Archive for category テーマ

Date: 7月 30th, 2014
Cate: 名器

名器、その解釈(マッキントッシュ MC75の復刻・その1)

すこし前のニュースだが、マッキントッシュから今度はMC75が復刻される。
C22、MC275の復刻が好評だったからなのだろう、と思われる。

「今度はMC75か」と思いながら、そういえば、なぜ日本では名器といえばMC75ではなく、
ステレオ仕様のMC275なのか。

パワーアンプはモノーラルの方がステレオ仕様よりもいくつかの面で有利である。
MC275よりもMC75が物理特性でも優れているだろうし、
音に関してもMC75の方がおそらく優れている、と思われる。

C22とペアとなるMC275はこれまでにも何度か聴く機会はあったけれど、
MC75はまったくなかった。
なのではっりきしたことはいえないけれど、少なくともMC75がMC275よりも劣る理由は特にない。

いまこういうことを書いている私にしても、MC275とMC75、どちらが欲しい? ときかれたら、
ためらわずMC275、と答える。

それはMC275に対しての思い入れがあるからだ。
そんな感情がいっさいなければ、MC75と答えるはず。

そしてどちらが名器かと問われたら、やはりMC275と即座に答える。

ではMC275への思い入れがいっさいなかったら、どちらを名器として答えるだろうかと自問自答する。
それでも、MC275と答えるだろう。

Date: 7月 28th, 2014
Cate: 「スピーカー」論

トーキー用スピーカーとは(Dolby Atmos・その5)

「スタートレック イントゥ・ダークネス」、「アメイジング・スパイダーマン2」では、
いくつかのシーンで、そこで鳴っている音に反射的に体が反応してしまう。
それだからこそ、臨場感という、いまではオーディオではあまり使われなくなってきている、この表現を使う。

ただ、いい音がしているだけでは体は反応しない。
体が反応するということは、現実の音と錯覚しているのかもしれない。
何が要因でそうなるのかまではわからないまでも、ドルビーアトモスには、まさしく臨場感がある。

映画のシーンでは、空間がつねに同じわけではない。
閉ざされた空間もあれば開放された空間もあるし、
閉ざされた空間にしても、どういう構造体により閉ざされているのか、という違いはあるし、
閉ざされている空間が、何かによって一瞬にして開放されることもある。

そういった空間のシチュエーションを映像だけでなく、音響でも表現できるのがドルビーアトモスのような気がする。

「ゴジラ」にもいくつもの空間のシチュエーションがあった。
だかそこで鳴っている音が、それぞれのシチュエーションを見事に表現していたか、というと、そうとはいえない。
たとえばあるシーンで閉ざされた空間から、重い扉を開けたら、というシーンがある。
そこは堅固な構造物でのシーンから外界へ切り替るシーンでもある。

映像では暗いシーンから明るいシーンへとなる。
だが、音響がそれについていっていない。
だから、いい音で鳴っているな……、と終ってしまう。
体が反応する、ということがない。

Date: 7月 28th, 2014
Cate: 「スピーカー」論

トーキー用スピーカーとは(Dolby Atmos・その4)

1963年生れだから、子供のころ、ゴジラは映画館でよく観た。
今年はゴジラ生誕60周年で、ハリウッド制作の「ゴジラ」が7月25日から公開されている。

「スタートレック イントゥ・ダークネス」、「アメイジング・スパイダーマン2」を、
3D+ドルビーアトモスで観た私は、
ゴジラのような巨大生物が登場する映画こそ、3D+ドルビーアトモスで観たい映画である。

ハリウッド制作の「ゴジラ」がドルビーアトモスだということは早くから伝わっていた。
1998年のハリウッド制作の「ゴジラ」と今回の「ゴジラ」はずいぶん違う、ということも伝わってきた。
期待は高まるわけで、できるだけ早いうちに観に行きたいと思っていたら、
鑑賞券が当った、というメールが、25日に届いた。

そういえはfacebookで鑑賞券プレゼントに応募していた、と思い出した。
しかもドルビーアトモスによる上映の鑑賞券である。
日時も指定されているから、さっそく昨日コレド室町にあるTOHOシネマズに行ってきた。

「スタートレック イントゥ・ダークネス」、「アメイジング・スパイダーマン2」の上映にはなかった、
ドルビーアトモスのデモ(短い時間のもの)が、本編の直前に流れた。
これの出来がすごくいいだけに、「ゴジラ」本編のドルビーアトモスその期待は、さらに大きくなっていた。

「スタートレック イントゥ・ダークネス」、「アメイジング・スパイダーマン2」を観て、
ドルビーアトモスの特長は臨場感にある、と感じていた。
なのだが、残念なことに「ゴジラ」では、その臨場感が期待したほどではなかった。

今回の「ゴジラ」がドルビーアトモスを初めて体験するのであれば、
けっこう高い評価をしたであろうが、すでに二回体験し、その臨場感に昂奮していたのだから、
つい厳しいことをいいたくなる。

Date: 7月 28th, 2014
Cate: ジャーナリズム,

賞からの離脱(その30)

ベストバイ特集のステレオサウンド 35号は売れた。
にも関わらず一年後のステレオサウンド 39号はベストバイの特集ではなく、カートリッジ123機種の総テスト。
ベストバイ特集の二回目は43号。丸二年経過している。

この43号が、私にとってははじめてのベストバイのステレオサウンドだった。
三回目のベストバイは47号、次は51号、55号、59号……、と定期的に行われていく。

47号から、星の数による点数がつくようになった。
51号から価格帯による区分けが始まった。

35号は1975年6月発売の号だから、すでに40年近く続いている企画なだけに、
ずっと同じやり方ということはなく、変化してきている。

こうやってベストバイという特集をふり返ると、
読み応えとは何だろう、と考える。

私個人にとってもっとも読み応えのあったベストバイは43号である。

いまは12月に発売される号で、ステレオサウンド・グランプリといっしょに掲載されているが、
読み応えは、私は感じない。

ここでいう読み応えとは、単なる文字の数の多さではない。

Date: 7月 27th, 2014
Cate: ジャーナリズム,

賞からの離脱(その29)

ステレオサウンドは、最初にベストバイを特集した35号の一年前にも、
同じように試聴をしないでつくられるものを出している。
31号の特集「オーディオ機器の魅力をさぐる」である。

たまたまの一致だろうが、31号の表紙はJBLのスピーカーユニット、
35号の表紙はJBLの4350(白いコーン紙のウーファー2230がついている)、
どちらも白いコーン紙が印象に残る。

31号については知らないが、35号は売れた、ときいている。
定期購読者が多いステレオサウンド(少なくとも私が読者だったころ、編集者だったころはそうだった)でも、
号によって売行きは変動する。

意外に私が思ったのは、
表紙がアナログプレーヤー関連のものだと売行きが芳しくない、というジンクスがあったことだ。
カートリッジにしろ、プレーヤーにしろ、とにかくそうなっていたらしい。
私はアナログプレーヤーが表紙になっているほうが、いいと思うのにだ。

35号はアナログプレーヤーが表紙ではない。
ステレオサウンドにとってはじめてのベストバイ特集の号であり、
読者にとってもはじめてのベストバイ特集の一冊であったわけだ。

35号では、いまのベストバイのやり方とは違い、読み応えもあった。
一機種あたりの文字数は100字足らずであっても、選ばれている機種には選んだ人のコメントがあった。
ちなみに瀬川先生はスピーカーシステムを61機種選び、すべてについてコメントを書かれている。
もちろん他の人も同じである。

菅野先生は28機種のスピーカーシステム、岩崎先生は15機種のスピーカーシステムを選ばれている。

Date: 7月 27th, 2014
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その22)

この項の(その4)で、T104も瀬川先生のデザインだと思う、と書いた。
なにか確証があるわけではない。私の思い違いの可能性もある。

それでも瀬川先生のデザインだ、とやはり思う。
オーレックスのST420は川崎先生のデザインだ。

川崎先生はオーレックス時代に瀬川先生と何度か会われているし、
瀬川先生のリスニングルームへも行かれている。
川崎先生がいまも所有されているヴィソニックの小型スピーカーは、瀬川先生に薦められたモノ。

瀬川先生は川崎先生がオーレックスのデザインを手がけられていることをご存知だった。
だからアキュフェーズのT104が瀬川先生のデザインだとすれば、
瀬川先生はST420に、チューナー・デザインの解答のひとつを発見された──、
私はそう思っている。

そうでなければシンセサイザー方式のチューナーのT104に、
バリコン使用のアナログチューナーST420のデザインをもってくるだろうか。

だからこそ、(その18)で、嬉しい、と書いた。

Date: 7月 27th, 2014
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その21)

アキュフェーズのチューナー、T104と三点セットとなるコントロールアンプのC240とパワーアンプのP400。
この三台を「横一列に並べたときの美しさは独特だ」と瀬川先生が、以前書かれている(ステレオサウンド 59号)。

この三台のデザインを比較すると意外なことに気づく。
C240はP400とは対照的に意欲的なデザインとなっている。

P400は同社のほかのパワーアンプと並べてみても、これだけが特異な存在ということはない。
C240はレベルコントロール、バランスコントロール、カートリッジの高域特性のコントロールだけが回転ノブ、
ミューティングのON/OFFの切替えがレバースイッチ、
ほかの機能はすべて57個のプッシュボタンで操作する。

アキュフェーズのコントロールアンプとして、かなり思いきった方向性を打ち出している、ということで、
デザインに関してはC240、P400、T104の三台では、どうしてもC240に注目がいってしまいがちだった。

T104はシンセサイザー方式のチューナーである。
C240よりも、プッシュボタンによる操作がしっくりくるものであった。
にも関わらず、T104は、それまでのアナログ式チューナーのインターフェイスのままである。

T104も、チューナーとしてはプッシュボタンの数は多い。
それでもシンセサイザー方式であることを、T104のフロントパネルは強く主張していない。

C240と同じ方向でのT104のデザインもありえた。
にも関わらずそうなっていない。
そうなっていないからこそ「横一列に並べたときの美しさ」が生れているのかもしれない。

Date: 7月 26th, 2014
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その20)

川崎先生が、7月25日のブログに、オーレックス時代にデザインされたチューナーについて書かれている。
「デザインには発明が必要だということを学んだ作品」というタイトルがつけられている。

ST910、ST720、ST420、ST220、四つのオーレックスのチューナーのことに触れられている。
そして、書かれている。
     *
「このデザインには、発明があるだろうか」という自問自答です。
今ではチューナーはインターネットラジオになってしまいましたが
チューナーでのこの代表機種全てに「デザインによる発明」です。
だから、あきらかに言えることは、
「デザイン=造形が必ず発明」は必要十分条件だと思っています。
     *
いまでも、デザインは好き嫌いでしょう、といったことを言い放つ人がいる。
オーディオマニアでも、そういう人がいるのを残念ながら知っている。
そういう人は、「デザインに発明が必要だ」ということを一生知らずに終っていくのかもしれない。

デザイナーが「このデザインには、発明があるだろう」と自問自答するのであれば、
デザイナーではないわれわれ受け手の者は、何かをそのデザインに発見しなければならない。

デザインは好き嫌いでしょう、といってしまったら、そこには発見はない。
発見しようとしないから、好き嫌いでしょう、で終ってしまうのかもしれない。

Date: 7月 26th, 2014
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その19)

オーレックスのST420のデザインは、どれだけ当時注目されていたのか。
1975年、私はまだオーディオに関心をもっていなかった。
1975年に出ていたオーディオ雑誌といえば、ステレオサウンドのバックナンバーはすべて読んでいるものの、
それ以外のオーディオ雑誌となると、ほとんど読んでいない。

なのではっきりしたことはいえないけれど、ST420のデザインについて、
オーディオ雑誌に何かを書いた人はいないのではないか。

アキュフェーズのT104が登場した1978年、
私はチューナーに対しての興味はいまほどではなかった。
チューナーのデザインに関しての興味もあまりなかったから、
ST420とT104のデザインの共通性についてまったく気がつかなかった。

でももし当時気づいていたとしたら、
アキュフェーズがオーレックスのデザインをマネした、ぐらいにしか思わなかっただろう。

いまははっきりと違う。
違ういまに、気づいて良かった、と思う。
そして、瀬川先生は、ST420のデザインに注目されていたはず、といえる。

ステレオサウンド 43号のベストバイの特集で書かれている。
     *
最近のオーレックスの一連のアンプは、デザイン面でも非常にユニークで意欲的だが、SY77は、内容も含めてかなり本格的に練り上げられた秀作といえる。
     *
「一連のアンプ」とあるから、アンプのことだけだと受けとめがちになるが、
アンプだけではないはず、チューナーも含めての、のことのはずだ。

Date: 7月 25th, 2014
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その18)

オーレックスのST420はダイアルスケールをフロントパネルの最下部にもってきている。
ふたつあるメーターはダイアルスケールの上、フロントパネルのほぼ中央で、やや左側に寄っている。
チューニングノブは右端、電源スイッチは左端についている。

ST420以前にもダイアルスケールを下に、メーターを上に配置したチューナーがあったのは前述した。
けれどダイアルスケールをフロントパネル最下部に配置したのは、ST420が最初である。

ST420の登場以降、同じようにダイアルスケールを最下部にもってきたチューナーが、いくつか出てきた。
アキュフェーズのT104もそういう製品のひとつといえる。

T104はシンセサイザー方式だから、いわゆるダイアルスケールはない。
かわりに受信周波数を数字で表示するようになっている。
この表示部はダイアルスケールのように横に長い。T104はこれを最下部に配置している。
二つあるメーターダイアルスケールの上、フロントパネルのほぼ中央で、やや左側に寄っている、
チューニングノブは右端、電源スイッチは左端についている、と書けるように、ST420と基本的に同じである。

ことばで説明する以上に、ST420とT104の真正面からの写真を並べてみると、
基本レイアウトの共通性の同じであることがはっきりする。

このことに気づいたとき、私は嬉しかった。

Date: 7月 25th, 2014
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その17)

ダイアルスケールとメーターの位置関係。
これか同じだからといって、各社のチューナーのデザインが似てくるわけではない。

ここで挙げたメーターがダイアルスケールの上にあるチューナーを見ていっても、印象はそれぞれに違う。
ソニーのST5000Fはダイアルスケールがフロントパネルの上側に配置されている。
ダイアルスケールの下、つまりフロントパネルの下側半分にチューニングノブをはじめとするツマミが並ぶ。
しかもメーターとダイアルスケールはひとまとめされている。

同じソニーのチューナーでも、その後のST4950、ST5950もメーターが上にくるが、
ダイアルスケールがフロントパネル・センターより下にきている。
それにメーターも視覚的にはっきりと独立しているので、ST5000Fとはずいぶん異る印象をもつ。

それぞれのメーカーの、それぞれの機種についてひとつひとつ書いていくと長くなってしまう。
どうしても書きたいのはひとつである。

それはオーレックスのST420とアキュフェーズのT104について、である。

ST420は1976年当時47800円のチューナー。
T104は1978年当時250000円のチューナー。

ST420は4連バリコン使用のチューナー。
T104はクォーツロック・フレケンシーシンセサイザー式のチューナー。

ST420はウッドケースなし、
T104はウッドケースつき。

ST420とT104、
このふたつのチューナーは、ダイアルスケール、チューニングノブ、メーターの配置が共通している。

Date: 7月 25th, 2014
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その16)

パイオニアはExclusive F3の前年(1975年)に、TX9900を出している。
TX9900もダイアルスケールの上にメーターが配置されている。

ステレオサウンド別冊HI-FI STEREO GUIDEのバックナンバーをひっぱり出している。
すべての号が手元にあるわけではないが、
1976年ごろからダイアルスケールの上にメーターというチューナーが増えてきている。

トリオは1975年にKT7500でメーターを上にもってきている。
その後、トリオのチューナーはメーターが上にくるモデルが増えている。

テクニクスも1977年に発売したブラックパネルのチューナー、
ST8075、ST8080でメーターを上にしている。

サンスイも大ヒットとなったプリメインアンプのAU607、707、907とペアになるTU707(1977年)がそうだ。
オーレックスのST420も、Exclusive F3と同じ1975年に登場している。

それまで何気なく見てきていたチューナーのデザインが、ここ数年気になってきているし、気づくことがある。
だから古い資料、カタログ誌を眺めては確認している。

ダイアルスケールの上にメーターをもってきた最初メーカーはどこなのか。
HI-FI STEREO GUIDEでわかる範囲では、どうもソニーのST5000Fがそのようだ。

ST5000FはHI-FI STEREO GUIDEによれば、昭和42年10月発売となっている。
1967年──、Exclusive F3の約10年前、
すでに50年近く前から、ダイアルスケールの上にメーターを配置したチューナーが存在していたことに気づいている。

Date: 7月 25th, 2014
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その15)

パイオニアのチューナー、Exclusive F3の外観で特徴的なことは、
メーターが四つついていることがあげられる。

Exclusive F3登場以前、Exclusive F3と同等クラスのチューナーをみても、メーターは二つ。
電波の強さを示すシグナルメーター、同調の具合を示すチューニングメーターである。
Exclusive F3には、この二つのメーターのほかに、マルチパス検出メーターとピークレベルメーターがついている。

この四つのメーターをダイアルスケールの上部に配置している。
Exclusive F3が登場した1976年当時、
ダイアルスケールとメーターの位置関係は、
多くの機種においてダイアルスケールが上、メーターが下、
もしくはダイアルスケールとメーターを同じ高さに配置するかだった。

Exclusive F3を実際に使っていて気がついたことなのだが、
ダイアルスケールとメーターの位置関係は、メーターが上の方が使い勝手がいい。

フロントパネルを占める大きさでいえばダイアルスケールが主であるかのように感じてしまうし、
Exclusive F3以前に使ったことのあるトリオの普及機(これはメーターが上にある)、
マッキントッシュのMR71はダイアルスケールが上にある。
このときはダイアルスケールとメーターの位置関係に関心をもつことはなかった。

Exclusive F3で私は初めてメーターとダイアルスケールの位置関係について、
関心をもつようになった。トリオの普及機もメーターが上にあったけれど、
最初に使ったチューナーということもあって、そんなことには気づきもしなかった。

40年近くオーディオをやってきて、使ってきたチューナーはわずか三台。
しかもチューナーが手元にあった期間はかなり短い。そんなわけでいまごろ気づいている。

チューナーにおいてダイアルスケールよりもメーターの方が主ではないか、ということ。
バリコンを使用したアナログ式チューナーにおいては、目はメーターの方に向くからである。

Date: 7月 24th, 2014
Cate: 憶音

憶音という、ひとつの仮説(その3)

「氷点下の三ツ矢サイダー」を飲みながら思い出したことはいくつかある。
菅野先生がコカ・コーラの味について書かれた文章だ。
菅野先生の著作集「音の素描」をお持ちの方ならば思い出されるだろう。
     *
 先日、ちょっと面白い体験をした。他愛のないことなのだが、ご紹介させていただく。喉が乾いたので、麦茶の冷たいのを一杯所望した。物事に夢中になっていたので、娘が持ってきてくれたグラスを確かめないでゴクンと一口やって驚いた。まったく予期せぬ味と香りが私の口の中に拡がったのである。それは、一瞬、私に大きなショックを与えたがそれが何であるかは次の瞬間判明した。コカ・コーラだったのである。しかし、その時のコカ・コーラの味は、私が、ここ長年の間味わっているコカ・コーラの味ではなかった。その味は、今から何年前になるだろう……? そう十五年も前だろうか? 生まれて初めて、アメリカ製の一風変わったコカ・コーラという飲物を味わった時の、あの、いとも奇妙な味、香り、喉薬〝ルゴール〟に似たような薬品臭いそれであった。まさに新奇としかいいようのないその味を、その後、飲み馴れたコカ・コーラからは絶えて久しく味わったことのないものだった。実に驚いたが、次の瞬間、とても懐しかった。麦茶という私の注文を、娘が勝手にコカ・コーラに変えて持ってきたわけだが、私はそれをなじる前に、その懐しい味に大きな興味をもった。なぜ、あの時の初体験のコカ・コーラの味がよみがえったのだろう……と。
 そのグラスにコカ・コーラが入っていることを確認した私は、もう一度、その味を味わおうと再びグラスを傾けた。しかし、しかし、二度とその味を味わうことはできなかったのである。二口目以降のコカ・コーラは、まさしく、私の飲み馴れたコカ・コーラであるに過ぎなかったのである。飲み馴れた味のコカ・コーラは、たしかに私にとって、初めて飲んだ時のコカ・コーラよりうまくなったように思う。しかし、初めて飲んだ時の味が、こんなシチュエーションでよみがえろうとは思ってもみなかった。こんなことは、心理学者にとっては当り前のことかもしれないが、私にとっては、多くの興味深い問題を連想させることになったのである。
      *
菅野先生が、麦茶だと思い込んで飲まれたコカ・コーラが、
「初体験のコカ・コーラ「の味だったのが、
同じコップに入っているにも関わらず、麦茶ではなくコカ・コーラだと認識したあとの二口目以降は、
「飲み馴れたコカ・コーラ」の味に過ぎなかったことを、
「氷点下の三ツ矢サイダー」飲んでいて思い出していた。

私の場合、新商品の「氷点下の三ツ矢サイダー」が初体験の三ツ矢サイダーの味をよみがえらせてくれた。

Date: 7月 24th, 2014
Cate: 憶音

憶音という、ひとつの仮説(その2)

先日、山梨に行ってきた。
梅雨明けの暑い日だったので、冷たいものが飲みたくなって、近くにあったセブン・イレブンに入った。
入ってすぐの目につくところに専用の冷蔵庫をおいてあり、
その中には「氷点下の三ツ矢サイダー」が冷やされていた。

「氷点下の三ツ矢サイダー」が出ていたこと、セブン・イレブンで限定販売していることは知っていた。
でもこれまで見かけたことがなかった。さっそく買ってみる。

ペットボトルのフタをあけると、謳い文句通りにシャーベット状にフリージングしていく。
炭酸も普通の三ツ矢サイダーよりも強くなっているらしい。
飲んだ瞬間、三ツ矢サイダーを初めて飲んだときのおいしさがよみがえってきた。

最初に飲んだ三ツ矢サイダーは、たしかガラス瓶だったはず。
キンキンに冷えていて、炭酸が効いていた記憶がある。

いまペットボトルに入って売られている三ツ矢サイダーを飲んでも、
ずいぶん味が変ったな、としか思えない。
ある人にいわせると、昔の三ツ矢サイダーはサッカリンを使っていて、
いまは使えなくなったから同じ味にはならない、らしい。

どこまでほんとうなのかはわからない。
私が初めて飲んだのは熊本。いまは東京。
当然製造している工場が違うし、工場が違えば水も違う。
それに容れ物がガラス瓶とペットボトルという違いもある。

違って当然なのかもしれない。
でも山梨で飲んだ「氷点下の三ツ矢サイダー」は、遠い昔に飲んだ三ツ矢サイダーの記憶そのままのように感じた。
もちろん、そんなことはないのだが、
これが三ツ矢サイダーだよ、この三ツ矢サイダーが飲みたかったんだ、と思い、
数時間後に、また買って飲んでいた。