ワグナーとオーディオ(マランツかマッキントッシュか・その6)
SPA1HLによって、長島先生にとってModel 7がどういう存在なのかをはっきりと知った。
マッキントッシュ、マランツの真空管アンプを新品で聴くことはできなかった世代であっても、
SPA1HLを長島先生といっしょに、しかも解説つきでじっくりと聴くことができたからだ。
長島先生はステレオサウンド 38号で、
《決して神経を休めるという傾向の音ではありません》といわれている。
確かにそうである。
SPA1HLもそういうアンプである。
同じことを井上先生もいわれていたし、
ステレオサウンド別冊「音の世紀」でも、同じ意味あいのことを書かれている。
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心情的には、早くから使ったマランツ7は、その個体が現在でも手もとに在るけれども、少なくとも、この2年間は電源スイッチをONにしたこともない。充分にエージング時間をかけ音を聴いたのは、キット版発売の時と、復刻版発売の時の2回で、それぞれ約1ヵ月は使ってみたものの、老化は激しく比較対象外の印象であり、最新復刻版を聴いても、強度のNFB採用のアンプは、何とはなく息苦しい雰囲気が存在をして、長時間聴くと疲れる印象である。
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決して神経を休めるという傾向の音ではないModel 7、
何とはなく息苦しい雰囲気が存在をして、長時間聴くと疲れる印象のModel 7。
どちらも同じことを語っている。
ただ聴き手が違うだけの話である。
音楽の聴き方の違いが、そこにある。
五味先生はワグナーをよく聴かれていた。
毎年NHKのFMで放送されるバイロイト音楽祭を録音されていたことはよく知られているし、
《タンノイの folded horn は、誰かがワグナーを聴きたくて発明したのかも分らない。それほど、わが家で鳴るワグナーはいいのである》
とも書かれているくらいだ。
ワグナーは長い。
どの楽劇であっても、長い。
その長さゆえ、五味先生はマランツを選ばれなかったのではないのか。