トランスからみるオーディオ(その15)
1981年春に、ラジオ技術社(現・アイエー出版)から、池田圭氏の「盤塵集」が一冊の本として出た。
ラジオ技術は、毎号とまではいかなかったけれど、無線と実験とともに、そのころはよく購読していた。
だから池田圭氏の連載も読んでいたから、「盤塵集」が出た時には、すぐに購入した。
「盤塵集」の項目は次の通り。
第一部 NFBへの告別
第二部 昔の吹込みと今の録音
第三部 振動子とダンパー
第四部 バフル今昔
第五部 低域再生への道
それぞれの項目がさらに細かくわかれて書かれている。
第一部のNFBへの告別の中に、「L、C、Rの話」がある。
ここの書き出しを引用しておく。
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このところ、アンプの方ではCR結合回路の全盛時代である。結合トランスとかリアクター・チョークなどは、振り返っても見られなくなった。けれども、測定上のしけウは数特性とかひずみ率の問題よりも音の味を大切にする者にとっては、Lの魅力は絶大である。
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私は「盤塵集」を、自分のシステムにトランスを挿入した体験をする前に読んでいる。
「盤塵集」の前にカートリッジは、
MM型(エラックのSTS455E)からMC型(オルトフォンのMC20MKII)へとしていたものの、
昇圧手段はサンスイのAU-D907 Limited内蔵のヘッドアンプだった。
昇圧トランスも試してみたかったけれど、高校生にはそこまでは無理だった。
それが良かったのか悪かったのはなんともいえないけれど、
トランスに対して、ある種アレルギー的な拒否反応を示すことは、私にはまったくない。
中途半端なトランスでMC20MKIIを鳴らして、
その結果(音)にがっかりした後に「盤塵集」を読んでいたら、
トランスに対して、いまとは違う見方をしていた可能性だってあっただろう。