なぜ逆相にしたのか(その4)
ウェスターン・エレクトリックの、ふたつの有名なドライバーである555と594A。
555が登場したのが1926年、594Aは10年後の1936年。
このあいだ、1930年にボストウィックトゥイーターと呼ばれる596A/597Aが登場。
そして594Aの前年に、ランシング・マニファクチャリングから284が登場している。
2.84インチのボイスコイル径をもつこの284ドライバーは555とは大きく構造が異り、594Aとほぼ同じ構造をもつ。
555も596A/597Aも、ドーム状の振動板はホーンに近い、つまりドライバーの開口部側についている。
昔のスピーカーに関する技術書に出てくるコンプレッションドライバーの構造と、ほぼ同じだ。
それが284、594Aになると、現在のコンプレッションドライバーと同じように後ろ向きになる。
いわゆるバックプレッシャー型で、
磁気回路をくり抜くことでホーンスロートとして、振動板を後側から取りつけている。
この構造になり、振動板の交換が容易になっただけでなく、フェイズプラグの配置、全体の強度の確保など、
設計上の大きなメリットを生み出し、現在でも、ほぼそのままの形で生き残っている。
この構造を考えだしたのは、おそらくランシングであろう。
ステレオサウンドから出ていた「世界のオーディオ ALTEC」号で、
池田圭、伊藤喜多男、住吉舛一の三氏による座談会「アルテック昔話」のなかでは、
この構造の特許はウェスターン・エレクトリックが取っているが、
考えたのはランシングであろう、となっている。
この構造がなかったら、アルテックの同軸型スピーカーの601(604の原型)も生れなかったはずだ。
もし登場していたとしても、異る構造になっていただろう。