられる。
     *
LS5/1を聴いたのも、かなりの近い距離だった。
《驚くほどのステレオフォニックな空間とシャープな定位感》は、まさにそのとおりだった。

LS5/1を小改良したのがKEFのLS5/1Aであり、
LS5/1AがKEFの最初のモデルでもある。

つまりKEFのスピーカーシステムは、最初のモデルからシャープな定位感を特徴としていた。
LS5/1とModel 105を、同時比較試聴したことはない。
それでも印象のうえでの比較ならば、定位の精度感はModel 105が上といえる。

中高域のユニットを、ウーファーとは独立したエンクロージュアにおさめ、
しかもユニットの位置合せとともに、仰角と水平を調整できるようにしたスタイルは、
Model 107で完結している。
Model 107、それから105もSeries IIからは仰角調整はできなくなっている。

そのKEFがModel 107のあとに同軸型ユニットUni-Qを発表しているのだ。

Date: 11月 28th, 2020
Cate: ディスク/ブック

Moon River

1993年ごろだったか、オードリー・ヘプバーンが歌う“Moon River”のCDを買った。
しばらくして知人に貸したまま、返ってこなくなった。

愛聴盤だったわけではないので、それほど惜しいとは思わなかったけれど、
それでも十年に一度くらい、聴きたくなることがある。

だからといってCDを探す、というわけではないので、それほど強く聴きたいわけでもないのだろう。
TIDALで、検索してみた。
すんなり見つかった。

あるだろうな、とは思っていたけれど、それでもあったことに少しばかり驚いたし、
しかもMQAで、ヘプバーンの“Moon River”が聴ける。

また落穂拾いをしている、という自覚はある。
それでもMQAでの落穂拾いは、新鮮でもある。

Date: 11月 27th, 2020
Cate: オーディオ評論

二つの記事にみるオーディオ評論家の変遷(その2)

同軸型ユニットは定位がいい、とは、ずっと昔からいわれ続けていることだ。
私がオーディオに興味をもった1976年秋も、そうだった。

タンノイ、アルテックの同軸型ユニットは、ほとんどの人が定位がいい、といっていた。
とはいっても、そのころ、アルテックにしてもタンノイにしても、
聴く機会は、田舎に住んでいたころはなかった。

ビクターからもS3000というスピーカーシステムが登場した。
新規開発の同軸型ユニットである。
これも聴く機会はなかった。

定位の描写に優れている、という評価を得ているスピーカーで、
実際にその音を聴いて、定位のよさに驚いたのは、
私の場合、KEFのModel 105が最初である。

この時の音のことは、これまでに何度か書いてきている。
熊本のオーディオ店に瀬川先生が来られた時に、
女性ヴォーカルを、少しでもよく聴きたい(鳴らしたい)といったところ、
Model 105をセッティングされ、バルバラのレコードをかけながら、
スピーカーの振りの角度、中高域ユニットの角度などを手際よく調整されたあと、
椅子から立ち上られて、ここに座って聴いてごらん、といわれて聴いた音、
これこそが、まさに定位がいい、とはこういう音をいうのか、と実感した最初だった。

この時の衝撃は、意外にも大きかった。
東京に住むようになって、ステレオサウンドで働くようになってから、
同軸型スピーカーを聴く機会は、特別なことではなくなっていた。

確かに、同軸型スピーカーは定位がいい、と私も感じていた。
それでもKEFのModel 105の、あの時の定位の見事さ、
もっといえば精密さに較べると、同軸型ユニットがそれを超えているとは感じられなかった。

そのKEFから同軸型ユニット、Uni-Qが登場したのは、たしか1988年の終り近くになってのことだった。

Date: 11月 27th, 2020
Cate: High Resolution

MQAで聴きたいアルゲリッチのショパン(その5)

アルゲリッチの“THE LEGENDARY 1965 RECORDING”を、MQAで聴きたい、と、
(その1)で書いた。

MQA-CDは出ていない。e-onkyoでも配信されていない。
半ば諦めていたら、TIDALにある。

44.1kHzではあるが、MQAである。
やっぱりMQAはいいな、と思う。

音の粒立ちがいい。
CDと比較試聴するまでもなく、TIDALのMQAのほうがみずみずしい。

(その2)で、音がよくて、1965年の録音とは思えなかった、と書いてしまったが、
MQAだと、その感はさらに強くなる。

このアルゲリッチのショパンを聴いていると、
audio wednesdayで、コーネッタで少し大きめの音量で鳴らしてみたい、と思うようになってきている。
私の部屋では、ちょっと無理な音量で、喫茶茶会記で鳴らしたいし、
その音、その演奏を、ぜひ聴いてほしい、と思うのだが、
その機会が訪れるのかどうかは、いまのところなんともいえない。

Date: 11月 27th, 2020
Cate: ディスク/ブック

Elgar: Cello Concerto, Op. 85 & Sea Pictures, Op. 37(その2)

11月27日になった。
ワーナーミュージックの告知通りに、
ジャクリーヌ・デュ=プレのエルガーのチェロ協奏曲の、2020年リマスターがでた。

e-onkyoで配信が始まった。
MQAも、もちろんある。
ワーナーミュージックのサイトには、96kHz、24ビットとあったが、
(その1)で書いているように、192kHz、24ビットである。

デュ=プレのエルガーの協奏曲は、これまで何枚も買ってきた。
MQA-CDも買ったし、XRCDも、ずっと以前に買っている。
それ以外にも数枚買った。

TIDALでも、MQAで聴ける。
自分でも、もう十分だろう、と思っている。
それでも食指が動いてしまう。

それでも、今回が最後になるであろう。

Date: 11月 26th, 2020
Cate: 電源

モバイルバッテリーという電源(その8)

アンカーからAnker PowerHouse 100が発売になった。

モバイルバッテリーなのだが、Anker PowerHouse 100は、
DC出力以外にAC100V(正弦波)の出力もそなえている。

バッテリーからAC100Vを作り出して供給する製品はすでにいくつもあり、
昨年はホンダがLiB-AID E500 for Musicという製品も出してきている。

Anker PowerHouse 100は、ずっとコンパクトである。
メリディアンの218に使うには十分な容量である。
しかも手頃な価格におさまっている。

できれば200V出力を、といいたいところだが、
とにかく試してみたい、と思っている。

Date: 11月 26th, 2020
Cate: トランス, フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(パワーアンプは真空管で・その14)

レベルコントロールに使われるポテンショメーターが、
どういう構造になっているか分っている方は読み飛ばしてもらっていい。

10kΩのポテンショメーターがあるとする。
減衰量が0のとき、10kΩのポテンショメーターは、
そのままアンプの入力に並列に接続されたかっこうになる。

絞りきった状態、減衰量が∞のときは、10kΩのポテンショメーターが、
アンプの入力に対し直列に接続された格好になり、
アンプの入力はショートされた状態でもある。

ポテンショメーターの減衰量は、R1とR2の抵抗の比で決る。
つまり10kΩのポテンショメーターの場合、R1+R2=10kΩであり、
減衰量によってR1、R2の値が変っていく。

R1がアンプの入力に対して直列に、R2が並列に入る。
減衰量0のときは、R1が0kΩで、R2が10kΩとなり、
減衰量∞のときは、R1が10kΩで、R2が0kΩとなる。

つまり減衰量が増えるほどR1の値が大きくなり、R2の値は小さくなっていく。
R2はアンプの入力に並列に入るわけだから、
この値が小さくなっていくことと、ショート状態に近くなっていくことでもある。

その分R1の値が大きくなっていくわけだから、どちらが音質への影響(デメリット)が大きいのか。
いままではR1の値が大きくなる方だ、と考えていたが、
間違っていたわけではないものの、R2が小さくなることのメリットも、
実はけっこう大きいのではないか、とグリッドチョーク的ケーブルをあれこれやっていて、
そう考えるようになってきた。

繰り返すが、絞った状態で使うのであれば、
良質のポテンショメーターの使用が条件となる。

Date: 11月 26th, 2020
Cate: 老い

老いとオーディオ(齢を実感するとき・その23)

人間、何時死ぬかなんて誰にもわからない。
明日、ぽっくり逝ってしまうかもしれない。

二年ほど前までは、私がくたばったあとに、
誰かがaudio sharingを引き継いでくれたら──、とけっこう真剣に考えていた。

私が明日ぽっくり逝ったとしても、しばらくはaudio sharingは残る。
レンタルサーバーとの契約が終了するまではアクセスできる。
それが過ぎれば消えてしまう。

なんとかしたい、と考えていたけれど、もういいかな、と思うようになってもきている。
残したいという気持はあるが、
同じくらいに私が逝った後は自然消滅でもいいな、とおもうようにもなってきている。

Date: 11月 26th, 2020
Cate: audio wednesday

第118回audio wednesdayのお知らせ(Beethoven 250)

12月2日のaudio wednesdayのテーマは、Beethoven 250で、
かける曲はすでに決めていた。

けれどTIDALを使うようになって、かけたい曲が増えてきた。
これもMQAで出ているのか、というのが、ベートーヴェンに関してだけでもけっこうな数ある。

それが、私にとってどうでもいい演奏のベートーヴェンならばなんてことないのだが、
けっこう好んで聴いているベートーヴェンの演奏だったりするのだから、
これもかけたいな、と思うようになってきた。

それらをすべてかけていたら、時間がどれだけあっても足りないから、
すでに決めている曲だけをかけるつもりでいる。

すでに告知しているように、喫茶茶会記の移転に伴い、
いまの場所でのaudio wednesdayは、今回で終りとなる。

新しい場所での喫茶茶会記でもaudio wednesdayが行えるのかどうかは、
いまのところなんともいえない。
再開できるのであれば、再開の最初の回は、TIDALを使ってやりたい、と考えている。

場所はいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

19時開始です。
現時点では、開催予定です。
最終的な判断は、11月29日に告知します。

Date: 11月 25th, 2020
Cate: 瀬川冬樹

ベルナール・ブュフェ回顧展 私が生きた時代

Bunkamuraミュージアムで、「ベルナール・ブュフェ回顧展 私が生きた時代」が開催されている。
2021年1月24日まで、である。

私がベルナール・ブュフェの作品を強く意識したのは、
瀬川先生のリスニングルームの壁にかかっていた写真をみた時からだった。

世田谷・砧に建てられたリスニングルームの漆喰の壁にかかっていた。
瀬川先生にとって、あのリスニングルームが、どういう存在だったのかを考えれば、
そこに、誰でもいいから、なにか絵(版画)をかけておこう、ということにはならないはず。

ベルナール・ブュフェのリトグラフを気に入ってことだったのだろう、
といまもおもっているが、はっきりしたことはわからない。

誰かからの贈り物だったのかもしれないし、
瀬川先生が購入されたものなのかも、よくは知らない。

でも気に入らない作品を、音楽を聴く空間に、
視界に入るところにかけられはしないはずだ。

ベルナール・ブュフェの作品と瀬川先生の音との共通するところ。
そういうものがあるのかはなんともいえないのだが、
それでも線による描写というところに、共通するところを感じてもいる。

ステレオサウンド別冊「HIGH-TECHNIC SERIES-3」の巻頭鼎談で、
井上先生、黒田先生とともに、JBLの4343のトゥイーターを交換しての試聴について語られている。

JBLの2405、ピラミッドのT1。
この二つのトゥイーターの評価で、瀬川先生の音の好みがはっきりと語られている。
そこのところを読むと、ベルナール・ブュフェとのつながりを、なんとなく感じられる。

Date: 11月 25th, 2020
Cate: 1年の終りに……

2020年をふりかえって(その4)

今年はコロナ禍によって、オーディオショウのほとんどが中止になった。
中止が発表になった日に、twitterで検索してみると、
中止で悲しい、とか、来年に期待したい、とか、そういったツイートが表示された。

どのくらいの人が、オーディオショウの中止について、
なにか呟いているのかが気になって、数日、検索していた。

中止で悲しい、とか、来年に期待したい、と呟いていた人が、
続けて、なにかを呟いているのかと思えば、案外そうではなかった。
私が見た範囲では、ほとんどの人が、最初の呟きだけで、
その後は、まったく違うことを呟いていた。

そうだそうだ、twitterは、そういう呟きを書き留めておく場であるんだ、ということを、
再確認した一年だったような気がしている。

twitterがなかったころは、呟きは、呟いた本人でさえ、
どこかに書き留めてたりはしていなかったはずだ。
それが、いまではまったく違ってきている。

けっこうな数の人が、自身の呟きを書き留めるだけでなく、
不特定多数の人に向けて公開している。

日本では2011年3月11日から、twitterの存在感が急に増した。
そのころのツイートと、いまのツイートは、傾向が変ってきているようにも感じるのは、
この約十年間におけるスマートフォンの普及が関係しているのだろう。

パソコンからのツイートとスマートフォンからのツイート。
違ってこよう。

私も、あのころはMacからツイートしていた。
いまではほとんどツイートしなくなったが、たまのツイートはiPhoneからである。

スマートフォンは、パソコン以上にパーソナルコンピューターであるわけだ。
そんなiPhoneで、今年は多くの音楽を個人的に聴いてきたし、
audio wednesdayでは鳴らしてきた。

Date: 11月 24th, 2020
Cate: アクセサリー

D/Dコンバーターという存在(その12)

Matrix AudioのX-SPDIF2が、さきほど届いた。
16日の夜おそくにインターネットで注文して、今日到着。
一週間ほどで来た。

本体は小さいけれど、箱はけっこう大きかった。
その分クッション材も余裕がある。

本体は小さいけれど、シャーシーはアルミ材の削り出しということなので、
見た目以上に重く感じる。

フロントには、Hi-Res AUDIOのロゴがついている。
写真ではなかったものがついている。
これはないほうがいい。

実際手にしてみると、これだけのモノが三万円ちょっとで購入できるのか、と、
モノづくりに携わっている人ならば、脅威に感じるのではないだろうか。

まだ接続してない、音は聴いていない。
とにかく12月のaudio wednesdayに間に合った。

Date: 11月 24th, 2020
Cate: ディスク/ブック

Uomo mio Bambino mio / Ornella Vanoni

ステレオサウンド別冊「HIGH-TECHNIC SERIES-3」は、トゥイーターの一冊だった。
「世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方」という副題がついていた。

巻末に,黒田先生による
「トゥイーターはこのレコードでチェックしよう テストに好適なレコード10選」がある。

その一枚に、オルネラ・ヴァノーニの「女の第三章〝愛〟」があった。
     *
 はじめにおことわりしておくが、このレコードは、いわゆるオーディオ的な意味で、特にすぐれた録音のレコードとはいいがたい。それに、はるか以前から、このオルネラ・ヴァノーニというイタリアの歌い手のうたう歌に魅力を感じつづけてきたがゆえの、つまりひいきのひきたおし的に、ここでとりあげたといえなくもない。
 しかし、むろん、ここでとりあげる理由が、まったくないわけではない。ヴァノーニの声はハスキー・ヴォイスだ。ただ、このハスキー・ヴォイスは(あらためてことわるまでもないと思うが、オルネラという名前からもあきらかなように、ヴァノーニは女だ、アメリカのジャズ・シンガーのそれと、微妙にちがう。イタリアの女の人の声によくあるタイプのハスキー・ヴォイスだ。
そのハスキー・ヴォイスを、ヴァノーニは、有効につかって、うたう。このレコードの第一面第二曲目におさめられている「誠実」という歌などでは、ためいきもうまくつかう。従って、ヴァノーニの声は、ときに、大変SEXYだ。
 もっとも、いつでもヴァノーニの声がSEXYにきこえるとはかぎらない。高い方の音が自然にのびていないと、声そのものの色っぽさも微妙な表情も、当然のことにききとりにくくなる。そういうことで、ヴァノーニの声にポイントをおいてきくということなら、第二面第五曲の「風のように」が、うってつけだ。ヴァノーニはそこで、ギターだけを伴奏に、その独特の声の表現力をいかして、つぶやくように、ささやくように、うたっている。もしそこで、ヴァノーニの声がSEXYにきこえたら、きっとそのトゥイーターはいいトゥイーターにちがいない。
     *
ジャケットに使われている写真が、色っぽく感じられた。
HIGH-TECHNIC SERIES-3」の写真はモノクロで、掲載ページの紙もよくはなかった。
しかも裏焼き(左右が反転)だった。

下着(ネグリジェ)姿のオルネラ・ヴァノーニが、
不鮮明な写真ゆえに、よけいに色っぽく感じられたものだ。

そんなこともあって黒田先生による十枚のなかで、
私がいちばん聴きたいと、その当時思ったのが、このディスクだった。
国内盤も出ていた。けれど、そのころ住んでいた田舎のレコード店ではみかけなかった。

どこかでみかけたら買おう、と思っていたのに、であうことはなかった。
けれど、「女の第三章〝愛〟」(Uomo mio Bambino mio)も、TIDALにある。

TUTTO VANONIというタイトルで、八枚のディスクをまとめたものにふくまれている。
もちろんMQAで聴ける。

もうたずねることはできないが、
MQAで聴けるヴァノーニの声を、黒田先生はなんといわれるだろうか。

Date: 11月 23rd, 2020
Cate: バランス

Xというオーディオの本質(その3)

タイトルに「本質」を使っているからといって、
本質を捉えている、とまではいわない。

本質について書いている、とはいえても、
オーディオの本質とは、と問われて、スパッと答えられるわけではない。

巷には、若いのに、本質を忘れないようにしている、
そういったことを恥ずかしげもなく書いたり話したりする人が、意外にいる。

オーディオに限っても、(私の感覚では)けっこういるな、と感じている。
おそらく、その人たちは、私の何倍、いや何十倍ものオーディオの才能の持主なのか、
それともオーディオの才能から見放された人のどちらかだろう。

才能があるのは、決してしあわせなことではない。
むしろ、才能がないことのほうが、ずっとしあわせだったりする。

そのことに気づかずにオーディオをやっていける人は、しあわせだ。