EMT 930stのこと(その4)
音の安定感といっても、ひとによってその捉え方はさまざまだということをわかっている。
だから具体的な例をだして話をしよう。
カセットテープとオープンリールテープとがある。
両者の音の違い──、
それももっともはっきりとした音の違いということになると、
私にとっては、音の安定感になる。
カセットテープの音は、どこかふわふわしたとでもいおうか、
そういう心もとなさ、不安定さがどこかに感じてしまう。
普及型のデッキで、安価なテープで録音・再生してみると、よけいにそれははっきりとする。
高級カセットデッキと呼ばれるモノで、テープもしっかりとしたものを用意すれば、
普及型の時と比較すれば安定感は確実に増す。
これだけ聴いていれば、そう不満も抱かないのかもしれないが、
一度でもオープンリールデッキでの録音・再生の音を聴いてみれば、
やはりカセットはカセットでしかないな、と残念ながら感じてしまう。
それだけオープンリールデッキ(もちろん良質のデッキに限るけれども)の音は、
どっしりと安定している。業務用の物となると、より安定感は増してくる印象がある。
私はカセットテープとオープンリールテープの音の違いを、こう感じているし、
カセットテープの最大の不満はここにあるわけだが、
カセットテープの音に、特に不安、不安定さを感じない、という人もいる。
それは、音に何を求める化の違いであって、
ことさら音の安定感──この音の安定感は、音の確実性でもある──を求めない人にとっては、
カセットテープの音に、大きな不満を感じることはないのも頷ける。
もっともカセットテープの音の魅力は、この不安定さをうまく処理したところにある、とは思っている。