戻っていく感覚(「風見鶏の示す道を」その7)
38年前、レコード(録音物)といえば、LP(アナログディスク)をさしていた。
いまはさしずめCDになる。
LPかCDか、ということはさほど、ここで語ることに関しては大きな違いとはいえない。
38年前と大きく違っていて、そのことがここで語ることに大きく関係してくるのは、
メディア(録音物)の売られ方である。
38年前、LPは決して安いとはいえなかった。
新譜であっても旧譜であっても、たやすく買えるものではなかった。
CDが登場しても、そのことは大きくは変らなかった。
けれどいま、CDはボックスだと、昔の感覚では信じられないほど安くなってしまった。
30枚セット、50枚セット、60枚セット、
LP全盛時代には考えられなかったボックスの枚数であり、いくつものそういうボックスが矢継ぎ早に出てくる。
しかも相当に安い。
ボックスCDを買うことで、それまで避けていた、あまり関心の持てなかった音楽もきくことになる。
ボックスCDを、だから否定したくはないが、それでも旅人がトランクから取り出したのが、
すべてボックスCDであったら、そこに一本の筋はみえてきただろうか。
車掌は目的地を読みとることができただろうか……。
こんな現実的なことも、考えてしまう。