純度と熟度(とモービル・フィデリティの一件・その1)
7月の終りごろに、ソーシャルメディアで、
モービル・フィデリティが製作の過程でデジタル音源を使用していたことが明らかになっていた。
モービル・フィデリティ側もそのことを認めている。
8月に入るとワシントン・ポストがこのことを記事にしていた。
さらに今日、集団訴訟を起される、とニュースがあった。
モービル・フィデリティは、アナログ音源のマスターテープから、
丁寧な作業でアナログディスクをつくることを売りにしていた。
なのにその音源にDSDを使っていた。
2011年からDSD音源を使っていた、とのこと。
モービル・フィデリティは、いまではアナログディスクだけではなく、
CD、SACDも売っている。
商売の手を広げすぎたために起った、といえるのかもしれないが、
私が思うのは、最終的にいい音に仕上がるのであれば、
完全なアナログ処理にこだわることもないのでは──、である。
以前、別項で書いているが、
CDが登場してしばらくして、ブルーノ・ワルターのアナログディスクが再発になった。
LPなのに、デジタルリマスターされていた。
CDが登場したころ、AAD、ADD、DDDと表記があった。
説明の必要はないと思うが、
AADはアナログ録音、アナログマスタリング、デジタルディスク(CDのこと)、
ADDはアナログ録音、デジタルマスタリング、デジタルディスク、
DDDはデジタル録音、デジタルマスタリング、デジタルディスクである。
ワルターのLPは、ADAになる。
アナログ録音、デジタルマスタリング、アナログディスクだからだ。
モービル・フィデリティと違って、
CBSソニーは、デジタルマスタリングを公表していた。
むしろ、それを売りにしていた。
私も半分ほど興味本位で数枚買って聴いた。
これが意外にも、いい音で鳴ってくれた。
このADAのLPが、ワルターのディスクのなかで、
いちばん音がいい、というのではない。
当時の私のシステムでかけて、いい音で鳴ってくれた、という事実である。