Archive for category テーマ

Date: 9月 11th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(コントロールアンプのこと・その18)

メリディアンの218は、固定出力にも可変出力にも設定可能であるから、
SAEのMark 2500とのあいだに音量調整機能は不要といえば、そうである。

昨年まで毎月第一水曜日にやっていたaudio wednesdayでは、
218の機能を使って音量調整をやっていた。

ときおりインターネットでみかけるのは、
コントロールアンプを使うのがいいのか、
それともD/Aコンバーターが218と同じように音量調整機能があるのならば、
パワーアンプと直結してしまうのがいいのか、
デジタル領域での信号処理がイヤならば、
パッシヴ型フェーダーを介したほうがいいのか、
そんなことを悩む人がいる。

私は、どれでもいいじゃないか、と最近では考えるようになった。
どれがいいのか、ということよりも、
それぞれの方式の良さを楽しもう、と思うようになったからだ。

コントロールアンプを介するのならば、
介することの面白さを存分に楽しみたい。

なので、ここでのコントロールアンプ選びとは、
優れたコントロールアンプ選びということではない。

Date: 9月 10th, 2021
Cate: ショウ雑感

2021年ショウ雑感(その26)

その23)で、今回は出展を辞退する会社があるのかどうか、と書いた。
今日、ソーシャルメディアに、ある出展社が今回は辞退する、とあった。

どこなのかは私は知らない。
やはり、そういう会社がある。

私は、この会社の判断を支持する。
けれど、そのソーシャルメディアの投稿には、ペナルティが与えられる、ともあった。
本当なのだろうか。

日本インターナショナルオーディオ協議会としては、開催する以上、
すべての出展社が揃ってこそ、という考えなのだろうか。
だとしても、コロナ禍では、辞退する会社があっても仕方ないこと、としないのか。

本当にペナルティを与えるのか。
どんなペナルティなのか。

日本インターナショナルオーディオ協議会からの排除なのだろうか。
ハーマンインターナショナルの件で、そういうことがあってもおかしくないことを、
すでに知っている。

今日の東京の感染者数は減っている。
このまま順調に減っていけば、11月には安心できる状況になっているかもしれない。
そうなれば、いまは辞退を考えている会社も出展するようになるかもしれない。

どうなるのかはわからない。
けれど、ペナルティを与えることだけはやってはいけない。

Date: 9月 10th, 2021
Cate: ジャーナリズム

オーディオの想像力の欠如が生むもの(その70)

オーディオの想像力の欠如した聴き手は、
顰みに倣いがちだから、鳴らし手へと変れないのだろう。

Date: 9月 10th, 2021
Cate: スピーカーの述懐

あるスピーカーの述懐(その14)

スピーカーはしゃべってくれない、何かを話してくれるわけではない。
スピーカーは音を鳴らす器械ではあっても、具体的な言葉で、
こうしてほしい、とか、もっとうまく鳴らしてほしい、とかを、伝えてくれるわけではない。

スピーカーから聴こえてくるのは、音である。
その音は歌であったり、ピアノの音であったり、電子楽器の音であったりする。
アンプから送られてきた信号を、振動板の動きに変換して、音を出すだけである。

100円程度で買えるスピーカーであっても、
一千万円を超えるスピーカーであっても、そのことにかわりはない。

つまり100円で売られているスピーカーも、
一千万円を超えるスピーカーであっても、
自分の意志を、具体的な言葉で伝えてくれるわけではない。

スピーカーは、その音しか伝えてくれない。
だから、その音を翻訳して、
スピーカーが何を要求しているのかを感じとれなくては、
そのスピーカーの聴き手は、そのスピーカーの鳴らし手にはなりえない。

そのスピーカーを買ってきて、設置して、
アンプに接いで音を鳴るようにする。
それだけでは、そのスピーカーの鳴らし手とは、まだ呼べない。

時にはアンプを替えたり、ケーブルを交換したり、
置き場所も変えてみたりして、音を良くしようとする。

良くなった、そうでもなかった、悪くなった──、
と一喜一憂しただけでも、スピーカーの鳴らし手とは、まだいえない。

目の前にある、そのスピーカーがどう鳴らされたがっているのか、
それを感じとって鳴らすことが出来て、はじめて鳴らし手といえる

Date: 9月 9th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(コントロールアンプのこと・その17)

プレシジョン・フィデリティのC4は、いい管球式コントロールアンプだった、と思う。
回路的にも面白いと思っている。

それでも内部写真を見ると、回路は洗練されているといえても、
造りはそうではない。

プリント基板の採用だけでなく、プリント基板のパターン含めて、
およそ洗練されているとは言い難い。

プレシジョン・フィデリティのC4の回路そのままで、
Independence TypeIIや上杉先生発表のアンプのように配線していったら、
さらには昔ながらの管球式アンプの配線であったならば──、と思う人は、
私以外にもきっといるはずだ。

(その8)でちょっとだけ触れたKTS Audioというブランドによる
C4をベースにWaltzというコントロールアンプは、まさしくそうである。

プリント基板を使っていないのだ。
世の中、同じことを思う人がやはりいる。

Waltzがどんな音なのかはわからない。
聴く機会はない、と思う。

それでもいい。
管球式アンプにプリント基板を使うことに抵抗を感じる人がいて、
プリント基板を採用した過去のアンプを、手間のかかる配線によってよみがえらせている。
このことが嬉しいのだから。

プレシジョン・フィデリティのC4の程度のいい中古と出逢うことは、期待していない。
ならばWaltzのように、自分でつくるという手がある。

SAEのMark 2500と組み合わせるコントロールアンプとして、
ソリッドステートならば、いまでもマークレビンソンのLNP2なのだが、
管球式ならば、C4の自作ヴァージョンかな、と真剣に考えている。

Date: 9月 9th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(コントロールアンプのこと・その16)

ハルアンプのIndependence TypeIIと
上杉先生のステレオサウンド 45号発表のコントロールアンプ。

回路がまったく違うアンプであり、
上杉先生のアンプは外部電源ということもあって、
左右チャンネル対称といえる部品配置であるが、
プリント基板に頼らない配線ということは共通している。

プリント基板の採用は、大量生産するメーカーにとっては、
品質管理の上でもなくてはならないものであることは理解している。

それでも管球式アンプでは、
プリント基板に頼らないでほしい、という気持が私にははっきりとある。

とはいえラックスでもプリント基板を採用していたし、
ラックス規模のメーカーであれば、
海外の新興メーカーよりも生産台数はずっと多いはずだから、
プリント基板を採用することで、コストを下げることにつながっている。

くり返しになるが、それでも……、とやっぱり心の中でつぶやきたくなる。

ハルアンプと上杉先生のアンプは、プリント基板のメリットも活かしつつ、
プリント基板とは、そうとうに違う。

ベースに銅板かベークライトの板か。
どちらがいいのかは一概にはいえない。

銅板は導体である。
ベークライトはそうではない。

それに指で弾いた音も、銅とベークライトでは違う。

Independence TypeIIの実機を、内部をしげしげと見たことがないのでなんともいえないが、
銅板を使うことでベタアースが可能になる。
ベークライトではそうはいかない。

アースの処理をどうするのかは、昔から論争がある。
Independence TypeIIがベタアースでなかったとしても、
銅板はシールドとしても働く。

同じ回路、同じ部品配置だとしても、
銅板とベークライト板では、そうとうに音は違ってくる。

以前、テフロンのプリント基板が話題になった。
テフロンの電気特性の優秀さゆえに、音が良い、
そんなふうにいわれていたけれど、
テフロン基板と、一般的なガラスエポキシの基板とでは、指で弾いた音がそうとうに違う。

私は、このことが音の違いに大きく影響していると捉えている。

Date: 9月 8th, 2021
Cate: ステレオサウンド

月刊ステレオサウンドという妄想(というか提案・その9)

柳沢功力氏の「ぼくのオーディオ回想」がつまらない。
以前、そう書いた。

けれど柳沢功力氏が書かれるものすべてをつまらない、と思っているわけではない。
ステレオサウンド 200号掲載の「ステレオサウンド誌の基礎を築いた人たち」、
これはおもしろかった。

以前、私は柳沢功力氏と傅 信幸氏は、なかなかのオーディオ漫談家である、と書いた。
このことに変りはない。

オーディオ漫談家、狂言まわしとしての良さが、
「ステレオサウンド誌の基礎を築いた人たち」の面白さを支えている。

いまオーディオ雑誌になんらかを書いている人たちのなかには、
オーディオ評論家と呼ばれるのを嫌がっている人がいる、と聞いている。

オーディオ漫談家、オーディオ狂言まわし、
そんなふうに呼ばれたくはない、という人もいるだろう。

でも、オーディオの読み物として、
オーディオ漫談、オーディオ狂言まわしはあればおもしろいではなく、
それが良質であれば、なければならないものである。

Date: 9月 8th, 2021
Cate: オーディオ評論

B&W 800シリーズとオーディオ評論家(その12)

この項を書いていて、以前から考えていることを思い出している。
オーディオ機器の性能について、である。

特にスピーカーの性能について、といってもよい。

優秀な性能のスピーカーと高性能のスピーカーは同じだろうか。
同じと答える人も、そうではないと答える人も、両方いるはずだ。

私は後者である。
優秀な性能のスピーカーと高性能なスピーカーを同じとは捉えていない。

私がワクワクしていた、昔のモニタースピーカーは高性能のスピーカーであり、
ワクワクを感じなくなった現代のモニターと呼ばれるスピーカーは、
優秀な性能のスピーカーである──、そんな感じがしてならない。

どちらのタイプにワクワクするのかも、人によって違うのだろう。

Date: 9月 7th, 2021
Cate: オーディオ評論

B&W 800シリーズとオーディオ評論家(その11)

試聴室に届いたB&Wの801Fを開梱して、セットする。
中高域のサブエンクロージュアを、ウーファーのエンクロージュア上部に取り付ける。

その際に、こんな簡単(いいかげんな)取り付け方と思ったのを、
いまもはっきりと思い出す。

それまで期待は膨らみ続けていた。
それが一瞬にして萎み始めた。

でも、音は聴いてみないことにはわからない。
音が鳴ってくるまでは、期待はまだまだ残っていた。

801Fを貶めるつもりはまったくないし、悪いスピーカーとも思っていない。
ただこちらが一方的に期待していただけのことであり、
その期待が裏切られた、ということでしかない。

私は勝手にKEFのModel 105のスケールアップした音を期待していた。
そういう音が、801Fからは鳴ってこなかった。
それだけのことである。

それでも期待とは違っていても、こちらをワクワクさせる音が鳴ってくれれば、
B&Wに対する私の印象は、ずいぶん変ったはずだ──。

そう思う反面、ほんとうにそうなっただろうか、と思う気持がそうとうに強くある。

801Fを聴いて、KEFの105と似た格好ながら、精度感が足りないと感じた。
音の体温といいたくなるところも、ぬるいと感じた。

KEFの105の音も、音の体温が高いわけではない。
けれど、その体温感を不快とは感じなかった。
つまりぬるいとは感じなかった。

なのに801Fの音はぬるいと感じた。
このぬるいは、あきらかに不快感である。

801で始まったB&Wの800シリーズは、それから三十年以上かけて、ずいぶん進歩した。
最近の800シリーズの音を聴いて、ぬるいとは感じなくなった。
精度感のたりない音とも感じない。

けれど、音に血が通っている感じを、そこから感じとれるかというと、
つまり音楽を聴いて、血の通った音と感じられるかとなると、
私は疑問が残ってしまう。

正しい方向に向っているのか、
精確な方向に向っているだけなのではないのか。

Date: 9月 7th, 2021
Cate: ショウ雑感

2021年ショウ雑感(その25)

毎日夕方に発表される感染者数は、
誰の目にもあきらかな数値である。

今日も減ってきている。
いい傾向だ、と素直に喜べないのは、
身近に迫ってこないと見えてこない面があるのがわかっているからだ。

昨年12月に、仕事関係の人がやはり感染した。
一緒に仕事をした人が濃厚接触者となり、保健所から連絡があり、
PCR検査を受けて、結果は陰性。

先月末、私が置かれた状況は、その人とほぼ同じといえる。
なのに保健所からは連絡はこないし、
今回コロナに感染した人からの連絡では、私は濃厚接触者に当らない、とのこと。

昨年12月の例と今回の私の例。
どれだけ違うのだろうか。ほとんど違わない。
なのに12月の人は濃厚接触者となり、私は関係ないことになる。

なので自主的にPCR検査を受けた。
八ヵ月ほどで、判定基準があきらかに変ってきている。
このことはソーシャルメディアでも何度か目にしていた。

今回、それが本当だったことがはっきりしたわけだ。

それから今年のインターナショナルオーディオショウは、
11月の5日から7日までの三日間。

11月になってすぐに、ステレオサウンド・グランプリの選考会が行われる。
今年も同じのはずだ。

つまり10月はステレオサウンド・グランプリに向けての一ヵ月である。
今年は関係ない、というメーカー、輸入元もあるが、
今年ステレオサウンド・グランプリ入賞をめざしている会社にとっては、
試聴記を持ち回ることになる。

ステレオサウンド・グランプリだけではない、
年末にはオーディオ雑誌のいくつかは賞を発表する。
おおむね、そのためのスケジュールは、どこもほぼ同じといえる。

メーカー、輸入元、オーディオ評論家にとって忙しい一ヵ月となる。
その直後のインターナショナルオーディオショウの開催。

何も起らなければ、それがいちばんだ。
杞憂にすぎない──、そうであればいい。

けれど、こういう表立ってこない面があるということだけは、
知っておいてもいいのではないだろうか。

Date: 9月 6th, 2021
Cate: ショウ雑感

2021年ショウ雑感(その24)

ここのところ東京の感染者数は減ってきている。
とはいえこれまでの累計では三十五万人以上が感染しているのだから、
単純計算で四十人弱に一人の感染者ということになる。

感染が拡がっているという実感は、
感染者の数よりも、身近な人が感染したかどうかのほうが大きい。

8月の終りごろになってきて、
仕事関係の人、三人が感染。
うち二人が入院。

先週末にPCR検査を受けた。結果はいまのところ陰性。

なので個人的にいままで以上に気をつけなければ、と思っている。
油断はできないわけで、感染者数が増えた減ったは、
一つの目安程度に捉えた方がいいように思っている。

今日になって、インターナショナルオーディオショウ開催が、
いろんなウェブサイトで告知されている。
実施したいのだろうし、実施するのだろう。

感染者数も減ってきているのだから。

けれど大事なのは数字ではなく、肌感覚のはずだ。

Date: 9月 6th, 2021
Cate: オーディオ評論

B&W 800シリーズとオーディオ評論家(その10)

その9)へのコメントもあった。
(その8)へのコメントと方と(その9)へのコメントの方は、
おそらく世代に的に近いはずだ。
二人とも私よりも若い世代である。

(その9)へのコメントの方も、ジェネレックのスピーカーシステムには、
いい印象は持っておられない、というよりも、何も感じなかった、とあった。

これもわかるなぁ、と思いながら読んでいた。
(その9)の方は、だからといってモニタースピーカーに関心がないわけではない。

その方が鳴らされてきたスピーカーシステムは、
大型ではないモニタースピーカーが多い。

(その9)の方も、B&Wのモニタースピーカーには、何の興味もわかない、とのこと。
けれど、801の初期のモデルには、少しだけ欲しいな、と思ったことがある──、
これを読みながら、世代は違うけれど、共通するところがあるのはなぜだろう、と。

私もB&Wの801の初期のモデルには関心があった。
かなり高かった、といえる。期待もしていた。

それまで聴いてきたB&Wのスピーカーといえば、ブックシェルフ型のDM4/IIである。
別項で書いているように、このスピーカーはセレッションのHF1300を搭載している。

このころのB&Wのスピーカーは、ラックスが輸入していた。
1980年代前半に、ナカミチが取り扱うようになった。
そして801Fが登場した。

801Fの前に801というモデルもあったが、こちらは聴く機会はなかった。
私にとって、最初の800シリーズのスピーカーシステムは、
ナカミチ取り扱いの801Fである。

801Fのスタイリングは、KEFのModel 105と同じといっていい。
瀬川先生が鳴らされた105の音に感銘をうけた私は、当然801Fに期待した。

ステレオサウンドの試聴室でKEFのModel 105を聴く機会はなかったし、
これからもなさそうと思えていた時期ということも重なって、
801Fへの期待は増していった。

Date: 9月 6th, 2021
Cate: 楽しみ方

オーディオの楽しみ方(つくる・その41)

自作するオーディオマニアは減っているのだろうか増えているのだろうか。
自作に関する本はいまも出版されているが、
昔とくらべると減ってきているし、
自作記事をメインとする雑誌も数は減ってきている。

ステレオサウンドの読者は、自作なんてしないから──、
そういう人が大半なのだろうか。

誰も実態を調べたりしないから、なんともいえないが、
少なくとも以前のステレオサウンドは違っていた。

以前のベストバイは、読者アンケートを行っていて、その結果を載せていた。
51号(1979年夏号)の読者の現在使用中の装置のところを見る。

スピーカーシステムはヤマハのNS1000Mが、使用台数138、総数比率5.5%、
プリメインアンプはラックスSQ38(歴代モデルをふくめて)、使用台数190の総数比率7.5%、
コントロールアンプはヤマハのC2(a型も含めて)、使用台数275、総数比率15.7%、
パワーアンプはQUADの405、使用台数102、総数比率5.9%で、それぞれの一位である。

けれどスピーカーシステムでは637、プリメインアンプは11、
コントロールアンプは218、パワーアンプは236が自作である。

スピーカーシステムではダントツの一位となるし、
パワーアンプでも405の二倍以上、
コントロールアンプはヤマハのC2には及ばないが、三位のラックスのCL35の倍以上。

プリメインアンプは自作が難しいということがあってだろう、
11という数字はかなり下位である。

とはいえ、コントロールアンプとパワーアンプの自作率は高い。
このアンケート結果だけでは、どんな自作なのかまではまったくわからない。

ただ「自作」という項目があるだけだ。

このころのステレオサウンドのスーパーマニアには、自作の人がけっこう登場していた。
とにかく昔のステレオサウンドの読者も、自作は特別なことではなかったのだろう。

Date: 9月 5th, 2021
Cate: Noise Control/Noise Design

CR方法(その27)

私がオーディオに興味を持ち始めた頃、
オルトフォンのSPUには、Gシェルに昇圧トランスを内蔵したSPU-GTがあった。

MC型カートリッジの出力電圧は低い。
低域に関しては、MC型やMM型は速度比例型だから、さらに出力電圧は低下する。
20Hzでは1kHzのレベルよりも約20dBほど低下する。

音楽にはピアニッシモがある。
ここではさらに出力電圧は低下する。

低音域でのピアニッシモだと、MC型カートリッジの出力電圧はごくごく小さいレベルとなる。
そんな微小信号が、トーンアーム内の細いケーブルを伝わって、
さらにはトーンアームからの出力ケーブルを伝わって、
ようやくヘッドアンプなり昇圧トランスへとたどりつく。

接点も、増えることになる。
MC型カートリッジが発電した信号は、完全な状態でたどりつくとは、とうてい思えない。

理想はカートリッジの出力端子のすぐあとでの増幅もしくは昇圧である。
ヘッドシェルにヘッドアンプか昇圧トランスをおさめればいい。

ヤマハのヘッドアンプHA2は、増幅回路の初段のFETを専用ヘッドシェルにおさめ、
ヘッドアンプ入力までを電流伝送としていた。

オルトフォンは、ずっと以前から昇圧トランスをおさめたSPU-GTを作っていた。
昇圧トランスをいろいろ試したり、あれこれやってきた人ほど、
このサイズの昇圧トランスでまともな音がするのだろうか、と思うのではないか。

私はそうだった。
SPUというカートリッジには、ずっと関心をもってきているが、
SPU-GTに関しては、そうではなかった。

私は試したことがないが、SPU-GTのトランスを取り出して、
一般的な昇圧トランスと同じ使い方をしたら、どんな音なのだろうか。

トランス単体としてみれば、優れたトランスとはいえないモノだろう。
でも、Gシェル内におさめられることでのメリットがある。

現在のオルトフォンのラインナップにSPU-GTはない。
あの小型トランスを作れる人がいないから、だそうだ。

何がいいたいかというと、SPU-GTのトランスにCR方法を試したら──、である。
あの限られたスペースに、抵抗とコンデンサーをおさめることになるわけだから、
けっこう困難な作業になるだろうが、
うまくやれれば、かなりの好結果が得られるのではないだろうか。

Date: 9月 4th, 2021
Cate: High Resolution

TIDALという書店(その7)

今年の6月からAmazon Music HDも利用している。
6月中は、TIDALよりも聴く時間が長かったのは、
日本語の歌を聴きたいから、であった。

ある程度聴いてしまうと、
つまり7月に入ってからは、TIDALで聴く時間が長くなってきて、
8月になると、TIDALばかりといっていいほどに戻っていた。

いまのところ、TIDALで聴けない曲が、Amazon Music HDにはあったりする。
なのでAmazon Music HDを使わなくなるわけではないのだが、
TIDALに感じているワクワクが、Amazon Music HDにはそれほど感じない。

TIDALのラインナップとAmazon Music HDのラインナップを、
ずらっとリストに書き出して比較できれば、どれだけの違いがあるのかわかるけれど、
実際のところ、どれだけの違いがあるのかははっきりとしない。

そんなに違わないのかもしれない。
なのにAmazon Music HDにはワクワクしないのは、
MQAだけのことが関係しているわけでもなさそうである。

六本木にあったWAVEと渋谷のタワーレコード。
この二つのレコード店に感じていたことが、
TIDALとAmazon Music HDにも、そのまま当てはまるような感じがある。