毎日書くということ(思い出す感触・その1)
書くということは、いまの私には親指シフトキーボードによる入力をさす。
ステレオサウンドに富士通のワープロOASYSが導入されてから、
私にとって日本語入力のためのキーボードは親指シフトである。
だからもう30年くらいになる。
ステレオサウンドにはいったばかりのころは、まだワープロはなかった。
原稿といえば手書きだった。
たいていの出版社がそうであるように、
ステレオサウンドにはステレオサウンド仕様の原稿用紙が用意されていた。
筆記具はステッドラーの芯ホルダーだった。
それまで筆記具といえば、鉛筆、シャープペンシル、ボールペン、サインペン、万年筆ぐらいしか知らなかった。
芯ホルダーを、ステレオサウンドではじめて見た。
シャープペンシルと同じように、芯ホルダーは鉛筆の芯と同じような専用の芯を交換して使うもの。
シャープペンシルが芯を削る必要がないのに対して、
芯ホルダーは鉛筆と同じように先が丸くなったら削らなければならない。
専用の削り器もあった。
編集部の先輩に連れられて、ステレオサウンドの向いにあった文具店に行き、
私用の芯ホルダーと削り器を購入した。
はじめて使う筆記具。
この芯ホルダーで書いた時よりも、はじめて専用の削り器を使った時のほうが、
ほんのすこしだけ一人前の編集者に近づけたように感じられた。