Date: 6月 17th, 2020
Cate: ディスク/ブック
Tags:

Bach: 6 Sonaten und Partiten für Violine solo(その1)

東京で暮すようになって、初めて行ったクラシックのコンサートは、
ヘンリク・シェリングだった。

いま思うと、なぜシェリングを選んだのか、もう定かではない。
クラシックのコンサート、それも海外の演奏家のコンサートには、
それまでの熊本での暮しでは行っていなかった。

39年前のことである。
あのころ、東京を感じさせてくれたのは、雑誌のぴあだった。
こんなにも東京では、あちこちで毎日いろんなことが催されているんだ──、
とにかく驚いていた。

ぴあも毎号買っていたわけではなかった。
学生で、しかもロクにアルバイトもしていなかった。
年中金欠だった。

ときどきぴあを買っては、東京を感じていた、ともいえる。
関心あるのはクラシックのコンサートと映画だった。

それ以外のページも眺めていた。
お金さえあれば、今日はここに行って、明日はあそこ……、楽しいだろうなぁ、
そんなことを妄想していた。

シェリングのコンサートを知ったのは、ぴあだったような気がする。
シェリングのコンサートがあるんだ、くらいで受け止めていたのではないだろうか。

ぴあも毎号買えなかったのだから、オーケストラのコンサートのチケットは高くて無理だった。
それでもシェリングはS席を、かなり無理して買ったものだった。

そうやって聴きに行ったにも関らず、演奏された曲をすっかり忘れてしまっている。
それでも、この日聴いたヴァイオリンの音は、
初めて聴くヴァイオリンのナマの音だった。

Leave a Reply

 Name

 Mail

 Home

[Name and Mail is required. Mail won't be published.]