聴いているという感覚、鳴らしているという感覚(その3)
(その2)では、少しわかりにくいところもあったかな、と思うので、少し具体的に書いていく。
例えばスピーカーケーブルを、これまで使ってきたケーブルから、別のケーブルにする。何度かつけ替えて比較試聴した結果、新しいケーブルの音が好ましいと判断した。
この場合、従来のスピーカーケーブルでの音をAとする。新しいスピーカーケーブルにした音をBとする。
オーディオマニアならば、こうやっていくつもの比較試聴を自分のシステムで行っていく。
今度は、コントロールアンプを変えてみる。コントロールアンプを新しくした音をCとする。
BとC。どちらがいい音、好ましい音か。ここでも新しい音、つまりCが良かった、とする。
また別のところを変えてみる。それをDとする。今度はDよりもCの方が良かった。
しばらくして、また別のところを変えてみる。これをEとして、CとEでの比較試聴では、Eが良かった。
その次の音はF、その次はG……、こんなふうに続いていき、一つ前の音と比較試聴して判断していく。
一年後にはMの音になっているかもしれない。丁寧に比較試聴してきたから、判断には自信がある。友人やオーディオ仲間に聴いてもらっても、一年前のAよりも良くなっている、という評価を得た、とする。
ここで考えたいのはMとAは、誰も比較試聴していないということだ。(その2)で書きたかったのは、このことだ。
Aは一年前の自分の音、Mは現在の自分の音。ステップを踏んで比較試聴してきていても、AとMを直接比較試聴しているわけではない。
だからといって、このステップごとの比較試聴をして進むやり方について、あれこれ言いたいのではなく、AとMの比較、過去の音と現在の音の比較。このことについて考えていきたい、ということだ。