マーラーの第九(Heart of Darkness・その6)
12月のaudio wednesdayの音を聴いたHさんが、
「今日の音、いつもより明るいですね?」といわれた。
別項で書いたように、今回はファインメットコアを使ったコモンモードノイズフィルターを、
CDプレーヤーの電源に挿入している。
それからスピーカーのまわりもちょっといつもと違うセッティングにしている。
アルテックのドライバーの下には角材をかましている。
その向きと位置を変えただけであるが、それだけであっても音の変化は小さくない。
細部まで、光が当るようになった音ということでは、
明るくなった、という表現はそのとおりである。
だからといって能天気な明るさであったり、
まぶしすぎたり、細部まであからさまにするような、そんな明るさではない。
これまでの音より明るくなることで、音楽の表情は豊かに出るようになった、といえる。
瑕疵のない音であっても、表情に乏しい音は、いくらでも聴いている。
細かい音まで聴けるスピーカー、
つまりそういう細かな音を出してくるスピーカーだからといって、
音楽の表情も豊かになるわけではない。
音が全体に明るくなった──、
マーラーの〝闇〟から遠ざかった──、
そう単純なものではない、音の世界というのは。