Mark Levinsonというブランドの特異性(その24)

ML2Lの定電圧回路は、ディスクリート構成の、JC3のそれと較べるとかなり大がかりである。
±両電源で、20石以上のトランジスターが使われ、直列に入る制御用のパワートランジスターも、
2パラレルになり、出力アップに対応している。
そして、この定電圧回路の出力電圧は、28Vと、JC3から10Vも高くなっている。

JC3は15W+15Wのステレオ仕様、ML2Lは25Wのモノーラル仕様。

想像するしかないが、マーク・レヴィンソンはJC3の音には満足していたのだろう。
ただ15Wという出力は、彼には少な過ぎたのではないだろうか。

この音のクォリティのまま、さらにパワーを求めるために、
1976年1月のCESでのJC3の展示から、ML2Lの発表までの1年以上の期間が必要だったのだろう。

ステレオからモノーラル構成になり、出力トランジスターも2パラレルから4パラレルに、
定電圧回路も、より大がかりで電圧も、当然高くしている。
ほとんど倍の規模になっていると、いってもいいだろう。

電圧増幅段の回路も、JC3そのままではない。
上下対称回路なのは同じだし、初段はFETの差動回路なのも同じだが、
共通ソースには定電流回路がつけくわえられているし、2段目もJC3そのままではない。
細部をブラッシュアップすることで、出力の増加を図りながらも、
クォリティの維持にとどまらず、より良い音のための工夫がこらされている。

そして保護回路も万全になっていると、以前瀬川先生が、週刊FMに書かれていた。
ML2Lは、動作中に水をかけてもスピーカーにダメージを負わせることはないらしい。

JC3に、保護回路があったのかどうかは、わからない。

ML2LがJC3そのままとは言えない。
ただJC3が基本になっていることは、断言できる。
そして、ML2Lのイメージにもなっている、あの外観をつくりだしたのはジョン・カールである。

JC3を、マーク・レヴィンソンの要求をできるだけ満たすようにつくり変えたのが、
おそらくトム・コランジェロ、その人なのだろう。

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