Archive for category テーマ

Date: 9月 5th, 2020
Cate: 日本のオーディオ

リモート試聴の可能性(その7)

ユニバーサルミュージックから「PLAYBACK in JAZZ KISSA BASIE」が発売されている。
SACDとLPだけでなく、e-onkyoでの配信も始まっている。

配信はDSF(11.2MHz)flac、MQA(96kHz、24ビット)がある。

すでにオーディオ関係のサイトで紹介されているので、詳細は省く。
ジャズ喫茶ベイシーの再生音を収録したものである。

今年はベイシー開店50年ということで、映画も公開されている。
その一貫としての、「PLAYBACK in JAZZ KISSA BASIE」の発売なのはわかっていても、
今年はコロナ禍ということで、オーディオショウがほほすべて中止になっているなかでの発売。

偶然なのだろうが、リモート試聴というテーマで書いている途中での発売は、
おもしろいタイミングでの登場というふうにも感じられる。

この企画は、どんなふうに受け止められるのだろうか。
おもしろい、と思う人もいれば、くだないこと、と思う人もいるはずだ。

再生音を録音して、何がおもしろいのか、という人は、以前からいる。
この人たちのいわんとするところがわからないわけではないが、
こうやって記録として残してくれることは、くだらない、とか、意味がない、とか、
そんなこと以前に、ありがたいことではないだろうか。

そんなことをいうよりも、「PLAYBACK in JAZZ KISSA BASIE」を、
どう聴くのかを、考えた方がずっと建設的ではないだろうか。

ジャズ喫茶ベイシーのシステムはよく知られている。
その音を収録して再生するのであれば、
やはり同じシステムでなければならないのか。

けれど、同じシステムであっても、同じ環境なわけではないし、
環境を含めて、ほぼ同じことを再現できたとしても、
鳴らす人が違うのだから……、ということになる。

同じにはできないのだから、どんなシステム、環境で聴いてもいい、ともいえる。
それでも伝わってくるところは、きちんとあるはずだ。

けれど、「PLAYBACK in JAZZ KISSA BASIE」について論じるのであれば、
少なくとも、なんらかのリファレンスといえるものをどうするのか──、
そのことを避けていくわけにはいかないはずだ。

Date: 9月 5th, 2020
Cate: トランス, フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(パワーアンプは真空管で・その5)

タムラのA8713は、一次側、二次側ともに二組の巻線がある。
この巻線の結線を変えることで、
一次側は20kΩか5kΩ、二次側は600Ωか150Ωに設定できる。

9月のaudio wednesdayでは、20kΩ:600Ωで使っている。
20kΩにするか、5kΩにするか。

どちらがいい結果が得られるか、
使用機器によって違ってくるだろうが、
私が、今回の音の変化の大きな理由として考えている、
直流域での抵抗の低さが効いているのであれば、
巻線の直流抵抗は低い方がいい、ということになる。

A8713の一次側(20kΩ)の直流抵抗は、ほぼ1kΩである。
5kΩにすれば、直流抵抗は半分の約500Ωになるし、
一次側の巻線を単独ではなく、並列接続すれば、
5kΩであっても、直流抵抗はさらに半分の約250Ωになる。

池田圭氏は、《Lをパラってみると》と書かれている。
トランスもコイルなのだが、
もっとも単純なコイルでも、同等の音の変化が得られるはずである。

ただ同じ値のトランスとコイルとでは、どちらが音がいいのだろうか。
トランス使用では二次側の巻線は開放のままである。
使っていない。

その巻線がぶら下がっているのは、精神衛生上よくない、と考えることもできるし、
意外にも開放状態の二次巻線があるからこそ、
のところはまったくないとは言い切れないようにも感じている。

このへんのことはこれからじっくり聴いて判断していくしかない。
ならばコイルは、何をもってくるのか。

A8713のインダクタンスは、私が持っているLCメーターでは、測定できなかった。
故障しているのか、と思った。
他の部品を測ってみると、きちんと動作している。

20kΩの結線のままだったから、試しに二次側の巻線を測ってみたら、きちんと値が出た。
今度は一次側巻線の半分だけを測る。
10Hを少しこえる値だった。

私が持っているLCメーカーは20Hまでしか測れないためだったわけだ。

Date: 9月 4th, 2020
Cate: 老い

老いとオーディオ(齢を実感するとき・その20)

9月2日のaudio wednesdayでの、
コーネッタで聴いたカラヤンの「パルジファル」は、いくつかのことを考えさせた。

この日と同じシステムで、同じ使いこなしを、
20代のころの私がやったとしよう。

クォリティ的には、この日の音とそう変らない音を出せる自信はある。
それでも20代の私が、「パルジファル」をかけて、
これほど、いい感じで鳴らすことはできなかった、と思う。

20代のころの私は、その前にカラヤンの「パルジファル」をかけなかった、とおもう。
もっと、他にうまくなってくれるディスクを選んだだろう。

7月のaudio wednesdayでは、クナッパーツブッシュの「パルジファル」をかけた。
8月は「パルジファル」はかけなかった。
9月が、カラヤンである。

常連のHさんは、カラヤンの「パルジファル」の感想として、
「静謐の中から立ち上る感じ」と、あとで伝えてくれた。

物理的なS/N比の高さ、ではない。
もちろん、物理的なS/N比も、ある程度は保証されていなければならないのだが、
それだけでは、静謐の中から、とはなってくれない。

なにかが必要なのであった──、というよりも、
何かが求められるようも感じている。

「パルジファル」が鳴る。
齢を実感するとき、である。
けれど、ここにはネガティヴな意味はない。

Date: 9月 3rd, 2020
Cate: トランス, フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(パワーアンプは真空管で・その4)

今回使ったケーブルは、私の自作だ。
いま喫茶茶会記で、メリディアンの218に使っているのも、私の自作で、
どちらも同じケーブルを使っている。

なので、今回の比較は、多少長さの違いはあっても、
同じケーブルでのトランスの有無(一次側巻線の並列接続の有無)である。

この実験は、ずっと以前に、
自分のシステムで、まだアナログディスク時代に試している。

今回、ひさしぶり(30年以上経つ)の実験である。
前回の記憶は、けっこう曖昧になっているけれど、
なんとなくの感触は、まだ残っていた。

けれど、今回の音の違いは、あのころよりも大きかったように感じた。
スピーカーもアンプも、なにもかもが違うわけだが、
それにしても、こんなに違うのか、と、私だけでなく、
いっしょに聴いていた人も、そう感じていた。

池田圭氏は、
《たとえば、テレコ・アンプのライン出力がCR結合アウトの場合、そこへ試みにLをパラってみると、よく判る。ただ、それだけのことで音は落着き、プロ用のテレコの悠揚迫らざる音になる》
と書かれている。

昔も、そう感じた。
今回も、まったく同じであるのだが、その違いが大きくなっているように感じた。

児玉麻里/ケント・ナガノによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第一番(SACD)で、
ケーブルの比較を行った。

A8713の一次側側巻線が並列に接続されると、
ピアノのスケールが違ってくる。

並列にした音を聴いてから、ない音を聴くと、
ピアノがグランドピアノが、どこかアップライト的になってしまう。
オーケストラもピラミッド型のバランスの、下のほうが消えてしまったかのようにも聴こえる。

もう一度、巻線を並列に接続した音に戻すと、悠揚迫らざる音とは、
こういう音のことをいうんだ、と誰かにいいたくなるほどだ。

Date: 9月 3rd, 2020
Cate: トランス, フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(パワーアンプは真空管で・その3)

その2)で書いていることを、昨晩のaudio wednesdayで試した。

使ったトランスは、タムラのA8713だ。
一次側が20kΩ、二次側が600Ωのライン出力用トランスである。
手に入れたのは30年ほど前のこと。

(その2)か、池田圭氏の「盤塵集」のどちらを読んでほしいのだが、
A8713の一次側の巻線のみを使う。

ラインケーブルに並列に、一次側の巻線が接続されるだけである。
二次側の巻線は使わない。
一般的なトランスの使い方からすれば変則的である。

ようするにCDプレーヤー(もしくはD/Aコンバーター)の出力に、
A8713の一次側の巻線が負荷として接続された状態である。

これならばトランス嫌いの人でも、手持ちのトランスがあれば実験してみようと思うかもしれない。
CDプレーヤーの出力にトランスといっても、
CDプレーヤーが登場してしばらく経ったころに、
ライントランスを介在させると、CDプレーヤーの音が改善される──、
そんなことがいわれるようになったし、メーカーからもいくつか製品として登場した。

いくつか試してことはあるし、
SUMOのThe Goldを使っていた関係で、
TRIADのトランスを使ってバランスに変換して、
The Goldのバランス入力へ、という使い方はやっていたが、
CDプレーヤーの出力に、安易にトランスを介在させるのは、決して絶対的なことではない。

けれと
池田圭氏の使い方は、上記しているように、ちょっと違う。
今回はA8713の一次側は20kΩのまま使った。

一次側、二次側とも巻線は二組あるから、結線を変えれば、インピーダンスは低くなる。
同時にコイルの直流抵抗も小さくなる。

今回のようなトランスの使い方では、
コイルの直流抵抗の低さが、かなり重要になるような気がしてならない。

できればインダクタンス値が高くて、直流抵抗が小さい、
そんなトランスがあればいい。

Date: 9月 3rd, 2020
Cate: audio wednesday

audio wednesday (今後の予定)

10月のaudio wednesdayは、すでに告知しているとおり、
野上眞宏さんと赤塚りえ子さん、二人のDJによるmusic wednesday。

12月は、ベートーヴェンの誕生月ということ、
今年は生誕250年なので、ベートーヴェンばかりをかけるつもりでいる。

11月はまだ決めていない。
1月もまだ決めていないが、
2011年2月2日に始めた、この会も十年やったことになる。

ここで一区切りにしたいので、
やれるかどうかはなんともいえないが、これまでとは違うことを考えている。

Date: 9月 2nd, 2020
Cate: 「ネットワーク」

dividing, combining and filtering(その3)

一人のオーディオマニアの人生も、
分岐点(dividing)と統合点(combining)、それに濾過(filtering)だ、とおもう。

一人で暮らしていると、それは自由と思われがちだし、自由といえることも多い。
あれこれやる時間がたっぷりとある。

でも、それをやるためには、一人でできることもあればそうでないこともある。
一人でできること、とおもえていることであっても、
実のところ、ほんとうに一人でできているのかもなんともいえない。

今年の4月と5月はひとりで過ごすことが大半だっただけに、
このことを強く実感する。

Date: 9月 2nd, 2020
Cate: audio wednesday

第116回audio wednesdayのお知らせ(music wednesday)

9月のaudio wednesdayでは、器材よりもディスクを優先したが、
10月7日のaudio wednesdayでは、すでに告知しているように、
野上眞宏さんと赤塚りえ子さんの二人にDJをやってもらうから、
私がディスクをもっていく必要はない。

なので10月のaudio wednesdayでは、
メリディアンの218をはじめ、200V用のトランス、アクセサリー類などしっかり持っていく。

場所はいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

19時開始です。

Date: 9月 2nd, 2020
Cate: アクセサリー

D/Dコンバーターという存在(その8)

その7)へのfacebookのコメントを読んで、
改めてオーディオ機器のジャンル分けというか、
呼称が微妙なところをもつようになった、と感じている。

CDプレーヤーまでは、よかった。
明確に、この製品はCDプレーヤーである、とか、D/Aコンバーターである、
そんなふうにはっきりといえた。

けれどコンピューター、ネットワークといった要素がオーディオのシステムに関ってくるようになると、
私が、ここでD/Dコンバーターと便宜上呼んでいる機器も、
ほんとうにそれでいいのか、ということになる。

メリディアンの210のことを書いているが、
210を単にD/Dコンバーターという言い方で紹介できるのか。

確かに210の機能は、D/Dコンバーターといえる。
とはいえ、いま私が使っているFX-AUDIOのFX-D03J+と210を、
D/Dコンバーターという同じ括りで捉えてしまうことの難しさがある。

FX-D03J+は、ほぼ単機能といえる製品である。
D/Dコンバーター以外の呼称はない、といっていい。

それに、ここでのカテゴリーは「アクセサリー」である。
FX-D03J+はアクセサリー的製品である。

けれど、210やミューテックのMC3+USBなどは、アクセサリー的製品といえるのか。
そう捉える人もいるだろうし、いや、立派なコンポーネントだと捉える人もいる。

210の正式名称は、210 Streamerであるから、
210はD/Dコンバーターと呼ぶよりも、ストリーマーと呼んだ方がいいのか、となると、
そうとも思えない。

これから先、それぞれのメーカーが、独自の呼称をつけてくるかもしれない。
それに従うのには、抵抗がある。

それにデジタル入力とデジタル出力のオーディオ機器、
つまりアナログ入力、アナログ出力をもたない機器は、
D/Dコンバーターと呼んでいい、と考える。

Date: 9月 1st, 2020
Cate: High Resolution

MQAのこと、オーディオのこと(その4)

聴きたい(買いたい)録音がすべて買えるほどの経済力を持っていない。
だから購入を迷うディスクと、ためらわないディスクがある

購入を迷うディスクだと、その時の懐事情に左右されもする。
厳しい時はガマンしよう、ということになる。
ほかにも聴きたい録音があるのだから、そちらを優先することになる。

それでも迷うディスクというのは、
私の場合はたいてい、あまりなじみのない音楽のことが多い。

気になっているんだけれども……、
最近は、そういう場合でも、MQAで出ていると、買おう、になってしまう。

つい最近も、それで買ってしまった。
シェールの「Dancing Queen」を、e-onkyoからMQAで買ってしまった。

「Dancing Queen」のアルバムタイトルからすぐにわかるように、
シェールがABBAの曲をカバーしている。

MQAといっても、44.1kHz、24ビットである。
スペック的には魅力は感じない。

MQAでなかったら、あとで買おう、といって、ずっとずっとそのままにしていたはずだ。
私にとって、MQAであることが、ポンと背中をおすような存在になっている。

そうやっていくことで、聴く音楽の領域が少しではあっても拡がっていく。
これはいいことなのだが、同時にオーディオ的には、もっと普及してほしい、と思うところがある。

それは、たとえばアクティヴ型スピーカーだったりする。
デジタル信号技術の進歩によって、
それ以前のアクティヴ型スピーカーと、現在のアクティヴ型スピーカーの性能は、
驚くほど向上している。

聴いてみたい、と思う製品も少なくない。
そのことはけっこうなことなのだが、
これらのアクティヴ型スピーカーにも、ほとんどの機種でデジタル入力がついている。

アクティヴ型スピーカーが、MQA対応にならないのか、ということだ。

Date: 9月 1st, 2020
Cate: audio wednesday

第115回audio wednesdayのお知らせ(夏の終りに)

明日(9月5日)のaudio wednesdayでも、タンノイ・コーネッタを鳴らす。
これまで二回の鳴らし方とは、違う鳴らし方をする。

メリディアンの218を使うようになってから、
218でレベルコントロール、トーンコントロールをして、
マッキントッシュのMA7900はパワーアンプ部のみ使っていた。

今回は久しぶりに、MA7900を本来のプリメインアンプとして使う。

218を持参するようになって、荷物が増えた。
200Vのトランスも持参しているわけで、その他にも電源コード、
デジタ出力用のケーブル、その他218に取り付けるいくつかのアクセサリーなどで、
けっこうな嵩張るようになってきた。

そのせいで、CDの枚数が犠牲になっていた。
これもこれも持っていきたいけど、カバンに入らないし、けっこう重くなる。

なので、今回はCDを優先して、218も200Vのトランスも持参しない。
喫茶茶会記の218もversion 9にしている。

それでも218を持参していたのは、version 9からさらにいくつか手を加えているからだ。
そういう違いが、今回は生じるから、あえて鳴らし方のアプローチも変えてみる。

それもあって、別項「境界線(その15)」で書いているラインケーブルも持参する予定。

過去二回のコーネッタの音から、がらり変ることはないが、
決して小さくない音の変化はあるはずだ。

場所はいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

19時開始です。

Date: 8月 31st, 2020
Cate: 冗長性

redundancy in digital(その8)

別項で書いているようにiPhoneを、
メリディアンの218に接続して音楽を聴くことが、私にとって当り前になってきている。

CDプレーヤーも使っている。
SACDを聴くときには、CDプレーヤーのアナログ出力をアンプに接続する。

それ以外、つまり通常のCDやMQA-CDを聴く場合には、デジタル出力を218に接続している。
CDプレーヤーの二つの出力(アナログとデジタル)を使い分けているわけで、
だからといってアンプの入力セレクターで対応はせずに、
その度にケーブルを接ぎかえている。

そこにiPhoneが加わると、接ぎかえが増える。
手間といえば手間だが、大変なことではない。
それでも、そろそろなんとかしようとは思いつつも、こんなことをいちいちやっているのも、
iPhoneでのMQA再生が、なかなかいいからである。

iPhoneとCDプレーヤー。
その大きさと重さは、比較するまでもなく、大きく違う。
消費電力もかなり違う。

ここでのテーマ、redundancy in digital(デジタルにおける冗長性)でいえば、
iPhoneは、冗長性の徹底的な排除をはかっている、といえるはずだ。

その成果は、iPhoneをオーディオ機器として捉えても、あると考えている。
デジタル機器としての完成度を高めるためには、
冗長性をなくしていくことは重要なことのようにも感じている。

そう思いながらも、(その2)で書いているように、
ワディアのWadia 2000、X64.4、同時代のD/Aコンバーターが気になってもいる。

ワディアの初期のD/Aコンバーターは、あのころ衝撃的だった。
おそらく、瀬川先生がマークレビンソンのLNP2をきいた時にうけられた衝撃に近い、
もっといえば同種の衝撃だった、とさえ思っているくらいだ。

その衝撃が、まだ残っているからなのもわかっている。
それでも、いまWadia 2000、X64.4を聴いたら、どんな印象を受けるのか、は気になる。

聴く機会はなかったけれど、ワディアのPower DACは、その意味でもっと気になる。

いま愛用している218は、冗長性は小さい、といえる。
そのD/Aコンバーターで、ラドカ・トネフの「FAIRYTALES」を聴いていると、
デジタルにおける冗長性について、どうしても考えてみたくなる。

Date: 8月 30th, 2020
Cate: アクセサリー

D/Dコンバーターという存在(その7)

一年前に、メリディアンから210 Streamerが登場した。

しばらくすれば日本に入ってくる──、そう思っていた。
ところが、しばらくしたら210のニュースどころか、
メリディアンの輸入元がオンキヨーに変る、というニュースだった。

オンキヨーがメリディアンを扱う。
いろんなサイトで取り上げられていた。
それから、ほぼ一年。

オンキヨーのサイトをみると、メリディアンのページはあることにはある。
ただし、2020年1月から、日本での販売代理店になった、という告知のみである。

ニュースでは2019年12月からだったのが、一ヵ月遅れて、である。
さらに、少しも進んでいない。

210の取り扱いも始まっていない。
どうなるのかは、いまのところなんともいえない。

218と組み合わせるD/Dコンバーターの候補の一つは、210である。
けれど……、という状態が、これからも続くのか。

210以外では候補として考えているのは、ミューテックのMc3+USBである。

MC3+USBは、16万円ほどする。
218との組合せ前提なので、価格的には、このあたりを上限としたい。

もっと高価なD/Dコンバーターがあるのは知っている。
試してみたい、と思うモノもある。
けれど、大きさと価格を考慮すれば、MC3+USBより上のモデルは候補から外れる。

Date: 8月 30th, 2020
Cate: 再生音, 快感か幸福か

必要とされる音(その14)

9月のaudio wednesdayでも、タンノイ・コーネッタを鳴らす。
コーネッタが、喫茶茶会記のアルテックよりもいいスピーカーだから、というよりも、
鳴らしたいから、というのが、理由にならない理由である。

喫茶茶会記のアルテックも、古いタイプのスピーカーといえる。
コーネッタもそうだ。
コーナー型で、フロントショートホーン付き。

アルテックよりも、古いといえば、いえなくもない。
そういうスピーカーを、今回もまた鳴らす。

7月に鳴らして、8月も鳴らした。
9月も鳴らすわけだから、三ヵ月続けてのコーネッタである。

鳴らしたいから、は、聴きたいから、でもある。
そして聴きたいから、は、聴いてほしい、ということでもある。

コーネッタの音を、聴いてほしい、と思うのは、
どこか、コーネッタの音を、必要とされる音と感じているからなのかもしれない。

Date: 8月 29th, 2020
Cate: 数字

300(その10)

オーディオの世界において、
300Wという出力は、スーパーカーの300km/hという速度と同じ意味あいをもっていた時期があった。

ほかの人はどうなのかはわからないが、
中学生、高校生のころの私には、
300Wと300km/hは、それぞれの領域での、その時点での突破すべき数値であった。

それにしても、なぜ300? なのか。
そういえば、オーディオの世界での、有名な300といえば、
ウェスターン・エレクトリックの300Bがある。

300Bは、いうまでもなく、真空管の型番である。
300Wや300km/hとは、もともと違っている。

それでも300なのである。
ウェスターン・エレクトリックの真空管の型番は、
開発時期、登場時期によってつけられているといっていいだろう。

これは、特別に優れた真空管だから、特別な型番にしよう、といった、
オーディオ機器の型番のつけ方ではない。

にも関らずの300である。
300Bが、ほかの型番だったら。
たとえば400Bとか200B、
そんなキリのいい数字ではなかったら、300Bという真空管の印象は、
まったく影響を受けないのだろうか。

300Bはアメリカの真空管だから、
300Bの読みは、スリーハンドレッド・ビーかスリー・オー・オー・ビー、
スリー・ゼロ・ゼロ・ビーのどれかだろう。

日本では、三百B(さんびゃく・びー)である。
ウェスターン・エレクトリックのほかの真空管は、
350Bだとサン・ゴー・マル・ビーと読む。
349Aもサン・ヨン・キュー・エーである。

300Bを、これまでサン・マル・マル・ビーとかサン・ゼロ・ゼロ・ビー、
こんなふうに読んだ人は、少なくとも私の周りには一人もいない。

300Bだけ、三百Bである。