GAS THAEDRAがやって来る(その5)
コーネッタを、
マークレビンソンのLNP2とスチューダーのA68で鳴らしたい、と欲求は、
いまもかなり強く持っている。
けれど、以前から思っていることの一つに、
五味先生はタンノイ・オートグラフをマッキントッシュのC22とMC275で鳴らされていた。
この組合せがメインだったし、
晩年は、カンノアンプの300Bシングルで鳴らされてもいた。
C22とMC275はどちらも管球式である。
トランジスターアンプで、C22とMC275にかわる組合せは、なんだろうか。
中学生のころから、そんなことをあれこれ想像していた。
ステレオサウンド 47号の「オーディオ巡礼」のなかで、
五味先生は、こう書かれている。
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南口邸ではマッキントッシュではなくスレッショールドでタンノイを駆動されている。スレッショールド800がトランジスターアンプにはめずらしく、オートグラフと相性のいいことは以前拙宅で試みて知っていたので南口さんに話してはあった。でも私は球のマッキントッシュを変える気にはついになれずにきたのである。
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スレッショルドの800Aは、そのころの私にとっては憧れのパワーアンプだった。
A級動作で200W+200Wの出力を誇る。
同時代の日本のA級アンプの代表的存在であったパイオニアのExclusive M4が50W+50Wだった。
価格が違うにしても、アメリカと日本という国の規模の大きさが、
そのまま出力にもあらわれている──、とそう感じたものだった。
そのころは可変バイアスによる動作だ、ということはまだはっきりとしていなかった。
なので素直にA級動作と信じていた。
とにかくスレッショルドの800Aは、理想のアンプに近かった存在ともいえた。
オートグラフをトランジスターアンプで鳴らすのなら、800A!
それしかない!、と思えていた時期が私にはあった。
800Aの音は、個人宅で二回(違う方のリスニングルーム)、
熊本のオーディオ店でも何度か聴く機会があった。
800Aを手に入れようとしたことがあった。
それでも、それは800Aをいいアンプと思ったからで、
800AがMC275の代り、というか、MC275のトランジスター版だと思っていたわけではない。
五味先生もそうだったはずだ。
だから、C22とMC275のトランジスター版といえる組合せは、どういうものがあるのか。
マッキントッシュのC28とMC2105がそれにあたる、とはどうしても思えなかった。