なぜ逆相にしたのか(その5)
ウェスターン・エレクトリックの一部門であるERPI(Electrical Research Products Inc.)は、
ランシング・マニファクチャリングに対して、284と594Aが酷似していること訴え、
ウェスターン・エレクトリックは、ランシングが284に同心円状スリットのフェイズプラグを採用したのを問題とし、
同社のドライバーに関する特許を侵害しているとして通告している。
フェイズプラグの問題は、ランシング・マニファクチャリングのジョン・ブラックバーン博士の開発による、
同心円状のフェイズプラグと同じ効果が得られる放射状スリットのフェイズプラグを採用し、
型番を285と改めていることで解決している。
ただ、この問題は、同種のフェイズプラグがすでにアクースティック蓄音機の時代にすでにあったことがわかり、
1938年にランシング・マニファクチャリングは、同心円状のフェイズプラグをふたたび採用。
284は284Bとなり、これと並行して801を開発している。
801は1.75インチのボイスコイル径をもつフィールド型のドライバーで、フェイズプラグは同心円状スリット。
801の磁気回路をアルニコVに置換えたのがアルテックの802であり、そのJBL版がD175である。
フェイズプラグに関しては、わずかのあいだとはいえゴタゴタがあったのに対して、
バックプレッシャー型のドライバーに関しては、
理由ははっきりしないが、結局のところ特許関係の問題は起こらなかった、とある。
やはりランシングの発明だったからなのか……。