Archive for category テーマ

Date: 7月 23rd, 2014
Cate: ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その86)

オーディオ全体をひとつのオーケストラとして捉えれば、
スピーカーシステムはそのオーケストラの顔であり、
システムのセッティング、チューニングといった調整は、オーケストラのリハーサルにあたる。

実際のリハーサルのように、オーディオの調整でも同じところを何度も何度も再生する。
音に関心のない人、オーディオに理解のない人からみれば、
なんと退屈なことをこの人はやっているんだろう、ときっと思われるであろうことを、
執拗にやっていくことで音をつめていく。

そうやって満足がいく音が得られたという感触があったら、
そのディスクの頭から聴いていく。
別のディスクをかけるときだってある。そのときでも最初からかける。
いわば、これらのディスクの再生は、もうリハーサルではなく、本番である。

本番だから、途中に気にくわない音が鳴ってきたとしても最後まで聴き通す。
この本番の再生で、どれだけスピーカーが、システムが本領を発揮できるか。

入念なリハーサル(調整)をやれば、
聴きなれたディスクであれば、リハーサルでの音からどういうふうに鳴ってくれるのか想像はつく。
その想像通りの音が鳴ってきたら、うまくいった、と喜べるわけではない。
私は、たいてい、そういうときはがっかりする。

私が求めているのは、リハーサルをこえる、本領発揮の音である。
私の想像をこえる音が、たとえ一瞬でもいいから鳴ってほしいのだ。

Date: 7月 23rd, 2014
Cate: 夢物語

オーディオ 夢モノがたり(その7)

ナガオカ/ジュエルトーンのリボン型カートリッジの内部構造は、
サテンのカートリッジに似ている、といえる。

いまは1980年代であれば、これだけで説明がすむわけだが、
いまは30年以上が過ぎ去った2014年で、サテンのカートリッジ、といっても、
サテン? という人が大勢いるだろうし、
サテン、懐かしいなぁ、という人でも、その構造がどうなっていたのかをすぐに思い出せる人は少ないかもしれない。

サテンのカートリッジの原型となっているのは、ウェストレックスの10Aといえる。
ウェストレックスはカッターヘッドをつくっていた。
10Aはカッターヘッドとペアになっていて、
カッティングされたラッカー盤の検聴用を目的としたカートリッジである。

ラッカー盤は基本的に一度だけの再生である。
それもあってか、10Aの構造はウェストレックスのカッターヘッドをそのまま再生用カートリッジとして、
規模を小さくといえるものである。

10Aの構造図を正面からみると、針先からV字状にアーマチュアがのび、
その先端に円筒形のコイルが取り付けられている。

この10Aの構造を模倣したのが、日本のニートのV50である。
サテンのMC型カートリッジも10Aと基本的には同じ構造だが、
コイルの形状を変え、磁気回路の設計も10Aとは異るし、
針交換を可能にするなど、サテンならではの工夫がみられる。

このあたりは業務用専門としてのウェストレックスとコンシューマー用としてサテン、
それにトレースは基本的に一度きりのラッカー盤相手のカートリッジと、
何度でもトレースする塩化ビニール盤(LP)相手のカートリッジの違いともいえる。

ナガオカ/ジュエルトーンのリボン型は、このサテン型の発電コイルをリボンに置き換えた構造といえる。

Date: 7月 23rd, 2014
Cate: 夢物語

オーディオ 夢モノがたり(その6)

カートリッジにおけるベンディングウェーヴ方式──、
そんなことが可能なのか。可能だとすれば、どういう構造になるのか。

この一年、そのことをずっと考えてきたわけではない。
数か月ごとに、ふっと思い出しては、どうすればいいのか、ぼんやりと考えていた。

考えていた、と書いたけれど、考えていた、とはいえないレベルでのことだが、
それでも、なにか突破口となるの切り口はないのか、と考えていた。

それで気がついたのが、リボン型カートリッジのことだった。
リボン型は、MC型の一種である。

MC型はMoving Coilということからもわかるように、
マグネットが固定されていて、コイルが動くことで発電する。

このコイルの巻数を極限まで減らしていったら……、
それはもうコイルではなくなってリボンになってしまうわけだが、
スピーカーユニットでリボン型があるように、カートリッジにもリボン型のカートリッジが、
日本のナガオカが製品化していた。

最初のころはナガオカの名前で、後にジュエルトーンのブランドで出していた。
おそらくリボン型カートリッジはナガオカ/ジュエルトーンだけだったはずだ。

Date: 7月 23rd, 2014
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(整理と省略・その5)

セブン・イレブンのコーヒーのドリップサービスがヒットし、
ほかのコンビニエンスストアでも同様のサービスが始った。

ファミリーマートにも、サンクスにも、ドリップマシンが置いてある。
ローソンもやっているが、こちらは店員が操作してくれる。

この三つの中で、セブン・イレブンとほぼ同じといえるのはファミリーマートである。
セブン・イレブンのドリップマシンが黒なのに対し、ファミリーマートのそれは白を基調としている。

どちらのマシンもアイスコーヒーとホットコーヒー、それにサイズの違いに対応している。
にも関わらずセブン・イレブンのドリップマシンには、
店員による日本語のシールが、ベタベタ貼られているケースが圧倒的に多いのに、
ファミリーマートでは、少なくとも私が見た範囲では、そういうシールは貼られていない。

機能として、セブン・イレブンのマシンもファミリーマートのマシンも差はないといえる。
なのに対照的な扱われ方をされているのは、なぜなのか。

セブン・イレブンのマシンでは、客の操作ミスが頻繁だったから、店員がシールを貼ることで対処。
ファミリーマートのマシンは、おそらく客の操作ミスはあまりないものと思われる。
シールが貼られていないのは、貼る必要がないから、のはずだ。

セブン・イレブンのマシンは英語表記で、略語表記も使われている。
ファミリーマートのマシンは日本語表記で、ボタンの配置も違う。

Date: 7月 22nd, 2014
Cate: iPod, サイズ

iPodのサイズ(その1)

電車に乗ると、周りの人のほとんどはスマートフォンをいじっている。
何をしているのかまではわからないが、使っている機種を見て「デカイ!」と思うことが増えてきた。

スマートフォンの液晶ディスプレイのサイズは大きい方がいいのだろうか。
「デカイ」と感じてしまうスマートフォンを見ていると、iPodのサイズのことを思い出す。

別項(「ラジカセのデザイン!」)の(その11)で書いた──、
21世紀のカセットテープはiPodであり、
カセットテープに取って代ったのはエルカセットでもなければDCC、DAT、ミニディスクなどでもなく、iPodである。

スティーブ・ジョブズは21世紀のカセットテープ、デジタルのカセットテープを、
iPodで目指していたからこそ、iPodをカセットテープと同じ寸法に仕上げ、
Dockと呼ばれるコネクターで、さらにWiFiを利用して、
さまざまなオーディオ機器への接続が可能になっている点も含めて、
iPodこそが、この時代の、ジョブズがデザインし直したカセットテープである、との確信が強くなっている。

iPodをハードウェアとしてしか捉えていない、他のメーカーの同様のモノがiPodに勝てない理由は、ここにある。
ソニー・ウォークマンの初代モデルが誕生したとき、まずサイズがあった、という話を読んでいる。

「デカイ」スマートフォンを見ていると、サイズへの理念がまったく欠けているとしか思えない。

Date: 7月 21st, 2014
Cate: ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その85)

JBLの4350の最初のモデルは1974年に登場している。
タンノイのKingdomの登場は1996年。
20年以上の開きがある。

いうまでもなくJBLはアメリカ西海岸のメーカー、
タンノイはイギリスのスピーカーメーカー。

ある時期まではクラシックを聴くならタンノイ、
ジャズはJBL、といわれていたこともある。

タンノイとJBLは、数あるスピーカーメーカーの中でも、もっとも比較されることが多い。
それだけ対照的なスピーカーメーカーともいえる。

そのふたつのスピーカーメーカーのフラッグシップモデルで、マーラーが聴きたい、というのは、
あまりにも節操がない、というか、マーラーがわかっていない、と思われるかもしれない。

でも私にとって4350とKingdomは、JBLとタンノイの違い、というよりも、
オーケストラの違いのように感じられて、私のなかでは4350とKingdomが矛盾することなく存在している。

JBLはやはりアメリカのオーケストラといえるし、
タンノイはヨーロッパのオーケストラといえる。

そういえばバーンスタインはコロムビアにマーラーの交響曲を録音したとき、
オーケストラはニューヨークフィルハーモニーだった。
この録音から約20年後、ドイツ・グラモフォンでのマーラーでは、
オーケストラをひとつに固定せずに、ニューヨークフィルハーモニーのほかに、
ウィーンフィルハーモニー、アムステルダム・コンセルトヘボウオーケストラを指揮している。

Date: 7月 21st, 2014
Cate: 「スピーカー」論

トーキー用スピーカーとは(その11)

まだアルテックが健在だったころ、
JBLと比較でよくいわれていたのは、アルテックの方が音が飛ぶ、ということだった。

スピーカーの正面1mのところにマイクロフォンを立て、
どちらのスピーカーシステムも同じ音圧になるように設定する。
そして音を出す。

さほど広くない空間では、アルテックもJBLもスピーカーからの距離がましても差はあまりないが、
小劇場くらいの空間となると、後方の席まで音が届く(飛ぶ)のはアルテックである、と。

私はそういう空間での比較試聴をしたことはないけれど、そうだろう、と納得できる。
ここでいうアルテックのスピーカーとは、おそらくA7、A5といったところだろうし、
JBLは、というと、どれを指すのかはっきりとしないけれど、
同口径のウーファーと同規模のコンプレッションドライバーとホーンの組合せとなるのだろう。

どんなスピーカーであり、離れればそれだけ音圧は低下する。
球面波か平面波という違いがあれば、距離による音圧の減衰の仕方もちがってくるが、
どちらもホーン型で指向特性において大きく違わないのであれば、音圧の減衰も同じような結果になるはず。

にも関わらずアルテックは音が飛び、JBLはそうでない、といわれてきた。
おそらく音圧はアルテックもJBLも低下する。
ただ音圧と音量に対する聴き手の感じ方が違いがあるのであれば、
片方のスピーカーは音が飛び、トーキー用スピーカーにおいても、
スクリーン裏のスピーカーだけで劇場後方の席の観客も満足させることも不思議なことではなくなる。

Date: 7月 21st, 2014
Cate: VUメーター

VUメーターのこと(その11)

メーターの外磁型、内磁型にはそれぞれ長所、短所がある。

内磁型は外磁型よりも構造が簡単であるため、小型化が容易である。
それに文字通りマグネットが磁気回路の内側にあり、
周囲にフレームを配置しているため、外部への漏洩磁束があまりない。
磁束の利用率は80%ほど。

スピーカーユニットでも、アルニコマグネット使用の内磁型は、
特別な対策を施さずとも防磁型であるのと同様に、
内磁型のメーターもそのままで防磁型であり、
このことは当然メーターまわりへ磁束による影響がほとんどない、ということにもなる。

音質だけを最優先とするならば、
メーターはつけないほうがいいに決っている。
まずメーターという機械的な共振体の問題、漏洩磁束の問題、
メーターを駆動するには駆動回路もしくはVUメーターならば600Ωラインが必要となり、当然電源も必要となるため、
これらに関する問題も抱えている。

外磁型のメーターは、構造上なんらかの防磁対策を施さなければ漏洩磁束が多い。
それと関係して磁束の利用率も50%程度である。
となるとマグネットも内磁型よりも大きなものを使うことになるし、
構造的にも外磁型はメーターそのものが大きくなってしまう。

もっとも大きくなってしまうからこそ、
使用できるマグネットのサイズに制約もなく(内磁型は可動コイルの大きさによって制限される)、
可動コイルに対しての磁束密度も高くすることができるし、
磁束のムラのなさも内磁型よりもずっと優れている。

そのおかげで高感度なメーターはまず外磁型であるし、
針のダンピングも内磁型よりも良いため測定器など精密さが要求される場合に採用されている。

Date: 7月 20th, 2014
Cate: audio wednesday

第43回audio sharing例会のお知らせ

8月のaudio sharing例会は、6日(水曜日)です。

テーマについて、後日書く予定です。
時間はこれまでと同じ、夜7時です。

場所もいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

Date: 7月 20th, 2014
Cate: VUメーター

VUメーターのこと(その10)

メーターの針がどうやって動くのか。
その構造はスピーカーユニットと同じといっていい。

磁気回路があり、スピーカーのボイスコイルにあたるのがメーターの可動コイルで、
このコイルに振動板がつけばスピーカーになり、針がつけばメーターになる、と
かなり乱暴な言い方が、そうなっている。

そしてスピーカーに外磁型と内磁型があるように、メーターにも外磁型と内磁型がある。
スピーカーの場合、アルニコマグネットがその磁気特性から内磁型、
フェライトマグネット外磁型になっているため、なんとなく内磁型が優れている、というイメージがある。

メーターは、というと、
内磁型よりも外磁型の方が、メーターとしての精度・追従性は高くなる。

メーターの構造に外磁型と内磁型とがあることも、最初のころは知らなかった。
メーターに関心をもちはじめて、
各社のアンプについてくるメーターを見ていくうちに、
そして瀬川先生の、メーターの性能もさまざまであり、いいメーターが少ない、という話を聞いてからは、
メーターについて多少なりとも調べていくうちに、外磁型と内磁型があることを知った。

外磁型か内磁型かで、メーターの大きさが違ってくることもわかってきた。
内磁型はマグネットの大きさも小さくて済み、構造も外磁型よりも簡単であるため、
小型にできるというメリットがある。

おそらくほとんどのカセットデッキについていたメーターは内磁型だったのだろう。

Date: 7月 19th, 2014
Cate: VUメーター

VUメーターのこと(その9)

だから1980年ごろには、メーターユニットに関心をもつことはなくなっていた。
理由は、どのメーカーのメーターユニットも、カッコよくなかったからだ。

メーター専用のオーディオ機器であるにもかかわらず、
いくつかのパワーアンプについているメーターの方がずっとカッコよかった。

それに瀬川先生の話も聞いていた。
何度書いているように、このころは熊本のオーディオ店に定期的に来られていた。
ある時、メーターの話をされた。
ほんとうにいいメーターは少ない、ということだった。

アンプとして音がよくても、メーターはあまり芳しくないモノもある。
このLNP2についているメーターは、ひじょうに信頼できる、ということだった。

信頼できないメーターは、メーターとしての機能を果していない、ともいえる。
瀬川先生はカセットデッキのVUメーターはあまり信じない方がいい。
むしろLEDによるピークメーターがついていたら、そっちの方がまだ信用できる、ともいわれた。

そんなメーターは、なんとなく針が振れているだけではないか。
ということは大半のVUメーターは飾りなのか、ということになる。

けれど飾りとして見た場合でも、カッコよくないメーターが多かった。

Date: 7月 19th, 2014
Cate: VUメーター

VUメーターのこと(その8)

針が振れるタイプのメーターは以前からある。
LED、液晶などを使ったメーターは後から登場してきたこともあって、
出て来たときは新鮮な感じがしないでもなかった。

アメリカのパワーアンプにもLEDによるメーターを搭載したモノが表れていた。
スレッショルドの400A、4000 Custom、
SAEのMark 2200、Mark 2400Lなどの他にもいくつかあった。

でもスレッショルドもSAEもトップモデルには昔ながらの針が振れるタイプのメーターをつけていた。

スレッショルドのSTASISシリーズ。
STASIS3とSTASIS2はLED式、モノーラル仕様のSTASISになると大型の針が振れるタイプのメーターがついていた。
SAEもMark 2500 (2600)は針式のメーターである。

SAEはMark 2000シリーズの後にXシリーズを出す。
X10A、X15A、X25Aがあった。
X25AはMark 2500 (2600)の後継機にあたる機種で,
Mark 2600が650000円、X25Aは750000円だった。

XシリーズはすべてLED式のメーターだった。
そのためもあって、私にはMark 2500が魅力的であり、X25Aはなんなとくイメージが違う……、
そんな感じをおぼえていた。

STASIS1の堂々とした印象のメーターを見ていると、
やっぱりメーターはLEDや液晶ではなく、メーターが振れるタイプがいい、と思えてくる。

針が振れるタイプ、つまり機械式のメーターの方がいいモノをつくろうとすると、
LED式、液晶式よりも贅沢なモノであることがわかってきた。

Date: 7月 18th, 2014
Cate: アナログディスク再生

秒速5センチメートル

秒速5センチメートル」というタイトルの映画がある。
秒速5センチメートルとは、映画の中で語られている。
桜の花びらの落ちるスピード、ということだ。

秒速5センチメートルは、5cm/secと書く。
こう書けば、オーディオマニアにはなじみのあるスピードである。

カートリッジの出力電圧の項目、
オルトフォンのSPU Classicだと、0.2mV(1kHz, 5cm/sec)とある。

ほとんどのカートリッジの出力電圧は、
1kHzにおける速度振幅5cm/secの水平信号の溝をトレースしたときの値である。

Date: 7月 18th, 2014
Cate: 日本のオーディオ

山水電気のこと(補足としての、その3)

サンスイの今回の件について、(その2)までで(その3)以降は書く予定ではなかった。
けれどfacebookのaudio sharingのグループにコメントをもらった。
そのコメントへの返信の意味で、これを書いている。

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ」に対するサンスイとティアックの違いについて書いた。
タンノイ号にお金を出したティアックの経営陣が立派で、
そうでなかったサンスイの経営陣は立派ではない、なんてことは思っていない。
そんなことを言いたかったわけではない。

ただ、編集者としてこういうことがあった、
一方ではこうだった、ということを書いて、
その違いが私にとっては、今回の件と決して無関係ではない、と思っている、というだけである。

この見方に賛同される人、納得される人、そんなバカな! と思われる人、
いろいろな受けとめ方をされていい。
何も私が今回書いたことに納得してほしいわけではない。

あくまでもひとつの意見でしかない。

それでも何に対してお金を出すのか出さないのか。
このことはきちんと見ていくべきではないか、とは思っている。

山水電気は「世界のオーディオ」の数年後に、あることにかなりの大金を出している。
「世界のオーディオ」とは比較にならぬほど大きな額である。
この数年後とは、1987年のことである。

1987年にオーディオをやっていた人ならば、あれか、と思い出されるだろう。
まだその頃はオーディオはやっていなかったという人でも、いまはインターネットですぐに調べられる。

この1987年のことについては、まったく別のテーマで書いていくかもしれない。
書かないかもしれない。

私の中では、書かない言わないで、墓場までもっていくことがいくつかある。
いうべきことでないことを知っている。
それらのことについては語ることは絶対にない、といえる。
だが、そのことを知っているから書けることもある。

それからいつか書いてもいい、と思えるときがきたら書こう、と決めているいくつかのことがある。
1987年のことは、ここに入っている。

山水電気の今回の件に関しては、ここまでである。

Date: 7月 17th, 2014
Cate: 日本のオーディオ

山水電気のこと(その2)

「世界のオーディオ」が刊行されていたころは、ちょうどJBLが日本市場で爆発的に売れていた時期でもある。
ペアで100万円をこえる4343が、信じられないほど売れていた時期だけに、
JBL号が出ないのがなんとも不思議だった。出ていたら売れていたはずなのに……。

だから、この疑問もステレオサウンドで働くようになって、
編集部の先輩にきいた「なぜJBL号を出さないんですか」と。

返ってきた答は、編集という仕事についたばかりで、
出版がどういうものなのかもほとんどわかっていなかった私には、いささか驚きのものだった。
「サンスイがお金を出さないからだよ」

いわれてみると「世界のオーディオ」には広告が載っていない。
入らない、ともいいかえられる。

どのメーカー、輸入商社が、他社だけを取り上げている別冊に広告を出すだろうか。
広告がどれだけの比重なのかをまったく考えていなかった私は、
いわれてみればそうだ、と理解しながらも、
サンスイはサンスイ号とJBL号、二冊分の予算を用意しなかったんだ……、と思っていた。

メーカー、輸入商社がどれだけ出していたのか、それは知らないし、特に興味はなかった。
ただいまふり返って思うのは、サンスイとティアックについて、である。

ティアックはタンノイ号を優先した。
ティアック号は出なかった。ティアック号が出てもおかしくはないし、
むしろティアック号が出なかったことが不思議でもある。

ようするにティアックはタンノイを優先した。
サンスイはJBLよりも自社のことを優先した。

当時タンノイも売れていただろうが、
JBLの売行きはそれ以上で、売上高では比較にならないほどだったと思う。
それだけ売れていたJBLの本に対しての山水電気の態度、
それに対してティアックのタンノイの本に対する態度。

この違いが、ティアックは健在でサンスイがこうなってしまったことと、決して無関係とは思っていない。