電源に関する疑問(QUAD 50E・その6)
オートバランス回路による位相反転にはこういうところがあり、
このことが理論に忠実であろうとすればするほど、納得のいかない回路であるし、
オートバランスを採用するのであれば、カソード結合のムラード型にするとか、
さらには徹底して入力トランスを用いて、電圧増幅段、出力段ともにプッシュプルとしたほうが、
性能的にも優れ、音質的にもよい結果が得られる──、
私もそう考えていた時期があった。
伊藤先生による349Aプッシュプルアンプ、
これもオートバランス回路を使っている。
だから、このアンプの音に惚れながらも、
349Aのプッシュプルアンプを作るのであれば、オートバランス以外の位相反転回路を採用するか、
ウェスターン・エレクトリックの349Aアンプ、133Aの回路をそのままで作ろうと考え、
前段に使われている348A、それもメッシュタイプのモノを探し出してきたこともある。
133Aの回路のほうが、伊藤先生の349Aアンプ(元はウェストレックスのA10)よりも、
回路の平衡性ということでは理論上優れていることになる。
とにかく最高の349Aのアンプが欲しかった私は、
最初は伊藤先生のアンプのデッドコピーをしよう、から、ここまで変化していった。
なのに主要パーツが集まり、あとはシャーシーの設計と発注の段階まできて、また考えが変っていた。
オートバランスのもつ、
私が気付くような欠点はウェスターン・エレクトリックやウェストレックスの技術者はとうに知っていたはず。
伊藤先生もそうであったはず。
にも関わらず、オートバランスを位相反転の回路として採用していることには、
電源回路に1kΩの抵抗を直列に挿入するのと同じように、
私が気付いていない意味があるはずだと考えるようになったからである。