Archive for 10月, 2013

Date: 10月 8th, 2013
Cate: 930st, EMT

EMT 930stのこと(その7)

テープデッキにおける走行系は、
アナログディスクプレーヤーではターンテーブルの回転が、それにあたる。

アナログディスクはCDとは異り、回転数は一定である。
LPでは33 1/3rpm、EPは45rpm、つまり角速度一定で回転している。
そのためアナログディスクの外周と内周とでは、例えば一秒間に針先がトレースする距離は違ってきて、
外周のほうが長い分だけ、音質的には当然有利になる。

そういう宿命的な問題点を抱えているとはいえ、
ターンテーブルは常に一定の回転数で安定して廻っていればいいわけだが、
カタログ上のワウ・フラッターの数値では表示できない、
微妙な回転のムラが、
外部からの影響、アナログディスクの振幅の大きいところなどにより発生していると考えられている。

それにターンテーブルの駆動源であるモーターが、どれだけスムーズに回転しているかの問題もある。

とにかく、いついかなる時もスムーズで安定した回転。
これを実現するに、どうすればいのだろうか。

一般的にはアナログディスクプレーヤーの場合、
角速度一定ゆえにターンテーブルの質量を、それも外周部において増やすことで、
慣性質量を利用する手法が、以前からとられてきている。

現在市販されているアナログディスクプレーヤーの主流は、
比較的重量のあるターンテーブルを、
比較的トルクの弱い(振動の少ない)モーターによるベルドドライヴということになる。

EMTの927Dst、930stは、そういう手法は取らずに、
充分すぎる大きさのモーターによるリムドライヴ(アイドラードライヴ)である。

Date: 10月 7th, 2013
Cate: D44000 Paragon, JBL, 瀬川冬樹

瀬川冬樹氏とスピーカーのこと(その17)

「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」の
瀬川先生の「いま、いい音のアンプがほしい」の書き出しを読んだ時、
仕事場として、都内の高層マンションの10階の部屋を借りられたのだと思った。

病気で入院され、退院されて復帰されたばかりだったから、
少しでも交通の便がよく、出版社やメーカーに近い都心の方が身体への負担も少ないだろうから……、
そんなふうに考えてしまった。

これ以外に、本漆喰の、あのリスニングルームの他に、もう一部屋、
そこに住まわれる理由が私には思いつかなかった。

ほぼ理想に近いとも思われるリスニングルーム、
ずっと借家住まいをされてきて、やっと建てられたリスニングルームだけに、
そこから瀬川先生が離れられるわけがない──、
そう思い込もうとしていた。

なぜ高層マンションに移られたのか、
その理由を知るのは、ステレオサウンド 62号、63号に掲載された追悼記事による。

独りになられたんだぁ……、とそう思った時、
ステレオサウンド 59号のパラゴンの文章を読み返していれば、といまは思うのだが、
当時は、なぜか59号の文章のことは頭になかった。

それだけ瀬川先生がいなくなられたことのショックが大きかったからでもあるし、
59号の、短いパラゴンについての文章よりも、
「いま、いい音のアンプがほしい」を読み返すことに気がとられてもいたからだろう。

Date: 10月 7th, 2013
Cate: 930st, EMT

EMT 930stのこと(その6)

アナログディスク再生ではカートリッジの針先がレコードの溝をたどった際に発生する振動が、
カンチレバーの奥に取り付けられている(MC型の場合)コイルに伝わり、
このコイルが磁気回路内で動くことにより発電し、音声信号が得られる。

カートリッジが信号を生み出していることになるわけだが、
ただレコードの溝に針を落としただけではカートリッジは発電はしない。
あくまでもレコードが回転しているからこそ、カートリッジは発電できる。

レコードが回転できるのは、レコードを乗せているターンテーブルが文字通り回転しているからである。

こんなふうに考えていけば、ターンテーブルの回転こそが、
アナログディスク再生におけるエネルギーの源と捉えることができる。

そして、これも当り前すぎることで、こうやって書くのもどうかと思ってしまうのだが、
ターンテーブルの回転エネルギーの源はモーターである。

Date: 10月 7th, 2013
Cate: 930st, EMT

EMT 930stのこと(その5)

カセットテープ(デッキ)とオープンリールテープ(デッキ)の音の安定感の違いを生み出しているのは、
走行系の安定性だと私は思っている。

テープというものはベースとなる材質を考えても、
片方のリールにしっかりと巻かれているテープが、もう片方のリールへと巻き取られていくことによる変動要素、
そういったことを考えると、一朝一夕に走行の安定性が得られたのではないことはわかる。

いろいろなメーカーがさまざまな試みをやった結果として、
現在のオープンリールデッキが完成したのであり、その成果は見事だと思う。

そんなオープンリールテープ(デッキ)とくらべると、
カセットテープは走行系が弱い、と言わざるを得ない。

フィリップスがカセットテープを開発してから、
おもに日本のメーカーが躍起になったことで、ずいぶんと走行の安定性は得られるようになったといえても、
やはりカセットテープの構造上、テープを取り出してテープを走行させることができないため、
録音ヘッド、再生ヘッドへのタッチの具合もふくめて、
オープンリールテープ(デッキ)にはどうしてもかなわない。

カセットテープと同じようにプラスチック製のケースにテープがおさめられているビデオテープ、DATテープ、
これらはテープをケースの外側に引き出してヘッドに巻きつけて走行させている。

ビデオテープ、DATテープが、カセットテープと同じ構造であったら、どうなっていただろうか。

アナログディスクにおけるテープの走行性にあたるのは、いうまでもなくターンテーブルの回転である。

Date: 10月 7th, 2013
Cate: 「スピーカー」論

「スピーカー」論(その4)

High-Fidelityは、ときとして都合のいいものである。
この音はハイフィデリティだ、このほうがハイフィデリティだ、的な使い方がなされているが、
この場合、もっとも問題になるのは、何に対してのハイフィデリティか、ということは、
実のところ、ずっと以前からいわれていたことではあるにも関わらず、
いまでも、ただ単に「ハイフィデリティだ」というふうに使われることが多い。

再生側におけるハイフィデリティとは、
理想論は別として現実には、録音に対してのハイフィデリティということになる。
では録音におけるハイフィデリティとは、やはり原音ということになる。
だが、この原音と呼ばれる、正体が判然としないものに対してのハイフィデリティとは、
いったいどういうことになるのか。

このことについて書くことは、
ここでの「スピーカー」論から離れていくし、
再生側におけるハイフィデリティは、録音に対してのハイフィデリティということに落ち着く。
それ以上のことを望んでも、再生側からはいかんともしがたいからだ。

では録音に対してのハイフィデリティということになるわけだが、
2チャンネル・ステレオにおいては、左チャンネルと右チャンネルの信号がそれぞれ録音されている。
このふたつのチャンネルの信号を、
まったく干渉せずに何も加えず何も減らさずにスピーカーに電気信号として送り込む、
その送り込まれた電気信号を完全な正確さで振動板のピストニックモーションへと変換する。
この際に、余分な共振はいっさい加えない。

これが果して録音に対してのハイフィデリティといえるのか、となると、
やはりこれは録音「信号」に対するハイフィデリティということでしかない。

Date: 10月 6th, 2013
Cate: 「スピーカー」論

「スピーカー」論(その3)

スピーカーは、アンプからの電気信号を振動板のピストニックモーションとする変換器であるとすれば、
アンプからの電気信号のとおりに、振動板が前後に動けばいい、ということになる。

もちろん分割振動という余計なものはなく、振動板が正確に前後にのみ、
電気信号にあくまでも忠実に動く。

低音から高音まで、ピアニシモからフォルテシモまで、
あらゆるおとの電気信号が来ても、それを振動板の前後運動に正確に変換する。
そしてエンクロージュアの振動も極力抑えていく。

とにかく振動板以外の振動は不要な振動と判断して、
振動板のみが正確にピストニックモーションする──、
大ざっぱに言えば、これがいまのスピーカーの目差すところである。

このことが100%実現できる日が来たとしよう。
それでHigh-Fidelityは実現された、といえるようになる──、とは私には思えない。

これは、あくまでもアンプからの電気信号に対してのHigh-Fidelity(高忠実度)でしかない。
Signal-Fidelityの理想を実現した、としかいえない。

アンプからの電気信号を正確に振動板がピストニックモーションできれば、
それで理想が実現、問題解決となるほど、オーディオはたやすくない。

スピーカーがそんなふうになるころには、
アンプも当然進歩していて、入力信号そのままに増幅して、歪もノイズもいっさいなしになっていることだろう。
ならばアンプからの電気信号の通りに振動板がピストニックモーションしていれば、問題はない──、
はたしてそう言えるのだろうか、それだけで充分なのだろうか。

Date: 10月 6th, 2013
Cate: 930st, EMT

EMT 930stのこと(その4)

音の安定感といっても、ひとによってその捉え方はさまざまだということをわかっている。
だから具体的な例をだして話をしよう。

カセットテープとオープンリールテープとがある。
両者の音の違い──、
それももっともはっきりとした音の違いということになると、
私にとっては、音の安定感になる。

カセットテープの音は、どこかふわふわしたとでもいおうか、
そういう心もとなさ、不安定さがどこかに感じてしまう。
普及型のデッキで、安価なテープで録音・再生してみると、よけいにそれははっきりとする。

高級カセットデッキと呼ばれるモノで、テープもしっかりとしたものを用意すれば、
普及型の時と比較すれば安定感は確実に増す。

これだけ聴いていれば、そう不満も抱かないのかもしれないが、
一度でもオープンリールデッキでの録音・再生の音を聴いてみれば、
やはりカセットはカセットでしかないな、と残念ながら感じてしまう。
それだけオープンリールデッキ(もちろん良質のデッキに限るけれども)の音は、
どっしりと安定している。業務用の物となると、より安定感は増してくる印象がある。

私はカセットテープとオープンリールテープの音の違いを、こう感じているし、
カセットテープの最大の不満はここにあるわけだが、
カセットテープの音に、特に不安、不安定さを感じない、という人もいる。

それは、音に何を求める化の違いであって、
ことさら音の安定感──この音の安定感は、音の確実性でもある──を求めない人にとっては、
カセットテープの音に、大きな不満を感じることはないのも頷ける。

もっともカセットテープの音の魅力は、この不安定さをうまく処理したところにある、とは思っている。

Date: 10月 6th, 2013
Cate: 世代

世代とオーディオ(JBLの型番)

オーディオのことを話していて、最近感じることが多くなったのは、
JBLのスピーカーユニットの型番をを言っても、通じなくなってきたことである。

JBLの2397といっても、それがまずホーンだということを説明して、
それからどういう形状のホーンなのかについて話さなければならない。

JBLのスピーカーユニットのラインナップが充実していたのは1980年代まで、といっていいだろう。
だから若い世代には、JBLのスピーカーユニットの型番をいっても通じないのは、仕方ないことなのだろう。

私がステレオサウンドに入ったころは、
JBLのスピーカーユニットの型番はほぼすべて憶えていなければいけない、という雰囲気があった。
そうでなければステレオサウンドの編集者として勤まらないのではなくて、
まわりにJBLのスピーカーユニットにただならぬ関心をもっている人が数人いたからで、
彼らの話についていくには、ウーファー、フルレンジ、トゥイーター、ドライバーの型番だけでなく、
ホーンの型番、そしてスロートアダプターの型番、ネットワークの型番まで、
しっかりと憶えている必要があった。

ステレオサウンドに入る前からほとんど記憶していた。
ただネットワーク、それもプロ用のネットワークの型番は完全とはいえなかった。

でも、そういう環境にいれば、すぐに憶えてしまう。
そうやって憶えてきたことは、いまでもけっこう憶えているものである。

自分がそうだったから、人もそうだと思いがちなのが、人間であろう。
同世代、もしくは上の世代のオーディオマニアは、みなJBLのスピーカーユニットの型番を諳んじている。
そう思ってきた。ずっとそう思ってきた。

皆がみんなJBLのスピーカーユニットに関心を持っていたわけではないことは、
少し考えればわかることなのに、そんなふうに思ってしまっていた。

JBLのスピーカーユニットの型番だけを言っても通用しないのは、
世代に関係なく一般的なのかもしれない。
とはいえJBLのスピーカーユニットの型番を言った後で、その説明をしなければならないことに、
それでも時代が変ってしまった、と感じてしまうのはなぜなのだろうか。

Date: 10月 5th, 2013
Cate: D44000 Paragon, JBL

パラゴンの形態(その7)

すでに書いているようにステレオサウンド 60号の318ページには図面も載っている。
4520エンクロージュアのホーン開口部にHL88ホーンを取り付けた側面図である。

この図を見た人ならば、そこにパラゴンの図面が重なってくるであろう。

JBLのバックロードホーン型システムとして、C40 Harknesがよく知られているが、
このC40 Harknesより前にC34 Harknesと呼ばれる、やはりバックロードホーン型システムがある。

C40は横置きのエンクロージュアで、C34は縦置きでコーナー型という違いがある。
そのことを知っている人ならば、318ページの側面図を頭の中で90度傾けてしまうのだはないだろうか。

4520エンクロージュアのホーン開口部にHL88ホーンを取り付け、横置きにする。
ウーファー用のホーンに構造の違いはあるものの、パラゴンの思い起すには充分である。

C55は1957年に登場しているが、C55はC550の型番を変更しただけであり、
C550は1955年の登場である。
パラゴンは1957年。

登場した年代はパラゴンのほうが後ではあるが、
パラゴンは構想から製品化まで10年近い年月がかかっている、ときいている。
とすれば、C55(4520)エンクロージュアのホーン開口部にHL88を取り付けるという発想は、
パラゴンのユニット配置が先にあったから生れてきたものかもしれない。

Date: 10月 5th, 2013
Cate: 930st, EMT

EMT 930stのこと(その3)

安定感のある音──、
こう書いてしまうと、誤解する人がいることをこれまでの体験から知っている。

安定感のある音、それはどっしりした音、
つまりに鈍い音、細やかさに欠ける音──、
そんなふうに受けとる人が、なぜかいる。

あえて書けば、安定感のある音、
これがあるからこそ、実は細やかな音、音楽の繊細な表情を、
同じアナログディスクから聴き得ることができる。

繊細な音を、どうも勘違いしている人が少なからずいる。
繊細な音を出すには、音の強さが絶対的に不可欠である。

音のもろさを、繊細さと勘違いしてはいけない。
力のない、貧弱な音は、はかなげで繊細そうに聴こえても、
あくまでもそう感じてしまうだけであり、そういう音に対して感じてしまう繊細さは、
単にもろくくずれやすい類の音でしかない。

そういう見せかけだけの繊細な音は、
音楽のもつ表情の変化に十全に反応してこない。
いつも脆弱な印象をつきまとわせ、聴き手に不安な印象を与える。

そんな音が好きな人もいる。
でも、私はそんな音で音楽を聴きたくはない。
音楽にのめり込むには、そんな音では困る。

聴き手に不安・不安定さを感じさせない、
そういう音でなければ、実のところ繊細な音の表現は無理だと、これまでの経験からはっきりといえる。

Date: 10月 5th, 2013
Cate: 930st, EMT

EMT 930stのこと(その2)

EMTのアナログプレーヤー、930stは1970年代においても、
すでに旧式のプレーヤーとしての扱いだった。

国産のアナログプレーヤーはすべてがダイレクトドライヴ方式に移行していて、
ワウ・フラッターは930stよりも一桁安い価格帯の普及型プレーヤーでも、
930stのワフ・フラッターの値よりも一桁低いレベルに達していた。

1970年代の終りには、カッティングマシンもダイレクトドライヴ化されてきて、
ワウ・フラッターの低さを誇るレコード会社も現れていた。

そういう時代にリム(アイドラー)ドライヴの930stは、音のよいプレーヤーの代名詞となっていた。
とはいえ、オーディオマニアのすべての人が、そう認識していたわけではない。

「EMTの930stって、ほんとうに音のいいプレーヤーですか」という人は今だけでなく、昔からいた。
旧式ともいえるつくり、カタログ上のスペックにしても旧世代といえるものだから、
今も昔もいるカタログ上のスペックがなによりも優先する人たちにとっては、
930stというアナログプレーヤーは、旧式であるばかりか非常に高価なだけに、
物好き(骨董好き)が使うモノということになろう。

930stが旧式のプレーヤーであることは否定しないが、
音を聴けば、この旧式のプレーヤーでなければ求められない音の安定感があることにわかる。

930st以上の安定感を求めるならば、927Dstかトーレンスのリファレンスにしかないくらいに、
930stでかけるアナログディスクの音は安定している。

Date: 10月 5th, 2013
Cate: D44000 Paragon, JBL

パラゴンの形態(その6)

ステレオサウンド 60号、318ページの写真と図面を見た人ならば、
このシステムがいったいどういう音を出したのか──、
この手のシステムにあまり関心をもてない人であっても、気になるのではないだろうか。

この記事(スピーカーユニット研究)の筆者、園田隆史氏は次のように書かれている。
     *
 さて、今度は低音ホーン内部にHL88を据えつけたシステムに移ろう。最初は、中高音がウーファーより下から聴こえてくるのではないかという心理的な不安と、今まで見たことのないような面構えになかなか慣れることができなかった。ところが実際に音を出してみると、音源はウーファーとホーンレンズの中間にできることがわかった。これは標準的なフロアーシステムとほぼ等しい高さで、聴きなじんでゆくうちに、ドライバーとウーファーのつながりの良さも相まって、とても自然な音場が得られることに気づいた。前システムと比べると、ややドライバー帯域のレベルが下がり、ハイエンドがまるめこまれた印象になる。気掛かりな低音ホーン内部での回折効果も少なく、センターのファンタムチャンネルが抜けてしまうということもない。また、低音によってドライバーの音が妙な変調を受けることもなかった。
 むしろ、エネルギーの重心が明らかに下がり、ホーンドライバーの存在を意識させないメリットのほうが大きい。HL88をエンクロージュアに載せたシステムとは、明らかにスペクトラムが変ったという印象で、今まで聴いてきた数々の組合せのなかでは、最も滑らかな中高域が聴ける。ハイエンドがそれほどのびているわけではないにもかかわらず、トゥイーターの必要性をまったく感じさせないのは、帯生きないのクォリティが揃っているからだろう。聴かされているという印象の強かったこのPAシリーズのなかで、そうした威圧感が最も少なかったシステムだ。かといって迫力やエネルギー感に不満がないのは、こうした大型システムの余裕だろう。
     *
この試聴で使われている4520エンクロージュアは、プロ用なだけに黒の塗装仕上げで、
見た感じは、いかにも業務用スピーカーという印象が強い。
もちろんサランネットなどついてこないから、
バックロードホーンの開口部にHL88を取り付けると、
見慣れるまではかなり奇異な感じがつきまとうことだろう。

人によっては見慣れるということがないかもしれない。

だが4520の元となったC55には、
4520と同じ黒の塗装仕上げの他に、サランネットのついたウォールナット仕上げも用意されていた。

サランネット付きであれば、HL88を隠すことができる。
4520(C55)はかなり大型のエンクロージュアではあるが、
ウォールナットでサランネットがついて、
ホーンを含めてユニットがいっさい見えないのであれば、ずいぶん部屋に置いた感じも変ってくる。

Date: 10月 4th, 2013
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その14)

シルエットとデザインについて考えていると思い出すことがある。

私が子供のころ、テレビではウルトラマンをやっていた。
ウルトラマンをやっていたころ、私の住んでいたところではNHK以外の民放局はひとつしかなかった。
そのあともう一局増えて、いまではさらにふえているけれど、
私が上京するまでは、民放は二つだけだった。

チャンネル数が、東京など大都市とくらべてずっと少なかった、そのころの地方では、
テレビ番組の数もそれに比例して少ないわけで、
ウルトラマンの放送する時間帯、
子供のいる家庭ではほとんどウルトラマンにチャンネルを合せていたことだろう。

みんなウルトラマンに夢中になっていた。私もそうだった。

ウルトラマンにのオープニングには、ウルトラマンや科学特捜隊のメカ、
それに怪獣たちがシルエットで描かれていた。

ウルトラマンに続くウルトラセブンでも同じだった。
主題歌が流れるオープニングではウルトラセブン、ウルトラ警備隊のメカ、怪獣が、
やはりシルエットで描かれていた。

シルエットが伝えてくれる、いわゆる情報量は少ない。
だがウルトラマン、ウルトラセブンでのシルエットは、
それだけで何が描かれているのか、子供にもすぐにわかるほど特徴的であった。
つまり、そのことはウルトラマン、ウルトラセブンに登場する、
ウルトラマンやウルトラセブン、車や戦闘機といったメカ、怪獣のデザインが、
シルエットだけで表現されていた、ということでもある。

Date: 10月 4th, 2013
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その13)

パイオニアのExclusive F3は、
Exclusiveシリーズの他のモデルと同じようにヒンジパネルをもつ。
このポケットの中に電源スイッチ、ワイド/ナロウの切替え、ミューティングなどの六つのツマミが並ぶが、
ヒンジパネルを閉じた状態では、チューニング用のツマミだけが、
フロントパネルにある、ただひとつのツマミということになる。

ということはExclusive F3において、フロントパネルを占めるのは、
コントロールアンプのC3ではツマミだったけれど、
メーター、ダイアルスケールといった表示に関するものである。

Exclusive C3をシルエットで表しても、
ツマミの数、配置によって、オーディオ機器を見慣れている人であれば、
このシルエットはExclusive C3だと判断できても、
フロントパネルにツマミがひとつしかないExclusive F3を、
シルエットだけで、そうだということを言い当てられる人がどれだけいようか。

ツマミの少なさから、ほとんどの人がシルエットだけでもチューナーということはわかる。
だが、そこから先、どのメーカーの、どの機種なのか、となると、
各社のチューナーのデザインに相当な関心をもっていて、
しかもそれらを記憶していなければ言い当てることはまず無理である。

このシルエットだけでそれがどのオーディオ機器であるのか、
それがわかることは、オーディオのデザインにおいてどれだけ重要なことなのか、
それともさほど重要なことではないのか、
これについては迷っている。

Date: 10月 4th, 2013
Cate: 「オーディオ」考

なぜオーディオマニアなのか、について(その3)

具体的な何かを、意識的に音楽に求め得たいがために、音楽を聴いているわけではない。
モーツァルトにしろ、ベートーヴェンにしろバッハにしろ、
彼らの音楽を聴きたいとおもったり、何かで感じたりしたから聴いてきた。

その結果として、そこで鳴ってきた音楽を受けとめて、
何かを感じたり、何かを得たりすることがある。

同じ音楽(ディスク)をかけたからといって、常に同じものを感じたり得たりできるわけではない。

ヒーリングミュージックというのが、ほんとうに存在するのであれば、
いついかなる時も、ヒーリングミュージックと呼ばれる音楽を鳴らしさえすれば、
どんな人であっても、どんな時であって癒しが得られなければならないわけだが、
決してそんなことは起り得ない。

ある人にはヒーリングミュージックと呼ばれるものが癒しを与えてくれたとしても、
別の人にとっては、なんてことのない音楽でしかなかったりするだろうし、
同じ人であっても、癒しを感じる時もあれば、そうでない時もあってふしぎではない。

音楽のもつ力を信じてやまない。
音楽の効能を信じてもいるし、感じてもいる。
だから別項で、「wearable audio」を書き始めた。

音楽を聴き続けていくうえで大事なことは、
己が何を聴きたいのか、欲しているのかを、きちんと感じとれるかどうかである。

身体が欲しているものを食べること──、
このことだってそう簡単なことではない。

われわれはどれだけ素直に聴きたい音楽を選んでいるのだろうか。