SATURDAY NIGHT IN SAN FRANCISCO(その4)
1982年夏、ステレオサウンドの別冊として「サウンドコニサー(Sound Connoisseur)」が出ている。
このサウンドコニサーの試聴で、
私は“FRIDAY NIGHT IN SAN FRANCISCO”を初めて聴いた。
このディスクが出ていたことは、
ステレオサウンドの音楽欄で知っていた。
安原顕氏が紹介されていて、絶賛に近い評価だったと記憶している。
黒田先生も、「コンポーネントステレオの世界 ’82」で、取り上げられている。
《音楽もいいし、音もいい。最近は、とかくむしゃくしゃしたときにはきまって、このレコードをとりだしてかけることにしている。》
と書かれていた。
いまでこそ“FRIDAY NIGHT IN SAN FRANCISCO”といっているけれど、
当時、日本では「スーパー・ギター・トリオ・ライヴ」のほうが通りがよかった。
サウンドコニサーの取材(試聴)では、
「スーパー・ギター・トリオ・ライヴ」は、試聴レコードには入っていなかった。
けれどアクースタットのModel 3の音を聴かれた黒田先生が、
このディスクを、とリクエストされたのが「スーパー・ギター・トリオ・ライヴ」だった。
このことはサウンドコニサーに載っているし、
別項「黒田恭一氏のこと」のところでも書いている。
とにかくアクースタットで聴いた「スーパー・ギター・トリオ・ライヴ」は、
試聴室の雰囲気を、最初の一音で変えてしまった。
音が鳴っていないときのアクースタットのスピーカーは、単なる板である。
しゃれっ気がない、ただの板である。
オーディオ機器としての魅力には、その点では乏しい。
けれどひとたび音が鳴ってくると、
特に「スーパー・ギター・トリオ・ライヴ」では、
聴き終ったあと、みなが静かな昂奮状態にあったといえる。
「スーパー・ギター・トリオ・ライヴ」を初めて聴いた私は、
夏のライヴ録音だと思ってしまっていた。