Archive for category テーマ

Date: 5月 13th, 2020
Cate: 選択

オーディオ機器を選ぶということ(プリメインアンプの場合・その5)

前々から感じていても、現実に誰かの買物につきあって、
あれこれ検討してみると、選択肢の少なさは、
アンプのデザインについてもいえることを強く感じた。

今回の予算内にはおさまらないので選択肢から最初から外したが、アキュフェーズとラックスマン、
それに今回の選択肢の一つだったマランツ。
なぜ、こうも左右対称のフロントパネルばかりなのだろうか。

左右対称だから、どれも同じ、とまではいわないが、
左右に大きなツマミ(ボリュウムと入力セレクター)があるのは共通している。

アキュフェーズは、コントロールアンプのC280から、このスタイルである。
コントロールアンプもプリメインアンプも、基本的に同じである。
それ以前は、そうではなかった。
C200、C240、C220といったコントロールアンプは、それぞれのスタイルを持っていた。

ラックスのプリメインアンプはもっとヴァリエーションが豊富だった。
すべてが優れたデザインとはいえなくとも、意欲的だったことは確かだ。

マランツは左右対称のデザインは、伝統的ともいえる。
それでも1980年代からは、左右対称ではないアンプも登場していた。
それがいまではどうだろう。

アキュフェーズは、これから先も、デザインに大きな変更はないように思う。
マランツもそうかもしれない。

ラックスはどうだろうか。
コントロールアンプのCL1000の登場は変化の兆しとなるのだろうか。

とにかくデザインに関しても選択肢が少なくなってきている。
これで豊かになってきている、
よくなってきている、といえるだろうか。

Date: 5月 12th, 2020
Cate: 録音

PCM-D100の登場(その8)

オーディオの世界で自作といえば、ハードウェアの自作のことを指している。
ソフトウェアの自作ということについては、
ほとんど、というか、これまでまったく語られることはなかったけれど、
録音こそ、ソフトウェアの自作である。

1970年代に生録がブームになっていた。
生録を特集するだけで、そのオーディオ雑誌の売行きが増すほどにブームだった──、
と話にきいている。

そうやって録音してきた音源は、そのままでソフトウェアの自作といえるだろうか。
オーディオの世界でのソフトウェアの自作という意味では、
そのままでは、ただ録ってきただけであり、
もちろん、少しでもいい音で録るために工夫しているとはいえ、
録りっぱなしでは、ソフトウェアの自作と呼ぶには抵抗がある。

やはり、なんらかの編集が必要だ。

2013年9月に、ソニーのPCM-D100が登場した。
嬉しいことに、いまも現役の録音機である。

マイクロフォンがついていて、これ一台で、
PCM(192kHzまで可能)でもDSD(2.8MHz)でも録音ができる。

オーディオマニアのなかには、PCM-D100MKIIになって、
PCMで384kHz、DSDで5.6MHzでの録音を可能にしてほしい、と思う人もいよう。

私にも、そういう気持がないわけではないが、
ソフトウェアの自作ということに関して、優れた編集ソフトが必要となる。

PCM-D100には、Sound Forge Audio Studio 10 LEという編集ソフトが付属している。
使ったことはないので、このソフトについては触れないが、
つい最近、イギリスからHit’n’Mix Infinityというソフトウェアが出てきた。

どんなソフトなのかは、リンク先をクリックしてほしいし、
“Hit’n’Mix Infinity”で検索してほしい。

Date: 5月 12th, 2020
Cate: 選択

オーディオ機器を選ぶということ(プリメインアンプの場合・余談)

ゴールデンウィークは終っているから、電車は多少は混んでいるのか、と思っていたが、
昨日の昼間は、一車輌に十人くらいしか乗ってなかった。

秋葉原も人は少なかった。
ほぼ二ヵ月ぶりの秋葉原だったが、まずラジオ会館が閉まっていた。
当面の間、休業する、ということだった。

予想していたことだが、閉まっている店が多い。
昨日は、ヨドバシでプリメインアンプの購入という目的のほかに、
部品を買うという用事が、私にはあった。

ラジオデパートに行くと、一階の店舗はほとんど閉まっている。
ラジオデパートそのものも休業しているのかと勘違いするほどで、
後日出直すしかないのか、と一瞬思ったけど、シャッターはわずかだが開いていて、
目的の店舗(海神無線)は営業していた。

秋葉原にそんなに長い時間いたわけではないし、
歩きまわったわけでもないが、こんなにひっそりとした秋葉原は初めてである。

ヨドバシも19時閉店だった。
店内も、近所のスーパーのほうが混雑しているくらいに人が少ない。

買物すべてを終えて、三人で食事をすることになった。
誰かと食事をすること、親しい人たちと食事をすることは一ヵ月ぶり。

外に出るのも面倒だし、リスクもあるからということで、
ヨドバシの八階に移動する。

売場よりも人が少ない。
換気がいいだろうから、という素人考えで、焼き肉店に入る。
われわれ三人の他は、客は一人だけ。

普段だったら、かなりにぎわっているはずである。
なのに、こういう状況下でひっそりとしている。

食事を終え、秋葉原から電車に乗ろうと思ったが、
こんな東京は初めてだから、東京駅まで歩くことにした。

秋葉原から神田、日本橋を経て東京駅まで、人はいる。
秋葉原よりも多くの人がいるけれど、いつもよりはずっとずっと少ない。

20時前なのに、大半の店が早じまい、もしくは閉店していた。

それに空気が澄んでいのだろう、
通りがいつもよりきれいにライトアップしているような印象さえある。

こういう東京が日常化していくのだろうか。

Date: 5月 12th, 2020
Cate: 選択

オーディオ機器を選ぶということ(プリメインアンプの場合・その4)

先に書いてしまうと、
購入したのはヤマハのA-S2100である。

製造中止になっているが、秋葉原のヨドバシのアウトレットコーナーには、
A-S2100、A-S1100、どちらも複数台あった。

アウトレットだから、いうまでもないが中古ではない。
けっこう安くなっている。

しかもヨドバシだから、10%のポイント還元がある。
現行製品の新品ならば、A-S2100は予算オーバーとなるが、今回はそうではない。

予算内におさまり、それだけでなく、プリメインアンプらしいプリメインアンプである。
フォノ入力もMM型だけでなくMC型にも対応している。
トーンコントロールもついている。

リモコン操作もできる。
そんなもの必要ない、というオーディオマニアもいようが、
今回、プリメインアンプを買う人は、くり返すがオーディオマニアではない。

テレビも接続するわけだから、
A-S2100のようなプリメインアンプらしいプリメインアンプが望ましい。

それが製造中止になっていたおかげで、予算といういちばん重要な条件も満たせた。
もちろん他の機種も見てもらった。

A-S2100のデザインが気に入った、ということも、購入につながっている。
ヨドバシのアウトレットコーナーに、A-S2100があるとは思っていなかった。

なにかいいモノがあればいいなぁ、ぐらいの期待だっただけに運が良かったといえる。

以前ならば、秋葉原に行ったら、数軒のオーディオ店をまわって、ということになったはずだ。
選択肢が多かった時代ならば、そういう買い方をしたはずだ。

そのころにはヨドバシのような大型量販店は、秋葉原にはなかったし、
大型量販店も変化してきているから、
大型量販店でオーディオを買う、ということに、私は抵抗はない。
もちろんすべての大型量販店がそうだ、とはいわない。

少なくともヨドバシで買うことに抵抗はないから、
今回、最初からヨドバシに行ったわけである。

選択肢も減った、
買い方も変った。

Date: 5月 12th, 2020
Cate: 選択

オーディオ機器を選ぶということ(プリメインアンプの場合・その3)

今回のことがなくても気づいていたことなのだが、
今回のような相談をされたときに、現行製品を一覧できるところがない、ということだ。

ずっと以前はステレオサウンドが、HI-FI STEREO GUIDEを出していたから、
数ヵ月のズレはあるというももの、ほぼすべての現行製品が、すぐにわかった。

いまはインターネットがあるじゃないか、といういわれそうだが、
現行製品を一覧できるウェブサイトがあるだろうか。

日本オーディオ協会のウェブサイトにも、そういうページはない。
オーディオ雑誌を刊行している出版社のサイトにもない。

今回、実際に買いにいったヨドバシ、それからamazonなどのサイトで検索して、
それを参考にすればいい、ということなのか。

でも、やはり日本オーディオ協会のサイトに、
現行製品を、ジャンル別に、価格順に一覧できるページがあってほしい──、
というよりも、私はあるべきだ、と考えている。

個々の製品をクリックすれば、
そのメーカーのサイトにアクセスできるようにリンクされていればいい。

メーカー、それから出版社と協力すれば、実現できることである。
なぜやらないのだろうか。

Date: 5月 12th, 2020
Cate: 選択

オーディオ機器を選ぶということ(プリメインアンプの場合・その2)

私が自分のために20万円という予算の枠でプリメインアンプを選ぶなら……、
それは新品に限らず、中古を含めてということになるから、
選択肢はそこそこあることになる。

けれど、今回はそういうわけにはいかない。
いい製品であること。
これはつまりこわれにくい、ということがまずあるし、
仮にこわれた場合のアフターサービスのことも含まれる。

そうなると海外製品はすすめにくい。
国産のプリメインアンプということに、自然となってしまう。

ラックス、アキュフェーズは予算的に少しオーバーしてしまう。
ヤマハは……、というと、今回ヤマハのウェブサイトを見て驚いたのは、
この価格帯のアンプが製造中止になっていたことだ。

ヤマハのアンプのフラッグシップとして、セパレートアンプの5000シリーズがある。
その下には、これまでA-S3000があって、A-S2100、A-S1100があったはずなのに、
三機種とも、すでに製造中止なだけでなく、後継機種がない。

この下となると10万円未満の製品ばかりだ。

こうなってくると、デノンとマランツぐらいしかない。
この二社のプリメインアンプで、アナログプレーヤーも再生可能なのは、また限られる。

これが、日本のオーディオの現状なのか、と思ってしまうほどだ。
けれど実際の買物は、もう少しだけ幅がある。

販売店にいけば、アウトレットと称して、けっこう割り引いてくれるモノがある。
これは多少の運任せの面があるが、買うということは、そういうことでもある。

なので昨日は、三人で秋葉原のヨドバシに行っていた。

Date: 5月 12th, 2020
Cate: 選択

オーディオ機器を選ぶということ(プリメインアンプの場合・その1)

私にとって二冊目のステレオサウンドは42号。
特集はプリメインアンプの総テストだった。

53,800円(オンキョーIntegra A5)から、
195,000円(マランツModel 1250)までの35機種がとりあげられていた。

試聴記、解説、測定データなどを含めて、一機種あたり五ページが割かれていた。
当時、中学生だった私には、充実した記事だった。

ステレオサウンドは57号でもプリメインアンプの総テストを行っている。
こちらは、56,800円(オンキョーIntegra A815)から、
270,000円(ケンウッドL01A)までの34機種。
このころは高校生だった。

いまステレオサウンドがプリメインアンプの総テストをやるとしたら、
いったい何機種とりあげるのか。

別項で、いまのステレオサウンドの編集方針を、幕の内弁当にたとえているが、
ここでいいたいのはそのことに関することではなく、
単純に、市場からプリメインアンプの製品数が、
私が中学生、高校生だったころからは大きく減ってきている、という事実である。

四十年ほど経っているのだから変化していて当然なのだが、
選択肢の少なさに、つい先日、ちょっと驚いてしまった。

20万円までの予算で、プリメインアンプが欲しい、という相談があった。
オーディオマニアからではない。
音楽好きの人からである。

いくつか条件があった。
もちろん価格。
それから入力の数。
アナログプレーヤーの接続するし、テレビも接ぐとのこと。

他にもちょっとあるけれど、もうこれだけでも選択肢はいくつもない。
選択肢(製品の数)が多ければ、それでいいわけではないが、
極端な減り方のように感じてしまった。

Date: 5月 11th, 2020
Cate: Jazz Spirit

Jazz Spirit Audio(その7)

音楽のジャンル分けに、どれだけの意味があるのかはひとまず措くとして、
“Friday Night in San Francisco”も幻想交響曲も、
いわゆるジャズと呼ばれるジャンルの音楽とはいえない。

にもかかわず、「Jazz Spirit Audio」というテーマであえて取り上げているのは、
Jazz Spiritが必要となるのは、なにもジャズと呼ばれている音楽だけに限らないからだ。

もちろん人によって、そのへんの考え方は違ってくる。
でも私は、私の好きな音楽に関してはJazz Spiritと、
私が感じているものが必要となってくることがある。

そんな気持をこめてのオーディオだから、Jazz Spirit Audioでもある。

少なくとも毎月第一水曜日に、
四谷三丁目のジャズ喫茶、喫茶茶会記でaudio wednesdayをやっているのだから、
Jazz Spirit Audioという気持は絶対に忘れないようにこころがけている。

Date: 5月 11th, 2020
Cate: マッスルオーディオ

muscle audio Boot Camp(その18)

実際にパワーアンプの動的な出力インピーダンスの変動を測定していないし、
そういう測定器データをみたことがないけれど、
おそらくA級動作とB級動作とでは変動の仕方に違いがある、と考えられる。

そしてA級動作のほうが、変動の幅も小さいはずだ。

そして、これも推測でしかないのだが、
出力段の回路構成だけではなく、電源によっても変動の仕方は変化しているはずだ。

さらに負荷インピーダンスの急激なインピーダンス変化でも、
出力インピーダンスは変化しているのではないだろうか。

そんな推測を立てて、ステレオサウンド 64号の測定データをみると、けっこう納得がいく。
これをこじつけと捉える人もいるだろうが、
だからといって、パワーアンプの出力インピーダンスが、
信号の変化、出力段の構成と動作、電源部の設計とコンストラクション、負荷インピーダンスの変化、
これらの要素によって、動的に変動しない、とはいえないはずだ。

ケンウッドのL02Aは、64号での測定で、もっとも優れていた。
ということは、L02Aは動的な出力インピーダンスが安定している、ということなのか。

Date: 5月 10th, 2020
Cate: Jazz Spirit

Jazz Spirit Audio(その6)

数年前のインターナショナルオーディオショウでの、
とあるブースでかかっていた“Friday Night in San Francisco”。

そこで鳴っていた音は、聴けば聴くほどに、こちらを冷静にさせてしまう音だった。
その数年後、やはりインターナショナルオーディオショウでの別のブースでもそうだった。

そこではドゥダメル/ロサンゼルス・フィルハーモニーによる
ベルリオーズの幻想交響曲(ライヴ録音)が鳴っていた。

CDではなく、ハイレゾ音源をダウンロードしたものによる再生だった。
この時の音については別項でも少し触れているが、
聴いていて、冷静な幻想交響曲だな、と思っていた。

そして曲が終って、拍手が鳴り出した。
そこでやっとライヴ録音だったことを知った。

盛大な拍手だった。
聴衆はドゥダメルの演奏に熱狂しているようだった。

観客の拍手から判断するに熱演だったようだ。
でも、そんなことは幻想交響曲が鳴っている最中は、まったく感じなかった。

ここでも、聴けば聴くほどに、こちらを冷静にさせてしまう音だったのだ。

冷静になってしまう、というのは、私としては抑えた表現である。
本音は聴けば聴くほどしらけてしまう音なのだ。

その2)で、鳴り終ったあとに、聴いていた人同士で話が弾む、と書いた。
インターナショナルオーディオショウでの“Friday Night in San Francisco”、
ドゥダメルの幻想交響曲は、そうではなかった。

それに鳴り終ったあとに、とも書きたくない気持がこちらの心に残る。

Date: 5月 10th, 2020
Cate: 世代

世代とオーディオ(若い世代とバックナンバー・その5)

昨晩(その4)を書いたあとにふと思ったことがある。
本には書籍と雑誌とがある。
録音された音楽には、LPやCDやミュージックテープがあるが、
これらはいわゆる書籍にあたる存在だ。

音楽において雑誌にあたる存在はなんだろうか。
ラジオでの音楽番組かもしれない。

古い雑誌を読むということは、
音楽では古い放送をエアチェックしたものを聴くということになるのか。

Date: 5月 10th, 2020
Cate: 広告

響きに谺けよ(その1)

「響きに谺けよ」は、四十年ほど前のヤマハのスピーカーシステム、
NS690IIIの広告のキャッチコピーだ。

谺けと書いて、ひびけ、と読ませていた。
谺けは、ふつうは「ひびけ」とは読まない。
谺はこだまだから、ある種の響きであることは確かだ。

「響きに谺けよ」は高校生だった私に、
こんな漢字があるのか、ということで記憶に残っている。

でも、いまこうして憶いだしてみると、「響きに谺けよ」は考えさせてくれる。

Date: 5月 10th, 2020
Cate: 世代

世代とオーディオ(カセットテープのこと)

数ヵ月前、オーディオマニアではない人数人と話していて、
カセットテープのことが話題になった。

彼らは、いま40代。私よりも十くらい若い。
そんな彼らにとって中学・高校時代によく使っていたカセットテープは、
AXIAだ、とみな口を揃えていう。

そしてコマーシャルに出ていた斉藤由貴がかわいかった、とも、これまた口を揃えていっていた。

AXIAが登場したのは1985年。
それ以前は富士フイルム(のちにフジカセット)だった。
1980年前半には、YMOを広告に使っていたが、
カセットテープ・ブランドとしての知名度は高くなかった。

富士フイルムは以前から磁気テープを手がけていたけれど、
その歴史の割には、TDK、ソニー、マクセルと比較すると、はっきりと地味な存在だった。

私にとって、カセットテープといえば、TDKだった。
そしてADのコマーシャルに登場していたマイルス・デイヴィスが強烈な印象だった。

カセットテープといえばAXIAだ、いう数人は、
富士フイルムだということも知らなかったし、YMOを使っていたことも知らなかった。

私はYMOを使っていたことは知っていたけれど、
斉藤由貴の出ているコマーシャルは見たことがなく知らなかった。

十年でここまで違うのか、
これがジェネレーションギャップなのか、と思うほどに、
富士フイルムの、いわゆるブランディングは成功した、ということなのか。

Date: 5月 9th, 2020
Cate: 言葉

〝言葉〟としてのオーディオ(その8)

その1)は七年前である。
そのぶん歳をとったわけでもある。

「〝言葉〟としてのオーディオ」を、まだ必要としているのか、
それともそうでなくなりつつあるのか。
それすらも、自分でははっきりとしないところがある。

ただ、オーディオ雑誌からは消えてしまっている、と感じているし、
もういまのオーディオ雑誌は、
私とはまったく違う意味で「〝言葉〟としてのオーディオ」は必要としていないし、
考えてもいないのだろう。

Date: 5月 9th, 2020
Cate: 世代

世代とオーディオ(若い世代とバックナンバー・その4)

若い人が、古い本を読む。
その人が生まれる以前の古い本を読む。

それが書籍ならば、多くの人がそうであろう。
自分が生まれる前に書かれた小説や詩などを読んだりする。

けれど、それが雑誌となると、ちょっと違ってくる。
若い人が、古い雑誌を読む。
その人が生まれる以前の古い雑誌、
さらにその人の親が生まれる以前の古い雑誌を読む。

以前は国会図書館にでも行かなければ、そんな古い雑誌を読むことは難しかった。
けれど、いまではインターネットがあり、
古書店の検索も便利になっているし、オークションもある。

古い雑誌を手に入れる手段は増えているだけでなく、便利になってきている。

(その1)で、
そんな古い雑誌を若い人が読むのは、悪いこととはいえないけれど、
良いことだ、ともいえないことがある──、と書いた。

今回も同じことを感じた。
なぜ、そこまで古い雑誌を手に入れて読むのだろうか。

その気持はわからないでもないが、
ならば、その人と同時代の雑誌も積極的に読んでいるのか、と問いたくなる。

たまたま手に入れた古い古い雑誌を読んで、あれこれ思う。
別に悪いことではない。

そこには、その人なりの発見があったはずだろうから、
その人が興奮するのも無理はないが、
それは時としてエキゾティシズムに近いものに、そんなふうに感じているだけではないのか──、
そんな気がしないでもない。