Archive for category 電源

Date: 2月 24th, 2020
Cate: 電源

スイッチング電源のこと(その8)

イギリスのCHORDは、スイッチング電源に最も意欲的・積極的なメーカーである。
CHORDのD/Aコンバーターやコントロールアンプといった、
消費電力の少ない製品に関しては、90Vから250Vまで対応している。

消費電力の大きいパワーアンプではどうかというと、各国の電源事情にあわせている。
日本の輸入元タイムロードのウェブサイトには100Vのみが記載されている。

本国のCHORDのサイトでは、D/Aコンバーター、コントロールアンプなどでは、
90v AC-250v AC auto switchingとある。

パワーアンプのところには、電源電圧に関する項目がない。
スイッチング電源の専門メーカーともいえるCHORDだから、
パワーアンプにおいては、auto switchingでは電源電圧の低い国では、
音質的に不利になることを理解しているのだろう。

ジェフ・ロゥランドも、スイッチング電源を採用している。
プリメインアンプのDaemonのリアパネルをみると、85-265 VACとある。

パワーアンプのリアパネルには、スイッチング電源であっても100Vとあったりする。

このあたり、ジェフ・ロゥランドが、
スイッチング電源と電源電圧の関係による音の変化をどう考えているのか知りたいところだ。

スイッチング電源を搭載しているオーディオ機器は何も使っていない──、
そういう人もいる。
そういう人でも、パソコンを使って再生しているのであれば、
そのパソコンに使われている電源は、メーカー製であるならばスイッチング電源である。

ノート型で、音楽再生時にはバッテリー駆動しているというのであればいいが、
AC電源を使う場合、電源電圧は高いほど有利になるのは同じだ。

Date: 2月 24th, 2020
Cate: 電源

スイッチング電源のこと(その7)

メーカーは100Vの電源電圧であっても、
十分な容量のコンデンサーを搭載している、というはずだ。

けれど、このことは240Vで使用すれば、
コンデンサーの容量にかなりの余裕がある、ということになる。

平滑後のスイッチング電源でリップルは抑えている、と、またメーカーはいうだろう。
たしかにそうだろうが、それでも音は変らない、といえるだろうか。

でも、それは整流・平滑のあとに定電圧回路を入れているから、
電源トランス、ダイオード、コンデンサーなどによって音は変らない、というのと同じことだ。

スイッチング電源では、入力される電源電圧によって音は変化しない──、
そうであってほしい、といちばん願っているのはオーディオマニアなのかもしれないが、
現実には音は変ってくる。

音が変る──、ということで喜ぶオーディオマニアも意外に多いのかもしれないが、
私は変ってほしくない、と思う側だ。

でも変る以上はなんとかする必要がある。

自分で設計し自作するのであれば、
スイッチング電源の場合、最初から100Vに限定しておくのがいい。

けれどメーカー製の場合はそうはいかない。
メリディアンの218も、平滑コンデンサーの耐圧は450Vとなっている。
100Vに限定すれば、耐圧は半分以下におとせる。

そして、その分、同サイズのコンデンサーならば容量は増える。
218(version 10)とは、このコンデンサーの交換のことである。

でも別項「218はWONDER DACをめざす」で書いているように、
部品の交換はやらないと決めている。

ならばどうするか。
電源電圧を昇圧するわけだ。

Date: 2月 24th, 2020
Cate: 電源

スイッチング電源のこと(その6)

スイッチング電源では、平滑コンデンサーにかかる電圧は、入力される電源電圧によって違ってくる。
100Vと200Vとでは、平滑コンデンサーにかかる電圧がそれだけ違ってくる。

つまりスイッチング電源で、100Vから200V(もしくは240V)まで対応するには、
高い電圧のほうに、コンデンサーの耐圧をあわせることになる。

交流を整流し平滑して直流にする。
けれどこれだけで完全な直流になるわけではなく、
リップルという小さな波が残ってしまう。

リップルが小さければ小さいほどいいわけで、
コンデンサーの容量は、このリップルと密接に関係してくる。
簡単にいってしまえば、コンデンサーの容量が大きいほどリップルは小さくなっていく。

けれどコンデンサーには耐圧という制約がある。
耐圧が高いコンデンサーと低いコンデンサーである。
この二つのコンデンサーのサイズが同じならば、
耐圧の低いコンデンサーのほうが容量は大きい。

それから実際に電源回路に使った場合、
消費電流が少ないほど、同じ電源電圧、同じコンデンサーの容量であっても、リップルは小さくなる。
ほかの条件が同じでも、電流が大きくなればリップルも大きくなる。

電圧に関してはどうかといえば、電流が同じであれば、
電圧が高い方がリップルは小さくなり、低くなればリップルは大きくなる。

どういうことかというと、240Vの電源電圧まで対応できるスイッチング電源であれば、
平滑コンデンサーの耐圧はそれだけ高いわけだし、リップルに関しては有利になる。

それを100Vで使うとなると、コンデンサーの容量は変らず、電圧だけが低くなるわけだから、
リップルに関しては不利になる。

240Vと同じリップル率にするには、100Vではコンデンサーの容量を増さなければならない。

Date: 2月 24th, 2020
Cate: 電源

スイッチング電源のこと(その5)

オーディオアンプにスイッチング電源が採用されたのは1970年代後半からだから、
スイッチング電源という考え方は、それ以前からあったのだろうなぁ、ぐらいには思っていた。

数日前に、あるニュースサイトに
コンピューターや家電製品の「電源」はどのように進化してきたのか?』という記事があった。

この記事によると、スイッチング電源の構想は1930年代とある。
まだトランジスターが登場していないころである。
動作周波数20kHzのスイッチング電源は、1960年代後半に登場したこともわかる。

この記事に刺激されて、スイッチング電源の歴史で検索してみると、
なかなかおもしろい。

1974年ごろ、Robert Boschert氏によるスイッチング電源の簡略化が実現してなければ、
オーディオへの採用はもっと後になっていたかもしれない。

とにかくそうやってビクターやソニーのパワーアンプ、
それからテクニクスのコンサイスコンポへ搭載された。

このころのスイッチング電源は、100Vのみだった。
いまのスイッチング電源は、そうではない。

メリディアンの218のリアパネルには、100-240V ACとある。
内部は緯線を切り替えることなく、100Vでも200Vでも、240Vでも対応できる。

いまではあたりまえのことなのだが、
初期のスイッチング電源ではそうではなかったから、進歩といえる。

けれどオーディオに関していえば、進歩と素直に喜べない面もある。

スイッチング電源は、まずダイオードで整流し、コンデンサーで平滑する。
通常の電源は、まず電源トランスがあり、そこで電圧を昇圧・降圧したうえで、
整流・平滑とする。

つまり通常の電源の場合、平滑用コンデンサーにかかる電圧は、
各国の電源事情にあわせて電源トランスの一次側の巻線で対応するため、
100Vの国だろうと、もっと高い電圧の国であろうと同じである。

スイッチング電源は、そこが違う。

Date: 9月 26th, 2019
Cate: 電源

LiB-AID E500 for Musicという電源

ホンダのLiB-AID E500 for Musicという、
いわゆる蓄電器がコンセプトモデルとして発表された。

オーディオ関係のサイトでも、それにSNSでも取り上げている人がけっこういる。
私も、LiB-AID E500 for Musicは試してみたい。

この種の製品は以前からあった。
安いモノだと出力が正弦波ではなかったりするが、
二万円ほどの価格のモノだと正弦波出力になっている。

消費電力の小さなオーディオ機器であれば、
この種の蓄電器でも十分使用できるだけの容量を備えている製品も少なくない。

SNSでも、既発売の同種の製品を導入している人を見かける。
なかなかいい結果になっているようだ。

amazonで検索してみると、意外にも製品数は多い。
どれを試してみようか、と迷っているうちに時間だけが経っていく。

迷っていても仕方ないから、そろそろ、どれか一つに決めて……、と思い始めていた。
なので、LiB-AID E500 for Musicの発表は、タイミング的に文句なしだ。

個人的には、AC出力は100Vだけでなく、200V出力が欲しい。
たとえばメリディアンの218はスイッチング電源を採用している。

そのおかげで100Vから240Vまで、仕様変更なく対応できるわけだが、
理屈からいっても、100Vよりも電圧は高い方が有利でる。

200V出力がついていればなぁ、と思うけれど、
一般的な使用状況を考えれば、100Vだけのほうが安心といえば、そういえる。

いくつか注文をつけたいところはあるけれど、期待している製品である。

ACと違い、DCは電圧が高くなり、電流も多ければ、
電源スイッチにひじょうに苦労するようになるから、実用化はけっこう大変だろうが、
オーディオ機器も、消費電力の小さなモノは、
AC入力だけでなくDC入力の規格化の検討も始まってよさそうなのに……、と思う。

Date: 7月 13th, 2019
Cate: 電源

スイッチング電源のこと(その4)

スイッチング電源がオーディオ機器に使われはじめた1970年代後半、
そのころの製品で、スイッチング電源について考えるのに、
対照的なところをもつのがソニーのパワーアンプである。

ソニーはTA-N86、TA-N88でスイッチング電源を採用した。
ソニーは、PLPS(パルスロック電源)と呼んでいた。

TA-N86、TA-N88は、シャーシーの高さ8.0cmの薄型パワーアンプである。
これら二機種の約一年後に登場したTA-N9もスイッチング電源搭載のパワーアンプである。

TA-N9は18.5cmと、TA-N88の二倍以上の厚みになっている。
内部はアンプ部よりも、電源部の占める割合が大きい。
ほぼ三分の二の電源といえるほどである。

しかもTA-N9はモノーラルパワーアンプにも関らず、
ヒートパイプ方式のヒートシンクを二基もつ。
アンプ用とスイッチング電源用である。

TA-N86、N88のスイッチング電源の動作周波数は20kHzである。
ビクターのM7070が35kHzである。
TA-N9は、TA-N86、88と同じ20kHzである。

高校生のころ、TA-N9の内部写真を見て、
スイッチング電源の動作周波数が高くなったのかも……、と最初思った。
動作周波数を高く設定することで、発熱も増えていったのかもしれない。
そのためのヒートシンクなのだろう、と考えたわけだ。

でも動作周波数は変らず、である。
スイッチング電源は、そのころから効率がいい、といわれていた。
効率がいいということは発熱も少ないはずだ。

にも関らずTA-N9のスイッチング電源のヒートシンクは、
450Wの出力をもつアンプ部のヒートシンクと同サイズである。

しかもスイッチング電源部はシールドされているが、
平滑コンデンサーはシールドケース外にあり、
スイッチング電源とは思えないサイズのコンデンサーである。

このことは、スイッチング電源を本気で設計し作るとなると、
同時代の、同じ会社のパワーアンプにおいても、これだけの違いが生じてくる、ということである。

Date: 5月 28th, 2019
Cate: 電源

スイッチング電源のこと(その3)

ビクターのM7070、金田式DCアンプ(聴いたことはなかったが)では、
スイッチング電源に対してネガティヴな印象は持たなかった。

この時代、スイッチング電源はメーカーによってはパルス電源とも言っていた。
テクニクスのコンサイスコンポのパワーアンプSE-C01も、
パルス電源(スイッチング電源)採用だった。

M7070とSE-C01とではサイズも重量も大きく違っていた。
スイッチング電源を採用した理由も、おそらく違っていたであろう。

SE-C01は小型化を優先してのスイッチング電源の採用だったはずだ。
このころから他社からもいくつか登場した。
そして、このころからスイッチング電源は音は悪い、という印象が出てき始めた。

1980年代にはいるころには、スイッチング電源は消えてしまったように思われた。
そして数年が経ち、「スイッチング電源なのに……」というふうに印象を変えたのは、
スチューダーのCDプレーヤー、A730ではないだろうか。

それまでは「スイッチング電源だから……」、
そんなネガティヴな捉え方が一般的になっていた。

M7070は、ステレオサウンド 45号の新製品紹介で、井上先生が担当されている。
     *
 M7070は、モノ構成の完全なDCアンプである。電源関係を重視した設計であるために、A−B独立電源のBクラス動作をするパワー段には、一般の商用電源を一度DCに整流した後に数10kHzのパルスに変換し、高周波用トランスで変換してから再び整流してDC電源を得るDクラス電源に、制御系にPWM方式を用い応答速度を高めた定電圧電源が使用されている。これにより、電源の内部インピーダンスを高域まで非常に低くすることが可能となり、電源のレギュレーションは、理想の電源と言われた蓄電池をしのぐものとしている。
     *
ビクターの謳い文句を信じるのであれば、M7070に搭載されたスイッチング電源は、
従来の電源方式では無理な特性を実現するためであり、
特に応答速度の向上がいちばんの目的だったのではないのだろうか。

Date: 5月 26th, 2019
Cate: 電源

スイッチング電源のこと(その2)

ビクターのM7070の音は、私にはクラシックを聴くための音とは思えなかったが、
だからといって、質が悪いと感じたわけではなかった。

同時代のカートリッジのエンパイアの4000D/III。
このカートリッジに似た印象が、どこかしらあった。

どちらもクォリティの高さをきちんと持っているけれど、
クラシックを聴く者にとっては、その良さがプラスの方向に働いてくれないところがある。

聴く音楽がクラシックでなければ、
4000D/IIIもM7070も、その良さが存分に発揮されるはずだ。

しかも4000D/IIIとM7070をもってきての組合せは、
一度聴いてみたかった、と思わせる。

何がいいたいかというと、M7070の印象が、
私の場合、スイッチング電源の印象につながっている。

次にスイッチング電源を採用したアンプで思い出すのは、
無線と実験での、金田明彦氏の発表されたアンプだった。

私が読み始めたころは、金田式DCアンプには、
タムラ製のトロイダルトランスが使われていた。

それが乾電池に代っていった。
ナショナルの乾電池で、より高い電圧を得るために、
乾電池と増幅部とのあいだにスイッチング電源をいれ、昇圧していた。

そのころの無線と実験はとっくに手元からなくなっていて、
記憶も少し曖昧なところもあるが、
スイッチング電源の周波数の重要性に言及されていた。

どのくらいの値だったのかは忘れてしまっているが、
20kHzよりは高い周波数だった。
M7070の35kHzよりも高かったように記憶している。

より高い周波数で動作させてこそのスイッチング電源なのか、と、
そのころ思っていたし、
M7070の35kHzが70kHz、さらには100kHzになっていたら、
M7070の音はさらに磨かれていくのでは……、そんなことも考えながら、
そのころは金田明彦氏の記事を読んでいた。

Date: 5月 25th, 2019
Cate: 電源

スイッチング電源のこと(その1)

私の記憶の範囲内では、
スイッチング電源を最初に採用したアンプは、ビクターのM7070である。

M7070のスイッチング電源は、アンプ全体を小型軽量化するためのものではなく、
従来の電源方式では得られない供給能力を目指しての才能だった──、
と当時読んでいた電波科学での記事からの印象である。

その記事には、木の板、コンクリートの板、鉄の板のイラストがあった(はずだ)。
それぞれの板に、上からボールを落としているイラストだった。

板の材質が、アンプの電源の容量を表していた。
ひ弱な電源が木の板で、従来の方式でのしっかり作られた電源がコンクリートの板。

ビクターは、スイッチング電源でのみ鉄の板の強度を実現できた、と説明していた。
細部で記憶違いはあると思うが、こんなふうな説明がなされていた。

なるほど、と感心しながら読んでいた。
M7070は、瀬川先生が定期的に来られていた熊本のオーディオ店で聴いている。
瀬川先生は、そのとき「THE DIALOGUE」を鳴らされた。

他のアンプでは聴けないかも……、と思わせるほど、
パルシヴな音の鋭さは見事だった。

音を聴いて、またなるほど、と感心していた。
確かに、これは鉄板の音だ、と感じていたからだ。

M7070の音は、快感ですらあった。
でもクラシックは、このアンプでは聴けないな、とも感じていたけれど、
スイッチング電源の可能性は、小型軽量の方向ではなく、
従来の電源と同程度の容積で構成してこそ良さが活きてくるのかも、と考えた。

スイッチング電源は、なかなか普及しなかった。
M7070のスイッチング周波数は35kHzと、可聴帯域よりもほんのわずかだけ上だった。
当時としては、このへんが上限だったのだろう。

Date: 12月 1st, 2018
Cate: 電源

電源に関する疑問(バッテリーについて・その4)

ステラが輸入販売しているドイツのストロームタンクの製品。
リチウムイオン電池から交流電源を作り出す電源であり、
とにかく大きくて重い。そして高い。

商用電源と比較すると、おそらく大きな音の違いはあるはず。
残念ながらインターナショナルオーディオショウでは、
ストロームタンクから電源をとった音は聴けても、
商用電源との比較試聴はできない。

なのでどれだけの効果なのかは確認できないのだが、
そのことよりも、これだけの大容量のバッテリーであっても、
この項で書いてきていること、
つまり電池の残量によって音が変化してしまうことからは逃れられていないのではないか、
このことの方を確認したくなる。

Date: 4月 5th, 2018
Cate: 電源

電源に関する疑問(バッテリーについて・その3)

昨晩(4月4日)のaudio wednesdayは、アンプのトラブルにみまわれたわけだが、
音がまったくなかったわけではない。

デザイナーの坂野博行さんが、あるスピーカーをもちこんでくれたおかげである。

CONSONO(コンソーノ)という、桐製Bluetoothスピーカーである。
このスピーカーについては、いずれ書く予定。

CONSONOの音を聴いては、あれこれ話していた。
一時間以上経ったころだろうか、音はあきらかに変化した。
いわばアンプのウォーミングアップが終ったような音の変化である。

音がやっと目覚めてきた、という感じの音へと変った。
内蔵のアンプのウォーミングアップが終ったのかと、最初は思ったが、
内蔵アンプはDクラスで、そこに使われているチップは小指の爪よりも小さなサイズ。
このサイズのアンプのウォーミングアップとは思えなかった。

となるとバッテリーなのか。
CONSONOのなかには、電源としてモバイル用バッテリーがある。
このバッテリーのウォーミングアップを経ての音の、明らかな変化だったのか。

バッテリーにウォーミングアップがあっても、別に不思議ではない。
それによる音の変化が生ずるのも避けようのないこと。

それにしても、かなりの音の変化である。

Date: 2月 12th, 2018
Cate: 電源

電源に関する疑問(バッテリーについて・その2)

一ヵ月ほど前、古くからの友人のKさんと電話で話していた。
その時、バッテリーのことが話題になった。

Kさんが立ち会ったある録音現場でのこと。
ノイマンのコンデンサーマイクロフォンの電源を、
本番の前に、フル充電のバッテリーに交換しておこう、としたら、
止められた、とのこと。

バッテリーの残りは、約半分。
そのくらいからが音がいいから、そのままの状態で、ということだったそうだ。

40年くらい前の話である。
そのころから、録音の現場(すべてではないだろうが)では、
電池の残りが少なくなってきたほうが、音がいいということは常識であった。

つまり一次電池、二次電池、どちらも同じなのだ。

AC電源かDC電源か。
どちらが音がいいのかは、人によって違っている。
絶対的に電池(DC電源)だ、という人もいるし、
いや、AC電源(商用電源)の方がいい、という人もいる。

電池といっても、さまざまな種類があるから、
どの電池でも音がいい、というわけではないし、
商用電源は外部からの影響を受けるから、これも一概にはいえない。

私としては、電池ならば、音がいい悪いよりも、
常に安定した状態の音が得られる、と期待していた。

つまり商用電源のように、どこかにつながっているわけではないから、
外部からの影響はない。
これは、ひとつの安心感である。

もちろん電池の劣化はあるものの、
商用電源が外部からうける影響の度合と変化にくらべれば、
それはある程度コントロールできる範囲でもある──、
そう思っていた。

けれど電池は減ってきた状態の方が、音がいい──、
このことは電池もまた別の意味で不安定な電源である。

Date: 2月 11th, 2018
Cate: 電源

電源に関する疑問(バッテリーについて・その1)

電源部から供給されるDC(直流)を、
信号に応じて変調して出力しているのが、アンプであるからこそ、
電源の質はそのまま出力の質でもある。

アンプの電源として、理想はバッテリー(電池)だと、
ずっと昔からいわれ続けてきている。

実際の製品でも、バッテリーを搭載したアンプはいくつか登場してきた。

MC型カートリッジのヘッドアンプは、以前から電池使用のモノがあった。
マークレビンソンのJC1は、AC電源仕様とDC電源仕様とがあった。

日本のメーカーからも、海外のメーカーからも、登場してきているし、
消費電力の少ないコントロールアンプだけでなく、
パワーアンプにもバッテリー電源を採用したモノもあった。

電池といっても、充電が行えるタイプ(二次電池)もあればそうでないタイプ(一次電池)もある。
電解液を個体に染み込ませた乾電池もあれば、液状のままの湿電池もある。

電池こそが理想の電源と主張する人たちであっても、
湿電池のほうがいい、という人もいれば、いや乾電池(一次電池)がいい、という人もいる。

さらに、それぞれの種類の中でも、このメーカーの電池が音がいい、
そういうことになっていく。

確かに電池の種類で音は少なからず変化する。
私がポータブルCDプレーヤーを買ったのは、28年前だった。
いくつかの電池を買ってきては、どのくらい音が違うのか、やってみた。

音は変る。
けれど、電池の銘柄による音の違いよりも、
同じ電池でも、使っているうちに音が変化することのほうが気になった。

買ってきたばかり(未使用)の電池が、音もいい、と、
最初は思い込んでいた。
しかし聴いているうちに、そうではないことに気づく。

電池が減ってきた、と表現するような状態での音の方がいいのだ。

Date: 12月 19th, 2017
Cate: 電源

実感した電源ノイズ事情(その3)

コモンモードノイズ対策をした電源ケーブルは、先週木曜日に作っていたけれど、
金曜、土曜は都合がつかず、ギャラリー・ルデコにもっていく時間がとれなかった。

日曜日は持っていけたけれど、月曜日に会う約束をしていたので、昨日手渡した。
といってもギャラリー・ルデコは月曜日は休館日であり、
実際に、ML7Aの電源コードを交換して、どの程度の効果があるのかを、
自分の耳で確認しているわけではない。

今日昼ごろ、電源コードを交換したら、ノイズがそうとうに減った、という連絡があった。
完全に取り除くことはできなかったようだが、
壁のコンセントから直接取ったときのノイズの多さ(ひどさ)を聴いているだけに、
あれだけのノイズが、すんなりなくなるとは考えていなかったが、
そうとう減った、ということは、簡単な工作であっても効果が得られる。

磁性体のコアを使うわけだから、そのことによるデメリットは確実にあるが、
メリットがそれを上回っていれば、どちらを選択するかは、使う人次第だ。

少なくとも電源からのノイズがはっきりとスピーカーから出てくる。
それがサーッと拡がり、音楽が鳴り出すと耳につきにくくなる性質のノイズならば、
まだいいが、今回のノイズはそうではなく、質の悪いノイズであり、耳障りでもある。

ならば何らかの対策は必要となる。

Date: 12月 13th, 2017
Cate: 電源

実感した電源ノイズ事情(その2)

実は今日の昼も行ってきた。
片チャンネルから出ていたノイズを抑えるためであり、
この点に関しては、あのへんに原因があると思えたし、
事実そのとおりで、うまくいった。
昨晩やらなかったのは、ML7Aの天板を開けることができなかった(工具がなかった)から。

ただ、今度はノイズフィルターを通していても、両チャンネルからノイズが出る。
壁のコンセント直よりは、ノイズの質はまだいいし、量も少ないが、はっきりと出る。

電源のノイズが昨晩とはまた違っているためであろう。

山手線内の繁華街、
こういう場所の電源の汚れ(ひどさ)は、私の想像を超えている。

ノイズ対策は、音との兼合いがある。
ただただノイズをなくしていく手法だけでうまくいくとはいえない面がある。

とはいえ、今回のような状況では、
そうとうに積極的に電源からのノイズを抑えていく必要がある。

今度はコモンモードノイズ対策をした電源ケーブルを、近日中に持っていく。
どの程度の効果があるのか、
それに持っていった日の電源からのノイズは、また変化している可能性もある。
つまりノイズが出なくなっていることもあれば、
同じかもしくはひどくなっていることだって考えられる。

とにかく試してみるしかない。
どの程度ノイズを抑えられるのか、
うまく抑えられたとして、音への影響はどう出てくるのか。

こういう環境だからこそ確かめられる。