真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その4)
真空管パワーアンプの音が、出力管だけで決るわけがないことは百も承知だ。
この項で挙げている四機種のKT88のパワーアンプは、どれも音が違う。
それでも、そこに何か共通項のようなものを、少なくとも私の耳は感じている。
もっと厳密にいえば、タンノイのスピーカーで聴いた時に、そう感じている。
「五味オーディオ教室」を読みすぎたせい──、とはまったく思っていない。
マッキントッシュのMC275がKT88のプッシュプルだから、ということではない。
私の場合、タンノイで聴いたKT88のプッシュプルアンプは、MC275が最初ではないからだ。
KT88のプッシュプルアンプは、他にもいくつもの機種がある。
それらでタンノイを鳴らしたことはない。
もしかすると、私が聴いたことのないKT88のプッシュプルアンプで、
タンノイを鳴らしてみると、KT88にこだわることはないな、と思うかもしれない。
KT88のプッシュプルアンプのなかにも不出来なアンプは少なからずある。
そのこともわかっている。
それでも、タンノイを、真空管アンプで鳴らすのであれば、
まずKT88のプッシュプルアンプということを、頭から消し去ることができないままだ。
真空管パワーアンプの音が、出力管だけで決るわけがないのだが、
だからといって、出力管の銘柄、型番が音に関係ないわけではない。
鳴ってくる音のどこかに、出力管に起因するなにかが存在しているのかもしれない。
それがタンノイのスピーカーと組み合わされた時に、
私の耳は無意識のうちに嗅ぎ分けているのかもしれない。
コーネッタを鳴らすのに、真空管アンプを作るのであれば、
デッカ・デコラのパワーアンプ、EL34のプッシュプルのコピーにしようか、と思っている。
いい感じに鳴ってくれるだろうな、と夢想しながらも、
それでもKT88のプッシュプルアンプ、と思ってしまう。
しかも、ここがわれながら不思議なのだが、
KT88のプッシュプルアンプを自作しようという気は、ほとんどない。
市販品のなかから、いいモノがないか、と思ってしまうのは、なぜなのか。