チューナー・デザイン考(ラジオのこと・その1)
チューナーのことをどこか軽視してきたのは、
新しい音楽、いままできいたことのない音楽とであうのは、レコード(LPやCDなどのパッケージソフト)だ、
という意識、こだわりが強かったためで、
聴きたいと思っている音楽が、聴きたいときに必ずしも流れてくるわけではない、
その意味では受動的な聴き方となってしまうラジオだから、ということがあった。
そんな私でも、いま目の前にチューナーがある。
それもパイオニアのExclusive F3という、立派なチューナーだ。
開発・発売から30年以上経過しているチューナーだから……、とは思わせない堂々としたモノだ。
優れたデザインとは必ずしもいえなくとも、このチューナーを見ていると、
ラジオ放送を聴く、ということを再考しなければならない、そんな気持にしてくれる。
それで思い出すのは、ケイト・ブッシュのことだ。
ケイト・ブッシュという、イギリスの不思議な歌手がデビューしていたのは、
当時読んでいたFM誌、それにそのFM誌が別冊で出した女性ヴォーカルのムックで知っていた。
東京で行われた歌謡音楽祭での写真を見て、
ケイト・ブッシュという歌手の音楽を聴くことはない、と実は思っていた。
その写真は、嵐が丘をパフォーマンスしながら歌うケイト・ブッシュだった。
そのケイト・ブッシュの服、マイクロフォンの位置、そういった歌とは本質的にまったく関係のないところで、
生理的な嫌悪感があり、聴くことはない、と思った。