現代スピーカー考(その31)
ステレオサウンドは以前、HI-FI STEREO GUIDEを年二回出していた。
そのとき日本市場で発売されているオーディオ機器を、アクセサリーをふくめて網羅した便利な本だった。
しかも70年代の、この本の巻頭には、沢村亨氏による「カタログデータの読み方」というページがあり、
その中にウォルッシュ・ドライバーの解説もあった。
そのおかげで大ざっぱにはどういうものか知っていたけれど、
それだけではやはり不充分だったし、オームのスピーカーシステムを、
すこし変った無指向性スピーカーというぐらいの認識のところでとまっていた。
このころアメリカ(だったと記憶している)からBESというメーカーのスピーカーシステムが入ってきていた。
これもステレオサウンドの新製品紹介のページで取り上げている。
薄型のパネル状の外観のスピーカーシステムだった。
外観からはマグネパンと同類のスピーカーなんだろう、という理解だった。
ただ輸入元からの資料を読むと、どうもそうではないことはわかったものの、
それでも、それがどういうことなのかを理解できていたわけではない。
このBESのスピーカーシステムも、ステレオサウンドの試聴室で聴いている。
でも、記憶を溯っても、ほとんど思い出せない。
BESのスピーカーシステムもベンディングウェーヴのひとつだったのか、と気づくのは、
もっとずっと後、ジャーマン・フィジックスのDDD型ユニットを聴いたあとだった。
それほどスピーカーの理想動作は、ピストニックモーションである──、
このことから離れることができずに、ものごとを捉えていたのである。