Date: 11月 15th, 2016
Cate: ステレオサウンド
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ステレオサウンドについて(その102)

ステレオサウンド 58号の新製品紹介のページも、くり返し読んだものだ。
JBLの4345とSMEの3012-R Specialのページを、それこそ何度読んだろうか。

どちらも瀬川先生が書かれている。
4345のページを先に読み、わくわくしていた。

4343と比較するとプロポーション、そしてデザインにおいて見劣りする4345なのだが、
その音は、瀬川先生の文章からJBLが新しい時代を迎えつつあるように感じた。

4345の記事最後に、こうある。
     *
 一応のバランスのとれたところで、プレーヤーを、P3から、別項のマイクロSX8000とSMEの新型3012Rの組合せに代えてみた。これで、アッと驚くような音が得られた。が、そのことはSMEの報告記のほうを併せてご参照頂くことにしよう。
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《アッと驚くような音》とは、いったいどういう音なのか。
4345の記事と3012-R Specialの記事とのあいだには、
いくつかの新製品の記事があった。それらをすべてとばして、3012-R Specialの記事を読みはじめる。
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 音が鳴った瞬間の我々一同の顔つきといったらなかった。この欄担当のS君、野次馬として覗きにきていたM君、それに私、三人が、ものをいわずにまず唖然として互いの顔を見合わせた。あまりにも良い音が鳴ってきたからである。
 えもいわれぬ良い雰囲気が漂いはじめる。テストしている、という気分は、あっという間に忘れ去ってゆく。音のひと粒ひと粒が、生きて、聴き手をグンととらえる。といっても、よくある鮮度鮮度したような、いかにも音の粒立ちがいいぞ、とこけおどかすような、あるいは、いかにも音がたくさん、そして前に出てくるぞ、式のきょうび流行りのおしつけがましい下品な音は正反対。キャラキャラと安っぽい音ではなく、しっとり落ちついて、音の支えがしっかりしていて、十分に腰の坐った、案外太い感じの、といって決して図太いのではなく音の実在感の豊かな、混然と溶け合いながら音のひとつひとつの姿が確かに、悠然と姿を現わしてくる、という印象の音がする。しかも、国産のアーム一般のイメージに対して、出てくる音が何となくバタくさいというのは、アンプやスピーカーならわからないでもないが、アームでそういう差が出るのは、どういう理由なのだろうか。むろん、ステンレスまがいの音など少しもしないし、弦楽器の木質の音が確かに聴こえる。ボウイングが手にとるように、ありありと見えてくるようだ。ヴァイオリンの音が、JBLでもこんなに良く鳴るのか、と驚かされる。ということきは、JBLにそういう可能性があったということにもなる。
 S君の提案で、カートリッジを代えてみる。デンオンDL303。あの音が細くなりすぎずほどよい肉付きで鳴ってくる。それならと、こんどはオルトフォンSPUをとりつける。MC30とDL303は、オーディオクラフトのAS4PLヘッドシェルにとりつけてあった。SPUは、オリジナルのGシェルだ。我々一同は、もう十分に楽しくなって、すっかり興に乗っている。次から次と、ほとんど無差別に、誰かがレコードを探し出しては私に渡す。クラシック、ジャズ、フュージョン、録音の新旧にかかわりなく……。
 どのレコードも、実にうまいこと鳴ってくれる。嬉しくなってくる。酒の出てこないのが口惜しいくらい、テストという雰囲気ではなくなっている。ペギー・リーとジョージ・シアリングの1959年のライヴ(ビューティ・アンド・ザ・ビート)が、こんなにたっぷりと、豊かに鳴るのがふしぎに思われてくる。レコードの途中で思わず私が「おい、これがレヴィンソンのアンプの音だと思えるか!」と叫ぶ。レヴィンソンといい、JBLといい、こんなに暖かく豊かでリッチな面を持っていたことを、SMEとマイクロの組合せが教えてくれたことになる。
     *
これを読んで、3012-R Specialだけはとにかく借ってお粉ければ思ったものだ。
58号のハーマン・インターナショナルの広告には、その文字はなかったけれど、
57号の広告には、大きな赤い文字で限定発売とあったからだ。

4345もマークレビンソンのアンプはすぐに買えないけれど、
当時88,000円のトーンアームならば、学生の身であっても無理をすれば買える。

上京して、すぐに3012-R Specialを買った。
88,000円のトーンアームを12回の分割払いで買った。

実家で鳴らしていたシステムは置いてきたから、
東京では音を出すシステムはななかった。

取りつけるターンテーブルのことを想像したり、
58号の瀬川先生の文章を読み返しては、3012-R Specialを飽きずに眺めていた。

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