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Date: 1月 9th, 2013
Cate: 長島達夫

長島達夫氏のこと(CDプレーヤーのサーボのこと)

CDプレーヤーはサーボ回路を停止させてしまうと、
まったく機能しなくなる。音の出なくなる。
このへんが同じデジタル機器でもDATとの違いがある。

DATではサーボ回路を停止しても、すぐには音が出なくなるわけではない。
CDとDATでは16ビットというところは同じだが、サンプリング周波数は44.1kHzと48kHzという違いがある。
この違いが、CDとDATの音の違いに大きく影響している、というよりも、
サーボ回路なしでもほんのわずかとはいえ音を出すことが可能なDATと
サーボ回路なしではまったく音を出すことのできないCDでは、
信号読みとりの安定度に根本的な違いがある、ともいえる。

そんなCDプレーヤーだから、
サーボ回路とその電源部(アースを含めて)が重要となることは容易に想像がつくわけだが、
CDプレーヤーが登場したころ、よくいわれたいわゆるデジタル臭さがどこに起因しているのか、
それを音楽信号と相関性のないサーボ回路電流の変動によるノイズの発生にある、と指摘されたのは、
1980年代後半、ラジオ技術誌において、富田嘉和氏であった。

ここで見落してならないのは、音楽信号と「相関性がない」ノイズが発生している、ということである。
慧眼とは、こういことをいうのだと思ったことを、いまでも憶えている。

Date: 1月 9th, 2013
Cate: 長島達夫

長島達夫氏のこと(その4)

つまりはディスクの偏芯の問題である。
CDだけでなく、アナログディスクでも偏芯の問題はあり、
ナカミチのTX1000は、この偏芯の度合いを検知して補正するメカニズムを搭載していた。

CDでもアナログディスクでもディスクの中心とスピンドルの中心がぴったり一致していれば、
こんな問題は発生しないわけだが、実際にはどちらにも誤差があって、
そのわずかな誤差があるからこそすっとディスクの中心穴をスピンドルにいれることができるわけだが、
この誤差が音質上問題になることがある。

アナログディスクであれば、偏芯が多いな、と感じたら、すぐにカートリッジを持ち上げて、
ディスクをセットし直せる。
使い馴れたアナログプレーヤーであれば、
自然と偏芯がそれほど大きくならないようにディスクをセットできるようになるものである。
また、そういうふうになれるプレーヤーは、よく出来たプレーヤーともいえる。

ところがCDプレーヤー、それもトレイ式ではトレイにCDを置くまでしか管理できない。
トレイとともにCDがCDプレーヤーに取り込まれてからは手をくだすことはできないわけである。
だからトレイを一度引き出して、もう一度、ということをやることになってしまう。

ほんとうは、こんなことで音が変るのはなくなってほしい、と思っている。
思っていても、現実にはこんなことで音が変化する。
それも使い手が管理てきないところで音が変るわけである。

このディスクの偏芯の問題は、
CDプレーヤーならばクランプの仕方(メカニズムの精度を含めて)と
サーボのかけ方(回路を含めて)を検討することで、そうとうなところまで解消できる。

でも、私がCDの内周と外周の音のニュアンスの違いに気づいた1980年代半ばすぎでは、
まだまだ問題点を残したままだった。

Date: 1月 9th, 2013
Cate: 長島達夫

長島達夫氏のこと(その3)

CDがCDプレーヤーのなかでどういうふうにクランプされているのか、
その状態、それも実際に回転している状態を把握していれば、
CDの内周と外周とで音のニュアンスに変化が生じる理由はすぐに推測できる。

CDプレーヤーのトレイにCDを乗せてPLAYボタンを押す。
音を聴く。そしていちどトレイを引き出す。
このときディスクには手を触れずに、またPLAYボタンを押せば、トレイは引っ込み再び音が出る。

最初の音と二度目の音には、少なからず違いが出ることが、以前は多かった。
こんなことを書くと、またオカルト的なことを書いている、と、
実際に自分のCDプレーヤーで確認すらせずに、いきなり否定する人がいよう。

このCDの問題点を真っ先に指摘されたのは井上先生だった。
かなり早い時期から指摘されていて、
最初何も言わずに、ステレオサウンドの試聴室でこれをやられた。

音が変るぞ、といったことは何も言われずに、
ただ「聴いてみろ」といって、この実験をされた。

たしかに音に違いが出る。たいていの場合二度目のほうが音の拡がりがスーッときれいに出ることが多い。
一度目がいいこともあり、その場合は二度目の音はむしろすこし悪くなる方向に変化する。

これはディスクのクランプの状態がその都度変化しているためであって、
それによるサーボの掛かり方に変化が生じ、音の変化となって聴きとれるわけである。

Date: 1月 7th, 2013
Cate: 岩崎千明

岩崎千明氏のこと(続×五・Electro-Voice Ariesのこと)

後になって(といってもかなり後のこと)読み返してみると、
「エレクトロボイスの音は、クラシック向きで、たいへんおとなしい音だとよく誤解される」とある。
以前のエレクトロボイスとは印象の変化があったことが読みとれるわけだが、
そのことに気づかされるのは、少し先のことであり、それも少しずつであった。

「コンポーネントステレオの世界 ’77」には、もうひとつエレクトロボイスのスピーカーシステムが登場している。
Interface:Aである。菅野先生の組合せにおいて、である。
Interface:Aも外観も、やはり黒っぽい。

1976年暮の時点でのエレクトロボイスのスピーカーへの私の印象は、
私が好んで聴く音楽とは無縁と思われる、そういうスピーカーであった。

エレクトロボイスの歴史について少し知るきっかけとなったのは、
ステレオサウンド 45号の「クラフツマンシップの粋」で、エレクトロボイスのPatricianが取り上げられたことだ。

エレクトロボイスが過去に、こういう大型の、
それもSentryやInterfaceシリーズとはまったく異る趣のスピーカーシステムを作っていたことを知った。
そして、この「クラフツマンシップの粋」を読んでいくと、
エレクトロボイスのドライバーのダイアフラムは、
JBLやアルテックに採用されている金属系ではなく、フェノール系だということを知り、
エレクトロボイスへの興味がさらに増していった。

フェノール系のダイアフラムの音について、井上先生が記事の最後に語られている。
     *
現在は、ホーンドライバーはウェスタン系が主流になっているから、ホーン型というとカッチリしたクリアーで抜けが良くて、腰の強い音という認識があるけれど、これに対してEVのホーン型ユニットの音は、むしろ柔らかくてもっとしなやかですね。特に弦の再生がウェスタン系とは決定的に違って、すごく滑らかでキメの細かい音でしょう。メタルダイアフラムでは絶対に出ない音です。
     *
ステレオサウンド 45号は1977年暮に出ている。
「コンポーネントステレオの世界 ’77」からちょうど1年後のことであった。

Date: 1月 7th, 2013
Cate: 岩崎千明

岩崎千明氏のこと(続々続々・Electro-Voice Ariesのこと)

「ステレオのすべて ’77」とほぼ同じ時期に書店に並んでいて、
どちらにしようか迷ったすえ購入したのが
ステレオサウンド別冊の「コンポーネントステレオの世界 ’77」だった。
組合せだけの一冊である。

岩崎先生の組合せも載っていて、エレクトロボイスのスピーカーシステムが使われている。
Sentry Vだった。
25cm口径のウーファーとホーン型トゥイーターによるブックシェルフ型。
エンクロージュアの両サイドは木目仕上げだが、フロントバッフルは黒。
しかもウーファーの前面は写真で見る限り一般的なコーン型にはみえない。
Sentry Vは実物を見たことがないので、実際にどうなっているのかなんともいえないが、
艶のある黒いホーンといい、外観的にも特徴のある、というより個性の強いスピーカーである。

「コンポーネントステレオの世界 ’77」は読者からの手紙が元になって組合せがつくられている。
Sentry Vがつかわれた組合せは、ジェームス・ブラウン、ウィリー・ディクソン、ジミ・ヘンドリックスなど、
読者の手紙の文面にもあるように「黒っぽい音楽」、「黒っぽい音」を黒っぽく感じられるものと選ばれている。

Sentry Vの外観は、まさしく黒っぽい。
黒っぽい音が、これで出てこなかったら、おかしいだろう、といいたくなるほど、黒っぽいスピーカーである。

岩崎先生も組合せについて語られているなかで、Sentry Vは
「アメリカのディスコティックなんかでブラック・ミュージックの再生に活躍している」と説明されている。

私の中のエレクトロボイスのスピーカーはイメージは、だからここから始まっている。

Date: 1月 7th, 2013
Cate: 岩崎千明

岩崎千明氏のこと(続々続・Electro-Voice Ariesのこと)

1976年暮に音楽之友社から出版された「ステレオのすべて ’77」に、
「海外スピーカーユニット紳士録」という記事が載っている。
岩崎先生が語られたものを編集部がまとめたものである。

記事タイトルが表している通り、
海外各国のスピーカーユニットについて語られている。
エレクトロボイスのスピーカーユニットについても語られている。
     *
 エレクトロ・ヴォイスのSP8とか、あるいはSP12というスピーカーを見ますと、今はなくなってしまったけれども、グッドマンのユニットによく似ています。あるいはワーフェデール系のユニット。メカニズムですと、リチャード・アレンなんかも外観から見てね、コルゲーションの付いた、しかもダブル・コーンということでね、大変よく似ているわけです。
 で、その辺からもエレクトロ・ヴォイスというのが、先程ヨーロッパ的と言いましたが実はヨーロッパ的というよりも、これは英国的なんです。ですからアメリカにすれば、英国製品というのは、やっぱり舶来品でね、非常に日本における舶来礼賛と同じように、アメリカにおいてはかつて、ハイファイ初期において、非常に英国製品がアメリカを席巻していた時期が、これはオーディオの最初ですから、大体一九五〇年の前半から、終わり近くまでということになるんですからね。つまりステレオになってからARがのし上がる、その前の状態では、ワーフェデールにしたって、グッドマンにしたって、アメリカでは最高でまかり通っていたわけで、その辺のスピーカーとエレクトロ・ヴォイスの場合は、非常によく似ているわけです。実を言うと、音色にもそういう面があって、それからパワーの、高能率であってパワーを必要としないという点でも、エレクトロ・ヴォイスというのは極めて英国的な要素を持っていたと思うんです。で、外観から言うと、コイルの大きさとか、そういう点で非常にぜいたくな、金のかかったシステムなんで、ヴォイス・コイルも英国系と違って、ずっと太い。そういうところもアメリカ的には違いないんですけどね。音響的な性格というんですか、あるいは振動系の基本的な考え方というのは、英国オーディオ・メーカー、あるいは英国のスピーカー・メーカーと共通したところがあると思うんです。で、中音の非常に充実感の感じさせるところもね。いかにもその辺も英国的なわけですよ。
     *
エレクトロボイスについて語られている、といっても、
ここではフルレンジユニットのSP8、SP12のことであり、
このふたつのフルレンジに対してもっておられた印象が、
そのままエレクトロボイスのスピーカーシステムに対しても同じであったのかどうかは、
この記事だけではなんともいえないものの、そう大きくと違っていないはずだ。

Date: 1月 6th, 2013
Cate: 長島達夫

長島達夫氏のこと(その2)

そのころよく聴いていた内田光子のCDで、そのことに気がついた。
内周ではこまかなニュアンスがよく再現されるのに、
外周(ディスクの終り)ではニュアンスの再現があまくなってしまう。
つるんとした表情のピアノの音になる。

ほかのディスクでも同じ傾向の音の変化をみせる。
こうなると、もう気のせいではなく、あきらかに音が変っているわけだ。

実はこのことをステレオサウンドにいたとき編集後記に書いた。
原稿には「内周のほうが、こまかいニュアンスがはっきりききとれる」と書いたけれど、
活字になったときには「はっきりききとれるような気がする」と書き換えられてしまった。

CDは内周でも外周でも音は変らない、ということがまだ信じられていたのだから、
はっきりと断言したかったのだが、
結局「はっきりききとれるような気がする」というおかしな表現のまま載ってしまった。

長島先生は、その私の編集後記を読んでくださっていた。
その編集後記が掲載された号が出てしばらくして長島先生がステレオサウンドに来られたときに、
「なぜ、CDは内周と外周で音が変る(内周のほうが音がいい)と思う?」ときかれた。

長島先生も、CDのその問題点に気づかれていていた。

Date: 1月 6th, 2013
Cate: 長島達夫

長島達夫氏のこと(その1)

CDが登場したときに期待したのは、
ディスクの内周と外周とで音の変化がない、ということだった。

LPだと角速度一定なため外周と内周とでは線速度に違いが出てきて、
しかもそればかりが原因ではないのだが、外周の溝のほうが内周よりも音がいい。
これは円盤状であるかぎり、LPでは解消できない問題点でもあった。

それがCDになれば線速度一定だからLPのような問題は原理的にも発生しない。
アナログからデジタルになったことへの問題を認識していてもなお、
外周と内周で音の違いが起り得るわけがない、
ということはCD(デジタル)ならではのメリットだと私は受けとめていた。

ディスクの最初から最後まで音質が変化しないで聴ける──、
そう期待していたし、そう思い込んでもいた。
けれど、自分のシステムでCDを聴いていると、
ステレオサウンドの試聴室では気づかなかったことがあることがわかった。

残念なことにCDでも内周と外周において音の違いが発生する、ということに気がついた。

ステレオサウンドの試聴ではCDを一枚最初から最後まで聴くと言うことは、まずない。
試聴ディスクのある一部分をくり返し聴くわけだ。
だからステレオサウンドの試聴室ではなく、自分のシステムで気がついたわけだ。

LPは外周から音楽が始まるのに対し、CDは内周から始まる。
LPでは外周、CDでは内周、どちらも音楽の始まりのほうが音がいい。
なんという皮肉なんだろう、と、そのことに気がついたときに思ったことだ。

Date: 12月 31st, 2012
Cate: 黒田恭一

黒田恭一氏のこと(「音楽への礼状」)

2012年、音楽の書籍、オーディオの書籍はどれだけ出版されたのか、
正確な数は知らない。すべてに目を通すこともできない。
出版されていることに気がつかずに、いい本との出合いを逃しているのかもしれない。

6月に黒田先生の著書「音楽への礼状」が復刊された。
マガジンハウスから出ていて「音楽への礼状」はながいこと絶版だった。
今回の復刊は小学館文庫として、である。

黒田先生の本の中で「音楽への礼状」が、私はいちばん好きである。
今回の復刊は、音楽の本、オーディオの本に関することで、私にとってはいちばんのうれしい出来事だった。

未読の方に、ぜひ! と押しつけがましいと思われようがつよく推めたい。
以前読んでいる方にも、もう一度手もとにある「音楽の礼状」を読み返してほしい、とも思う。

Date: 12月 28th, 2012
Cate: 岩崎千明

岩崎千明氏のこと(ジャズの再生の決め手)

またか、と思われようと、また引用するのが、
岩崎先生のジャズについて文章の一節である。
     *
アドリブを重視するジャズにおいて、一瞬一瞬の情報量という点で、ジャズほど情報量の多いものはない。一瞬の波形そのものが音楽性を意味し、その一瞬をくまなく再現することこそが、ジャズの再生の決め手となってくる。
     *
そろそろ暗誦できるほど読み返しているし、何度かここで引用もしている。

これも何度か書いていることだが、私が主に聴くのはクラシックであり、
ジャズを聴く、といっても、ジャズ好きの人からすれば、お前のジャズを聴く、なんてのは
ジャズを聴いているうちに入らない、といわれてもしかたないくらいの、
ジャズのディスクの枚数だし、聴いてきた時間もクラシックを聴いてきた時間と比較すれば、本当に短い。

そんな私でも、引用した岩崎先生の文章が、オーディオとジャズの本質をついていることは直感としてわかる。
だからこそ何度も読み返し、何度か引用してきた。
その都度、意味を考えてきた。

「その一瞬をくまなく再現することが、ジャズの再生の決め手となってくる」とある。
「その一瞬をくまなく再現すること」とは、いったいどういうことなのだろうか。
そのことを考えていたわけである。

「その一瞬をくまなく再現すること」とは、その一瞬を結晶化させることだ、と思えるようになってきた。
だから別項「ワイドレンジ考(ジャズにとって、クラシックにとって)」の(その1)、(その3)で、
ジャズを「いろ」、クラシックを「かたち」とした、
「いろ(ジャズ)」とは、この一瞬の結晶化による「いろ」なのかもしれないし、
その2)で岩崎先生の音を聴かれた菅野先生の表現、
「火花」も、また、この一瞬の結晶化なのではなかろうか。

一瞬の結晶化こそが、ジャズの再生の決め手だ、と、
クラシックばかりを聴いてきた私は、そうおもう。

Date: 12月 24th, 2012
Cate: 岩崎千明

岩崎千明氏のこと(続々・Electro-Voice Ariesのこと)

エアリーズに対しては、さほど関心をもつことはなかった。
私が読みはじめてからのステレオサウンドにはエアリーズは登場していないし、
ステレオサウンドにエアリーズが登場したのは22号だけのはず。

22号の特集は「中・小型フロアー・スピーカー・システム総まくり」で、
1972年3月発行の号だから、エアリーズが登場して約1年後だから、
エアリーズが22号で、どういう評価を得ているのか、いまごろになって関心をもっているのだけれど、
22号は手もとにない。

22号では岡先生、菅野先生、瀬川先生が試聴メンバーで岩崎先生の名前は、そこにはない。
エアリーズは高い評価を得たのか、それともほどほどの評価だったのか。
22号を大きな図書館に行って読めばわかることだが、
なんとなくではあるけれど、絶賛という評価ではなかったように思える。

22号で非常に高い評価を得ていたのであれば、
その後のステレオサウンドに、もう少し登場していてもおかしくないからだ。

私がエアリーズに対して関心が薄かったのは、ステレオサウンドでの扱われ方も大きく影響している。
私のなかではエアリーズの存在は小さかった。
それがここにきて、急に大きくなってきている。

ステレオサウンド 38号をみれば、岩崎先生はエアリーズを鳴らすために、
デュアルのプレーヤー1009にオルトフォンのM15E Superをとりつけて、
アンプはというとマランツの#7と#16のペアがあてがわれている。

エアリーズの価格からすれば、贅沢な組合せといえよう。
それに38号の写真をみればみるほど、
暖炉の両脇に置かれたエアリーズはスピーカーには見えない、家具の一種としてそこに存在している。

パラゴンの置かれていた部屋にはハークネスも620Aも、ヴェローナもあり、
アンプも幾段にも積み重ねられている。
エアリーズの部屋はスピーカーはエアリーズだけである。

だから、またあれこれ考えてしまう。

Date: 12月 23rd, 2012
Cate: 岩崎千明

岩崎千明氏のこと(続・Electro-Voice Ariesのこと)

エレクトロボイスのエアリーズは、
外形寸法W69.9×H56.5×D41.3cm、重量29.5kgと、サイズ的にはブックシェルフ型に分類されるだろうが、
仕上げを見てもわかるようにエアリーズは床置きを前提としている。
その意味では、小型のフロアー型ともいえる。

エレクトロボイスは、エアリーズを”Console Speaker System”と呼んでいるし、
また”fine furniture design”とも謳っている。

オリジナルのカタログをみると、仕上げは3種類用意されている。
トラディショナル/チェリー、スパニッシュ/オーク、コンテンポラリー/ペカンであり、
岩崎先生が購入されたのはトラディショナル/チェリーである。

ユニット構成は、30cm(12インチ)のウーファー、約15cm(6インチ)のスコーカー、
約6cm(2.5インチ)のトゥイーターからなる3ウェイで、
岩崎先生はスイングジャーナルでの最初の紹介文に「ドーム型の中音、高音」と書かれているが、
写真を見るかぎりでは、コーン型と思われる。

価格は1971年当時で169000円(アメリカでは275ドル)。
安い、とはいえないものの、非常に高価なスピーカーシステムでもない。
エレクトロボイスには、もっと大型で、もっともっと高価なパトリシアン800があった。

パトリシアン・シリーズと比較すれば、エアリーズの影は薄い。
エアリーズは、日本にどれだけ入ってきたのだろうか。
エレクトロボイスのコンシューマー用スピーカーシステムをみかけることは、
JBLやアルテックと較べると、そうとうに少ない。
エアリーズを見かけたことはない。

日本ではそういうスピーカーという見方ができないわけではない。
しかも岩崎先生といえば、
JBLのD130、パラゴン、ハークネス、アルテックの620A、
エレクトロボイスにしてもパトリシアン、と大型スピーカーのイメージが強い。
エアリーズは、どこかサブ的な存在だったように、
ステレオサウンド 38号で岩崎先生のリスニングルームに置かれたエアリーズを見た時、
なんとなくそんなふうにとらえていた。

けれど暖炉のある部屋(パラゴンの置かれた部屋とは別の部屋)に置かれたエアリーズは、
部屋の雰囲気と見事に調和していた。
だから、よけいにサブ的な存在とも思ってしまったわけなのだが。

Date: 12月 23rd, 2012
Cate: 岩崎千明

岩崎千明氏のこと(Electro-Voice Ariesのこと)

スイングジャーナルのオーディオのページには、新製品紹介のコーナーがいくつかあった。
「SJ選定新製品試聴記」、「ベスト・バイ・コンポーネントとステレオ紹介」、「今月の新製品紹介」で、
「SJ選定新製品試聴記」が2ページ見開き、「ベスト・バイ・コンポーネントとステレオ紹介」が1ページ、
「今月の新製品紹介」が1ページに数機種、コマ割りとなっていた。

岩崎先生は「SJ選定新製品試聴記」と「ベスト・バイ・コンポーネントとステレオ紹介」を担当されていた。
「今月の新製品紹介」は上杉先生と大塚晋二氏だった。
「今月の新製品紹介」を岩崎先生が書かれることはない、とずっと思ってきていた。

ところがスイングジャーナルのバックナンバー(1971年4月号)を手にとってみたら、
「今月の新製品紹介」のページは紹介文の最後に括弧で、筆者名が括られているのだが、
そこになぜか、(岩崎)とあった。

「今月の新製品紹介」の扉には、上杉佳郎・大塚晋二とあるだけだ。
岩崎千明の文字はない。
けれどイレギュラーで、岩崎先生が1コマ(1機種)だけ書かれている。
それが、エレクトロボイスのスピーカーシステム、Aries(エアリーズ)である。

勝手に想像するに、エアリーズに惚れ込まれた岩崎先生が自ら編集部に申し出て、紹介文を書かれたのだろう。
きっとそうだと思う。

その後、エアーズのことは「SJ選定新製品試聴記」(1971年7月号)に書かれていて、
最後に、(本誌4月号新製品紹介も参考ください。岩崎)とわざわざつけ加えられている。

Date: 12月 5th, 2012
Cate: 4345, JBL, 瀬川冬樹

4345につながれていたのは(その4)

ステレオサウンド 61号の編集後記に、こうある。
     *
今にして想えば、逝去された日の明け方近く、ちょうど取材中だったJBL4345の組合せからえもいわれぬ音が流れ出した。この音が先生を彷彿とさせ、話題の中心となったのは自然な成り行きだろう。この取材が図らずもレクイエムになってしまったことは、偶然とはいえあまりにも不思議な符号であった。
     *
この取材とは、ステレオサウンド 61号とほぼ同時期に発刊された「コンポーネントステレオの世界 ’82」で、
井上先生による4345の組合せのことである。
この組合せが、この本の最初に出てくる記事にもなっている。

ここで井上先生は、アンプを2組選ばれている。
ひとつはマランツのSc1000とSm700のペア、もうひとつはクレルのPAM2とKSA100のペアである。

えもいわれぬ音が流れ出したのは、クレルのペアが4345に接がれたときだった、ときいている。

このときの音については、編集後記を書かれたSさんにも話をきいた。
そして井上先生にも直接きいている。
「ほんとうにいい音だったよ。」とどこかうれしそうな表情で語ってくれた。

もしかすると私の記憶違いの可能性もなきにしもあらずだが、
井上先生は、こうつけ加えられた。
「瀬川さんがいたのかもな」とも。

Date: 12月 2nd, 2012
Cate: 岩崎千明

「オーディオ彷徨」(ジャズ・アルバム一覧)

岩崎先生の遺稿集「オーディオ彷徨」に登場するジャズ・アルバムをまとめたもの。
私もつくろうかな、と思っていたところに、ある方が先に作られて提供してくださった。
Amazonへのリンク、コメントも、その方によるもの。

~仄かに輝く思い出の一瞬 -我が内なるレディ・ディに捧ぐ~
ビリー・ホリディ「レディ・ディ・ザ・コンプリート・オン・コロムビア 1933-1944」
http://www.amazon.co.jp/dp/B0029XIWCY

~あの時、ロリンズは神だったのかもしれない~
ソニー・ロリンズ「サキソフォン・コロッサス」
http://www.amazon.co.jp/dp/B000000YG5

~変貌しつつあるジャズ~
※変貌以前として
アート・ブレーキー「カフェ・ボヘミアVol.1」&「同Vol.2」
http://www.amazon.co.jp/dp/B00005MIZA
http://www.amazon.co.jp/dp/B00005MIZB

※変貌しつつあるものとして
マイルス・デイヴィス「アット・フィルモア」
http://www.amazon.co.jp/dp/B000AO8CDS

ドン・エリス「アット・フィルモア」
http://www.amazon.co.jp/dp/B0009RQRLU

ウェイン・ショーター「スーパー・ノヴァ」
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B001J231FE

ハービー・ハンコック「プリズナー」
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00004YTWJ

トニー・ウィリアムズ・ライフタイム「エマージェンシー!」
※文中に具体的なアルバム名は書かれていないが、書かれている内容から本作と思われる。
http://www.amazon.co.jp/dp/B0000047GA

※変貌以前に少し戻って
チャーリー・ミンガス「クインテット」
※文中に具体的なアルバム名が無いが書かれている内容から
「My Favourite Quintet」の可能性が一番高いと思われる。
当該作は未CD化だがLP盤で輸入・日本盤ともに安価で中古購入可能。
http://t2.gstatic.com/images?q=tbn:ANd9GcRwUYSBxUW3t0RsmZKxoqFqER3uC_6w2brzf5gI_JKRxBJMH9g1
http://t0.gstatic.com/images?q=tbn:ANd9GcROy11xsJ1N4KiIzM48etR3jwfCFvsVBqQi-168orVQPdIDMvXX
(上記のどちらのジャケットのLPでも同じ内容。)

オクテット編成になっているが下記のCDはほぼ同時期の録音。
http://www.amazon.co.jp/dp/B000HIVQI0/

~カーラ・ブレイの虚栄 マントラー~
マイケル・マントラー他「コミュニケーションズ」
http://www.amazon.co.jp/dp/B000024D19
※前項の~変貌しつつあるジャズ~に出てきたセシル・テイラー「ジャズ・コンポーザース・オーケストラ」とはこのアルバムの事。

~新たなるジャズ・サウンドの誕生~
ケニー・ドリュー・トリオ「ダーク・ビューティ」
http://www.amazon.co.jp/dp/B000027UP5

デューク・ジョーダン「フライト・トゥ・デンマーク」
http://www.amazon.co.jp/dp/B000027UPE
※上記2点はデンマーク・スティープル・チェイスの作品。

カウント・ベイシー「ベイシー・ジャム」
※パブロレーベルからはベイシーのジャムセッションが多く出されているが
具体的なアルバム名が示されていないが、文章の書かれた時期、作品の出来や知名度などから推察して下記アルバム。
http://www.amazon.co.jp/dp/B000000XIW

ジョー・パス「ヴァーチュオーゾ」
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B0038M61JQ
※パブロのカウントベイシーと同じ理由で本アルバム。

~私のオーディオ考~
ビリー・ホリディ「二組の三枚揃」は冒頭の「レディ・デイ」のCDセットと重複するので割愛。

チャーリー・クリスチャン「ジーニアス・オブ・ザ・エレクトリック・ギター」
「CBSのダブル・ジャケット」のCD化は、おそらくこれのはず。
http://www.amazon.co.jp/dp/B0000026C8

ビックス・バイダーベック「(コロムビアの)三枚組」はこれ。LPでは分売もされていた。
http://www.amazon.co.jp/dp/B000056EV0

フレッチャー・ヘンダーソン(のコロムビアのLPをまとめた三枚組)をCD化したもの。
http://www.amazon.co.jp/dp/B0056BMV6E

ルイ・アームストロング「ホット5」&「ホット7」文中では「ルイの Vol. 1~4」とも書かれてもいる。
コンプリートボックス盤
http://www.amazon.co.jp/dp/B00004WK37

上記からの抜粋ベスト盤
http://www.amazon.co.jp/dp/B000068ZR2
ベニー・グッドマン「CL-501」は
現在、一部の曲を除いて下記の2枚のCDで下記2枚で8割方は聴ける(はず)。

ベニー・グッドマン「プレイス・エディ・ソウター」
http://www.amazon.co.jp/dp/B000001MDH

ベニー・グッドマン「プレイズ・メル・パウエル」
http://www.amazon.co.jp/dp/B000001MDJ
※ベニーグッドマンは他にも複数のCDに散らばって収録されている様子。

~私とJBLの物語~
ボブ・スコービーとフリスコ・ジャズ・バンド
グッドタイム・ジャズ・レーベルから出ていた2枚のLPは共にCD化されている。

ボブ・スコービー「ボブ・スコービーズ・フリスコ・バンド」
http://www.amazon.co.jp/dp/B000000XOW

ボブ・スコービー「スコービー&クランシー」
http://www.amazon.co.jp/dp/B000000XP0

ファイアハウス・プラス・ツー「ディキシー・ランド・フェイバリッツ」
http://www.amazon.co.jp/dp/B000000XGY

~オーディオ歴の根底をなす二十六年前のアルテックとの出会い~
キッド・オリー「アルバム不明」
ヴィック・ディッケンソン「ショーケース」
http://www.amazon.co.jp/dp/B000000ECF

~タイムマシンに乗ってコルトレーンのラブ・シュープリームを聴いたら複葉機が飛んでいた~
ジョン・コルトレーン「至上の愛」
http://www.amazon.co.jp/dp/B0000A118M

~暗闇の中で蒼白く輝くガラス球~
レッド・ガーランド「グルーヴィー」
http://www.amazon.co.jp/dp/B000000Y3T

~ぶつけられたルージュの傷~
※具体的なアルバム名は無いが、この文章が書かれた時期や、当時ジャズ喫茶でよくかかっていたらしいという点、緻密なー、という表現からの推測。
キース・ジャレット「ケルン・コンサート」(他に二枚ほど迷った。)
http://www.amazon.co.jp/dp/B0000262WI

~雪幻話~
オーネット・コールマン「アット・ゴールデン・サークル」
※朝沼予史宏氏のフェイバリット・アルバムでもあった一枚。
http://www.amazon.co.jp/dp/B00005UMTT

キース・ジャケット「フェイシング・ユー」
http://www.amazon.co.jp/dp/B00008KKV0

~のろのろと伸ばした指先がアンプのスイッチに触れたとき~
エリック・ドルフィー「アット・ザ・ファイヴ・スポットVOL.1」
「ファイアー・ワルツ」収録はこのVOL.1。
http://www.amazon.co.jp/dp/B000NO28N0

~二十年前僕はやたらゆっくり廻るレコードを見つめていた~
エルモ・ホープ・トリオ「イントロデューシング」
http://www.amazon.co.jp/dp/B002SVPN24
※ジャケットの色がすり減って色褪せていた~とあるので、色付きのジャケットだったファーストアルバムではないかと思う。
(セカンドアルバムはモノクロのジャケット)

~不意に彼女は唄をやめてじっと僕を見つめていた~
ヘレン・メリル「ウィズ・クリフォード・ブラウン」
http://www.amazon.co.jp/dp/B0000046ND

~トニー・ベネットが大好きなあいつは重たい真空管アンプを古机の上に置いた~
レフト・アローン「マル・ウォルドロン」
http://www.amazon.co.jp/dp/B00005EQB9

ナット・キング・コール「アフター・ミッドナイト」
http://www.amazon.co.jp/dp/B00000K45T

http://www.amazon.co.jp/dp/B000M2E8SG

トニー・ベネット&カウント・ベイシー「イン・パーソン」
http://www.amazon.co.jp/dp/B000024HGK
※何枚か共演盤があるが岩崎さんはきっとCBSコロムビアのこれではないかと。
http://www.amazon.co.jp/dp/B006YTLP1Y (対となるもう一枚の共演盤とのカップリング盤)

~音楽に対峙する一瞬 その四次元的感覚~
ジョン・コルトレーン「クル・セ・ママ」
http://www.amazon.co.jp/dp/B001NHZ2QQ