山水電気のこと(その2)

「世界のオーディオ」が刊行されていたころは、ちょうどJBLが日本市場で爆発的に売れていた時期でもある。
ペアで100万円をこえる4343が、信じられないほど売れていた時期だけに、
JBL号が出ないのがなんとも不思議だった。出ていたら売れていたはずなのに……。

だから、この疑問もステレオサウンドで働くようになって、
編集部の先輩にきいた「なぜJBL号を出さないんですか」と。

返ってきた答は、編集という仕事についたばかりで、
出版がどういうものなのかもほとんどわかっていなかった私には、いささか驚きのものだった。
「サンスイがお金を出さないからだよ」

いわれてみると「世界のオーディオ」には広告が載っていない。
入らない、ともいいかえられる。

どのメーカー、輸入商社が、他社だけを取り上げている別冊に広告を出すだろうか。
広告がどれだけの比重なのかをまったく考えていなかった私は、
いわれてみればそうだ、と理解しながらも、
サンスイはサンスイ号とJBL号、二冊分の予算を用意しなかったんだ……、と思っていた。

メーカー、輸入商社がどれだけ出していたのか、それは知らないし、特に興味はなかった。
ただいまふり返って思うのは、サンスイとティアックについて、である。

ティアックはタンノイ号を優先した。
ティアック号は出なかった。ティアック号が出てもおかしくはないし、
むしろティアック号が出なかったことが不思議でもある。

ようするにティアックはタンノイを優先した。
サンスイはJBLよりも自社のことを優先した。

当時タンノイも売れていただろうが、
JBLの売行きはそれ以上で、売上高では比較にならないほどだったと思う。
それだけ売れていたJBLの本に対しての山水電気の態度、
それに対してティアックのタンノイの本に対する態度。

この違いが、ティアックは健在でサンスイがこうなってしまったことと、決して無関係とは思っていない。

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