Archive for category 戻っていく感覚

Date: 6月 29th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その18)

ヨーロッパにおいてテープデッキは積極的な意味での録音器なのだと、いまは思う。
それでも私にとって、ふり返ってみても、そうとはいえなかった。録音しなかったわけではない。
エアチェックはしていた。それでも、私が中学、高校生時代に買ったカセットテープの数は、そう多くはない。

新聞配達のアルバイトで得たお金と小遣い。五十年ほど前のことだから、合わせてもそれほど多かったわけではないから、優先順位が決まってくる。

カセットテープの優先順位は低かった。

この時、身近に生録の機会があったとしても、変らなかっただろう。

そんな私が、やっぱり欲しいと思うのは、この項の最初の方で書いているスチューダーのA710だ。

ルボックスのB710でもいいじゃないか、と言われそうだが、ここはスチューダーが欲しい。

CDプレーヤーで、ルボックスとスチューダーの音の違いは実際に聴いている。
ルボックスのB225とスチューダーのA725、ルボックスのB 226とスチューダーのA727。
この違いを聴いていなければ、ルボックスで満足するだろうが、音の記憶は、こういう時には少しやっかいで、ルボックスのB710をいい音だなぁ、と聴いていたとすると、これがスチューダーだったら──、そんなことを考えてしまうはず。

CDプレーヤーでルボックスとスチューダーの音の違いを聴いてなければ……なのだが、聴いてしまっているのだから、どうしようもない。

B&OのBeocord 9000にも惹かれながらも、A710はいつか自分のモノとしたい。
A710を手に入れたら、積極的な意味での録音器として使うのかと問われたら、いま手元にあるミュージックテープを再生するだけになりそうだ。

Date: 6月 28th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その17)

いまのヨーロッパのオーディオマニアがどうなのかはなんともいえないが、1970年代のヨーロッパのオーディオマニアは、少なくとも日本のオーディオ雑誌で取り上げられる人を見る限り、バランス感覚を大事にしているように思われた。

それはオーディオマニアだけでなく、ヨーロッパのオーディオメーカーからも感じとれたことだけに、テープデッキへのバランスを欠いたお金のかけ方は、
その理由を知りたいところだったが、その答(らしきものであっても)を知る人は、周りにはいなかった。

その理由をずっと考え続けてきたわけではないが、時々思い出しては、どうしてだったのだろうかと思いはした。

いまも、これといえるほどの答はわかっていないが、CDが普及して、アナログディスクでも発売されていなかった古いライヴ録音が登場するようになった。

多くは放送局が録音したものなのだが、稀にヨーロッパの聴き手がFM放送をエアチェックしたテープが、マスターになる例がある。

その頃のヨーロッパのFM事情がどうだったのかは、全く知らない。当時のオーディオ雑誌にも、そういった記事は載っていなかった(少なくとも私は読んでいない)。

私が当時住んでいた熊本は、NHKだけしかなかった。民放のFM局は、隣の福岡にはあっても熊本にはなかった。
東京だって、その当時の民放のFM局は東京FMだけだった。

アメリカはすごいと聞いていた。けれどヨーロッパはどうだったのか。日本よりは良かったのではないだろうか。
ヨーロッパには、さまざまな音楽祭が開催されている。そのライヴ中継は、どのくらいの頻度だったのか。
多かったのか少なかったのか。

多かったのではないかと思うのは、ヨーロッパのオーディオマニアがテープデッキを重視していることからだ。

その視点から、B&OのBeocord 8000、その上級機のBeocord 9000を見ると、そういうことだったのか、と私だけなのだろうが納得がいく。

Date: 6月 26th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その16)

ステレオサウンド別冊のHI-FI STEREO GUIDEを初めて買ったのは1977年だった。
その頃、ステレオサウンドは1,600円だった。HI-FI STEREO GUIDEは2,000円と、中学生には買いたくてもすぐには無理で、
しかも田舎の書店にはなくて、バスに乗って片道約一時間、熊本市内の書店で買っている。
田舎のバス代は、電車や都内のバスほど安くはないから、HI-FI STEREO GUIDEを毎号買うのは諦めていた。

そうやって買ったHI-FI STEREO GUIDEは、隅から隅まで読んだ。というか時間があれば眺めていた。
HI-FI STEREO GUIDEとは、カタログ誌。各ジャンルごとに、国内メーカー、海外メーカーの、日本で購入できる全製品が載っている。

モノクロの写真と価格、カタログスペック、海外メーカーならば、どの国なのかも掲載されていた。

とにかく眺めているだけで楽しかった。
気づくことがあった。
海外のオープンリールデッキの価格である。スチューダー、アンペックス、テレフンケンなどのプロ用機器メーカーのオープンリールデッキが高価なのは、意外でもなんでもないが、
フェログラフ、タンベルグ(タンバーグ)のオープンリールデッキが、かなり高価なのだ。

フェログラフのStudio8は1,950,000円、タンベルグのModel 11-1Pが680,000円、Model 10XDが695,000円だった。

フェログラフのスピーカーシステムのS1は153,000円(一本)、タンベルグのFasett Monitorが45,000円(一本)、Studio Monitorが265,000円(一本)なのに、オープンリールデッキだけが、やたら高価だった。

わずかな例でしかないが、ヨーロッパのオーディオメーカーのオープンリールデッキへの意気込みみたいなものが感じられるような気がしていた。
でも、なぜなのかは、その頃の私にはわからなかった。

Date: 6月 24th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その15)

1970年代後半のオーディオ雑誌には、日本のオーディオマニアのリスニングルームだけではなく、時に海外のオーディオマニアのリスニングルーム訪問の記事もあった。

そんなに多くの例があったわけではないが、その頃の私が印象深く思ったことの一つに、ヨーロッパのオーディオマニアのテープデッキにかける率が高いことがある。

システムの価格的バランスも、スピーカーやアンプよりもはっきりテープデッキが高い。スピーカーもアンプもさほど高価なモノではなくても、
テープデッキに関してはプロ用機器に準じるクラスのモノだったりする例を、いくつか見ている。

テープデッキに限らず、オーディオシステムの上流、つまりアナログディスクプレーヤーにしてもチューナーにしても、ここのところに奢ることで、音はずいぶんと違ってくることは、オーディオマニアならば経験していることだろう。

予算に限りがあるならば、価格的にバランスのとれたシステムにするよりも、将来のグレードアップを考えれば、価格的バランスをくずしてでも、プレーヤーやテープデッキに予算をつぎ込みたくなる。

ヨーロッパのオーディオマニアも、そういう考えなのだろうか、と当時は思っていた。
そうなのもしれないし、違うのかもしれない。思うに、テープデッキを奢るのは、録音機器として捉えているからなのだろう。

Date: 6月 7th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

Bell NO.235 1976/9

資生堂が花椿、カネボウがBellだった。どちらもPR誌だ。

先日、ヤフオク!で、Bellを落札した。1976年9月号だ。
五十年前のモノだが、十年ほどしか経っていないくらいの状態の良さ。

こういうものをきちんと持っている人がいるおかげで、手に入れることができる。

1976年9月号は、「黒い瞳はお好き?」と表紙にある。
1976年秋は、資生堂は「揺れるまなざし」だった。

「揺れるまなざし」は小椋佳。
「黒い瞳はお好き?」はグラシェラ・スサーナ。

ヒットしたのは「揺れるまなざし」。
同時期にテレビ・コマーシャルソングとして流れていたが、「黒い瞳はお好き?」を記憶している人はあまりいないだろう。

「揺れるまなざし」はヒットし、このころから資生堂もカネボウも、商品とコマーシャルソングあわせてのキャンペーンを展開するようになったと記憶している。

「黒い瞳はお好き?」は、多くの人の心には残らなかっただろうが、私の心にはしっかりと刻まれた。

「黒い瞳はお好き?」の後に、私は「五味オーディオ教室」と出逢っている。
そしてJBLの4343が表紙を飾るステレオサウンド 41号も手にとっている。

Date: 6月 6th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その14)

Beocord 8000をステレオサウンドのカラー広告で見た時は、B&O、やっぱりすごいと思った。
実物を見たいとすぐさま思ったけれど、そのころ熊本のオーディオ店でB&Oを取り扱っているところはなかった。

カラー広告を何度も見ていた。
デザインもだが、私が驚いたのは、そのサイズもだった。

Beocord 8000の外形寸法はW53.0×H13.0×D30.0cm、重量は7.5kg。

大きい。横幅が50cmを超えている。その大きさ、そのデザインで、B&O以外のコンポーネントの中に置いたら、間違いなく浮いた存在となることは、誰にだってすぐわかること。

Beocord 8000の価格は、355,000円。上級機として後から登場したBeocord 9000は630,000円だった。

同時期のナカミチの1000ZXLが550,000円、1000ZXL Limitedが850,000円だった。

輸入品とはいえ1000ZXLを超える価格。横幅も3mmほどBeocord 8000(9000)の方が大きい。

B&Oのカセットデッキにかける意欲のようなものが、他の機種(BeogramやBeocenter)よりも強く感じられた。

Beocord 8000の登場前から、ステレオサウンドが出していたHI-FI STEREO GUIDEを見ていて疑問に感じていたことがあった。

ヨーロッパのオーディオメーカーは、オープンリールデッキ、カセットデッキ、どちらも高価なモデルを用意していることだ。

B&Oも、そうなんだ、と思っていた。

Date: 5月 14th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その13)

B&Oのオーディオ機器といえば、私の世代、上の世代だとアナログプレーヤーのBeogramシリーズを、まず思いうかべるだろう。
全てのBeogramがリニアトラッキングアームだったわけではないが、Beogramイコール・リニアトラッキングアームのプレーヤーといっていいほど、
あのかっこよさ、洗練さには多くの人が惹かれただろうし、Beogramの似合う空間が欲しいとも思ったことだろう。

Beocordシリーズはテープデッキである。カセットデッキだけでなく、それ以前はオープンリールデッキもあった。

オープンリールデッキのBeocordは写真でしか知らない。
Beocord 5000は、一度実機を見て触れてみたいと思うものの、Beocord 1200、1600、2000あたりはそれほどではなかったりする。

なので私にとってのBeocordはカセットデッキであり、なぜかオープンリールデッキと同じ型番のBeogram 5000に、まず惹かれた。そして、おおっ、と思ったのはBeocord 6000、8000、9000である。

Beocord 8000の前にBeocord 1900や、さらにその前のBeocord 1700、2000には、それほど心ときめなかった。

Date: 5月 6th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その12)

ナカミチの1000だけが大きかったわけではない。
1000IIと同時代のパイオニアのCT-A1も、かなり大きなカセットデッキだった。

1000IIの外形寸法はW52.6×H29.8×D21.9cm、重量17.0kg。
CT-A1は、W42.0×H21.7×D39.0cm、18.0kgと、なかなかのサイズだった。

単体のサイズでは、この二機種には及ばないがテクニクスのRS690Uは、トランスポート部とアンプ部を独立させたセパレート型カセットデッキで、
トランスポートはW48×H19.3×D37.5cm、13.5kg。アンプはW48×H17.3×D37.5cm、8.5kgと二筐体合わせると1000IIよりも大きく重い。

これらのカセットデッキに魅力を感じる人もいれば、私のように、ここまでやると凄いのはわかるけど……、という人もいよう。

大きなカセットデッキにあまり興味を持てなかった私でも、例外的な存在が、B&OのBeocordシリーズである。

Date: 5月 5th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その11)

私にとって、ルボックスのB710、スチューダーのA710は、チューナーにおけるマランツのModel 10B、セクエラのModel と同じ位置付けにあるわけではない。

私の中では、チューナーでいえばアキュフェーズのT104、パイオニアのExclusive F3的な位置ともいえる。

カセットデッキとチューナーと、ジャンルが違うから、こんな位置付けをしても、あまり意味はないとは思いつつも、それではカセットデッキで、
マランツ、セクエラに匹敵するモノとなると、ナカミチの1000ZXL、もしくは1000ZXL Limitedかと思うけれど、
何かちょっと違うな、と感じるところもある。

カセットテープ(デッキ)の限界まで追求している点では、確かにそうだと思う。でも1000ZXLの、あの大きさを見ると、その点が、Model 10B、Model 1と違うと感じるところにつながっていくように思う。

ナカミチの1000が大きくしようとして、あのサイズになったのではなく、性能を追求していったら、あのサイズになったことはわかっている。

それでも……という抵抗感が私にはある。それはカセットテープのための機械だから来ていることかもしれない。

カセットテープと書いてきているが、ここでのカセットテープとは、フィリップスが開発したコンパクトカセットのことである。

テープをなんらかのケースに収めたものの総称がカセットテープであり、フィリップスのコンパクトカセット以前に、RCA、ソニーから独自のカセットテープは出ていた。

カセットテープとは、コンパクトカセットのことであり、コンパクトとつくことが示すように、それまでのカセットテープよりもずっと小さくなっている。

Date: 5月 3rd, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その10)

何度も書いている瀬川先生が、熊本のオーディオ店に定期的に来られて開かれていたオーディオ・ティーチイン。

毎回、土日二日連続で行われていて、最後の回となったのはトーレンスのリファレンスを聴く内容だった。前日の土曜日の内容はカセットデッキだった。

この時、やっとカセットデッキのクォリティが、他のオーディオ機器と同じ評価軸で語れるようになってきた──、と話された。

同じことは、FMfanでの連載でも書かれていた。瀬川先生によると、それまでのカセットデッキの評価は、カセットテープだから、この程度だろうという、他のオーディオ機器よりも一段低いところで語られていた、ということだ。

それがようやく1980年ごろから変ってきた、と。

オーディオ・ティーチインのカセットデッキとカセットテープの回も、もちろん行っている。なのに、どのカセットデッキを聴いたのか、カセットテープはどれだったのか、詳細をほぼ全て忘れてしまっていて、どうにも思い出せない。

オーディオに関する限り記憶力には自信を持っているのに、この回だけは、すっぽりと抜け落ちているのは、カセットデッキ(テープ)への関心が薄いためなのだろう。

そして、この時期、ルボックスのカセットデッキ、B710が登場している。

Date: 4月 27th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その9)

こうやってカセットデッキのことを振り返って書いていると、気づくのは、チューナよりもカセットデッキには関心があまりなかったことだ。

いいなぁと思っていたカセットデッキは、いくつかある。思い出すままにあげていくと、
テクニクスのRS-M88、ラックスの5K50Mなどがそうだけど、どうしても手に入れたいという気持は持てなかったことに改めて気づく。

そんな私でもスチューダーのカセットデッキが、今でも欲しいと思うのは、
(その2)で引用した瀬川先生の文章がなせるわざといえる。
なのにルボックスではなくスチューダーなのかといえば、CDプレーヤーで、ルボックスとスチューダーの音の違いを聴いて知っていたからだ。

ルボックスからB225が登場し、その音を聴いた時は唸ってしまった。CDからも、こういう音が出るのか、と。
しばらくしてB225のスチューダー版A725が登場した。

B225をベースにさちモデルなのに、そこにはコンシューマー用とプロ用機器の違いが、やはりある。

B225はD/Aコンバーターに、フィリップスのTDA1540を採用していた。14ビット仕様だった。
16ビット仕様のTDA1541が出て、B225はB226へとヴァージョンアップした。

スチューダーのA725もA727へとアップした。ここにもルボックスとスチューダーの違いは、やはりあった。

だからカセットデッキもルボックスのB710ではなくて、スチューダーのA710が欲しい。

Date: 4月 26th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その8)

ナカミチのカセットデッキに熱くなれなかった私は、カセットデッキ(カセットテープ)そのものに熱くなれなかっただけかもしれない。

いま所有しているカセットデッキは、ヤフオク!で落札したヤマハのK1dのみ。
ヤマハのK1は、いいなぁと思っていたけれど、憧れの機種だったわけではない。
K1dは、型番末尾のdが示すようにdbx対応である。

1970年代の終りごろ、オーディオメーカー各社から、いくつかのノイズリダクション方式が登場した。

それまでノイズリダクションといえばドルビーしかなかったところに、どれがいいのか迷う(わからない)ほどに、ノイズリダクションが出てきた。

カセットデッキに搭載されもしたし、外付けのタイプも多かった。
ドルビーもそれまでのBタイプだけでなくCタイプも出してきた。

個人的にはdbxに関心があった。この頃、dbxは勢いがあったように感じていたし、ドルビーの牙城を崩すかも──、そんなことも思ったりしたが、ドルビーは強かった。

dbxに関心があったのは、菅野先生録音のオーディオラボからdbxを採用したプログラムソースが出ていたことが大きい。

ステレオサウンド 60号掲載の菅野先生のリスニングルームの棚には、K1dがあったことも、理由として大きい。

欲しいと強い気持があって落札したわけではなかった。カセットデッキが一台欲しいと思ってヤフオク!を眺めていたら、
たまたまK1dが出品されていて、応札する人も現れずすんなり手に入れることができた。

Date: 4月 23rd, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その7)

スカリー(Scully)のオープンリールデッキ、280Bもそうだった。
菅野先生がオーディオラボでの録音に使われていた280Bも、ナカミチのカセットデッキのように、
280Bで録音したテープは、280Bで再生すればいい音なのだが、同クラスの他社のオープンリールデッキで再生すると冴えない音になってしまう、と菅野先生から聞いたことがある。

実際、どのくらい違うのか、音を聴いたわけではないが、オクタヴィアレコードからオーディオラボのSACDが発売になった時の話を聞いている。

オーディオラボのマスターテープの保管場所がようやくわかり、千葉のあるところまで行かれたとのこと。テープの保管状態は良かったそうで、急いで東京に持ち帰り、再生してみたところ、冴えない音だったそうだ。

いろいろ試してみてもダメで、菅野先生に相談しに行ったところ、返ってきたのは、スカリーで録音したテープは、スカリーで再生しなければならない、ということだった。

とはいえ、その時点で菅野先生のところにも280Bはない。スチューダーやアンペックスほどメジャーなデッキではなかったこともあり、探すのも大変だった、とのこと。

やっと、あるレコード会社の倉庫に眠っている一台が見つかり、再生してみると、昨日録音したかのような生き生きとした音が鳴ってきたそうだ。

こういう例もある。なのでナカミチの、こういう面を批判する気はほとんどないが、
オープンリールテープと違い、カセットテープは誰かとやりとりすることも少なくないはず。

自分で録音したテープを誰かに渡す。その逆もある。そんな場合、どうだったのだろうか。
自分で録音したテープは自分で聴く──、それだけであればナカミチのデッキは優れた機械だろうが、カセットテープの性質を考えると、それでいいのか、と思うところはある。

スカリーの280Bは自己完結していた機器なのだろう。ナカミチのカセットデッキも、そうなのか。

Date: 4月 12th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その6)

オーディオマニアの中には、ナカミチマニアもいる。
ナカミチに限らず、JBLマニアもいるし、他のブランドのマニアもいるが、
ナカミチマニアが、いちばん熱心というか、やや言葉は悪いが狂信的なマニアではないだろうか。

ナカミチの全機種を蒐集している人もいる。
同じ歳の友人Aさんも、ナカミチが好きだった。
彼はハタチごろ、秋葉原の光陽電気でアルバイトをしていた。
ナカミチからDragonが発売になっていた頃である。

彼はDragonが好きだった。もちろん自分でも購入していたし、お客にも熱心に勧めたそうだ。
個人でDragonを一番売った男とのこと。

Dragonに興味がある客、買いたそうな客はすぐにピンとくるそうだ。その人に熱心に説明する。

Dragon好きの男が、Dragonを好きになりそうな、好きな人を相手に声をかけるのだから、かなりの台数を売り上げたのもわかる。

フラッグシップモデルとして1000があり、その下に700。
一般的なコンポーネントのサイズのデッキとして500シリーズ、600シリーズがあり、
数字の型番から外れたモデルとしてDragonを出してきたナカミチ。充実したラインナップを形成していた。

Aさんは、Dragonをカッコいいと熱く語っていた。

私には理解できないものの、ナカミチはマニアを熱くさせる何かを持っていたのだろう。ナカミチマジックと呼んでいいのかもしれないし、
ナカミチマジックは、音の面でも言うことができた。

ナカミチのカセットデッキで録音したテープは、ナカミチのカセットデッキで再生する分には、
確かにいい音なのだが、ナカミチで録音したテープを他社製のカセットデッキで再生、
反対に他社製のカセットデッキで録音したテープをナカミチのカセットデッキで再生した音は、
意外なほど冴えない場合が多い。

Date: 4月 12th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その5)

メタルテープが登場した時、オーディオマニアとしてどんな音が聴けるんだろう、と私だって興味を持った。

TDKからMA-R、ソニーからMetal Masterが登場してくると、聴いてみたいという気持は強くあったけれど、
どちらのメタルテープも、未だに聴きていない。

ヤフオク!に出品されている未開封のモノ、MA-RもMetal Master、どちらもかなり高額。
買えない金額ではないものの、そこまでして……という気持が、私の場合、強い。

ナカミチの680ZXを、もしこれから先手に入れることがあったら、MA-R、Metal Master、どちらかは高価でも落札するだろう。

680ZXは標準速だけでなく半速での録音・再生ができる。同時代のマランツのカセットデッキは倍速に対応していた。

音のことだけをとれば、倍速での録音と再生となるが、私の興味は少し別のところにあって、
680ZXとMA-RかMetal Masterとの組合せだと、半速で、どれだけのクォリティを維持できるのか。ここに興味が、いまでもある。

メタルテープには、どのメーカーからもC120は出ていなかった。C60だけのメーカーもあったし、C90までしかなかった。

半速だとC90で片面90分録音できる。CDよりも長い収録時間。

だからといって、その倍になった収録時間をどう活かすのかをあれこれ考えていたわけではない。
単純に、すごいなぁ、どれだけの音質なのだろうか、そこへの興味だけである。

それを確かめたいだけなのだが、私にとってナカミチのカセットデッキといえば、680ZXだけとなる。