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Date: 2月 13th, 2013
Cate: 4343, 4350, JBL

4343と4350(その12)

各ユニット間の音のつながりは、なにもクロスオーバー周波数だけで決定されるものではないことはいうまでもない。
同じクロスオーバー周波数でも遮断特性の違いも関係してくるし、
同じ回路構成・同じクロスオーバー周波数であっても使用部品によっても、
部品の配置によっても音は必ず影響を受けるものだから、
この値だからいい、この値から外れているからだめ、ということは言いにくいのはわかっている。

それでも瀬川先生は、「かつてマルチアンプをさんざん実験していた」ともいわれている。
私の、スピーカーユニットの経験などよりずっと多くのことを実験されてきた上で、
ウーファーに15インチぐらいの口径をもってくると、
クロスオーバー周波数は上のユニットが10cmであろうと20cmであろうと、
エネルギーとして聴感上うまくクロスオーバーするポイントが250Hzから350Hzあたりといわれているわけだ。

ロジャースのReference Systemのユニットは33cm口径と発表されている。つまり13インチ口径である。
中途半端な印象をうけるサイズを採用している。
30cmでもなければ38cmでもない。なぜ33cmという口径をロジャースはとったのか、ということと、
LS3/5Aとのクロスオーバーが150Hzということは、けっして無関係と考えにくい。

これは想像でいうことなのだが、33cmという、38cm口径よりも小口径ウーファーだからこそ、
150Hzという値に設定できたという可能性を否定できない面がある。

瀬川先生の発言で重要なのは、
15インチ口径のウーファーを使った場合、クロスオーバー周波数を250Hzから350Hzあたりにもってこないと、
聴感上のエネルギーのバランスがうまくとれない、ということである。
周波数特静的、音圧的には38cm口径ウーファーに10cm口径のスコーカーをもってきても、
問題なくつながる。

それが聴感上のエネルギーのバランスということになると、そうはいかなくなる、ということだ。

Date: 2月 13th, 2013
Cate: 4343, 4350, JBL

4343と4350(その11)

ロジャースのReference Systemの音がどうであったのか。
もっといえば、瀬川先生はどう評価されていたのか。
それを知るには、「コンポーネントステレオの世界 ’79」をくり返し読んでも答は出ない。

私がずっとステレオサウンドの読者のままであったら、
Reference Systemの音をきちんと聴くまでは、実際のところはわからない、ということになるけれど、
すくなくとも編集部にいた経験からいえば、こういう場合、音があまり芳しくないこともある。

Reference Systemもそうではないか、という気がする。
とはいっても、聴いたことがないのではっきりとしたことはいえない。
それにスピーカー、それもバイアンプ駆動で、
メインスーカーとサブウーファーが別々のエンクロージュアというシステムでは、
使い手・鳴らし手の腕次第、愛情次第で鳴り方は、大きく違ってくることもある。

これは別項の「現代スピーカー考」でも書いていることのくり返しだが、
LS3/5Aのウーファー(つまりKEFのB110)と、
KEFの3ウェイのModel 105のスコーカーは、見た目良く似ている。
Model 105のスコーカーを金属ネット越しに写っている写真をみていると、
同じKEFだから、多少はスコーカー用としてモディファイしているのかもしれないけれど、
ベースとなっているのはB110だと考えていいはず。

となるとModel 105はLS3/5Aに30cm口径のウーファーを足したモデルという見方もできる。
Model 105のウーファーとスコーカーのクロスオーバー周波数は400Hz。
JBLの4343、4350のウーファーが38cmで300hz、250Hzだったことを考えても、
Model 105の400Hzは妥当な値ともいえよう。

Date: 2月 12th, 2013
Cate: 4343, 4350, JBL

4343と4350(その10)

組合せのみっつめは、コントロールアンプを重視したもので、
アキュフェーズのC240(39万5千円)を使い、
パワーアンプはサンスイのBA2000、C240の価格の約1/3(12万円)である。
スピーカーシステムはスペンドールのBCIII、
プレーヤーはラックスのPD121、フィデリティ・リサーチのFR14を組み合わせ、
カートリッジはエラック(エレクトロアクースティック)のSTS455Eで、合計は114万円強。

組合せのよっつめは、スピーカーシステムを重視したもの。
JBLのL300(40万円)を、トリオのプリメインアンプKA9900(20万円)で鳴らす。
ここまでで予算の大半にあたる100万円をつかっているため、
プレーヤーは少しでも抑えるためにPD121の弟分にあたるPD131。
正確にはPD131のキット版であるラックスキットのPDK131にSMEの3009/S2 Improved、
カートリッジはオルトフォンMC20とヘッドアンプMCA76で、合計は119万9千9百円。

こういう組合せをつくられる瀬川先生だから、
LS3/5Aのグレードアップとしてサブウーファーを追加することにしても、
純正のReference Systemをそのままもってくることは、おもしろくないと感じられたこととおもう。

だから、あえてJBLの136Aをもってきてのサブウーファーの追加という組合せにされたと考えることはできる。
それでも、ロジャースのReference Systemの音がどうだったのか、ということを考えないわけにはいかない。

Date: 2月 12th, 2013
Cate: 4343, 4350, JBL

4343と4350(その9)

「コンポーネントステレオの世界 ’79」で瀬川先生は予算120万円の組合せを4つ、つくられている。
予算60万円の組合せからのグレードアップの120万円の組合せではなく、
最初から120万円の予算の組合せである。

この時代はCDプレーヤーはまだ登場していないから、プレーヤーといえばアナログプレーヤーのことを指す。
組合せにはプレーヤー、アンプ、スピーカーシステムが最低でも必要になり、
スピーカーシステムはステレオ再生だから2台必要。
つまりプレーヤー、アンプ、スピーカーシステム×2ということで、4台のオーディオ機器から組合せは成る。

ということは全体のバランスを重視すれば、120万円を4で割った値(30万円)の、
プレーヤー、アンプ、スピーカーシステムを選ぶ、ということになる。
瀬川先生の120万円の最初の組合せは、これに近い。

エレクトロボイスのInterface:Dに、マランツのプリメインアンプPm8、
リンのLP12にオーディオクラフトのAC3000MC、カートリッジはスタントン881Sで、
組合せの合計は約114万円。

Interface:Dは1本30万円、Om8は25万円、LP12は16万円、AC3000MCと881Sは6万5千円と6万2千円。
スピーカーシステム、アンプ、プレーヤーが30万円前後のものとなっている。

組合せのふたつめは、プレーヤーを最重視したもので、EMTの928(70万円)を使われている。
928は他のEMTのプレーヤー同様フォノイコライザーアンプを内蔵しているので、
思いきってコントロールアンプを省略してパワーアンプへのダイレクト接続。
そのパワーアンプはルボックスのA740(53万8千円)。
もうこれだけで120万円の予算をすこしこえている。

それで多少ルール違反とそしられるのを覚悟のうえで、
スピーカーシステムにヤマハのNS10Mを選び、なんとか合計金額を120万円台に収められている。
それでも予算に余裕のある方に、ということで、
スピーカーシステムをチャートウェルのLS3/5Aにすることをすすめられている。
こうなると合計金額は140万円ぎりぎりまで近づく。

Date: 2月 11th, 2013
Cate: 4343, 4350, JBL

4343と4350(その8)

ロジャースのReference Systemはステレオサウンド 48号の新製品紹介のページにはじめて登場している。
48号は1978年9月に出たステレオサウンドであり、
「コンポーネントステレオの世界 ’79」はその三ヵ月後の12月に出た別冊である。

「コンポーネントステレオの世界 ’79」の取材時にはReference Systemは登場していた。
出て間もない製品でもあった。
当然、Reference Systemについて、瀬川先生は知っておられた。
     *
現実にロジャースのLS3/5Aに関しては、すでにリファレンス・システム(¥500000)という名称で、専用のウーファーに、エレクトロニック・クロスオーバーとパワーアンプが内蔵された追加システムが、新製品として紹介されています。だから、このやりかたは、ぼくの独特の考え方ではなく、だれもが頭にひらめくことなのでしょう。
そのリファレンス・システムを、そのまま買ってくるという手もありますが、ここではひとひねりして、バラバラにパーツを買ってきて、自分で組み上げることにしました。面倒くさいといえばそのとおりでしょうが、それだけ楽しいという方もいらっしゃると思うんですね。
     *
「コンポーネントステレオの世界 ’79」の組合せには予算の制限がある。
けれどロジャースのReference Systemは50万円だから、
LS3/5Aを使った60万円の組合せを、120万円の組合わせへとグレードアップするのに予算の制約は関係ない。
なのに瀬川先生は、使われていない。

ひとつはReference Systemのトータルの音が、あまり芳しくなかったことが考えられ、
もうひとつは単に、そのまま純正のシステムを使っては、組合せの記事としての面白みに欠けるから──、
理由はこのふたつのどちらかであろう。

Date: 2月 11th, 2013
Cate: 4343, 4350, JBL

4343と4350(その7)

このころ(1978年)ロジャースには、LS3/5A専用のサブウーファーが用意されていた。
わりと知られているAB1というサブウーファーではなく、L35Bという型番をもつモデルで、
専用のデヴァイダーとパワーアンプを同一筐体におさめたXA75から成るシステムで、
Reference Systemと名づけられていた。

このシステムのLS3/5Aとのクロスオーバー周波数は150Hzである。
瀬川先生が「コンポーネントステレオの世界 ’79」での組合せでのクロスオーバー周波数よりもずっと低い。
ちょうど半分の周波数で、瀬川先生の体験からすれば、
聴感上・感覚的なエネルギーがうまくつながらない(にくい)周波数ということになる。

ロジャースのReference Systemを聴く機会はなかった。実物を見たこともない。
実際にLS3/5Aとうまくつながるのだろうか。

1990年代なかばに出たAB1は聴く機会があった。
自分で調整した音ではないのでこまかなことはなんともいえないものの、
LS3/5A専用を謳っているものの、これならばLS3/5A単体で鳴らしたほうがいいと、私は感じていた。

AB1はLS3/5A搭載と同じウーファー(つまりKEFのB110)を使っている。
Reference SystemのL35Bで使われているのは33cm口径のユニットである。
これを密閉型のエンクロージュアにおさめ、
エンクロージュアの天板にはLS3/5Aを置く位置が指定してある。

エンクロージュアの寸法はW46×H83×D42cmで、けっこう大きなサイズである。
この上にLS3/5Aがのるわけだが、見た目はすくなくとも専用ウーファーとは思えない。

Date: 2月 10th, 2013
Cate: 4343, 4350, JBL

4343と4350(その6)

見落しといえば、これも見落しなのかもしれない。

ステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’79」で、
瀬川先生がチャートウェルのLS3/5Aで組合せをつくられているのは、別項で書いているとおり。

この年の「コンポーネントステレオの世界」は実践的オーディオシステム構成法として、
バランス型のステップアップ型の組合せを予算に合せて、評論家が考えるという企画である。

LS3/5Aの組合せでは予算60万円でまとめられ、
次のステップとして予算が倍の120万円となる。
60万円でまとめたLS3/5Aの組合せをどういうふうにステップアップしていくのか、
瀬川先生はふたつのプランを用意されていた。

そのひとつとしてLS3/5Aにウーファーを足すことで、グレードアップをはかるというもの。
ウーファーにはJBLの136A、
エンクロージュアには当時JBLの輸入元だったサンスイがJBLの強力を得て開発したECシリーズを使い、
専用アンプを用意してバイアンプ駆動する、というもの。

この組合せについて、こう語られている。
     *
マルチアンプそれから3Dの場合、大型のウーファーをあとから追加するときに、よく、できるだけ低いところから足したほうがいいだろう、とお考えになる方が多いでしょう。最近はスーパーウーファーばやりで、数多い製品が登場してきていますが、そうしたものが大体100Hzか、それ以下の80、70Hzといったところから下で使っているので、そうお考えになるのも無理からぬところだと思います。
じつはぼく自身が、かつてマルチアンプをさんざん実験していたころ、たとえばウーファーに15インチぐらいの口径のものをもってきて、その上に小口径のコーン型ユニットを組み合わせた場合、理論的にはその小口径のコーンだって100Hz以下の、70とか60Hzのところまで出せるはずです。特性をみても実際に単独で聴いてみても、100Hz以下が十分に出ています。
したがって、たとえば100Hzぐらいのクロスオーバーでつながるはずですが、実際にはうまくいかない。ぼくにはどうしてなのかじつはよく分らないんだけれど、15インチ口径のウーファーで出した低音と、LS3/5Aのような10センチぐらいの小口径、あるいはそれ以上の20センチ口径ぐらいまでのものから出てくる中低音とが、聴感上のエネルギーでバランスがとれるポイントというのは、意外に高いところにあるんですね。
いいかえると、100Hzとか200Hzあたりでクロスオーバーさせていると、ウーファーから出てくるエネルギーと、それ以上のエネルギーと、バランスがとれなくてうまくつながらないわけです。
そして、ぼくの経験では、エネルギーとして聴感上、あるいは感覚的にうまくクロスオーバーするポイントというのは、どんな組合せの場合でも、だいたい250Hzから350Hzあたりにあるわけです。それ以上に上げると、こんどはウーファーの高いほうの音質が悪くなるし、それより下げると、こんどはミドルバスのウーファーに対するエネルギーが、どうしてもつながらない。ということで、この場合でも、300Hzでいいんですね。
もちろん、そうしたことを確認するなり実験するなりしたい方には、クロスオーバーをもっと下げられたほうが面白いわけで、そういう意味では100Hz以下まで下げられるデバイダーをお使いになるのは、まったくご自由ですよ、ということですね。
     *
「コンポーネントステレオの世界 ’79」は出た時に買って読んでいた。
引用したところも読んでいた。
そして、そうなんだとおもっていた。
にもかかわらず記憶の中から、どこかに落してきてしまっていた。

Date: 2月 10th, 2013
Cate: 4343, 4350, JBL

4343と4350(その5)

オーディオは、音こそがすべて、である。
だから、どんなに理屈の上ではこちらのほうがいいはず、ということでも、
実際に音として聴いたときには、必ずしもそうでないこと起り得る。

そういうときは、どこかに見落しがある。
見落しは、理屈側にあることもある。
正しそうに思えた理屈でも、どこかに見落しがあれば、結果としての音は良くなるとは限らない。
一方で、理屈は正しくても、実際のオーディオ側に不備があって、
その不備をあからさまにしたための結果としての、音が良くならなかった、のかもしれない。

どちらにしろ見落しが、どこかにひそんでいる。

どんなにオーディオのことを、自分は知悉していると豪語している人にも見落しがある。
本人が、それに気がついていないだけのことであって、
まったく見落しのない人には、これまでお目にかかったことがない。

私にだって、どこかに見落しがある。
大事なのは、見落しがある、ということを自覚しているかどうかであろう。
見落しなんてないと豪語していては、そこまでである。

JBLの4ウェイのスピーカーシステムのウーファーとミッドバスのクロスオーバー周波数の件も、
どこかに私が見落している点(こと)があるのだと思う。

JBLは、4350、4343の前に数多くのスピーカーシステムを開発してきている。
そのJBLが、4ウェイのシステムにおいて、
ウーファーとミッドバスのクロスオーバー周波数を300Hz近辺にしている。
ここには、なんらかの理由がきっとある。

Date: 2月 10th, 2013
Cate: 4343, 4350, JBL

4343と4350(その4)

JBLの4343と4350のウーファーとミッドバスのクロスオーバー周波数が、300Hz、250Hzなのには、
以前から疑問も感じていた。
もう少し低くしたほうが、ウーファーに採用されている2231Aというユニットの性質からいっても、
あまり高い周波数までは使いたくない。
300Hzといえば、オーディオ的には中低音ということになるけれど、
音楽的には中域の低いほうといえるだけに、ウーファーはやはり低音と呼べる帯域だけを受け持たせたい──、
そんなふうに考えてもいた。

これは4350を鳴らされている人ならば一度は考えられることではなかろうか。
4343は内蔵のLC型ネットワークだからクロスオーバー周波数を変えるのは困難であっても、
バイアンプ駆動の4350であれば、クロスオーバー周波数の変更はたやすく行える。

250Hzよりも低い周波数──、200Hz、180Hz、150Hz、100Hz、
このあたりまでは試されたことだろう。

私自身は、こういう実験をしたことがないので、実際に4350でクロスオーバー周波数を低くしていったときに、
はたして頭のなかで想像しているように音はよくなっていくのかについては、なんともいえない。
けれど、昨年、4350Bを鳴らされている方から、少しだけこのことに関する話をきいている。

彼も私と同じようなことを考えられていたようで、
クロスオーバー周波数を100Hzまで、段階的に下げてみられたそうだ。

結果は……、というと、予想と反して250Hzがいちばんまとまりが良かった、とのこと。

この話をききながら、そうなのか、と納得しながらも、
一方ではミッドバスの2202用のバックキャビティの容積をもっと増やせれば、
結果である音もまた大きく変ってきて、
やはりクロスオーバー周波数は低くしたほうがいい、という可能性も残されている、とも考えていた。

Date: 2月 7th, 2013
Cate: 4343, 4350, JBL

4343と4350(その3)

JBLによる4ウェイのスピーカーシステムは4350が最初であり、
そのスケールをひとまわり(いやふたまわり)小さくまとめたのが4343の原型といえる4341である。

4350Aは4343(4341)と同じ15インチ口径ウーファー2231Aを搭載している。
4350はダブルウーファー仕様、4343はシングルウーファーという違いがあり、
さらにミッドバスに、4350は12インチ口径の2202、4343は10インチ口径の2121という違うもある。

4343(4341)は内蔵のLC型ネットワークで鳴らされるスピーカーシステムであること、
ミッドバスのバックキャビティがエンクロージュア全体の大きさからしてもそれほど容積が確保できないだろうから、
ウーファーとミッドバスのクロスオーバー周波数が300Hzになっているのは、
きわめて妥当な数字といえる。

4350はカタログ上は250Hzである。
4350はミッドバスの口径も大きいし、エンクロージュア全体のサイズも大きい。
およそサイズ的な考慮かなされた設計とはおもえないスピーカーシステムだけに、
ミッドバスのバックキャビティも確保しようと思えば、かなりの容積まで確保できよう。

そうすればウーファーとミッドバスのクロスオーバー周波数も、
4343と近似の250Hzよりももっと低い値、
たとえば150Hz、100Hzといったところまで下げることもまったく無理なことではないはず。
しかもバイアンプ駆動だから、
クロスオーバー周波数が低くなることにより直列にはいるコイルの巨大化による弊害も関係ない。

ミッドバスの口径は12インチ。
ブックシェルフ型スピーカーシステムでは、ウーファーのサイズとしても大きな口径ともいえるもの。
JBLのカタログでは2202のf0は50Hzで、再生周波数帯域は60〜4000Hzとなっている。

ミッドバスの2202の特性から考えてもクロスオーバー周波数はもっと低くしたほうがいいように思えるし、
ウーファーが横に2本並ぶという構成からしても、やはり低いほうが有利なように思えるのに、
なぜJBLは250Hzをクロスオーバー周波数としたのか。

Date: 1月 12th, 2013
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その23)

SUMOのThe Goldの前に、SL600を鳴らしていたのはアキュフェーズのP300Lだった。
そのP300Lでも、すこしだけアルテックの405Aを鳴らしてみた。
そのときの音の違いから、SL600にThe Goldを接いで鳴らしたら……、と期待に胸ふくらましながらの一週間だった。

3日目ぐらいから何度The Goldに接ぎかえようと思ったことか。
問題ないはず、という確信はあったものの、
それでも最初に決めた1週間を405Aで通したのは、
意外にも405Aで聴く、人の声の気持ちよさに魅かれるところがあったためである。

ほーっ、やっぱり小さくてもアルテックなんだなぁ、と感じつつの1週間がすぎ、
いよいよThe GoldでSL600を鳴らす日が来た。

いままで何の不安も感じさせなかったから大丈夫だ、ということはわかっていても、
それでも最初にSL600を接いで電源スイッチをいれるときは、すこし緊張した。

いい音だった。
P300Lに、これといった大きな不満はなかった。
SL600はパワーアンプを選り好みするという印象を持っている人が少なくないので意外な感じもするのだが、
特別なパワーアンプを持ってこなければ、うまく鳴ってくれない、というスピーカーシステムではない。
とはいえ、The Goldけで鳴らしたSL600の音はよかった。

SL600のほうが405Aよりも周波数レンジも広い。
405Aに感じた粗さもない。
けれど人の声、それも男性の声のリアリティが、405Aほど濃厚に出ない。

SL600での男性の声がよくないわけではない。
うまく鳴っている。鳴ってはいるいるけれど、405Aで感じられた、気配のようなものがすこし足りない。
SL600だけで聴いていればそんなことを思わなかったであろう。

でも1週間、405Aで聴き続けた時間がすでに存在していた。

Date: 1月 7th, 2013
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その22)

1985年12月にSUMOのThe Goldを導入したとき、
鳴らしていたスピーカーシステムはセレッションのSL600だった。

The Goldが届いてまずしたことは分解掃除だった。
そして、いきなりSL600を鳴らすのはコワイと思い、
チェック用として用意していたアルテックの10cm口径のフルレンジユニット405Aを収めたスピーカーで鳴らした。
無事、音が出た。スピーカーが飛ぶこともなかった。

このアルテック405Aで1週間何事もなかったらSL600を安心して接続できるだろう、と決め、
それからの1週間は405Aの(エンクロージュアも凝ったものではない)、
上等とはいえないスピーカーで聴いていた。

10cmのフルレンジで、しかもアルテックのユニットだから低域も高域も伸びてはいない。
ナローレンジな音で、音量はかなりあげられても、
そうすると今度はエンクロージュアの共振が気になってくるような代物だったから、
音量をあげるといっても、それほど大音量で鳴らせたわけではなかった。

このとき感じていたのは、音像定位の安定度の高さ・確かさである。
それは精緻な音像定位といった感じなのではないのだが、
とにかく中央に歌手が気持ちよく定位してくれる。

1週間が経ち、SL600にした。
405Aよりもすべての点で上廻る音が鳴ってくれるものと期待していた……。

Date: 12月 30th, 2012
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その21)

ステレオサウンド別冊「いまだからフルレンジ 1939-1997」の巻頭にある「フルレンジの魅力」は、
19ページにわたっている。
単にフルレンジ型ユニットの魅力について書かれているのではなく、
井上先生ならではの解説と使い方へのアドバイスもあり、
この記事を初心者向けのものととらえる人もいるだろうが、
読めばそうでないことは、キャリアのある人ほど実感できるはずである。

「フルレンジの魅力」の冒頭には、こう書かれている。
     *
フルレンジユニットの魅力は、まず第一に、音源が一点に絞られ、いわゆる点音源的になるために、音像定位のクリアーさや安定度の高さが、何といっても最大のポイントだ。また、シングルコーン型や、ダブルコーン型に代表される複合振動板採用のユニットでは、デヴァイディング・ネットワークが不要なため、これによる音の色づけや能率低下がないことも魅力だ。さらに、振動板材料の違いによる音質、音色の差もきわめて少ないため、音の均質性に優れ、何らかの違和感も生じることがなく、結果として反応が速く、鮮度感の高い生き生きとした躍動感のある音を楽しめる点が、かけがえのない魅力である。
     *
「いまだからフルレンジ 1939-1997」は誌名からわかるように1997年に出ている。
「いまだからフルレンジ 1939-1997」にこまかな不満がないわけではないが、
その程度の不満はどの本に対しても感じることであり、特にここで書こうとは思っていない。

でも、ひとつだけ不満というか注文をつけるとしたら、
本の最後に、筆者後記が欲しかった、と思う。

つまり、なぜ1997年にフルレンジ型ユニットの別冊を企画されたことの意図についての、
井上先生の文章が読みたかったからである。

でも、井上先生のことだから、あえて書かれなかったのだとも思っている。
1997年に、井上先生がフルレンジ型ユニットの本を監修されたのかは、
「いまだからフルレンジ 1939-1997」の読み手が、ひとりひとり考えることであり、
そのことを考えずに「いまだからフルレンジ 1939-1997」を読んだところで、
この本の面白さは半分も汲み取れないのではないだろうか。

Date: 3月 29th, 2012
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その20)

ステレオサウンド 124号の座談会の中から井上先生の発言を抜き書きしてみる。
     *
そもそもスピーカーというものは物理特性が非常に悪いものなんです。ところが上手に鳴らすと巧いこと鳴ってしまう。その意味で、僕は20cmクラスのフルレンジが一番面白いのではないかと思っています。
僕がスピーカーの開発に携わってから30年。レコードを聴きはじめてからは、もう60年。最初好きだったのはローラとかジェンセンの25cmのユニット。英国のフェランティというスピーカーもありましたね。そういったものが家に転がっていたものだから、子供の頃からそれで遊んでいた。もともとシングルコーン派なんですね。
(中略)
要するに、僕はホーンやマルチウェイをイヤというほどやってきたんですね。しかしマルチウェイのクロスオーバーを突き詰めて考えると色々な問題が生じてくる。減衰が18dB/オクターヴでも、24dBでも、12dBでもおかしい。これらの場合は、3ウェイでも2ウェイでも、現実にはユニット同士の位相がすべてバラバラなんです。振幅特性よりも位相特性を考えると、クロスオーバーの減衰は6dBしかないというのが僕の意見。もちろんこれは何を重視するかによって変りますよ。
それでフルレンジをベースとして、ある程度はレンジを広げたい、ということでいま使っているのがボザークのB310。これのネットワークの減衰特性は6dBです。低域は30cmウーファーか4発。中高域は、16cmスコーカーが2発と、二個一組のトゥイーターが4発で、すべてコーン型ユニットで構成され、中域以上はメタルコーンにゴムでダンピングをした振動板を使っている。僕の持論ですが、低音楽器の再生を考えると、本来ならウーファーは30cmなら4発、38cmなら2発必要なんです。そんな理由からボザークを選んで使って30年近くが経ちました。
     *
ステレオサウンド 124号の座談会は出席者が9人と多かったせいもあってか、
それとおそらくは座談会のまとめの段階で誌面のページ数の制約によって、
実際はもっともっといろいろと語られているであろうことが削られているようにも思える。
それは編集上仕方のないことであって、文句を言うことでもない。
だから、井上先生が、フルレンジの良さについて具体的に語られているのは、
124号ではなく、ステレオサウンド別冊の「いまだからフルレンジ 1939-1997」を参照する。

この別冊は、1997年当時の現行フルレンジユニット15機種、
往年の名器と呼ばれるフルレンジユニット12機種の紹介と、
巻頭に「フルレンジの魅力」という井上先生が文章がある。

「いまだからフルレンジ 1939-1997」は井上先生監修の別冊である。

Date: 3月 28th, 2012
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その19)

ステレオサウンド 124号の特集は、オーディオの流儀──自分だけの「道」を探そう、と題されて、
第一部が「独断的オーディオの流儀を語る」で、
朝沼予史宏、井上卓也、上杉佳郎、小林貢、菅野沖彦、長島達夫、傅信幸、三浦孝仁、柳沢功力、
以上9氏による座談会。
第二部は「流儀別システムプラン28選」という組合せの紹介、という二部構成になっている。

座談会のページは、各氏の紹介囲み的に各ページにあり、そこには各人がそれぞれの流儀について書かれている。
井上先生は、こう書かれている。
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録音・再生系を基本としたオーディオでは、再生音を楽しむための基本条件として、原音再生は不可能であるということがある。録音サイドの問題にタッチせず、再生側のみのコントロールで、各種のプログラムを材料として再生音を楽しむこと、の2点が必要だ。再生系ではスピーカーシステムが重要だが、電気系とくらべ性能は非常に悪い。しかし、ルーム・アコースティック・設置条件、駆動アンプ等の調整次第でかなり原音的なイリュージョンが聴きとれるのは不思議なことだ。
スピーカーは20cm級全域型が基本と考えており、簡潔で親しみやすい魅力がある。プログラムソースの情報量が増えれば、マルチウェイ化の必要に迫られるが、クロスオーバーの存在は振幅的・位相的に変化をし、予想以上の情報欠落を生じるため、遮断特性は6dB型しかないであろう。
ステレオ再生では、音場再生が大切で、非常に要素が多く、各種各様な流儀が生じるかもしれない。
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そして、井上先生はシンボル・スピーカーとして、
パイオニアExclusive 2404とアクースティックラボStella Elegansを挙げられている。

Stella Elegansは、ドイツのマンガーのBWTを中心としたシステム。
BWTは、Bending Wave Transducerの頭文字をとったもので、
ジャーマン・フィジックスのDDD型ユニットと同じベンディングウェーヴ型(非ピストニックモーション)で、
口径は20cmで、振動板はジャーマン・フィジックスと同じで柔らかい。
Stella Elegansは、BWTに22cm口径のコーン型ウーファーをダブルで追加している。

井上先生は、座談会のなかでも20cm口径のフルレンジについて語られている。