B&W 800シリーズとオーディオ評論家(その14)
二十年ほど前のことになるだろうか。
インターネットが普及してきて、それまでパソコンを使ってこなかった人が興味を持つようになった。
私の周りというか、友人の知人・友人でそういう人が何人かいた。
何を買ったらいいのか、という相談もあった。
この人たちの口から共通して聞けたのは、
「来年になるともっと性能のいいのが出てくるんでしょ。それまで待とうかしら」だった。
確かに来年の新製品は性能が向上している。
価格が同じであってもだ。
でも再来年の新製品は、もっと性能が向上して登場してくる。
三年後になると、五年後になると……。
毎年、パソコンの新製品は性能が向上していくのだから、
そんなことを言ってたら、買い時なんてずっとないことになる。
でも、そんなふうには考えないみたいである。
その人たちが、その後どうしたのかまでは知らない。
スマートフォンに関しても、まったく同じことを言っていてもおかしくない。
こんなことを、ふと思い出した。
ステレオサウンドで、B&Wの800シリーズの新製品が出るたびに、
ほぼオーディオ評論家全員が絶賛する。
なのに誰一人として購入することはない。
このことはもう十年ほど前から指摘されていることである。
なぜ、ステレオサウンドのオーディオ評論家はB&Wの800シリーズを買わないのか、
私にそうきいてきた人も何人かいる。
私に訊くよりも、オーディオ評論家本人に、
インターナショナルオーディオショウとかで訊ねればいいだろうし、
ステレオサウンド編集部に電話して訊ねたほうがいい。
でも、ふと上記のパソコンのことを思い出した。
B&Wの800シリーズは、毎年新シリーズが登場するわけではないが、
確実に以前のシリーズよりも新シリーズは、より優秀なスピーカーシステムに仕上がっている。
つまりD3シリーズよりも今回のD4シリーズである。
D3シリーズを絶賛した人のなかには、もしかすると購入を考えた人もいたかもしれない。
「でもD4が出たら、もっと良くなっているはず」
そう考えて購入にいたらなかった可能性もある。
実際、D4シリーズはD3シリーズよりも良くなっている、という評価だ。
では誰かD4シリーズを購入するかといえば、
今回も同じことを考えるのかもしれない。
「でもD5が出たら、もっと良くなっているはず」と。