Archive for 2月, 2010

Date: 2月 21st, 2010
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その21)

キングダムのユニット構成は、同軸型ユニットを中心として、低域にサブウーファーを、
高域にスーパートゥイーターを追加した4ウェイである。

ここまで書けば、察しのいい方ならば気がつかれるだろうが、
タンノイのスピーカーづくりのありかたとして、同軸型ユニットだけでシステムを構築する場合には、
従来からのウーファーとトゥイーターのマグネットを兼用させたものが、
そしてレンジ拡大のためにウーファーやトゥイーターが追加されるときには、
マグネットが独立したタイプが使われる。

このことから推測されるのは、重視する要素が、システム構成によって違いがあるということだ。

それぞれの同軸型ユニットが重視している要素は、調和か明晰か、ではなかろうか。
このことは、エンクロージュアの構造、つくりの違いにも顕れている。

Date: 2月 21st, 2010
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その20)

タンノイの同軸型ユニットは、必ずしもマグネットがひとつだけ、とは限らない。
1977年ごろ登場したバッキンガム、ウィンザー、このふたつのシステムに搭載されているユニット2508は、
フェライトマグネットを、高音域、低音域用とにわかれている。

バッキンガムも、ウィンザーも、ウーファーユニットを追加したモデルだ。
このときのタンノイの主力スピーカーシステムは、アーデン、バークレイなどの、いわゆるABCシリーズで、
使用ユニットはアルニコマグネットのHPDシリーズ。いうまでもなくマグネットはひとつだけ。
さらに同時期登場したメイフェアー、チェスター、ドーセット、アスコットには、2528DUALが使われている。
このユニットもフェライトマグネットだが、低音、高音で兼用している。

HPDシリーズはのちにフェライトマグネット使用のKシリーズに換っていくが、
Kシリーズも、マグネットひとつだけ、である。
2508のマグネットがふたつあるのはフェライトマグネットだからではないことが、このことからわかるだろう。

1996年、キングダムが登場する。
このキングダムに搭載されている同軸型ユニットも、またマグネットを2組持っている。

Date: 2月 20th, 2010
Cate: オーディオ評論

オーディオ評論家の「役割」、そして「役目」(その7)

堂々巡りは、なにも悪い面ばかりではない。
同じところを何度も廻っているうちに、その「中心」がはっきりとしてくるからだ。
中心をはっきりと認識できれば、堂々巡りはきれいな円に近づいてくだろう。
そして円を小さくしていけばいいのではないだろうか。
「中心」に近づいていくのだから。

実は私も、堂々巡りしているのかもしれない。
だから、見据えていなければならない。

だが、堂々巡りしていることに気がつかないでいると、その軌道は円からはずれてしまい、
いびつな形になってしまうような気がする。
そうなるととうぜん「中心」は見えなくなる、というよりも、喪失してしまう。

Date: 2月 20th, 2010
Cate: オーディオ評論

オーディオ評論家の「役割」、そして「役目」(その6)

なにも耳の悪い人が、オーディオ評論家と名のっている人の中に大勢いる、と言いたいではない。

オーディオ評論家を名のっているいるだけのような人のなかにも、
オーディオを仕事とはされていない、趣味として楽しまれている人のなかにも、
音の違いがわかるという意味での、「耳のいい」人は少なくない、と思っている。

言いかえれば、性能のいい耳の人、ということになるだろう。

音を詰めていく作業は、わずかな差を聴きわけ、どちらかの音を正しく選んでいくことを、
何十、何百どころか、それ以上の数を反復し積み重ねていく、ということでもある。
「使いこなしのこと」の項の(その28)に書いた「微差力」を、
たゆむことなく積み重ねていくしかない。

着実に積み重ねていくために必要なことは、その都度その都度において、
正しい判断を下せるかどうかである。これにつきる。
これが「聴く耳」の確かさ、である。

どこか一箇所、判断を間違えてしまうと、そしてそれにいつまでたっても気がつかないでいると、
堂々巡りからいつまでも抜け出せない。

堂々巡りしていることを、オーディオの泥沼だ、といって、
それだけを楽しんでいる人は、そこにとどまっていればいい。

楽しみ方は人それぞれだから、あれこれ言うつもりはない。
こういう人たちを、私は「複雑な幼稚性」なひとびと、と呼ぶ。

だから「耳のいい」人の言ったり書いたりしていることは、多少参考にはするけども、
とくに信用はしていない。

信用できる耳の持主は、信用できる感性の持主でもある。

Date: 2月 19th, 2010
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その19)

振動板の駆動源といえるマグネットが兼用されているため、
節倹の精神によってタンノイはつくられている、ともいえるし、
口の悪いひとならば、ケチくさいつくり、とか、しみったれたつくり、というかもしれない。

けれどオートグラフという、あれだけ意を尽くし贅を尽くしたスピーカーシステムをつくりあげたタンノイが、
その音源となるユニットに、節倹の精神だけで、ウーファーのコーン紙のカーブを、
トゥイーターのホーンの延長として利用したり、マグネットをひとつにしたとは、私は思っていない。

ボイスコイルがひとつだけの純粋のフルレンジユニットでは、ワイドレンジ再生は不可能。
かといって安易に2ウェイにしてしまうと、タンノイが追い求めていた、
家庭での音楽鑑賞にもっとも大切と思われるものが希薄になってしまう。
そのデメリットをおさえるために、できるかぎりの知恵を出し、
コーン型のウーファーとホーン型のトゥイーターを融合させてようとした結果が、
タンノイ独自のデュアルコンセントリックといっていいだろう。

これは、外観からも伺えないだろうか。
アルテックの604の外観が、同軸型2ウェイであることを顕示しているのに対し、
タンノイのデュアルコンセントリックは、何も知らずにみれば、大口径のフルレンジに見えないこともない。

Date: 2月 18th, 2010
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その3)

ボザークは、この項の(その1)にも書いているように、
スピーカーユニットのラインナップは、4種類だけである。

JBLは、1978年の時点(ステレオサウンド発行のHiFi Stereo Guideに掲載されている単売ユニット)で、
フルレンジユニットが17、トゥイーターが4、ドライバーが9、ウーファーが14種類ある。

スピーカーメーカーとして、JBLとボザークを対比させていくと、
西海岸と東海岸、バスレフ型やホーン型エンクロージュアが主流のJBLと密閉型のボザーク。

スピーカーユニットの数も大きく違うが、その振動板においても、
JBLは、コーン型ユニットだけに絞っても、形状、制振材の塗布の有無、紙の質などが、
それぞれの用途によって使い分けられている。
ボザークは、ウーファーはパルプコーン、それ以外はメタルコーンで、
どちらも不要な振動を抑える工夫がなされている。

JBLのラインナップの多彩さ、派手さのまえでは、ボザークは地味にうつる。

スピーカーユニットの使用法においても、JBLは4350のダブルウーファーを除くと、
基本的にはパラレル使用はほとんどない。
ボザークは、東海岸の他のメーカーと同じように、ダブルウーファーだけでなく、
スコーカーやトゥイーターも、多数使用している。

そして4343は瀬川先生が愛用されたもの、B310は井上先生が愛用されたもの。
このふたつのスピーカーシステムには、ひとつの共通点があり、
それは瀬川先生と井上先生のスピーカーに対する考え方の共通点ともいえるのではないだろうか。

Date: 2月 17th, 2010
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その18)

アルテック、タンノイといった古典的な同軸型ユニットで、
ウーファー部の磁気回路とホーン型トゥイーター(もしくはスコーカー)の磁気回路が完全に独立しているのは、
長島先生が愛用されてきたジェンセンのG610シリーズがそうである。

完全独立、ときくと、マニアとしてはうれしいことではあるが、
ふたつ以上のマグネットが近距離にあれば干渉しあう。

干渉を防ぐには、距離を離すことが手っとり早い解決法だが、同軸型ユニットではそうもいかない。
ならばひとつのマグネットでウーファー用とトゥイーター用を兼ねよう、という発想が、
タンノイのデュアルコンセントリックの開発に当たっては、あったのかもしれない。

もっともマグネットは直流磁界で、ボイスコイルが発する交流磁界の変化によって、
磁束密度が影響を受ける、それに2次高調波歪がおこることは、
いくつかのスピーカーメーカーの解析によってはっきりとした事実であるから、
一つのマグネット(ひとつの直流磁界)に、二つの交流磁界が干渉するタンノイのデュアルコンセントリックでは、
音楽信号再生時に、どういう状態になっているのかは、専門家の話をうかがいたいと思っている。

Date: 2月 16th, 2010
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その17)

Uni-Qをもってして、同軸型ユニットは完成した、とはいわないが、
Uni-Qからみると、ホーン型トゥイーターのアルテックやタンノイの同軸型は、あきらかに旧型といえるだろう。

ただ、オーディオマニア的、といおうか、モノマニア的には、
アルテックやタンノイのほうに、魅力を強く感じる面があることは否定できない。
Uni-Qの優秀性は素直に認めても、個人的に応援したくなるのは、アルテックだったり、タンノイだったりする。

空想してもしかたのないことではあるが、もしJBLがUni-Qを開発していたら、
モノとしての魅力は、マニア心をくすぐるモノとして仕上っていただろう。

Uni-Qは、あたりまえのことだけど、あくまでもイギリス的に仕上りすぎている。
もっといえば、いかにもKEFらしく仕上がっている。
そこが魅力でもあるのは重々承知した上で、やはりもの足りなさも感じる。

すこし話はそれるが、アルテックとタンノイの同軸型ユニットを比較するときに、磁気回路の話がある。
タンノイはウーファーとトゥイーターでひとつのマグネットを兼用している、
アルテックはそれぞれ独立している、と。

たしかに604や605などのアルテックの同軸型ユニットにおいて、
ウーファーとトゥイーターのマグネットは独立している。
が、磁気回路が完全に独立しているかという、そうではない。

604の構造図をみればすぐにわかることだが、ウーファー磁気回路のバックプレートと、
トゥイーターのバックプレートは兼用していることに気がつくはずだ。

Date: 2月 16th, 2010
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その16)

ウーファーとトゥイーターの中心軸を揃えた同軸型ユニットは、
その構造ゆえの欠点も生じても、マルチウェイスピーカーの構成法としては、
ひとつの理想にちかいものを実現している。

同軸型ユニットは、単体のウーファーやトゥイーターなどにくらべ、
構造はどうしても複雑になるし、制約も生じてくる。
それでも、各スピーカーメーカーのいくつかが、いまも同軸型ユニットを、新たな技術で開発しているのをみても、
スピーカーの開発者にとって、魅力的な存在なのかもしれない。

KEFは1980年代の終りに、Uni-Qという同軸型ユニットを発表した。
それまで市場に現れた同軸型ユニットとあきらかに異り、優位と考えられる点は、
ウーファーとトゥイーターのボイスコイルの位置を揃えたことにある。

アルテックの604シリーズ、タンノイのデュアルコンセントリック・ユニットが、
トゥイーターにホーン型を採用したため、ウーファーとトゥイーターの音源の位置のズレは避けられない。

パイオニアのS-F1は、世界初の平面振動板の同軸型、しかも4ウェイと、規模も世界最大だったが、
記憶に間違いがなければ、ウーファー、ミッドバス、ミッドハイ、
トゥイーターのボイスコイルの位置は、同一線上にはなかったはずだ。

ユニットの構造として、Uni-Qは、他の同軸型ユニットを超えているし、
同軸型ユニットを、スピーカーユニットの理想の形として、さらに一歩進めたものともいえる。

Date: 2月 15th, 2010
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その2)

ボザークの音は、いちどしか聴いたことがない。
それも聴いたといっても、耳にしたことがある、といった程度で、決していい状態で鳴っていたとは思えなかったし、
正直、どんな音だったのかは、まったくといってよいほど記憶に残っていない。

しかも型番もなんだったのかはっきりしてない。
エンクロージュアもボザーク純正のシステムだったことは間違いないと記憶しているが……。

ボザークの輸入元は一時期トリオだったことがあり、価格を抑えるために、
エンクロージュアは日本で作っていて、ユニットを組み込んだモデルもある。

だから井上先生の言葉を参考にしたい。
     *
ボザークのサウンド傾向は、重厚で、密度の高い音で、穏やかな、いわば、大人の風格を感じさせる米国東海岸、それも、ニューイングランドと呼ばれるボストン産ならではの音が特徴であった。このサウンドは、同じアメリカでもかつて日本で「カリフォルニアの青い空」と形容された、JBLやアルテックなどの、明るく、小気味よく、シャープで反応の速い音のウェスタン・エレクトリック系の音とは対照的なものであった。
     *
ボザークのよさは、十代の若造がちょい聴きしたぐらいでわかるようなものでないことだけは、はっきりとしている。

Date: 2月 15th, 2010
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その15)

ステレオサウンド 47号の測定結果で比較したいのは、
アルテック620AとUREI・813であることはいうまでもない。

813のネットワークの効果がはっきりと出ているのは、
インパルスレスポンス、群遅延特性、エネルギータイムレスポンスにおいてである。

620Aのエネルギータイムレスポンスは、まず-40dB程度のゆるやかな山があらわれたあとに、
高く鋭く、レベルの高い山が続く。
最初の山がウーファーからのエネルギーの到達を示し、それに続く山がトゥイーターからのものである。

813はどうかというと、ゆるやかなウーファーの山の中ほどに、トゥイーターからの鋭い山が入りこんでいる。
ふたつの山の中心が、ほぼ重なり合っている形になっている。

620Aでのウーファーの山のはじまりと、813でのはじまりを比較すると、
813のほうがあきらかに遅れて放射されていることがわかる。
インパルスレスポンスの波形をみても、このことは読み取れる。

620Aでは、やはりゆるやかな低い山がまずあらわれたあとに鋭い、レベルの高い山が続く。
813では、ゆるやかな山の始まりが遅れることで、鋭い山とほぼ重なり合う。

群遅延特性も、同じアルテックの604-8Gを使用しているのに、813はかなり優秀な特性となっている。

Date: 2月 14th, 2010
Cate: 書く

続々・毎日書くということ

複数のテーマを並行して書いているから、書くことに困ることはない。
でも、指が動きを止めてしまう日は、どうしてもある。
書きたいことはあるのに、書き始めがうまくいかなかったり、
言葉が浮かんでこない日がある。

川崎先生は、毎日、ブログを書き続けることは「修業」だと書かれている。
自分を修練させるために「ことば」の世界に入る、と書かれている。

まだ、私はその域には達していないけど、そのとおりだと感じている。
毎日書くことは、努力ではなく、たしかに修業である、と。

そして、もうひとつ感じていることは、書くことによって、
自分自身をプログラミングしているような気もする。

Date: 2月 13th, 2010
Cate: サイズ

サイズ考(その66)

スピーカーのネットワークについて、すこし具体的なことを書いた。
その前は、トランスについて書いている。

ひとつことわっておきたいのは、この項のタイトルだ。
「サイズ考」であって、「トランス考」でもないし「ネットワーク考」でもない。
「トランス考」、「ネットワーク考」というタイトルをつけていたら、
まったく違う書き方をすることになるだろう。

この項では、あくまでもオーディオにおける「サイズ」について考えていくと、
その考えを少しずつ徹底させていくと、トランスやネットワークに関して、
技術的な捉えかたとは違う視点で捉えることができるということを感じとってもらえれば、
そしてその面白さを感じてもらえれば、それでいいと思っている。

サイズは、いちばんわかりやすい要素である反面、見えない「サイズ」、見えにくい「サイズ」が、
オーディオにいくつも存在しているからだ。

このブログでは、写真も図版もいっさい使っていない。
以前も書いたが、使ったほうが書くほうとしても楽である。
それでもあえていっさい使わないのは、「ことば」から、ということを私なりに重視しているからだ。

言葉遣いにおいて、まだまだ未熟なところもあり、誤解を招くこともあるだろうが、
それでも「ことば」から考えていくことの面白さを感じとってほしい、と思っているから、
これから先も写真、図版を使うつもりは、まったくない。

Date: 2月 13th, 2010
Cate: 「ネットワーク」

オーディオと「ネットワーク」(その2)

オーディオに関して、書きたいことは、このブログに書いている。
だから、何を書こう? Twitterにアクセスすると、ページ上部に「いまどうしてる?」という、
140文字が入力できるテキストフィールドがある。

ここに「つぶやき」を書いていけばいい、というものの、パソコンに向ってつぶやく習慣はないし、
「いまどうしてる?」に正直に答えれば、Macに向っている、になる。

もしくは小学校のときに流行っていた「いま何してる?」、「いま息していた」、
こんなことを書いてもなぁ、と思いながら、とにかく書くしかない。

何も書かずに、川崎先生のツイートを読んでいるだけだったら、
フォローを切られるのはまちがいないことなのだから。

「いまどうしてる?」よりも「今日は何していた?」のほうがつぶやきやすいから、
これで、とにかく毎日一回はつぶやこう、と。それもオーディオ、音楽に関することをメインにして。

Date: 2月 12th, 2010
Cate: 「ネットワーク」

オーディオと「ネットワーク」(その1)

今年に入って、Twitterを開始した。

どんなものかはなんとなく知っていたけれど、積極的にやりたいと思っていなかった。
オーディオ関係のブログでも、昨年後半あたりから、Twitterでのやりとりを表示させているところが、
いくつか現われはじめたのを読んでいると、やる気はさらに失せていっていた。

言いたいことがあれば、ここで書けばいいのだし、
140字という制約があるTwitterの、どこに面白さがあるのか、いまひとつ理解できなかった。

ならばやってみるのが早い、ということはわかっているけど、
このaudio identity (designing) とthe Review (in the past) 、ふたつのブログがあるから、
Twitterまで手を伸ばさなくてもいいだろう、と言い聞かせていたところもある。

保留にしていたところ、1月2日、
「川崎和男があなたをTwitterに招待しました」というメールが届いた。

こうなると、「やらなきゃ」という気持にぱっと切り替わってしまうところが、
我ながら、なんと単純だと思うところである。