FMアコースティックス讚(その1)
FMアコースティックがステレオサウンドの誌面に初めて登場したのは、
1978年夏発売の47号の新製品紹介のページである。
井上先生と山中先生の二人で担当されていた時代である。
輸入元はシュリロトレーディングで、
パワーアンプが二機種、FM600A(500,00円)とFM800A(680,000円)である。
出力はFM600Aが150W+150W、FM800Aが30W+300Wで、
入力端子はXLR端子のみで、RCAによるアンバランス入力はないことからわかるように、
プロフェッショナル用のパワーアンプである。
山中先生は、
《一見アメリカのプロ用アンプとそっくりなコンストラクションで、ヨーロッパ製らしからぬふんいきである》
と書かれている。
モノクロの、それほど大きくなく不鮮明な写真でも、
アメリカ的なプロ用アンプという雰囲気は伝わってきていた。
スイスというイメージは、写真からはまったく感じられなかった。
音はどうか、というと、山中先生はこう評価されていた。
《きわめて充実感のある中域量感たっぷりな低音部はこのアンプ特有のキャラクターで、ユニークなアンプの出現といえよう》
高い評価といえばそうも読めるけれど、
47号の当時、私は高校生、スイス製なのに、アメリカ製のような武骨なパワーアンプを、
特に聴きたいとは思わなかった。
それに47号の特集はベストバイで、FMアコースティックのアンプは登場していない。
新製品だから──が、理由ではないはずだ。
47号の新製品紹介のページに登場していた他社製のアンプは、
いくつかベストバイに選ばれているのだから。
ちなみにFMアコースティックとしているのは、47号の表記はそうなっているからだ。