現代真空管アンプ考(その29)
私がQUAD IIの詳細を知ったのは、
ステレオサウンド 43号(1977年夏号)掲載の「クラフツマンシップの粋」でだった。
QUADのアンプのことは知っていた。
トランジスターアンプの前に管球式のコントロールアンプの22、
パワーアンプのIIがあることだけは知ってはいたが、
具体的なことを知っていたわけではなかった。
記事は、井上先生、長島先生、山中先生による鼎談。
QUAD IIのところの見出しには「緻密でむだのないコンストラクション」とあった。
内容を読めば、そして写真をみれば、
この見出しは納得できる。
山中先生は
《とにかく、あらゆる意味でこのアンプは、個人的なことになりますけれども、一番しびれたんですよ。》
と発言されていた。
この時から、QUAD II、いいなぁ、と思うようになっていた。
43号から約二年後の52号。
巻頭に瀬川先生の「最新セパレートアンプの魅力をたずねて」がある。
そこで、こう書かれていた。
*
迷いながらも選択はどんどんエスカレートして、結局、マランツのモデル7を買うことに決心してしまった。
などと書くといとも容易に買ってしまったみたいだが、そんなことはない。当時の価格で十六万円弱、といえば、なにしろ大卒の初任給が三万円に達したかどうかという時代だから、まあ相当に思い切った買物だ。それで貯金の大半をはたいてしまうと、パワーアンプはマランツには手が出なくなって、QUADのII型(KT66PP)を買った。このことからもわたくしがプリアンプのほうに重きを置く人間であることがいえる。
*
瀬川先生も、QUAD IIを使われていたのか──、
もちろん予算に余裕があったならばマランツの管球式パワーアンプを選択されていただろうが、
いまとは時代が違う。
マランツのModel 7とQUAD IIが、
瀬川先生にとって《初めて買うメーカー製のアンプ》である。
52号では、こんなことも書かれていた。
*
ずっと以前の本誌、たしか9号あたりであったか、読者の質問にこたえて、マッキントッシュとQUADについて、一方を百万語を費やして語り尽くそうという大河小説の手法に、他方をあるギリギリの枠の中で表現する短詩に例えて説明したことがあった。
*
このころはQUAD IIを聴く機会はなかった。
意外にもQUAD IIを聴く機会は少なかった。
マランツやマッキントッシュの同時代の管球式アンプを聴く機会のほうがずっと多かった。