賞からの離脱(その29)
ステレオサウンドは、最初にベストバイを特集した35号の一年前にも、
同じように試聴をしないでつくられるものを出している。
31号の特集「オーディオ機器の魅力をさぐる」である。
たまたまの一致だろうが、31号の表紙はJBLのスピーカーユニット、
35号の表紙はJBLの4350(白いコーン紙のウーファー2230がついている)、
どちらも白いコーン紙が印象に残る。
31号については知らないが、35号は売れた、ときいている。
定期購読者が多いステレオサウンド(少なくとも私が読者だったころ、編集者だったころはそうだった)でも、
号によって売行きは変動する。
意外に私が思ったのは、
表紙がアナログプレーヤー関連のものだと売行きが芳しくない、というジンクスがあったことだ。
カートリッジにしろ、プレーヤーにしろ、とにかくそうなっていたらしい。
私はアナログプレーヤーが表紙になっているほうが、いいと思うのにだ。
35号はアナログプレーヤーが表紙ではない。
ステレオサウンドにとってはじめてのベストバイ特集の号であり、
読者にとってもはじめてのベストバイ特集の一冊であったわけだ。
35号では、いまのベストバイのやり方とは違い、読み応えもあった。
一機種あたりの文字数は100字足らずであっても、選ばれている機種には選んだ人のコメントがあった。
ちなみに瀬川先生はスピーカーシステムを61機種選び、すべてについてコメントを書かれている。
もちろん他の人も同じである。
菅野先生は28機種のスピーカーシステム、岩崎先生は15機種のスピーカーシステムを選ばれている。