Archive for 8月, 2022

Date: 8月 23rd, 2022
Cate: 純度

純度と熟度(とモービル・フィデリティの一件・その1)

7月の終りごろに、ソーシャルメディアで、
モービル・フィデリティが製作の過程でデジタル音源を使用していたことが明らかになっていた。

モービル・フィデリティ側もそのことを認めている。
8月に入るとワシントン・ポストがこのことを記事にしていた。

さらに今日、集団訴訟を起される、とニュースがあった。

モービル・フィデリティは、アナログ音源のマスターテープから、
丁寧な作業でアナログディスクをつくることを売りにしていた。

なのにその音源にDSDを使っていた。
2011年からDSD音源を使っていた、とのこと。

モービル・フィデリティは、いまではアナログディスクだけではなく、
CD、SACDも売っている。
商売の手を広げすぎたために起った、といえるのかもしれないが、
私が思うのは、最終的にいい音に仕上がるのであれば、
完全なアナログ処理にこだわることもないのでは──、である。

以前、別項で書いているが、
CDが登場してしばらくして、ブルーノ・ワルターのアナログディスクが再発になった。
LPなのに、デジタルリマスターされていた。

CDが登場したころ、AAD、ADD、DDDと表記があった。
説明の必要はないと思うが、
AADはアナログ録音、アナログマスタリング、デジタルディスク(CDのこと)、
ADDはアナログ録音、デジタルマスタリング、デジタルディスク、
DDDはデジタル録音、デジタルマスタリング、デジタルディスクである。

ワルターのLPは、ADAになる。
アナログ録音、デジタルマスタリング、アナログディスクだからだ。

モービル・フィデリティと違って、
CBSソニーは、デジタルマスタリングを公表していた。
むしろ、それを売りにしていた。

私も半分ほど興味本位で数枚買って聴いた。
これが意外にも、いい音で鳴ってくれた。

このADAのLPが、ワルターのディスクのなかで、
いちばん音がいい、というのではない。
当時の私のシステムでかけて、いい音で鳴ってくれた、という事実である。

Date: 8月 23rd, 2022
Cate: 世代

世代とオーディオ(中古オーディオ店の存在・その4)

コメントをされた人は、
ハイファイ堂から古いソリッドステートアンプを買った、とのこと。

かなり古いアンプなので、
ハイファイ堂がいうところの「整備済み品」を購入したところ、ヒューズが何度も飛ぶ。
使いものにならないので確認のためにハイファイ堂に返送。

ハイファイ堂からの返事は、
電源部故障と増幅部のバイアスも左右で大きくずれている、と。

ハイファイ堂の整備済み品が、この状態である。
何を整備したのだろうか。

私はハイファイ堂から一度も購入したことはない。
秋葉原の店舗を数回覗いたことがあるらいだ。

棚に並んでいるオーディオ機器を見て、
どれもくたびれているなぁ、と感じたものだった。

私が行った時が、たまたまそういう機器ばかりだったのかもしれない。
別の日に行っていれば、いかにも整備済みといった機器が展示してあったのかもしれない。

それはわからない。
少なくとも私がハイファイ堂に持っている印象と、
今回のソーシャルメディアでの投稿とコメントから受ける印象は、重なってしまう。

コメントをした人は、整備済み品にも関わらず、
そういうひどい状態のアンプなのだから、返品返金を要求したところ、
次回からは、あなたには売りません、という捨てぜりふ。

こういう商売の仕方が、ハイファイ堂全体にいえることなのか、
ある特定の店員だけのことなのかは、いまのところはっきりしない。

それでもひどい店員が、ある店舗に一人いることだけは確かなようだ。

Date: 8月 23rd, 2022
Cate: 世代

世代とオーディオ(中古オーディオ店の存在・その3)

いいオーディオ店もあれば、
そうでない(はっきりいえば悪い)オーディオ店もある。

いいオーディオ店の店員もいれば、
そうでない(悪い)店員もいる。

「quality product, quality sales and quality customer」。
どれかひとつ欠けても、オーディオの世界はダメになってしまう──、
とマッキントッシュのゴードン・ガウは言っていた。

quality salesは、オーディオ店でもあり、オーディオ店の店員のことでもある。

数日前、ソーシャルメディアで、あるオーディオ店についての投稿があった。
ここも中古オーディオを専門とする販売店である。

名前を出すべきかどうか迷ったが、はっきりしておく。
ハイファイ堂である。

ある人がハイファイ堂のウェブサイトを見て、ある中古オーディオを購入しようとした。
ハイファイ堂のウェブサイトには、まだ商談中の表示はついてなかった、とのこと。
なのに注文したところ、現在既に一名の方の注文が入っている──、
そういうメールが届いて購入できなかった。

一度なら、そういうことがあろう。
ほんのわずかなタイミングの違いで、先に購入希望の人が現れることはある。
けれど、この人によれば、一回だけではなく、何度もあったとのこと。
しかも、既に注文が入っている──、
そんなメールを送信してくるのは、同じ店員とのこと。

これも偶然だろうか。
片方だけの話を読んで、これを書いていることは自覚している。
それでも、この人の投稿に、別の人がコメントをしている。
それを読むと、問題があるのはハイファイ堂側だといわざるをえない。

Date: 8月 23rd, 2022
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(50CA10単段アンプ・その7)

50CA10の規格表には、
自己バイアスのA級シングルの場合、
プレート電圧は250V、カソード抵抗は200Ω、
プレート電流は90mA(無信号時)〜95mA(最大出力時)、
負荷抵抗は1500Ωとなっている。

今回の単段アンプで使用(流用)する出力トランスは、
タンゴのU808である。

真空管アンプの自作に多少なりとも関心のある人ならば、
あぁ、あのトランスね、とすぐに思い浮べられるほどよく知られたモノ。

高価なトランスではなく、むしろ安価なトランスで、
ユニバーサル型を謳っていて、一次側は2kΩ、2.5kΩ、3kΩ、5kΩに対応しているが、
トランス本体にも表記してあるように、
一次側の巻線のタップを切り替えることでの対応ではなく、
二次側の巻線のタップをどう使うでの対応になるため、
2kΩと2.5kΩでは二次側は4Ωと8Ω、
3.5kΩと5kΩでは二次側は8Ωと16Ωの対応となる。

そういう出力トランスなので、50CA10の単段シングルアンプでは、
2kΩにして最初は作る予定である。

50CA10のプレート電流は、少し減らすつもりでいる。
70mAちょっとあたりを予定している。

50CA10が四十数年前のように、
安価で入手しやすい球であれば、90mA流すのもいいけれど、
中国でも製造していないのだから、
そしてまれに出てくる新品は非常に高価なのだから、
規格的には余裕を少し持たせたいからだ。

Date: 8月 23rd, 2022
Cate: 老い

22年(コメントを読んで)

その3)へHiroshi Noguchiさんのコメントがあった。
残念ながら、ボザール・トリオはMQAではない。

ワーナー・クラッシクスでの録音はMQAになっているが、
私がボザール・トリオときいて、まず思い浮べるフィリップスへの録音は、
いまのところTIDALではMQAになっていない。

e-onkyoはどうかというと、
ベートーヴェンのピアノ三重奏曲がMQA(192kHz)になっている。
今年の6月に配信が開始になっている。
個人的には、デジタル録音なのだが、モーツァルトもぜひMQAにしてほしい。

Date: 8月 22nd, 2022
Cate: ステレオサウンド

奇妙な光景(その2)

そんなふうに立読みされなくなりつつあるオーディオ雑誌だけを、
なぜビニールで巻いているのか。

そんな手間を紀伊國屋書店がするようにしたとは思えない。
私の勘ぐりでしかないのはわかっているが、
ステレオサウンド、音楽之友社側からの要望なのではないのか。

HiViは別項で書いているように、
6月発売の号で月刊誌としては終りで、9月発売の号からは季刊誌になる。
隔月刊誌ではなく、いきなり月刊から季刊である。

それだけ売れていないのだろう。
売れていないのだから、紀伊國屋書店という大型書店で、
ビニールを巻いてもらい、立読みを防ぐ。
それで売行きを少しでも増えそうということなのか。

何ひとつ確かめているわけではない。
くり返すが、私の勘ぐりでしかない。

売行きが落ちていても、内容に自信があれば、こういう選択はしない。
むしろ書店で手にとってもらい、ぱらぱらと立読みしてもらうことで、
買ってもらえることだって生じるからだ。

事実はわからない。
でも、自信を失った雑誌の悪あがきのようにもうつる。

それともいま書店に並んでいる三誌には、附録でもついていて、
万引き防止のためのビニール巻きなのか。

Date: 8月 22nd, 2022
Cate: ステレオサウンド

奇妙な光景(その1)

今日の午後、ひさしぶりに新宿の紀伊國屋書店に行った。
以前はよく行っていたけれど、コロナ禍のせいで、
ここ三年弱は足が遠のいていた。

今年はまだ二回目のはず。
八階までエレベーターで行き、それから階段で下の階に移動しながら、
あれこれ見てまわっていた。

雑誌コーナーは一階。
以前とはレイアウトが変更になっている。
音楽関係、オーディオ関係の雑誌のコーナーはどこかなと探していたら、
ステレオサウンドの223号の表紙が目に留った。

けれど、ちょっと変な感じがする。
近づいてみたら、ステレオサウンドには透明のビニールが巻かれてあった。
隣りにあったステレオもそうだった。
さらに隣りのHiViもそうだった。

紀伊國屋書店が雑誌を立読みさせないように、こうしたのであれば、
他の雑誌も同じようにビニールで巻かれているはずなのに、
少なくとも今日、私が見た範囲では上記の三冊だけだった。

奇妙な光景だった。
ステレオサウンドもHiViもKindle Unlimitedで読める。
発売日に読めるわけではないが、少し待てば読めるわけで、
Kindle Unlimitedユーザーは立読みしようとは思っていないだろう。

ステレオはKindle Unlimitedでは読めない。
けれど、ここ十年以上、書店でオーディオ関係の雑誌を立読みしている人は、
あまりいない、というか、ほとんどみかけない。

私の行動範囲では、年に二人か三人ほどである。

Date: 8月 22nd, 2022
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(50CA10単段アンプ・その6)

倍電圧整流にSiC SBDの採用。
これをやってみようと思ったのには、別の理由もある。

いま押入れで眠ったままのQUADのESL63proの存在だ。
いうまでもなくESL63proはコンデンサー型なのだから、高圧を必要とする。
そのための回路も倍電圧整流である。

50CA10のシングルアンプで、SiC SBDによる倍電圧整流が好結果をもたらしてくれたら、
ESL63proにも使えるはず、と考えているからだ。

SiC SBDを全面的に使用したコンデンサー型スピーカーの音も、
なかなかに興味深い。

もうどこかのメーカーが出しているのだろうか。
それとも、まだなのか。

Date: 8月 21st, 2022
Cate: ジャーナリズム, ステレオサウンド,

オーディオの殿堂(その7)

オーディオテクニカ独自のVM型。
この方式を開発したのは、普通に考えれば、
当時のオーディオテクニカの技術者ということになる。

私だって、オーディオに関心をもち、ステレオサウンドで働くようになるまでは、
そう思っていた。

けれど井上先生という人を知るにつれて、
もしかするとオーディオテクニカのVM型のアイディアは井上先生なのではないのか。
そんなふうに思うようになってきた。

だからといって、何らかの確証、
それがちっぽけなものであっても確証へとつながっていくことを知っているわけではない。

井上先生に訊ねたところで、うまくごまかされたであろう。
そのことを話題にしたこともない。

それでもオーディオテクニカの創業者、松下秀雄氏と井上先生のつきあい、
そのことから私が勝手に妄想しているだけにすぎないのは自覚している。

それでも私はVM型のアイディアは井上先生と確信している。

Date: 8月 21st, 2022
Cate: ジャーナリズム, ステレオサウンド,

オーディオの殿堂(感じていること)

三年前、別項「評論(ちいさな結論)」で、
いい悪いではなく、
好き嫌いさえ超えての
大切にしたい気持があってこその評論のはずだ、
と書いている。

ステレオサウンドの「オーディオの殿堂」を眺めて、
大切にしたい気持があってこその評論、とはまったく思えない。

Date: 8月 20th, 2022
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(50CA10単段アンプ・その5)

たとえばジャディスのJA200やマイケルソン&オースチンのM200のような、
大規模な真空管アンプを手がけるとしたら、
整流管ではなく私でも整流ダイオードを選択するであろう。

けれど私が作りたい真空管アンプは、そんな大規模なモノではない。
数十Wクラス、それも50Wを切るくらいの出力のアンプだから、
いくつかの理由から整流管を選択するのだが、
今回の50CA10は、流用する電源トランスが倍電圧整流が前提ということもあって、
それに巻線の関係もあって、整流管をあきらめざるをえない。

ダイオードで整流するわけだが、
せっかくだから、それに実験的なアンプでもあることから、
ダイオードには、SiC SBDを使う。

SiC SBDとは、シリコンカーバイド・ショットキーバリアダイオードのこと。
自作に関心のある人ならば、数年前から使っているだろうし、
関心を寄せているとも思う。

整流ダイオードの種類と、その音については、
いろんな意見があるのは知っている。

SiC SBDは絶賛する人がけっこういる。
でも否定的な人もいるといえばいる。

でも、ダイオードとしては高価なほうだが、
絶対的な価格としてはさほど高いわけではない。

うまくいかなければ、一般的なダイオードにすればいいし、
私自身、SiC SBDを試してみたいのだから、
今回の50CA10の単段シングルアンプでは、まずはSiC SBDで作る。
すでに注文済み。

Date: 8月 20th, 2022
Cate: audio wednesday, High Resolution

MQAのこと、TIDALのこと(audio wednesdayのこと)

昨夏からソニー・ミュージック、ソニー・クラシカルのアルバムが、
すごいいきおいでTIDALでMQA Studioで聴けるようになっていった。

このアルバムも、あのアルバムもある。
昨年8月は、毎日TIDALにアクセスするのがほんとうにワクワクだった。

グレン・グールドのアルバムもMQA Studioで聴けるようになった。
これだけでも嬉しい限りなのだが、他にもここに書き切れないくらい、
MQAで聴きたかったアルバムの多くが聴けるようになっている。

そういうアルバムをMQAで聴くたびに、
いまaudio wednesdayをやっていたら、次回は、これをメインにかけるだろうな──、
そんなこともおもってもいた。

たとえばもし、いまもaudio wednesdayを続けていたら、
9月には“FRIDAY NIGHT IN SAN FRANCISCO”と“SATURDAY NIGHT IN SAN FRANCISCO”、
それから“ESCAPE”をかける。

いまはaudio wednesdayはやっていない(やれずにいる)から、
単なる妄想にしかすぎないのだが、
このことがaudio wednesday (next decade)を、
音なしではあるけれど始めるきっかけ(動機)の一つになっているのは確かなことだ。

TIDALで見つけた曲(アルバム)を、次の月のaudio wednesdayで鳴らす。
そういう日が来るのかどうかは、いまのところなんともいえないが、
そういう気持で音楽を聴けるというのも、楽しいことの一つである。

Date: 8月 19th, 2022
Cate: ディスク/ブック

ESCAPE

8月19日に日付が変った直後に、
e-onkyoのサイトにアクセスしたら、ジャーニーの“ESCAPE”がジャケットに目に入った。

2022年リマスター、とある。
TIDALでもあるかな、と思って見たが、まだなかった。
どうも時差の関係で少し遅れるようで、今日の午後、TIDALをチェックしたら、あった。

e-onkyoではflacで、48kHz、96kHz、192kHzがあるが、
MQAはなかった。

TIDALはMQA Studioで、192kHzのみである。
音がいい。
聴いていて楽しくなる音のよさである。

“ESCAPE”は1981年のアルバム。
当時の若者は(私もその一人なのだが、リアルタイムでは聴いていない)、
“ESCAPE”を聴いていたわけだ。

別項で「熱っぽく、とは」を書いているけれど、
“ESCAPE”を当時夢中になって聴いていた若者ならば、
買ったアンプをトートバッグに入れて持ち帰ることぐらいなんでもなかったのかもしれない。

そんな、こじつけめいたことも聴き終ってから思っていた。

Date: 8月 19th, 2022
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(50CA10単段アンプ・その4)

50CA10単段シングルアンプのシャーシーには、鈴蘭堂のSL8を考えている。
鈴蘭堂といっても、いまでは会社がなくなっているが、
タカチがSLシリーズを引き継いで製造してくれている。

タカチの型番はSRDSL8である。
SRDは、鈴蘭堂の略。

できればもっと小さなシャーシーがほしいし、
伊藤先生のアンプに憧れてきた私にとっては、シャーシーの高さが50mmであれば、
もっといいのに、と思うのだが、それでもタカチはいまも製造してくれている。
このことは、ありがたい。

SRDSL8のサイズは、W350×H58.2×D224.5mm。
まだシャーシーは注文していないが、
トランス類はすべて自作アンプから取り外して、
SRDSL8の天板と同じサイズの紙の上に並べている。

こうやって全体のバランスをおおまかに決めていく。
そして次は発泡スチロールを用意して、真空管を挿せるようにして、
こまかく配置を決めていく。

こんな地味なことから、始まっていく。

Date: 8月 18th, 2022
Cate: 表現する

熱っぽく、とは(その2)

《熱っぽく》に関することで、思い出すことがある。
東京に来たばかりのころ、1981年ごろのことである。

このころ、ダイナミックオーディオにはトートバッグがあった。
並の大きさのトートバッグではなかった。
プリメインアンプがすんなり入る大きさのトートバッグである。

もちろんアンプ一台分の重量に耐えられるだけのしっかりしたつくりでもあった。
いまでは考えられない光景だろうが、
あのころの若者は、アンプを、このトートバッグに入れて持ち帰っていた。

頻繁に見掛けるわけではなかったけど、
秋葉原で何度か、そうやって持ち帰っている人がいた。

あのころはそれが当り前のように受け止められていた。
けれど、普通のことではないわけで、
そこには熱っぽさがあってことのはずだ。

しかもその熱っぽさは伝染していくのかもしれない。