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Date: 1月 23rd, 2011
Cate: 4343, JBL

4343とB310(もうひとつの4ウェイ構想・その8)

4ウェイ構成のスピーカーシステムで、もっとも重要、と昔からいわれているのは、ミッドバスである。

あえていうことでもないと思うが、ここで言う「4ウェイ」とは、
瀬川先生の提唱されたもの、
JBLの4343、4350などの同じもの、
岡先生のいわれる2ウェイの両端の帯域を拡張したもの、のこと。

スペンドールのBCIIIのように、3ウェイのBCIIIにさらにウーファーを足したもの、とか、
3ウェイにスーパートゥイーターを足したものではなく、ミッドバス帯域に専用のユニットのもつモノのこと。

この種の4ウェイで、なぜミッドバス(中低域)のユニットが重要となるのか。
もちろん、音楽のメロディ帯域を受け持つ、ということもある。
でも、オーディオ的にいえば、
それ以上に、このミッドバスのユニットのみが、40万の法則に従っている、ということだ。

このことはふしぎと誰も指摘していないことだが、他のどんな構成のスピーカーでは、
ウーファーやトゥイーターはもちろん、スコーカーでも、40万の法則を満たすことは、まずできない。
4ウェイのスピーカーシステムにおいて、ミッドバスだけが、そうである。

40万をミッドバスの下のカットオフ周波数300Hzで割れば、上限は約1.3kHzになる。
ほぼ4343のミッドバス(2121)の受持帯域に重なる。

このことに気がつけば、瀬川先生がフルレンジからスタートされ、ユニットを段階的に足していくことで、
帯域の拡大を実現されてきたことを、少し違う視点から眺められるようになる。

Date: 1月 22nd, 2011
Cate: 4343, JBL

4343とB310(もうひとつの4ウェイ構想・その7)

スピーカーシステムとして完成させるときに、4ウェイという形態はそうとうに難しいことなのだろうか。

井上先生はマルチウェイのスピーカーは、方程式を解くのに似ている。
2ウェイなら二次方程式、3ウェイなら三次方程式、4ウェイなら四次方程式で、
次数が増えてゆくにつれて、解くのは難しくなるのと同じだ、とよく言われていた。

一方で、岡先生はすこし違う意見だった。
4ウェイよりも、むしろ3ウェイのほうがクロスオーバー周波数を、
どこにとるかによって、かえって難しくなることもある。
4ウェイ、それも2ウェイをベースにして、
それの低域と高域を拡張するためにユニットを2つ足すかたちの4ウェイであれば、
むしろ3ウェイよりもシステムとしてまとめやすい、といったことを言われていた。

井上先生と岡先生の意見のどちらが正しいか、ということではなくて、
4ウェイにすることによって生じる難しさもあり、
4ウェイにすることによってかえって簡単に解決できることもある、ということだろう。

私の中には、4ウェイ絶対論、とまで書くと大げさすぎるけれど、
それでも4ウェイ構成に対しては、負の印象はほとんどない。

それはやはりJBLの4343の存在があり、瀬川先生のフルレンジから始まる4ウェイ構想を読んできたからだ。

なにがなんでも4ウェイでなければならない、とは言わない。
それでも、十分につくりこまれたモノであれば、4ウェイの優位性を認めたい、という気持は残っている。

でも、いまや4343のJBLからも、4ウェイが消えていく時代だ。

Date: 1月 22nd, 2011
Cate: 4343, JBL

4343とB310(もうひとつの4ウェイ構想・その6)

JBLのカタログには、4348はまだ残っている。

センタースピーカー用のLC2CHと4348だけが、JBLのラインナップで4ウェイ構成だ。
つまり実質的に4348、1機種のみ、といってもいいだろう。
その4348も、いまオーディオ雑誌で取り上げられることも極端に少なくなっている。

4365、その前に登場したS9900、それにDD66000の取り扱われ方と比較すると、
残っている、という表現が、かなしいかな、ぴったりという感じだ。
(いましがたハーマン・インターナショナルのサイトを見たら、生産完了品につき流通在庫のみ、とあった)

バイアンプ仕様の4350を別格とすれば、4341から始まったJBLのスタジオモニターにおける4ウェイ・システムは、
4343でピークを迎え、そのあとはゆっくりと消えていくような印象すら受ける。

4348のスタイルを見ると、あきらかに4343を意識している、と思う。
スラントプレートの音響レンズを、JBLはもう採用することはないはず。
ゆうえに4343の、インパクトあるデザインは、もうJBLのスピーカーには望めないだろう。

それでも4348は、バスレフダクトの数と位置、そしてインラインのユニット配置、
それにミッドバスフレームの形、こういうところに4343を、わずかとはいえ感じさせる。

だからかえって、4343と、頭の中でつい比較してしまう。

そういうデザインのことは措いて、音に関していえば、
以前も書いたように4343の後継機は4348だろう。
4344よりも、ずっと4343をうまくリファインしたところがあって、
鳴らそうと思えば、1970年代後半の、あの時代の音の片鱗を確実に聴かせてくれる。

4348が、さらに4365の技術をベースにして、
4368といった型番のスピーカーシステムとして再登場したら……、そういったことも考えたくなる。

けれど、現実には、もうJBLから4ウェイのスタジオモニターは、出ない気がしてならない。

Date: 1月 21st, 2011
Cate: 4343, JBL

4343とB310(もうひとつの4ウェイ構想・その5)

昨秋登場したJBLの3ウェイ・スタジオモニターの4365の評価は高い。

見た目のプロポーションは決していいとは思っていないが、音は、うまくまとめられている。

オーディオ機器のプロボーションは、とても大事であって、ときに仕上げよりも気になることがある。
たとえば、最近の製品でいえば、ラックスのSQ38uと同じくラックスの新しいアナログプレーヤーのPD171。

この2機種に関しては、デザインが、というよりも、プロポーションがおかしい、と思う。
どちらもずんぐりして、鈍重な感じが漂っている。
プリメインアンプとアナログプレーヤーという、どちらも必ず頻繁に手をふれるもの。
目につくところに、どちらも置くモノにも関わらず、
なぜあえて、こういうプロポーションにしたのだろう……。

しかもどちらも型番からわかるように、以前のラックスを代表してきたモノである。
とくにPD121は、木村準二氏による素晴らしいデザイン(瀬川先生のデザインと勘違いされている方が多いけれど)。

テクニクスのSP10と同じモーターを使いながら、SP10のすこし野暮ったいデザインと正反対の、
あれだけ洗練されたデザインに仕上げたのと較べると、
同じメーカーのアナログプレーヤーとは思えないほど、
あえていえば、あの艶めいた漆黒のレコード盤を演奏するものとは思えない野暮さである。
PD121の洒落気は、みじんもない。

SQ38uについても同じだ。
なぜ同じ型番で、ああいうふうにしてしまったのだろうか。
まだ別の型番、それもSQ38をまったく連想させないような型番だったら、まだしもなのに。

その、大切なプロポーションで不満を感じる4365だが、音を聴くと、
もうJBLは4ウェイをつくることはないんだろうな、と感じてしまう。

Date: 1月 21st, 2011
Cate: 4343, JBL

4343とB310(もうひとつの4ウェイ構想・その4)

瀬川先生の「本」づくりで、けっこうな量の文章を入力したが、
意外にもJBLのユニットの音質そのものについて書かれているものは、少ない。

スイングジャーナル、1971年8月号とステレオサウンド 35号、ベストバイの特集の中に見つかるくらいだ。

ステレオサウンドのベストバイは、いまと違い、スピーカーユニットも選ばれている。
フルレンジ、トゥイーター、スコーカー、ウーファー、ドライバー、ホーンと分けられ、
それぞれの中から選ぶという形だが、
フルレンジ、トゥイーター、スコーカー、ウーファーではJBL以外のユニットも瀬川先生は選ばれているが、
ことドライバーに関してはJBLだけ、である。
ウーファーではアルテックの515Bについて書かれているのに、アルテックのドライバーは選ばれていない。
エレクトロボイスもヴァイタヴォックスのドライバーについても、同じだ。

だから当然ホーンも、JBLだけの選択となっている。
しかもJBLのドライバーも、プロ用の2400シリーズのみの選択だ。
(ウーファー、トゥイーターに関しては、JBLのコンシュマー用も選ばれている)
242024402410の3機種だけ。

おもしろいことに、この3機種は、岩崎先生も選ばれている。

この3機種については、それぞれ瀬川先生の書かれたものを読んでいただきたいが、
2440のところには、やはり「2420より中〜低域が充実する」と書かれている。
反面、2420よりも「中〜高域」で少しやかましい傾向」とある。

Date: 11月 6th, 2010
Cate: 4343, JBL

4343とB310(もうひとつの4ウェイ構想・その3)

こちらの4ウェイは、3ウェイにスーパートゥイーターを追加した、いわば3.5ウェイ的な構成ともいえる。
フルレンジから構想がはじまる4ウェイと区別するために、こちらのほうは3.5ウェイと呼ばせてもらう。

この3.5ウェイの中域は、先に書いたように2420と2397ホーンの組合せ。
ここで疑問がひとつある。

2397は、2440にしろ2420にしろ、そのままでは取りつけられない。
スロートアダプターが必要とする。
2420だと、たしか2328というスロートアダプターを使う。
2420だと、この2328に、さらに2327という中型のものを用意しなければならなかったはずだ。

とうぜん、このことは瀬川先生はご存知だったはず。
スロートアダプターを2段重ねにしてまで、の2420の選択なのか。

ウーファーとのクロスオーバー周波数は800Hz。2420でもホーンが2397だから問題はないだろうけど、
より大型のダイアフラムの2440のほうが、より安心して使える、という心理的な面もある。

しかもウーファーは2231Aを2本使うという構想だから、
頭の中で考えるかぎりは、2440が向いているに決っている。

なのに2420である。
なにも価格の制約がある組合せでもない。

ちなみに、当時、2420は1本91,000円。2440は150,000円していた。
でも2420にはスロートアダプター2327がさらに必要になるから、2327の分だけ価格差は縮まる。

瀬川先生は、どういう音質的なメリットから2420を選択されたのだろうか。

Date: 10月 25th, 2010
Cate: 4343, JBL

4343とB310(もうひとつの4ウェイ構想・その2)

なぜなんだろう……、と考えてまず浮んだのは、
High Technic シリーズVol. 1にも書かれていること。

フルレンジからはじまる4ウェイシステムでは、最終的に混成部隊となり、音色の統一感においては、
たとえばJBLの純正スピーカーユニットによる3ウェイにはかなわない。

だから帯域の広さではすこし不満を感じながらも、JBL(LE15A+375+537-500+075)でまとめられている。

だが、そのころとSOUND SPACEの発売時とでは、かなり状況が異る。
JBLからはプロフェッショナル・シリーズのユニットも多数用意され、
すでにJBLから4343、4350という4ウェイシステムまで出ている。

ウーファー(2231A)を2本並列使用であれば、4350と同じユニット構成で4ウェイが組める。
なのに、なぜミッドバスがないのだろうか。

しかも、もうひとつの疑問がある。ドライバーが2440ではなく2420だったことだ。

3ウェイで、ウーファーとのクロスオーバーが800Hz、しかもウーファーはダブル。
それに瀬川先生が使われていた3ウェイも375である。
それまでの4ウェイシステムでは、High Technic シリーズVol. 1に書かれているように175DLHを使われていた。

当時のステレオサウンドに載っている瀬川先生のリスニングルームの写真には、
ウーファー用のエンクロージュアのうえに、名残なのか、175DLHが下向きに立っているのが写っている。

ステレオサウンド 27号(1973年)掲載の「良い音は、良いスピーカーとは?」の第4回で、
このJBLの3ウェイシステムについてすこしふれられている。

ウーファーとドライバーのクロスオーバー周波数は700Hz、ドライバーとトゥイーターのあいだは8kHzである。

Date: 10月 19th, 2010
Cate: 4343, JBL

4343とB310(もうひとつの4ウェイ構想・その1)

HIGH-TECHNIC SERIES-1は1977年に発売された。
2年後にSOUND SPACEが出た。

1979年ごろは、ステレオサウンドに「ひろがり溶け合う響きを求めて」が連載されていた。
50号から54号に載っている(52号休載)。

SOUND SPACEという本のタイトルからも想像がつくように、
この本で紹介されている組合せは、
すべて部屋(リスニングルームであったり、リビングルーム、書斎、寝室など)とのかかわり合いを示している。

「華麗なる4ウェイシステムの音世界」とつけられた瀬川先生の組合せは、10畳の洋室──、
これは自らのリスニングルームのあり方をベースにしたもので、
壁は瀬川先生のリスニングルームと同じ漆喰塗り。床はイタリアタイル、天井も漆喰塗りと、いうもの。
そこにアルフレックスのソファをL字型に配置し、
スピーカーとパワーアンプを収めたラックは、部屋の長手の壁に置かれる。

肝心のスピーカーだが、JBLのユニットを中心に組んだもの。
低音域は2231Aをダブルで使用。中音域は2420ドライバーと2397ホーンの組合せ。
高音域は、やはり2405。そしてその上にテクニクスのリーフトゥイーター、10TH1000をつけ加えられている。

これらのユニットをすべて専用のパワーアンプでドライブするマルチアンプ構成という、
そうとうに大がかりなシステムだ。

アンプはすべてマークレビンソン。
コントロールアンプはML6。
パワーアンプは2231A、2420用にML2L、2405、10TH1000用にML3Lとなっている。
これについては、好みに応じて帯域分担を交換させてもいいと書かれている。

エレクトロニッククロスオーバーネットワークはLNC2Lで、クロスオーバー周波数は800Hzと8kHz。
これだけで2台のLNC2Lを使う(LNC2Lは2ウェイ専用なので)。

となると10TH1000はどうなるかというと、LCネットワークで分割するか、
LNC2LにOSCモジュールを使いすれば、3ウェイ仕様にできる。ただしスロープ特性は本来18dB/oct.だが、
追加分のクロスオーバーのみ6dB/oct.になる。

とにかく4ウェイではあるが、High Technic シリーズVol. 1のフルレンジからはじまる構想とは、あきらかに違う。
だから、正直、この記事を読んだとき、驚いた。なぜだろう? という疑問もわいた。
この組合せに関する詳細をもっと知りたい、と思った……。

Date: 10月 16th, 2010
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その18)

フルレンジユニットをなにか用意する。できれば素直な音のモノがいい。
このフルレンジユニットのインピーダンスが8Ωなら、直列に1mHのコイルをいれると、
6dB/oct.のカーヴで、カットオフ周波数はだいたい1.2kHzになる。

同じ1.2kHz以上をカットするのに、アンプ側にフィルターをもうける方法がある。
同じカットオフ周波数にしても、ネットワークでカットした音と、アンプ側のフィルターでカットした音を比較する。

ほぼ同じ周波数特性になっているはずだが、出てきた音は、似てはいるけれど、違うところもある。
できのよいフルレンジユニットがもつ、ある種の素直さと、そのことに関係してくる情報量にちがいが出る。

音楽のメロディの音域を得意とするフルレンジのよさをできるかぎり損なわず鳴らすには、
やはりコイルをいれるのはできるだけさけたい。

フルレンジユニットのよさは、パワーアンプとのあいだにネットワークがないこと──、これは無視できない。

こんなふうにかんがえてゆくと、瀬川先生の4ウェイ構想で、
ミッドバスにもネットワークを使われない理由が、浮びあがってくる。

そしてフルレンジユニットが中心にあることもはっきりしてくる。
4341(4343)とのわずかな違いもはっきりしてくる。

もうひとつはっきりしてくることは、このフルレンジを中心とした、ということにおいて、
瀬川先生と井上先生のスピーカに対しての共通点だ。

Date: 10月 16th, 2010
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その17)

ウーファーにだけ独立したパワーアンプを用意するバイアンプドライブでなく、
ミッドバスまでマルチアンプドライブとされたことと、
4ウェイ構想をフルレンジユニットからはじめることは、
瀬川先生はふれられていないが、密接に関わっていると考えたほうがいいと思っている。

瀬川先生はマルチアンプの方が調整が容易で失敗が少ないため、と書かれている。
それだけとは思えない。

フルレンジからはじめるということは、パワーアンプとフルレンジユニットのあいだにはネットワークが介在しない。
とくに音楽のメロディの音域を受け持つユニットが、パワーアンプと直結されることの、音質的なメリットは大きい。

フルレンジからはじまり、フルレンジの音域をひろげるように発展していく瀬川先生の4ウェイ構想は、
フルレンジの音の特質の、ほんとうにおいしいところだけを活かしていくことでもあろう。

4340と同じバイアンプドライブでは、
ミッドバス(フルレンジ)に対してハイカットフィルターがパワーアンプとの間にはいる。
12dB/oct.のハイカットフィルターはコイルが直列にはいり、コンデンサーが並列にはいる。
4341(4343)では、1.7mHのコイルがはいっている。

この直列に挿入されるコイルを取り除いたマルチウェイのスピーカーシステムは、いくつか存在している。
よく知られるところではダイヤトーンの2S305である。
1.5kHzのクロスオーバー周波数の2ウェイ・システムだが、ウーファーにはネットワークはいっさい介在しない。
JBLの3ウェイのブックシェルフ型の4311もウーファーにはネットワークはない。
1990年代ごろのモダンショートもそうだった(輸入が再開されている現在の製品の詳細については知らない)。

Date: 10月 15th, 2010
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その16)

瀬川先生の4ウェイ構想を整理しておくと、
ウーファーはスペースのゆるすかぎり大口径のものを、ということで、38cm口径を選択。
ウーファーの重い振動板に、音楽のメロディの音域を受け持たせたくないのと、
小〜中口径のフルレンジの得意とする帯域を活かすために、
ウーファーとミッドバス(フルレンジ)のクロスオーバー周波数は100Hzから300Hzの範囲に。

フルレンジは口径によって1kHzから2kHzまで受けもたせ、
ミッドハイにはJBLの175DLHもしくは同等のホーン型を、そして8kHz以上はスーパートゥイーターに。
ネットワークの使用はミッドハイとスーパートゥイーターのところだけ。

こう書いていくと、JBLの4343に近い構成だということがわかる。
High Technic シリーズVol. 1にも書かれているように、
JBLの4ウェイのスタジオモニター・シリーズが発表されたとき、
「あれ俺のアイデアが応用されたのかな? と錯覚した」とある。

4343よりも、その前身の4341にはバイアンプドライブ専用モデルの4340があった。
ウーファーとミッドバス間のLCネットワークがないこの4340は、4343(4341)より、
瀬川先生の4ウェイ構想に近いスピーカーシステムである。

にもかかわらず4340ではなく、ネットワーク仕様の4341を選ばれたのは、
自宅でアンプの試聴もしなくてはならないため、である。

それにして4340、4343にしても、瀬川先生の4ウェイ構想に近い。
ウーファーは、当時のJBLのウーファーのなかでは、もっともf0の低い2231A。ミッドバスは25cm口径の2121。
ミッドハイは2420に音響レンズつきのホーンの組合せ。形状は大きくちがうが、175DLHも音響レンズつき。
スーパートゥイーターは2405。

4341(4343)がもし登場してなかったら、JBLのユニット群からほぼ同じユニットを選択され、
自作の4ウェイを実現されていたかもしれない。
そして、ウーファーだけでなくミッドバスまではマルチアンプドライブされていたと思う。

Date: 10月 15th, 2010
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その15)

この4ウェイ構想にいまも惹かれるのは、
フルレンジからスタートでき、すこしずつ段階を踏んでシステムを構築できるところがあるからだ。

オーディオのキャリアのながいひとで、腕にも自信があり、最初から予算にも余裕がある人なら、
いきなり4ウェイのシステムに取りくむのもいいけれど、
すこしでも不安を感じる人は、フルレンジからはじめたほうがいい。

スピーカーシステムの調整において、フルレンジスピーカーを鳴らした経験があるかないかは、
あとになってあらわれてくる。勘どころのつかみかた、とでもいおうか、
そういうところに違いがあらわれてくるように感じている。

だから、もしいま瀬川先生のこの構想に取り組もうという人がいたら、
予算が最初から十分にあっても、まずはフルレンジからはじめたほうがいい、とすすめる。

フルレンジ一発からはじめ、その次にトゥイーターを加える。
ここでは良質のLCネットワークとアッテネーターを使う。

フルレンジユニットにトゥイーターを加え、高音の領域を拡大するということは、
ほぼ、楽器の倍音の領域を補強すること、といいかえていいだろう。
これは重要な経験となる。
クロスオーバー周波数は、選んだトゥイーターの種類によって大きく違ってくるが、
2kHzから8kHzの範囲になる。

つぎの段階でウーファーを追加して、ここでマルチアンプドライブへと発展していく。
クロスオーバー周波数はさきにも書いたように100Hzから300Hzの範囲にする。
ここでカットオフ周波数をあれこれ試してみてほしい。
同じ周波数にしたり離してみたり、オーバーラップさせてみたり、
エレクトロニッククロスオーバーネットワークを使うことのメリットを最大限に利用する。
誰かが見ているわけでも聴いているわけでもないから、大胆に思いつくかぎりの設定を試したい。

最後にミッドハイを加える。
クロスオーバー周波数は1kHz付近と8kHz付近。
とうぜんだが、ここでスーパートゥイーター用のネットワークはつくりかえることなる。

Date: 10月 15th, 2010
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その14)

ミッドバスとミッドハイ間もマルチアンプドライブする理由として、
自作の場合、失敗が少なくなるから、とされている。

マルチアンプドライブはたいへんそうに思えるが、自分だけのスピーカーシステムを構築していく上では、
マルチアンプの方がネットワークでやるよりも、やりやすい面がある。

たしかにパワーアンプの台数は増え、システム全体の規模は大きくなるが、
スピーカーの設計・調整に必要なクロスオーバー周波数の設定、スロープ特性の設定は、
エレクトロニッククロスオーバーネットワーク次第のところが多少あるものの、
自由度は比較にならないほど高く、試行錯誤もどれだけでも可能になる。

LCネットワークの設計ではスピーカーユニットのインピーダンス特性にも十分な配慮が必要となるが、
マルチアンプドライブでは無視できる。
そしてクロスオーバー周波数もツマミひとつで自由に変えられる。
できれば、クロスオーバー周波数ではなく、
それぞれのユニットのカットオフ周波数が個別に設定できるもののほうが、ずっといい。

たとえばウーファーのハイカット周波数を200Hzにしたからといって、
なにもミッドバスのローカット周波数も200Hzに合わせなければならない、というものではない。
200Hzでうまくいくこともあれば、250Hzにしたほうがよかったり、
さらには300Hzにして、スロープ特性も変えてみたほうがいいこともある。
もっといえばミッドバスのローカットを200Hzよりも低い値にして、オーバーラップさせるのもあり、だ。

こういったことをLCネットワークでやろうとすると、コイルやコンデンサーをいくつも用意して、
そのたびにネットワークをつくりかえる手間がかかる。

それにこまかいことを書けば、つくりかえるたびにハンダづけをやりなおしていたら、
熱によって部品は、多少なりとも劣化していく。そのたびに新品の部品を購入する……。
そうなると、意外にもマルチアンプドライブの方が最終的な費用は抑えられることもあろう。

Date: 10月 15th, 2010
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その13)

瀬川先生のこの構想では、ウーファーとミッドバスのあいだ、
ミッドバスとミッドハイのあいだにはLCネットワークを介さずにマルチアンプドライブ、
スーパートゥイーターとミッドハイのあいだにのみネットワークが介在する。
つまり6チャンネル分のパワーアンプを使うことになる。

ウーファーとミッドバスにネットワークをつかわないのは、
クロスオーバー周波数を自由に低い周波数に設定するためである。
瀬川先生は、高くても300Hz、できれば150Hz以下にしたいと書かれている。

4343が300Hz。LCネットワークでシステムを構成するには、これより下のクロスオーバー周波数をもってくるのは、
LCネットワークの設計上、そうとうに無理が生じる。
300Hzでも、 LCネットワークにとってはかなり低い周波数で、ネットワークの設計面からいえば、
ウーファーとミッドバスのクロスオーバー周波数は、もうすこし高くしたいところ。
最低でも500Hzくらいにまであげたい。だがそんなことをしてしまったら、ミッドバスを追加する意味合いが薄れる。

ミッドバスの存在を十分に活かすには、
いっそマルチアンプドライブにクロスオーバー周波数を自由に設定できるようにしたほうがいい。

瀬川先生の話は、既製品のスピーカーシステムに関してのもではなく、
あくまでも自分でつくる自分のためのスピーカーシステムの話だから、
ウーファーとミッドバスのクロスオーバー周波数を、
LCネットワークにすることで中途半端な値で妥協するくらいなら、
豊富な既製品のスピーカーシステムが揃っている時代において、わざわざ自作をする意味はなくなってしまう。

やはりウーファーとミッドバス間にネットワークは使わない。

Date: 10月 14th, 2010
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その12)

16cmのフルレンジならば2kHzあたりぐらいまで、
20cmかそれよりも口径が大きくなると、1kHzよりもすこし上の周波数まで、ということになる。

それより上の帯域に、瀬川先生はJBLの175DLHを選択されている。
ただし175DLHでは中低音域とのつながりには問題はないものの、最高音域がそれほどのびていない。
その足りないところ(8kHz以上)を、スーパートゥイーターに受け持たせる。

瀬川先生の4ウェイ・システムを簡単に説明すると、こんなところになる。
実際にこの構想による4ウェイ・システムを使われていた(試されていた)時期がある。

スピーカーユニット、各帯域でいろいろ試されたようで、
ウーファーはパイオニアのPW38A、JBLのLE15A、
ミッドバスには、ダイヤトーンのP610A、ナショナル8PW1(のちのテクニクス20PW09)、
フォスター103Σ、ジョーダンワッツのA12(モジュールを収めたシステム)の二段積重ね使用、など。

ミッドハイは175DLHで固定、スーパートゥイーターにはテクニクスの5HH45、ゴトーユニット、
デッカ・ケリーのリボン型、JBLの075などだ。

ただ当時は、スピーカーユニットの数はそれほど多くなかったこともあり、
瀬川先生の構想にぴったりと合致するものが少なかったのが関係して、
どうしても各メーカー、各国のユニットの混成部隊になり、音のバランスではうまくいっても、
音色のつながりでうまくいかず、結局、ワイドレンジということでは多少の不満を感じながらも、
総体的な音のまとまりの良さで、JBL指定の3ウェイ(LE15A、375+537-500、075の組合せ)にされている。

私が、この瀬川先生の構想を読んだのは、High Technic シリーズのVol. 1だから、1978年。
このころ単売されているスピーカーユニットの数は多かった。
瀬川先生も、適したユニットが増えている、と書かれている。
だからこそ、もういちど、この構想について書かれたのだろう。