オーディオ 夢モノがたり(その2)
理屈として、音楽信号をフーリエ変換すれば、複数のサインウェーヴの合成によるものとなるわけだから、
すべての可聴帯域のサインウェーヴを完璧に再生できれば、
つまり正確なピストニックモーションを実現できれば、音楽信号を再生できる。
こんなふうに考えればいいことはわかっていても、
それと感覚的な納得とはまた別のことである。
なぜ紙の振動板のスピーカーから、馬のしっぽのヴァイオリンの音が聴こえてくのか、
金属の皿をひっぱたいたシンバルの音がしてくるのか、
皮をピンと張った太鼓の音がそれらしく聴こえるのか、
これも感覚的納得のいかないことだったし、
考えれば考えるほどわからなくなっていた。
考えた。でもあの時、自分を感覚的に納得させられる答を見付けることはできなかった。
だから、とにかくピストニックモーションの実現が大事なことなのだと思い込ませた。
ピストニックモーションを追求していくと、振動板の質量はできるだけ小さくしたい。
とはいえただ軽いだけの振動板ではピストニックモーションの実現は困難である。
すくなくともダイナミック型のスピーカーでは無理である。
そこで振動板全面に駆動力を与えるコンデンサー型があるし、
それに類似した方式がいくつか考え出されてきた。
けれどピストニックモーションである以上、
振動板の質量をどれほど軽量化しようとも振動板の質量から解放されることは絶対にない。