真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その6)
ステレオサウンド 55号と59号の中間、57号の特集はプリメインアンプだった。
ケンウッドのL01Aも取り上げられている。
瀬川先生の、57号での評価は高いものだった。
音の躍動感に、やや不足するものがあるのは読みとれるが、
《音の質の高さは相当なものだと思った》とある。
しかも、瀬川先生が熊本のオーディオ店に来られたときに、
サンスイのAU-D907 Limitedを買ったことを話した。
瀬川先生は、L01Aのほうがあなたの好みだよ、といわれた。
L01Aは聴いたことがなかった。
それでも気になっているプリメインアンプだった。
それでもAU-D907 Limitedは175,000円、
L01Aは270,000円だった。
当時高校生だった私に、この価格差はそうとうに大きく、手の届かない製品であった。
でも、その時の口ぶりからもL01Aを高く評価されていることは伝わってきた。
なのに59号での結果である。
当時も、なぜだろう? とおもったものだ。
答はわからなかった。
いま、その理由を考えると、L01Aにはラウドネスコントロールはついていても、
トーンコントロールはなかった。
しかも57号に、
《ファンクションにはややトリオ独自の部分があり、例えば、テープ端子のアウト/イン間にイコライザーその他のアダプター類を接続できない回路構成》
とある。
瀬川先生は、59号でサンスイのAU-X11には1点をいれられている。
AU-X11にもトーンコントロールはついていない。
けれどテープ入出力端子に、トーンコントロール、イコライザーなどの周辺機器を接続できる。
このあたりに、L01Aへの0点の理由が隠れているような気がしてならないし、
AU-X11にトーンコントロールがついていたら、2点以上になっていたであろう。