2011年ショウ雑感(続々・余談)
テクニクスの10TH1000、ADAMのX-ARTドライバー、エラックのJETドライバーは、
なぜトランスを必要としないのか。
これらのユニットを、パイオニアのPT-R7と同じリボン型として捉えていては答は見つからない。
10TH1000は振動板(というよりも膜)にポリイミドフィルムを使い、
その表面にエッチング技術によりボイスコイルを形成している。
このことはX-ART型もJET型、ハイル・ドライバーも基本的には同じである。
振動板(膜)にはフィルム系の素材(もちろん非導体)を使い、
その表面にエッチング技術やアルミ箔を貼りつけてボイスコイルをつくっている。
便宜上、ボイスコイルという表現を使ったが、
一般的なスピーカーユニットのボイスコイルにあたるもの、という意味で使ったものであり、
フィルム振動板の上にコイルがつくられているのではなく、電気信号の通り道である。
リボン型では電気の通る道は、上から下(もしくは下から上)となる。
アルミ振動板の中をジグザグに流すことはできない。
アルミ振動板にスリットをいれていけば不可能ではないけれど、
アポジーのリボン型のウーファー以外、実用例を知らない。
一方、リーフ型やハイル・ドライバーでは非導体の振動板上に電気信号の通り道をつくるため、
自由度は比較にならないほど大きい。
その全長もコントロールできる。
つまりインピーダンスが4Ωなり8Ωにでき、インピーダンスマッチング用のトランスを省ける。
10TH1000の振動板に対し電気信号は、リボン型のように上から下(下から上)といった垂直方向だけでなく、
水平方向にも流れている。
X-ART型、JET型(ハイル・ドライバー)も、その点は同じである。
だからインピーダンスマッチング用のトランスは要らない。