Archive for category ブランド/オーディオ機器

Date: 1月 19th, 2009
Cate: Harbeth, HL Compact 7ES-3, 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その4)

ハーベスのHL Compact 7ES-3の組合せは、その1で書いているように、
スペンドールのBCIIとラックスのLX38、ピカリングのXUV4500Qの組合せが奏でてくれた音を、
いまの時代に、いまのクォリティで再現したいという想いから、あれこれ考えていたもの。
だから、最初からアンプは、真空管式のモノに限定していた。

そういう個人的な想いを抜きにすれば、組み合わせるアンプは違ってくる。

第一候補は、というよりも、これしかないと思っているのが、ボウ・テクノロジーのWAZOO-XLだ。
最近では、オーディオ誌にまったく登場しなくなったが、
粋なプリメインアンプであることに、変わりはない。

聴いたばかりのオーディオ機器が好ましいモノであれば、
古いモノよりも、そのオーディオ機器に惹かれがちなのが人間なのだろう。
それに誌面には限りがある。古いモノが、徐々に登場しなくなるのは仕方のないこととわかっている。
いったい去年1年でどれだけの数の新製品が登場したことか。

このアンプの肌合いの良さと、小気味よいリズミカルで躍動感のある音は、
ユニゾンリサーチのP40、P70で鳴らす音よりも、いくぶん年齢的に若くなるだろう。
醸し出す香りの温度感も低くなるはずだ。

CDプレーヤーは、ヘーゲルのCDP4Aがぴったりくるだろう。
背筋がもっとしゃんと伸びて、涼しげな雰囲気が加わると想像する。

この組合せにもっとも期待しているのは、HL Compact 7ES-3から、
ハーベスのデビュー作であるMonitor HLを初めて聴いた時の新鮮な驚きと、
ふたたび出合えそうなことである。

ベテランのスピーカー・エンジニアがつくりあげた、
新鮮で瑞々しい響きのBBCモニターであったMonitor HLの印象が強かっただけに、
つづくMonitor ML、HL Compactの音に、惹かれることはなかった。

そんな私が、HL Compact 7ES-3の音には惹かれる。

ヘーゲルはノルウェー、ボウ・テクノロジーはデンマーク、
北欧の国のペアで鳴らすHL Compact 7ES-3からは、新鮮で、格別な音が聴けそうな気がする。

どちらもパネルフェイスは、大きな、ふたつのツマミが特徴的だけに、
並べて置いても、面白いだろう。

Date: 1月 18th, 2009
Cate: Harbeth, HL Compact 7ES-3, 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その3)

ハーベスのHL Compact 7ES-3に組み合せるアンプは、ユニゾンリサーチのP40かP70と、
私の心の中では決っている。

今日まで悩んできたのは、CDプレーヤーに、何を持ってくるかである。

妄想組合せとはいえ、価格のバランスを極端に無視したものは選びたくない。
それから実際に設置したときの見た目のバランス、雰囲気も疎かにはできない。
現行製品の中から選ぶのは、当然のことだ。

EMTの986とかリンのCDプレーヤーなどが候補として頭に浮かんだが、ピンとこない、私の中でしっくりとこない。

実は、第一候補は別にあった。コードのCODAとQBD76のペアなのだが、価格的にバランスしない。

なぜだか、QBD76がぴったりだという確信があって、これだけははずしたくない。
CODAを、他のモノと取り換えるとしたら……、ひとつあった、ワディアの170 iTransportがあった。
iPodと170 iTransportにすれば、組合せのトータル価格をぐんと抑えられる。

心の中で、なにかがぴたっと収まった気がして、すっきりしている。
それに、この組合せ、かなりいいのではないか、と自負している。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その12)

石清水を入力したのに、出てきたのは濁水だった……。
そこまでひどいアンプは、当り前だが存在しない。

でも石清水の味わいが失われて、蒸留水に近くなったり、
蒸留水に、ほんのわずかだが何かが加わって出てくる。
そういう精妙な味わいの変化は、アンプの中で起こっている。

完全な理想のアンプが存在しない以上、
アンプの開発者は、なにかを優先する。

ある開発者は、できるだけアンプ内で失われるものをなくそうとするだろう、
また別の開発者は、不要な色づけをなくそうとするだろう。

もちろん、その両方がひじょうに高いレベルで両立できれば、それで済む。
現実には、特にマーク・レヴィンソンがLNP2に取り組んでいたころは、
失われるものを減らすのか、それとも色づけをなくしていくのか、
どちらを優先するかで、つねに揺れ動いていても不思議ではない。

ふたつのLNP2を聴いて、私が感じていたのは、そのことだった。

バウエン製モジュールのLNP2は、失われるものが増えても、色づけを抑えたい、
マークレビンソン製のモジュールのLNP2Lは、できるだけ失われるものを減らしていく、
そういう方向の違いがあるように感じたのだった。

LNP2Lは失われるものが10あれば、足されるものも10ある。
LNP2は足されるものは5くらいだが、失われるものは15ぐらい、
少し乱暴な例えではあるが、わかりやすく言えば、こうなる。

水の話をしてきたから、ミネラルウォーターに例えると、
LNP2Lは硬水、LNP2はやや軟水か。水の温度も、LNP2Lのほうがやや低い。

これは、どちらのLNP2が、アンプとして優れているかではなく、
オーディオ機器を通して、音楽を聴く、聴き手の姿勢の違いである。

音楽と聴き手の間に、オーディオ機器が存在(介在)する。
その存在を積極的に認めるか、できるだけ音楽の後ろに回ってほしいと願うのか、
そういう違いではないだろうか、どちらのLNP2を採るか、というのは。

そして、LNP2Lを通して足されるものに、黒田先生は、
マーク・レヴィンソンの過剰な自意識を感じとられたのではないのか。

足されるものは、聴き手によって、演出になることもあるし、邪魔なものになる。

瀬川先生は、LNP2Lによって足されるものを、積極的に評価されていたのだろう。
だからこそ、アンプをひとつ余計に通るにも関わらず、バッファーアンプを搭載することに、
積極的な美(魅力)を感じとられた、と思っている。

だからML7Lが登場したとき、
黒田先生は、積極的に認められ導入されている。
瀬川先生は、ML7Lの良さは十分認めながらも、音楽を聴いて感じるワクワクドキドキが薄れている、
そんなことを書かれていたのを思い出す。

JBLの2405とピラミッドのT1Hの試聴記も思い出してほしい。

Date: 1月 18th, 2009
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その43)

分割振動が起きる周波数をできるだけ高いほうに移動させ、
ピストニックモーションの領域の拡大、より精確な動きを実現、
さらに4ウェイにして、それぞれのスピーカーユニットの、優れている領域のみを使う。

そうすることで浮かび上がってきたのが、エンクロージュアの鳴きだった。
箱鳴りである。

響きのいい素材でエンクロージュアをつくろうと、板厚を増し補強桟をさらに入れ、強度を高めようと、
スピーカーユニットがピストニックモーションなのに対して、
エンクロージュアの鳴きは、ピストニックモーションで振動することは、まずない。

このふたつの響きは、性質の異るものである。
だからこそスピーカーユニットの性能が高くなればなるほど、異質の鳴りだけに、
エンクロージュアの鳴きが、以前よりも耳につくようになってきた。そう言えないだろうか。

ならば、どうするか。
エンクロージュアを、というよりも、エンクロージュアを構成するそれぞれの面──
左右の側板、天板、裏板などをピストニックモーションで振動するような構造にすればいい。

少なくとも、面積の大きい左右の側板だけでも、そういう構造にするだけで効果はかなり期待できるような気がする。

具体的にどうするか、2つほど考えている。
ただ作るのがどうやっても面倒なので、もうすこし簡略化できる構造を考えつくまでは、
手がける気が起きない。

Date: 1月 18th, 2009
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その42)

雑共振、不要輻射をひとつひとつできるだけ抑えていく。
結果、確かに聴感上のSN比は、少しずつ確実に高くなっていく。

けれど、同時に、世の中に存在する、すべての物質には固有音がつきまとう。
どんなに高剛性で内部音速が速い素材であろうが、固有音から逃れることは出来ない。

その固有音が、いままで雑共振や不要輻射にマスキングされていたのだろうか、
ダイヤトーンでいえば DS5000の6年後に登場したDS-V9000は、より徹底した高SN比を実現したためであろう、
特にドーム型振動板に採用されたB4Cの固有の音が、際立って聴こえる。

これはビクターのZero-L10にもいえる。
やはりDS5000より3年後に登場した分だけ、DS5000よりも、高SN比化の手法が随所に見られる。
そして、その分だけ、やはりドーム型振動板のセラミック特有の音が、際立つようになった、と私は受けとめている。

いま思うと、DS5000は、なかなかバランスのとれたスピーカーだったのかもしれない。

そういえば、早瀬さんが、昔、吉祥寺に住んでいたときのスピーカーがDS5000だった。
意外に小さめな音量で鳴っていたように記憶している。
しかも、そういう音量でも、音が痩せるということはなく、余裕があって、静かに鳴っていた。

Mark Levinsonというブランドの特異性(余談)

「人間の死にざま」(新潮社)に所収されている「音と悪妻」で、

このところ実は今迄のマッキントッシュMC275の他に、関西のカンノ製作所の特製になる300B-M管一本を使ったメイン・アンプを併用している。これは出力わずか8ワットという代物である。さすがに低域はマッキンの豊饒さに及ばぬが、だが、何という高音の美しさ、音像の鮮明さ、ハーモニイの味の良さ……昔の愛好家がこの真空管に随喜したのもことわり哉と、私は感懐を新たにし、マッキンよりも近頃は8ワットのカンノ・アンプで聴く機会が多い。

と書かれ、組み合わされているコントロールアンプについて、「ベートーヴェンと雷」のなかで、
マークレビンソンのJC2だとされている。

念のため、関西の、と書かれているが、正しくは、小倉の、である。

カンノ・アンプをお使いだったことは、以前から知っていた。
コントロールアンプはマッキントッシュのC22かマランツの#7のどちらかで、
おそらく#7かな、と思っていただけに、
JC2の文字を見た時は、驚きよりもうれしさのほうが大きかった。

実は、私もJC2を使っていたからだ。

1987年だったか、とある輸入商社の方にお願いして、アメリカから取り寄せてもらった。
しかもジョン・カールによってアップグレードされたJC2だった。
しかもJC1が搭載されているものだった(「人間の死にざま」を手に入れたのは2000年ごろ)。

ツマミは、初期の、細くて長いタイプ。
見た目のバランスは、途中から変更になった、径が太くなり、短くなったツマミの方がいいのはわかっているけど、
JC2の、あの時代のアンプの中で、ひときわとんがっていた音にぴったりなのは、やっぱり細いツマミだからだ。

五味先生のJC2がどちらなのかは、写真で見たわけではないのでわからない。
けれど、きっと初期のモノだと、確信している。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その11)

岡先生は、バウエン製もジュールのLNP2を購入されたあとに、
マークレビンソン自社製モジュールのLNP2との比較も行なわれたうえで、
バウエン製モジュールのLNP2を、高く評価されていた。

瀬川先生は、バウエン製モジュールのLNP2は聴かれていないはず。
もし聴かれていたとしても、自社製モジュールのLNP2をとられたであろう。

なぜそうなるのか。
おふたりの、オーディオを通しての、音楽の聴き方の違いから、であろう。

70年代のステレオサウンドの別冊で、
岡先生、瀬川先生、黒田先生の鼎談が掲載されている。
読んでいただければわかるが、岡先生と黒田先生の意見に対し、
瀬川先生の意見が、まるっきりかみ合わない。
これはレコード音楽の聴き方の相違から生れてくるもので、
相手を理解していないからでは、決してない。だから、ひじょうに面白い鼎談になっている。

この時期(70年代後半)に、黒田先生が、2つのLNP2を聴かれたら、
おそらく岡先生と同じようにバウエン製モジュールのほうを選ばれたかもしれない。

1980年にML7Lが登場したときに、黒田先生がステレオサウンドに書かれた文章に、興味深いことが出てくる。

ML7L以前のマークレビンソンのアンプには、己の姿を鏡に写して、それに見とれているような、
そんな印象を受けていた。ML7Lには、そういうところがなくなっている。
そんな意味合いのことだった。

黒田先生が言われる、ML7L以前のアンプは、LNP2とJC2 (ML1L) のことであり、
LNP2は、自社製モジュールの搭載のもの。

黒田先生は、世紀末はナルシシズムの時代とも書かれていた。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その10)

“straight wire with gain” を目指したアンプは、
味も風味もない、素っ気無い音の代名詞のようにいわれた時期があった。
蒸留水のような音、とも言われていた。

この「蒸留水のような」という表現は、あきらかに誤解を生み易い。
たしかに蒸留水は、味気のない水で、ちっともおいしくはない。

けれど、もう一度、”straight wire with gain” をきっちりと捉えなおしてほしい。

もし完璧な “straight wire with gain” といえるアンプが存在していたとしよう。
このアンプに蒸留水を入力すれば、出力には蒸留水のまま、水量だけが変化して出てくる。
清冽な石清水を入れたら、やはり水量だけ変化して石清水が、成分はまったく変化せずに、
濁水ならば、浄水されることなく、そのまま濁水で出てくる。

石清水を入れても濁水でも、出てくるのが蒸留水であるのなら、
それはフィルターを通した水(音)であり、この手のアンプは、断じて “straight wire with gain” ではない。

蒸留水イコール無色透明なわけではない。

これから先、どんなに技術が進歩しようと、少なくとも私が生きている間には、
“straight wire with gain” を実現できるアンプは現われはしないだろう。

2台のLNP2(岡先生のLNP2とステレオサウンド常備のLNP2L)は、
内部のモジュールが違い、外部電源の仕様もまったく違う。
そのモジュールも、設計者が同じならばまだしも、かたやリチャード・S・バウエン、
もう片方はジョン・カールと、これもまた違う。
つまりまったく別物のアンプと捉えるべきだ。なのに外観がまったく同じ。
こんな例はおそらくLNP2が初めてだろうし、最後だろう。

どちらのLNP2を良しとするかは、聴き手次第であり、私は、迷うことなくLNP2Lをとる。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その9)

1970年代の半ばごろか後半か、アメリカのオーディオジャーナリストのジュリアン・ハーシュが、
理想のアンプの条件として、”straight wire with gain(増幅度をもったワイヤー)” と定義した。

いまではあまり見かけなくなり語られなくなったようだが、一時期はよく引き合いに出されていた。

ジュリアン・ハーシュが、どこからインスピレーションを得て、この言葉を思いついたのかは不明だが、
LNP2や、さらにシンプルな機能のJC2の登場が、多少は関係しているように思われる。

この “straight wire with gain” といっしょに語られていたのが、アンプの理想を蒸留水とした例えである。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その8)

別冊FM fanに瀬川先生が、マーク・レヴィンソンは、このまま、どこまでも音の純度を追求していくと、
狂ってしまうのではないか、という主旨のことを書かれていた。
実際には狂うことなく、むしろ熟練の経営者として面が強くなっていったようにも、私個人は感じているが……。

LNP2が出たころ、マーク・レヴィンソンはアンプの技術者でもあり、
LNP2の新モジュールは、当初はレヴィンソンの設計によるものだと言われていたし、
ほとんどの人がそう信じていた。もちろん私も信じ切っていた。

1984年にMLAS (Mark Levinson Audio Systems) を離れCelloを興したころ、
レヴィンソン自身が、「アンプの技術者ではなかった」と語っている。

彼がほんとうにアンプの技術者だったら、瀬川先生の心配が現実になったかもしれない。

ときどきバウエン製モジュール(UM201)と
マークレビンソン自社製モジュールLD2の音の違いについて聞かれることがある。

どちらが良いのか、どんな違いなのか……と。

バウエン製モジュールのLNP2は数が極端に少ないため、実際に聴いた人は少ないようだし、
私もステレオサウンドにいたから、幸運にも試聴の機会にめぐまれた。

岡先生所有のLNP2と、ステレオサウンド試聴室で使っていたLNP2Lとの比較である。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その7)

LNP2もJC2も外部電源になっている。
言うまでもなく、電源トランスからの漏洩フラックス、振動の影響を避け、SN比をできるかぎり高めるためである。
電源部が外部にあることで、アンプ内部のコンストラクションの自由度も増す。

ただメリットばかりではなく、デメリットもある。
最も問題なのは、電源部とアンプ本体を接ぐケーブルには、必ずインダクタンスが存在すること。

ケーブルが長ければ長いほどインダクタンスも大きくなり、外部電源の出力時には低かったインピーダンスも、
ケーブルを伝わってアンプに供給されるときには、高域のインピーダンスが上昇する。

これを防ぐには、極端にケーブルを短くすればいいが、これでは実用性がない。
もうひとつは、アンプ本体のコネクター部からNFBをかけれる手法だ。

型番がついた外部電源、PLS150ではまだ採用されていなかったが、
次のPLS153からはこの手法により、インピーダンスの上昇を抑えている。
そのためコネクターのピン数が増えている。

つまり外部電源とアンプ本体を接ぐケーブルがNFBループ内に含まれるため、
このケーブルを好き勝手に、他のケーブルと交換するのはやめたほうがいい。

Date: 1月 14th, 2009
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その41)

雑共振を抑えるだけでなく、不要輻射も抑えることで聴感上のSN比は、確実に向上していく。

振動板から出るより先に、スピーカーのフレームから音が出ることは以前書いたとおりだ。
フレームの表面処理も重要になってくるし、フレームをフロントバッフルに固定しているネジにも言える。
ダイヤトーンのDS10000、DS9Zのネジの頭にゴム製のキャップをかぶせていた。
ネジの頭の凹みから不要輻射を抑えるためである。このキャップにも、DIATONEの文字が入っていた。

ラウンドバッフルの採用も、不要輻射を抑えるためで、
DS5000は曲線ではないけれど、両サイドを斜めにカットすることで、鋭角な箇所をなくしている。

4343も、後継機の4344、4344 MkIIも、フロントバッフルはすこし奥に付いている。
その分、直角のコーナーが増えることになり、不要輻射の箇所も増しているわけだ。

4348が、音響レンズの採用をやめたのも、フロントバッフルも引っ込ませていないのも、
聴感上のSN比向上のためであろうし、実際に早瀬さんのところで4343Bと直接比較した際にも、
はっきりと、そのことが確認できたし、
おそらく今後JBLは音響レンズ付きのモデルを開発することはないであろう。

ダイヤトーンのスピーカーは、DS5000までは、フロントバッフルにレベルコントロールがついていたが、
その後に出た機種、DS1000から、レベルコントロールそのものがなくなってしまう。

レベルコントロールを廃したことに賛否あったが、これも不要輻射をなくすための手法である。
レベルコントロールのツマミも、そのまわりのパネル部分も雑共振と不要輻射の元である。

Date: 1月 14th, 2009
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その40)

聴感上のSN比を高めるために、井上先生が4343に施されたことを一言で表せば、雑共振を抑えることである。

このことはダイヤトーンのDS5000やビクターのZero-L10を仔細に見ていけば、納得されるだろう。
ひとつひとつ具体例をあげていこうと思ったが、そうすると、この項がいつまでも終らないので省かせていただく。

それでもいくつかあげれば、吸音材はどちらもウール100%の天然素材だし、
エンクロージュアのどの部分を叩いてみても、雑共振を感じさせるところはない。
Zero-L10はドーム型振動板の保護用の金属網を着脱できるようになっていた。
ダイヤトーンもDS5000ではないが、DS1000あたりから鉄と銅の異種金属を使い、
少しでも影響を少なくしようとしていた。

異論もあるだろうが、スピーカーユニットの分割振動も、ある種の雑共振といえるだろう。

国内メーカーが、スピーカーの振動板に高剛性の素材を使いはじめたころから、
聴感上のSN比の向上が始まっていた、といえるし、
ピストニックモーションの追求は、SN比の追求でもあった。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その6)

ステレオサウンド 38号に掲載されている山中先生のリスニングルームには、
マランツの#7、ハドレーのModel 621、GASのテァドラがメインのコントロールアンプとして、
クワドエイトのLM6200R、JBLのSG520、マッキントッシュのC22とC28、
マランツの#1 (×2) +#6がサブのコントロールアンプとして、ラックに収められている。

プレーヤーにはEMTの930st、
オープンリールデッキにアンペックスのModel 300を使われることからもわかるように、
山中先生は、プロ用機器、コンシューマー機器というカテゴリーにとらわれることなく、
優れた、魅力あるオーディオ機器ならば、コレクションに加えられ、使いこなされていた。

そういう方だから、1974年にシュリロ貿易がサンプルとして入荷したLNP2を、
「プロまがいの作り方で、しかもプロ用に徹しているわけでもない……」と
酷評されたのは、むしろ当然だろう。

どこをそう感じられたのか。

テープ入出力端子とメインの出力端子のRCAジャックと並列に接いだだけのXLR端子がそうだろう。
LM6200が600Ωのバランス対応なのに、
LNP2は、ハイインピーダンス受けのアンバランス入力とローインピーダンスのアンバランス出力、
当時のプロ用機器で常識だったインピーダンス・マッチングには、何の配慮もない。

レヴィンソン自身が、市場に、自身が満足できるクォリティのミキサーが存在しないために作ったというのは、
75年から輸入元になったR.F.エンタープライゼスの謳い文句だが、
LNP2のブロックダイアグラムを見て、ミキサーから生れたコントロールアンプと言えるだろうか。

LNP2の型番からわかるように、LNP1というモデルが存在する。
このLNP1が、レヴィンソンによるミキサーだが、ブロックダイアグラムなどの資料がまったくないため、
詳細は不明。LM6200のようにバランス対応だったのか、それともアンバランスだったかも不明だ。

LNP2のインプットレベルヴォリュームとインプットアンプのゲイン切換えに、
ミキサー的と言えなくもないが、やはり中途半端なままだ。

ライン入力でも、接続する機器によって信号レベルが異る場合がある。
さらにフォノイコライザーアンプの信号レベルは、組み合せるカートリッジ、
それがMC型ならば、ヘッドアンプのゲインや昇圧トランスの昇圧比によって、
ライン入力とかなりレベル差が生じることもある。

プロ用機器として、ミキサーとして、本来開発されたものであるならば、
例えばリアパネルの各入力(フォノ入力は除く)端子に、
それぞれ独立した、しかも左右独立のレベルコントロールを設け、
入力信号を切り換えても、再生レベルが変化することがないように調整できるようにしておくべきだ。
プロの録音現場で使われていたLM6200を、もう一度見てほしい。

もちろん、コンシューマー用コントロールアンプには、こういうことは私だって求めない。
だがプロ用機器となると話は別だ。

それから外部電源という形態もそうだろう。
SN比を高めるための手段とはいえ、それはコンシューマー機器で許されることであって、
プロ用機器では、こんなことは、まずあり得ない。

つけ加えておく。
LNP2に対し厳しいことを書いているけれど、LNP2にずっと憧れてきたし、
いまでも、一度は自分のモノとして使いたい、と心のどこかで思ってもいる。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その5)

LNP2とほぼ同時期に、
アメリカのQUADEIGHT(クワドエイト)からLM6200Rというコントロールアンプが出ていた。

LM6200は、ポータブル用ミキサーで、6チャンネルの入力、それぞれにレベルコントロールをもつ。
末尾にRのつくモデルは、1、2チャンネルにRIAAイコライザーカードを搭載したモデルである。
LM6200Rだと、ライン入力はのこり4チャンネル、つまり左右で2チャンネル必要だから、ライン入力は2系統となる。

LM6200Rと便宜上呼んでいるが、正確にはミキサー部がLM6200であり、VUメーター部はVU6200で、
独立した筐体をトランクケースにラックマウントしている。
ライン入力がさらに必要な場合には、LM6200を足すことで対応できる。

入出力はXLR端子を使い、プロ用機器という性格上、すべてバランス対応なのは言うまでもない。

質実剛健なつくりのプロ用機器として、LM6200Rは、岩崎先生が愛用されていたし、
山中先生も所有されていた。