拡張と集中(その9)
スピーカー単体での変換効率は、圧倒的に昔の方が高かった。
アンプも真空管の時代でも、出力は、時代とともに増していった。
マッキントッシュのMC3500は350Wの出力をもつ管球式アンプである。
時代は、真空管からトランジスターへの増幅素子の移行があり、
同じ出力であれば真空管よりもトランジスターを採用した方が、アンプそのもののサイズは小さくなる。
さらに増幅方式がA級動作からB級動作、そしてD級動作となれば、
アンプの効率が高くなっていく。
そうなればアンプのサイズはますます小さくなる。
しかもA級アンプは効率が悪い、ということは、
効率の悪いスピーカー同様、熱を大量に発する。
効率の良いD級アンプは発熱も少ない。
A級アンプに不可欠だった大型ヒートシンクは、
D級アンプには不要になってくる。サイズはさらに小さく、軽くできる。
電源もスイッチング方式が増えてきている。
効率のよい電源方式である。
増幅部も電源部も効率が飛躍的に向上している。
D級動作+スイッチング電源のアンプは、小さく軽い。
こうなってくると、スピーカーの変換効率ではなく、
パワーアンプを含めた変換効率を考えると、
スピーカーの変換効率の悪さを、変換効率の高いアンプでカバーする、
いまの方が高いといえるのではないか──、そう考えることもできる。
それにウェスターン・エレクトリックのユニットは励磁型が多かった。
そうなるとユニット用に電源が必要となる。
ユニットもずしりと重かった。
アンプも出力は低くとも大きく重かった。
スピーカーユニット用の電源も同じだった。
どれだけの物慮を投入しての変換効率の高さなのか。
そのことに対しあきれもするが、わくわくもする。
つまりそれだけの物量を、変換効率の高さのために投入していた。
まさに集中のアプローチである。