拡張と集中(その8)
90dB/W/mでも高能率スピーカーといわれるようになった時代しか知らない世代、
100dB/W/mあたりから高能率スピーカーといっていた時代を知っている世代。
その差は10dBである。
この10dBの差を、非常に大きいと感じる世代に、私は属している。
喫茶茶会記のスピーカーはアルテックを中心としたシステム。
測定したわけではないが、97dBほどか、と思う。
現在市販されているスピーカーと比較すれば、圧倒的に高能率といえる数字であっても、
鳴らした感触からいっても100dBを超えているとはいえないスピーカーである。
ウーファーの416-8Cの能率がいちばん低いから、ここがシステムの数字となる。
ドライバーは100dBを超えている。
トゥイーターのJBLの075は、もう少し高い数字である。
ホーン型だから、高能率はいわば当然といえるし、
それでもウェスターン・エレクトリックのドライバーからすると、低い数字でもある。
無声映画からトーキーへと、なった時代、
アンプの出力はわずか数Wだった。
そのわずかな出力でも、映画館いっぱいに観客に満足のいく音を届けなければならない。
そのために必要なことは、スピーカーの徹底した高能率化である。
他のことは犠牲にしてでも、まず変換効率をあげること。
そこに集中しての開発だった。
いまのスピーカー開発が拡張というアプローチをとっているのに対し、
古のスピーカー開発は集中というアプローチをとっていた。