五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(その27)
伊藤先生が、無線と実験に6V6のシングルアンプを発表されたことがある。
私の記憶違いでなければ、これがオーディオ雑誌に発表された最後のアンプである。
手元にあったアンプがすべて持ち去られて、音を聴くことが出来なくなった。
それで手持ちの部品で作った、と書いてあった。
シャーシーは、だから市販のモノだった。
伊藤先生のパワーアンプにもちいられるシャーシーとはまったくの別物。
にもかかわらず、できあがったアンプは、伊藤アンプのたたずまいをしていた。
市販のトランス、市販のシャーシー、
これらの組合せにも関らず、間延した感じが、そのアンプにはなかった。
無線と実験、ラジオ技術などのオーディオ雑誌で数多くの真空管アンプの写真を見てきた。
どれも真似をしたいと思わなかった。
伊藤先生のアンプだけが、私にとっては違っていた。
そのためにはシャーシーを特注しなければ、と思っていた。
あのシャーシーがあってこその伊藤アンプの面は否定できない。
なのに6V6シングルアンプのシャーシーは全面黒色で、
シャーシーの高さも、40mmと伊藤アンプのシャーシー(50mm)よりも低い。
それでも伊藤先生のアンプに見える。
それは出力管のソケットの周囲に放熱用の穴が開けられているから、ともいえる。
この穴がもしなかったら、伊藤アンプとは思わなかった可能性は高い。
塗装済みのシャーシーに穴開け加工を施すわけだから、
切り口は金属の質感が顔を覗かせる。
だから伊藤先生は再塗装されている。
穴を開けなければ、こんな手間は不要になる。
穴を開けるのも手間である。
しかも(その26)で書いているように、
ソケット周囲の穴は出力管の放熱にほとんど効果はないはずだ。
手間をかけて穴を開けて、塗装する。
これらのことを考え合わせて、
この穴はデザインなのか、デコレーションなのを判断すべきである。