あるスピーカーの述懐(その20)
悪友。
辞書には、よくない友人。親しみをこめて、親友や遊び仲間にもいう──、
とある。
良友。
辞書には、よい友達。つきあってためになる友達。益友──、
とある。
(その18)で、バーンスタインのマーラーを聴いて、ひどい録音だ、と言った人に、
ある人が、その欠点をそれとなく指摘した人がいた、と書いた。
それまでの友達関係がそれで崩れてしまった──。
欠点を指摘した人は、
指摘するまではバーンスタインのマーラを聴いて、ひどい録音だと、言った人にとって、
良友だったのだろうか、そして指摘後は悪友になったのか、それともどちらでもなくなったのか。
私にも同じ経験はある。
「瀬川先生の音を彷彿させる音が出ているから、来ませんか」といった知人とは、
なんだかんだ二十五年のつきあいだった。
割と頻繁に会うことも多かったので、周りからは友達関係だと思われていたはずだ。
けれど、別項で書いているようにあまりにもひどくおかしな音を出していた。
そのことを指摘した途端に、友達関係は終った。
指摘したことをまったく後悔していない。
そのことをまた書いているのは、知人にとって私は、当時良友だったのか悪友だったのか。
指摘後は、どうだったのか。そのことを、この項を書いていて思ったからだ。
知人は、いまでは良友との関係を大事にしているようである。
互いの音の良さを認め合う(褒め合う)、そういう関係を築いているようでもある。
良友しか求めない、良友しか周りにいないオーディオマニアがいる。
悪友と呼べる仲間がいるオーディオマニアがいる。