Archive for category 輸入商社/代理店

Date: 4月 30th, 2015
Cate: 輸入商社/代理店

輸入商社なのか輸入代理店なのか(その14)

1ドル360円だった時代、輸入品は、1ドル1000円で換算したのが、ほぼ日本での価格だった。
そんな話を聞いたことがある。
輸入品は、ずっと以前はそれだけ高価だった。
だからというわけでもないのだろうが、並行輸入をやる業者がある。

モノによっては日本での販売価格よりもかなり安く買えたりする。
高価なモノになればなるほどその差額は大きくなるのだから、
並行輸入品を買ってしまう人もいる。

けれど並行輸入品は、その製品を作っている会社の利益にはなっても、
そのブランドの正規輸入元の利益にはならない。
にもかかわらず並行輸入品のアンプが故障して、正規輸入元に修理を依頼する。

いまはどうなのか知らないが、昔は正規輸入元は並行輸入品であっても修理をことわることはできなかった。
ただし修理費用は正規輸入品よりもずっと高く請求してもいいことになっていた。

けれど並行輸入品を修理に出して、その修理費用が高すぎる。
そんなメールをもらったことがある。

こんなことをメールしてくる人がいるのは悲しくなる。
なぜ多くの人は並行輸入品でなく正規輸入品を購入するのか。

並行輸入品と正規輸入品の価格差を、安心のための出費として考えているからのはずだ。
故障したら自分で修理する、もしくは修理専門業者に依頼する、
さらには処分する。
そういう人は並行輸入品に手を出せばいい。

安心して使いたい。
気に入ったモノならば長く使いたい。
そういう人は正規輸入品を買う。

メーカーや輸入元が修理のために部品をストックしている。
これにも税金がかかる。資産ということになるからだ。
それでも良心的なところは部品をストックしている。

その部品が並行輸入品の修理のために使われる。
そうやって使われる部品の中には、すでに製造中止になっている部品もある。

にも関わらず、並行輸入品の修理の費用が高すぎる、と文句をいう人がいる。
私にメールをしてくるくらいだから、おそらく輸入元には文句を言っていることだろう。

こんな人はごくわずかだと思いたい。
けれど現実にいるのも事実である。

Date: 4月 28th, 2015
Cate: 輸入商社/代理店

輸入商社なのか輸入代理店なのか(その13)

マッキントッシュという会社は、ユーザーがとにかく安心して使えることをもっとも大事にしている。
回路構成にしても、動作にしても、サービス体制にしても、
ユーザーが不安を感じることがないようにしている。
(このことはパネル・デザインに関してもいえる。)

マッキントッシュのアメリカでのサービス体制について以前書いているからくり返さないが、
これだけのことをやってくれるメーカーは他にないはずだ。
いまもマッキントッシュが同じサービスを続けているのかは不明だが、
少なくとも、ステレオサウンドから「世界のオーディオ」マッキントッシュ号が出たころはそうだった。

そのマッキントッシュの修理のレベルが、
日本ではマッキントッシュ・ジャパンの時代に大きく低下していった。
マッキントッシュの耳にも、日本でのアフターサービスの低下については入っていたのかもしれない。

そうだとしたら、マッキントッシュにしてみたら、こんなに歯がゆいことはなかったはずだ。
それまで日本のマッキントッシュ・ユーザーは安心して使ってこれた。
エレクトリが輸入元であったからだ。

それがマッキントッシュ・ジャパンになり、ユーザーの間に不安が生じはじめる。
マッキントッシュのこれまで積み上げてきたことからすれば、あってはならないことが、
アメリカに次いで大きな市場である日本で起っている。

マッキントッシュの輸入元がふたたびエレクトリに戻ってホッとしているのは、
ユーザーだけでなくマッキントッシュも、であろう。

修理は難しい。
他人の作ったモノを直さなければならない。
回路図が読め、ハンダゴテが握れるから十全な修理ができるというものではない。
修理がそういうものであることはわかっていたことである。

マッキントッシュ・ジャパンは、修理をどう考えていたのだろうか。
そしてマッキントッシュ・ジャパンの親会社にあたるD&Mホールディングスは、
修理をはじめとするアフターサービスをどう考えているのか、とも思う。

マッキントッシュ・ジャパンがそうであったのだから、
もしかするとD&Mホールディングスの他のブランドも、そうなのかもしれないと疑ってしまう。
そんな人も出てくる。

以前であれば、そんな疑いはいつしか消えてしまっていたことだろう。
けれど今はインターネットで、いくつかのキーワードで検索すれば、
修理の実態がかいまみえてくる。そうなると疑いは確信へと移る。

その怖さをD&Mホールディングスはなんとも思わなかったのか。

Date: 4月 27th, 2015
Cate: 輸入商社/代理店

輸入商社なのか輸入代理店なのか(その12)

マッキントッシュは2003年、持ち株会社であるD&Mホールディングスに買収された。
しばらくは輸入元はエレクトリのままだったが、
2007年、D&Mホールディングスによって設立されたマッキントッシュ・ジャパンが輸入・販売を行うようになった。

20年以上、マッキントッシュといえばエレクトリという時代が続いた。
エレクトリ時代、マッキントッシュのサービスに対する不安のようなことは聞いたことがなかった。

それがマッキントッシュ・ジャパンになってからは、ちらほら聞くようになってきた。
とはいえ又聞きであったため、はっきりとしたことはわからなかった。
けれど私の友人のアンプが、出力管のカソードに入っているフューズが飛ぶようになり、
マッキントッシュ・ジャパンに修理に出した。

けっこうな金額を請求されたそうだ。
それでもきちんと修理がなされていればよかったのだが、
しばらく使っていると、また飛ぶようになった。

結局マッキントッシュ・ジャパンが修理という名目で行ったのは、
なぜ出力管のフューズが飛ぶのか、その問題点を探り出し、そこを直すというのではなく、
ただ単にフューズを交換したというレベルでしかなかったことがわかった。

マッキントッシュは2012年、別の持ち株会社によって買収された。
そのおかげでエレクトリへ戻った。
マッキントッシュ側の要望でエレクトリに戻った、ときいた。

Date: 4月 27th, 2015
Cate: 輸入商社/代理店

輸入商社なのか輸入代理店なのか(その11)

マークレビンソンの輸入元がRFエンタープライゼスからハーマンインターナショナルに移ったころの話だ。
輸入元が変れば、RFエンタープライゼスから購入したマークレビンソンのアンプも、
新しい輸入元のハーマンインターナショナルで修理することになる。

けれどRFエンタープライゼスから購入した人は、
ハーマンインターナショナルではなくRFエンタープライゼスでこれからもアフターサービスを受けてほしい、
そういう人が少なからずいた、ときいたことがある。

これは何も当時のハーマンインターナショナルのサービス部門の技術力に問題があったとか、
そういうことではなかった。
それ以上にRFエンタープライゼスは信頼されていたということである。

この項の(その5)(その6)(その7)で、RFエンタープライゼスのことを書いた。

そこでふれたRFエンタープライゼスの広告を読んでいたころ、
RFエンタープライゼスが取り扱っているオーディオ機器は、とても買えなかった。
買えなかったけれど、RFエンタープライゼスが取り扱っているオーディオ機器は、
いつか手にしたい、とそう思っていた。

実際にRFエンタープライゼスのサービスをうけたことのない私ですらそう思っていた。
実際にRFエンタープライゼスから購入してサービスをうけたことのある人なら、
よけいにそう思っていたのではないか。

RFエンタープライゼスがなくなって、ずいぶん経つ。
RFエンタープライゼスがあったころ、輸入元は輸入代理店ではなく、輸入商社と呼べたような気がするのは、
RFエンタープライゼスという手本があったから──、
輸入元(輸入代理店としか呼べないところが増えてきた)のウワサをきくたびに、そう思ってしまう。

Date: 4月 26th, 2015
Cate: 輸入商社/代理店

輸入商社なのか輸入代理店なのか(その10)

2010年8月13日に、twitterに下記のことを投稿した。
     *
オーディオ業界もマネーゲームに翻弄されている、ときく。それによって復活するブランドもあれば、没落していくブランドもある。なのに、オーディオ誌は、そのことに無関心を装っているのか、関係記事が出ることもない。オーディオは文化だ、というのであれば、きちんと取材し報道すべきだろう。
     *
この投稿に対して、あるオーディオ評論家から反論があった。
そのオーディオ評論家は、オーディオを文化だと捉えていない、ということだった。
そしてオーディオ雑誌の読者は、そんな記事に関心をもたない、有意義ではない、ともあった。

たしかに、そのオーディオ評論家は「オーディオは文化だ」とは発言されていないのだろう。
けれどステレオサウンドはどうだろうか。
少なくとも私が読者であったころ、私が編集者であったころ、
そのあともしばらくはオーディオを文化として捉えていた。

けれど、私に反論されてきたオーディオ評論家はそうではなく、ステレオサウンドに執筆されている。
オーディオは文化なのかどうか、
人によって考え方・捉え方は違うし、そう捉えていない・考えていない人が、
オーディオ評論を成立させることが可能なのか──、その点に私は興味があるし、
文化的要素・文化的側面を感じないもの・ことに対して評論は成り立つのだろうか、とも考える。

そういう「文化」に対して資本主義(いきすぎた商業主義)がどう関わってくるのか、
良い影響もあればそうでない影響もあり、これらを記事とするのは、有意義だと考える。

読者にとっても有意義であるし、
それはオーディオ業界からはあまり歓迎されない面ももつようになるだろうが、
よい記事であれば、オーディオ業界にとっても有意義な記事となるはずである。

五年前に書いたことを思い出していた。
五年前と現在、良くなっていると、そのオーディオ評論家は思っているのだろうか。

Date: 4月 25th, 2015
Cate: 輸入商社/代理店

輸入商社なのか輸入代理店なのか(その9)

ステレオサウンドが、56号、57号で「輸入オーディオ製品サービス体制」という記事の冒頭にこう書いてある。
     *
小誌読者の間には、海外製オーディオ機器に対して強い関心と興味をもちながら、アフターサービスなどについてある種の不安感をもあわせもっている方が、予想外に多かった。
     *
56号、57号は1980年に出ている。
この時よりも、いまはどうなのだろうか。
いまのほうが不安感が強いのではないだろうか。

56号、57号の時代とは違い、
いまはインターネット経由でさまざまな情報を目にする。
今回の輸入元の修理のお粗末さの件、サービス部門の切り離し(外部委託)の件にしても、
以前だったらほとんど知られることはなかっただろう。

それがいまではあっという間に拡散してしまう。
私は今回、どちらともその会社の固有名詞を出していないが、
すでにどこの会社なのか知っている人は少なくないと思う。
もう少し経てば、もっと多くの人が知ることになるはずだ。

どちらの件も、安心感へとはつながっていかない。
不安感をあおっていく。

56号、57号の三年後に輸入オーディオショウが始まった。
そして輸入オーディオ協議会ができた。
いまは日本インターナショナルオーディオ協議会と名称を変えている。

日本インターナショナルオーディオ協議会は、輸入オーディオ製品サービス体制をどう考えているのだろうか。
35年前はステレオサウンドがアンケート調査を行った。
当時は輸入オーディオ協議会はなかった。
けれどいまはある。
ならば、ユーザーの輸入オーディオ機器への不安をすこしでも解消するために、
アンケート調査を、1980年の時よりもさらに細かなことに踏み込んで行うべきではないのか。
そして調査結果をウェブサイトで公開してほしい。

Date: 4月 24th, 2015
Cate: 輸入商社/代理店

輸入商社なのか輸入代理店なのか(その8)

ステレオサウンド 56号と57号の二号にわたって、掲載された記事がある。
地味な企画といえる記事だが、いまのステレオサウンドには期待できない記事でもある。

記事のタイトルは「輸入オーディオ製品サービス体制」で、
輸入代理店24社にアンケートを出し回答を依頼したものである。

アンケート質問項目は次のとおり。
①販売網について……日本全国どこでも買えますか
②日本語の取扱説明書は付属していますか
③保証書の有無、保証期間について
④故障した場合、またはMCカートリッジ針交換の依頼先について……輸入元直接か販売店経由か
⑤修理依頼の方法は……持ち込むのか、取りにきてくれるのか、輸送か(運賃は)
⑥出張修理は行なっていますか(出張費用は)
⑦修理出来上りの際は……受け取りにいくのか、配達してくれるのか、輸送か(運賃は)
⑧修理期間およびその費用について
⑨各種パーツのストックについて
⑩輸入中止、あるいは製造中止になった製品の修理パーツは、中止されてからどのくらいの期間保有していますか
⑪輸入元が変更になった場合、サービスは新・旧どちらの代理店で行なうのですか
⑫電源電圧をはじめ、日本仕様に変更している箇所はありますか
⑬入荷製品のチェックをしていますか……それは抜き取り検査ですか全数チェックですか
⑭どのような項目についてチェックしているのですか
⑮チェックの際、測定を行ないますか……そのデータを製品に添付しますか
⑯チェック済か否かの見分け方について

今日もfacebookで、ある輸入代理店がサービス部門を外部に依託する、という投稿があった。
その3)でも、ある輸入代理店の修理のことがfacebookで話題になっていた、と書いた。

(その3)で書いたところも輸入代理店としては大手である。
今回のところも同じように大手である。

今回のことは、取扱い全ブランドの修理が外部に依託されるのかどうかははっきりしていない。
今後どうなるのかも、いまのところはっきりしていない。
それに外部依託によって、アフターサービスのクォリティが、どう変っていくのかも、まだわからない。
悪くなる可能性もあれば、良くなる可能性もないわけではない。

外部委託がすべて悪いとは考えていない。
製品によっては、自社のサービス部門よりも、より技術力のある(得意とする)ところにまわしたほうが、
結果は良いことにつながる。

私の体験でいえば、SUMOのThe Goldが故障した際、
輸入元だったエレクトリに修理を依頼した。
割とすぐに修理されて戻ってきた。
明細を見たら、そこにはエレクトリではなく、他の会社名があった。
テクニカルブレーンだった。

SUMOが輸入された期間は短い。
私が修理に出した時は、すでにエレクトリは取り扱いをやめていた。
それに当時、テクニカルブレーンは、GASやSUMOの修理、メンテナンスを得意としていたところである。
だから、テクニカルブレーンの修理で良かった、と思った。

こういうこともあるから、外部委託が悪いとは決めつけたくない。
けれどユーザーとしては、今回のことは、やはり不安に感じる。

Date: 2月 19th, 2015
Cate: 輸入商社/代理店

輸入商社なのか輸入代理店なのか(その7)

SAEのパワーアンプ、Mark 2500は瀬川先生が高く評価され自家用として購入されたモノである。
輸入元はRFエンタープライゼスだった。

300W+300WのMark 2500は1977年秋に400W+400WのMark 2600へと変更された。
瀬川先生は、Mark 2600よりもMark 2500を高く評価されていたことは、以前書いている。

1979年6月、SAEの輸入元はRFエンタープライゼスから三洋電機貿易へと変った。
オーディオ雑誌に、RFエンタープライゼスの広告が載っている。
「さようならSAE」とある。

Mark 2600は、だからRFエンタープライゼス輸入のモノと三洋電機貿易輸入のモノとがある。
だからといって同じとは限らない。

「さようならSAE」にはこう書いてある。
     *
MARK2600においては、電源トランスの分解再組立てによるノイズ防止/抵抗負荷による電源ON-OFF時のショック追放/放熱ファンの改造および電圧調整によるノイズ低減/電源キャパシターの容量不足に対し、大型キャパシターを別途輸入して全数交換するなど、1台につき数時間を要する作業を行うほか、ワイヤーのアースポイント変更による、方形波によるリンキング防止やクロストークの改善など、設計変更の指示も多数行ってまいりました。
     *
三洋電機貿易も同じことをやっていたかもしれない。
でも、私はやっていなかったと思う。

以前、ある人からSAEのMark 2600を昔使っていたけれど、瀬川先生がいうほどいいアンプではなかった、
といわれたことがある。
その人に確認したのは、輸入元がどちらかだった。
彼が使っていたのは三洋電機貿易輸入のMark 2600だった。

上に書いたことを彼に説明したけれど、納得していなかった。

だがこれだけ輸入元で手をくわえていれば、
そうでないMark 2600とはかなり音が違っていることは容易に想像できる。

瀬川先生が高く評価されていたのは、RFエンタープライゼス輸入のMark 2500である。
並行輸入されたMark 2500もあるだろうが、それを高く評価されていたわけではない。

この違いははっきりとしておきたい。

Date: 2月 16th, 2015
Cate: 輸入商社/代理店

輸入商社なのか輸入代理店なのか(その6)

今回改めてステレオサウンド 43号掲載のRFエンタープライゼスの広告を読みなおして、
ここには輸入商社としてのあるべき姿がすでに書かれていたことを、再実感している。

こうも書いてある。
     *
私達はまた特約店(ディーラー)の数をふやすことにあまり関心がありません。製品についてのより深い理解をもったディーラーのきめこまかい活動がより大事だと考えるからです。

私達は、私達自身の哲学と共鳴し合える”オーディオファイルの心”をもったメーカーの、真に優れた製品のみを取り扱っていきたいと、いつも考えてきました。この共感がなければ、製品に対する理解を深めてゆくことも、製品を正しく紹介することも不可能です。
私達は、メーカーとの相互理解と交流を深めてゆくなかで、私達の考えや主張も充分に伝えるよう努めています。
     *
ステレオサウンド 43号は1977年、いまから38年前に出ている。
私は、この広告を読んで、RFエンタープライゼスの取り扱うモノならば信用できる、と思っていた。

このころのRFエンタープライゼスは、
AGI、オーディオリサーチ、DBシステムズ、インフィニティ、マークレビンソン、マイクロトラック、
クインテセンス、SAE、サウンドクラフツメンといったブランドを扱っていた。

広告に書かれてたキレイゴトだとは私は思っていない。
RFエンタープライゼスは、輸入元として、ひとつの手本であったように思っている。
良き手本があるから、他の輸入元も見習おうとするところも出てくるであろう。

いまRFエンタープライゼスのように、見本となる輸入元はいくつかあるのだろうか。

Date: 2月 15th, 2015
Cate: 輸入商社/代理店

輸入商社なのか輸入代理店なのか(その5)

マークレビンソンのLNP2、JC2のモジュールはメイン基板にハンダ付けされているわけではなく、
挿してあるだけだから、モジュールに不具合が発生したら新品のモジュールに抜き差しで交換すればすむ。
たしかに確実な修理方法ではあるが、これではユーザーの金銭的負担はかなり増す。

しかもマークレビンソンが交換用モジュールを製造し続けてくれていればよかったけれど、
製造もとっくの昔に中止になっている。
こうなると、修理は密閉されたモジュールだけに、かなり大変なことになる。

どうするのが最善の方法なのかは、なかなか難しい、としかいえない。

このころのマークレビンソンのアンプの輸入元はRFエンタープライゼスだった。
RFエンタープライゼスの広告は、単に製品の広告だけではなかった。

ステレオサウンド 43号の広告のように、
輸入元の仕事についてふれてある回もあった。

43号の広告には「私達輸入業務に携わる者に課せられた責任です。」とある。
RFエンタープライゼスが考える責任とは、
すぐれた製品を、正しく本来の性能を発揮できる状態でユーザーの手に供すること、である。

そして、こう続いている。
     *
“State of the Art”製品は、販売やアフターケアもふくめて、その取り扱いのすべてがそれにふさわしく行なわれなければならない。それが私達の希望であり信条です。
 私達は私達の発売する製品を出荷前に全数検査することにしています。
 そのために使う測定機器は、すべてメーカーで使用しているものと同じか同一水準のものを揃えるようにしています。 これらのことは、手間も費用もたいへん要することですが、私達は私達の責任を果たす上でどうしても必要なことと考えています。
     *
いまここまでやっている輸入元はいくつあるのだろうか。

Date: 2月 15th, 2015
Cate: 輸入商社/代理店

輸入商社なのか輸入代理店なのか(その4)

以前書いているが、あるオーディオ店は、
アンプに関してはアキュフェーズとウエスギを客にすすめていた、という話を聞いている。

理由は、アフターサービス(修理)がしっかりしているから、ということだった。
故障しにくい、故障してもきちんと修理されて戻ってくる。
どんなに音が良くても、故障の頻度の高いものや、故障したときに修理がいいかげんだったり、
きちんと修理されたとしても、数ヵ月もかかるという製品は、客にはすすめられない。

これも店主のひとつのポリシーである。
このポリシーのみが正しい、とはいわないものの、
どんなに音の良さこそが最優先される、という人であっても、
実際に故障すると、故障しにくいアンプの有難みがわかるし、
修理体制がしっかりしたところの製品が選択肢ともなってくる。

修理というのは、高い技術が要求される。
新製品の開発は華やかさもあるけれど、修理の技術にはそれはない。
それでも修理は、どの会社にも必要となる。

国内メーカーもそうだし、輸入元もそうだ。
国内メーカーは、製品を開発しているだけに故障への対応もしっかりしていよう。
自分たちでつくったモノを自分たちで修理する。

けれど海外製品となると、そうではない。
輸入元の技術者が修理することになる。
他の人が設計・開発し製造したモノを修理することになる。

修理の大変さ・面倒さは国内メーカーよりもやっかいとなることもある。

マークレビンソンのLNP2、JC2は密閉されたモジュールにしていた。
この理由についてたずねられたときに、
「こうしておけば、もし故障が起こっても、いい加減な修理をされて、これらの本来の特性とかけはなれた、
ともかく音が出ている、というような状態で使われる心配はないからね。」
とマーク・レヴィンソンは答えている(ステレオサウンド 43号掲載のRFエンタープライゼスの広告より)

Date: 2月 14th, 2015
Cate: 輸入商社/代理店

輸入商社なのか輸入代理店なのか(その3)

昨日、ある海外メーカーのオーディオ機器の修理のことが、facebookで話題になっていた。
このメーカーの製品を使っているユーザーのブログがリンクされていて、
コメントには、他のユーザーの方も実例があった。

この海外メーカーの製品はかなり高価なモノである。
このメーカーの輸入元は、かなり大きな規模の会社であり、
輸入だけでなく、オーディオ機器の開発も行っている。

そういうところだから、むしろ修理体制はしっかりしているように思われるけれど、
実際はどうもそうではないようである。

facebookに書かれていたことを疑うわけではないが、私自身の体験ではないから固有名詞は出さないが、
誰もが知っている会社である。

ある人は、ここが取り扱っているアンプが故障したため修理に出したら、
パーツが違うパーツに変っていた、とのこと。
そのことで輸入元に問い合せると、音は変りません、といわれたとある。

この輸入元は、使者が開発している製品のカタログでは、パーツのことにふれている。
もちろんパーツによって音が変ることを認めている。

にも関わらず輸入している製品となると、まったく反対のことを平気でユーザーにいう。
驚きよりも呆れる。
こうなると輸入元としての信用だけでなく、国内メーカーとしての信用もなくしてしまうことに、
このメーカーに勤務している人たちは気づかないのであろうか。

部署が違う──。
それが理由なのかもしれないが、そんなことはユーザーからすれば理由にはならない。
このメーカーの製品の購入を検討している人にも、理由にはならない。

同じ会社として見られているのだから。

Date: 2月 13th, 2015
Cate: 輸入商社/代理店

輸入商社なのか輸入代理店なのか(その2)

マークレビンソンのLNP2、JC2が話題になっている時代、
アメリカでは多くの小規模のアンプメーカーが誕生した。
その中にDBシステムズがあった。

プアマンズ・マークレビンソンとも呼ばれていたDBシステムズのアンプは、
徹底的にコストを削減するつくりだった。
お世辞にもおしゃれなアンプとはいえなかった。

コントロールアンプのDB1と電源のDB2の組合せで、当時20万円をすこしこえていた。
それほど考かなアンプではなかったけれど、
マークレビンソンのアンプに匹敵する切れ込みの鋭い音を特徴としていた。

当時の輸入元はRFエンタープライゼスだった。
その後、輸入元がナスカになった。

この輸入元はDBシステムズのアンプに惚れ込んだH氏が、
勤めていた会社(たしかシュリロ貿易だったはず)を辞めて、
DBシステムズの輸入のために興した会社だった。

こういう輸入元は会社の規模は小さくとも信頼できた。
修理に関してもきちんとしていた。
小さな輸入元だったから、大きな輸入元からすれば売行きは少ないだろうが、
DBシステムズに対する日本のユーザーの信頼は増していったように思う。

海外のオーディオ機器を輸入して売るだけならば、輸入代理店、輸入代理業としか呼べない。
会社の規模が大きかろうと、修理体制がいいかげんなところは、そう呼ぶしかない。

残念なことに、輸入代理店、輸入代理業としか呼べないところ、
しかも会社の規模の大きいところがそうである、ということを耳にすることが何度かある。

Date: 9月 24th, 2012
Cate: 輸入商社/代理店

輸入商社なのか輸入代理店なのか(その1)

いま輸入商社を名乗っている会社は、いったいどれだけあるのだろうか。
オーディオがブームだったころよりも、輸入商社の数は多い。

1970年代にあった輸入商社の名前は、当時はすべて記憶できていた。
いまはどうかというと、いったいどれだけをあるんだろうか……、と思ってしまうほどに、
規模の小さなところが増えていて、正直、すべての数を把握できていない。

なぜ、こんなにも数は多いのだろうか。
そして、それらのうち、輸入商社とは呼べないところも、いくつかあるように感じている。
そこが輸入しているオーディオ機器を購入したわけでもないし、
私のまわりにも、そういうところからオーディオ機器を購入した人もいないから、
固有名詞を出すことは控えるものの、
そういうところは輸入商社ではなく、輸入代理店ではないか、と思える。

輸入商社は、
優れたオーディオ機器をつくっている海外のメーカーを見つけて契約し、日本に輸入するわけだが、
輸入するオーディオ機器は、必ずしも商品であるわけではない。

海外で、そのオーディオ機器は商品として市場に流通していても、
それをそのまま日本に持ってきたからといって、日本でも商品と成り得るかといえば、そうでないこともある。

輸入商社は、ただ輸入するだけではなく、
日本において、そのオーディオ機器が商品となるようにしていくのが輸入商社としての仕事ではないだろうか。
輸入商社が輸入するオーディオ機器は、どんなに海外で商品として通用していても、
あくまでも輸入の時点では製品だと思う。
その製品を商品としていくのが輸入商社であり、
製品を製品のまま市場に出してしまうのは、輸入代理店としか呼べない。

これは会社の規模とは直接関係のないことだ。
海外で、いいオーディオ機器を見つけた。うまく契約できた。輸入した。
それだけでも、商品として通用するモノもないわけではない。
だけど、そういうモノばかりではない。

海外のブランドの中には、輸入元がたびたび変るところがある。
これはどういう事情なのかは、すべてが同じというわけではないだろうし、
いくつもの事情があるとは思う。

それでも自社の製品を商品とすることができない輸入商社が輸入元だとしたら、
商品としていくための仕事をしてくれる輸入元へと移りたくなるのではないだろうか。