世代とオーディオ(JBLの型番)
オーディオのことを話していて、最近感じることが多くなったのは、
JBLのスピーカーユニットの型番をを言っても、通じなくなってきたことである。
JBLの2397といっても、それがまずホーンだということを説明して、
それからどういう形状のホーンなのかについて話さなければならない。
JBLのスピーカーユニットのラインナップが充実していたのは1980年代まで、といっていいだろう。
だから若い世代には、JBLのスピーカーユニットの型番をいっても通じないのは、仕方ないことなのだろう。
私がステレオサウンドに入ったころは、
JBLのスピーカーユニットの型番はほぼすべて憶えていなければいけない、という雰囲気があった。
そうでなければステレオサウンドの編集者として勤まらないのではなくて、
まわりにJBLのスピーカーユニットにただならぬ関心をもっている人が数人いたからで、
彼らの話についていくには、ウーファー、フルレンジ、トゥイーター、ドライバーの型番だけでなく、
ホーンの型番、そしてスロートアダプターの型番、ネットワークの型番まで、
しっかりと憶えている必要があった。
ステレオサウンドに入る前からほとんど記憶していた。
ただネットワーク、それもプロ用のネットワークの型番は完全とはいえなかった。
でも、そういう環境にいれば、すぐに憶えてしまう。
そうやって憶えてきたことは、いまでもけっこう憶えているものである。
自分がそうだったから、人もそうだと思いがちなのが、人間であろう。
同世代、もしくは上の世代のオーディオマニアは、みなJBLのスピーカーユニットの型番を諳んじている。
そう思ってきた。ずっとそう思ってきた。
皆がみんなJBLのスピーカーユニットに関心を持っていたわけではないことは、
少し考えればわかることなのに、そんなふうに思ってしまっていた。
JBLのスピーカーユニットの型番だけを言っても通用しないのは、
世代に関係なく一般的なのかもしれない。
とはいえJBLのスピーカーユニットの型番を言った後で、その説明をしなければならないことに、
それでも時代が変ってしまった、と感じてしまうのはなぜなのだろうか。